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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.05 神業ナマコ拾い
                                   2001年12月29日発行
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■神業ナマコ拾い

前回、海の透明度が高くなり海底がよく見えるようになることを書きました。今回はこの透明度が高くなったからこそできる「ナマコ漁」をご紹介します。

ナマコ漁が2種類あることは前回もお伝えしました。「マンガ漁」と「拾い漁」ですね。このうち海の透明度が高くなってできるようになるのは「拾い漁」です。

拾い漁に必須の道具は伝馬船(てんません)メガネと竿です。伝馬船は長さ5m程度の小舟で動力として船外機をつけています。メガネは海底を覗くための道具でメガホンの開いた先にガラス板をはめたような構造になっています。竿は細い竹の先に返しのない釣り針を4つ1組にして直接縛りつけたものです。豊浜地区では釣り針は1つだけのようです。

拾い漁を行う場所の水深は概ね4m以内です。これ以上深いと長い竿が必要になるのですが、長い竿は扱いづらいのと引っかけたナマコを落としやすくなるため、できるだけ浅いところでナマコを捜します。

ナマコを捜すときは先のメガネを海面におろして海底を覗きます。日が差して明るいと黒ナマコはとてもよく見えますが、曇っていたり船の陰に入ったりすると黒いがゆえに見つけづらくなります。海底の石や赤黒い海藻を黒ナマコと見間違えることもあります。石を引っかけてしまい針が伸びてしまうこともあります。

ナマコが見つかったら竹竿をナマコめがけて下ろすのですが、この時水の抵抗が意外に大きくすぐにはナマコのところに行かないのです。ぐずぐずしていると潮で伝馬船が流されてしまい、ナマコは竹竿の届かないところに行ってしまいます(^_^;)。

どうにかナマコに竹竿が届けばあとは先につけた釣り針でナマコを引っかけてあげます。この時2つの難関があります。1つめは「引っかける」時です。釣り針の大きさは2cmくらいで竹竿の先はあまり曲がらないため、海底にいるナマコの横腹をちょいとつついてナマコを少し浮かせ気味にしないと釣り針にひっかかりません。浮かしすぎると返しのない釣り針ではとても引っかけづらくなります(-_-;)。

2つ目は「引き上げる」時です。釣り針には返しがないため引き上げる竹竿のスピードが少しでも緩むとナマコはすぐに「ふわっ」と外れていきます。4mあまりの竹竿を一定のスピードで引き上げるのは実に難しいです。特にナマコが海面近くに来て竹竿の先に持ちかえる時は竹竿のバランスが崩れやすく、ナマコは「ふわっ」と外れていきます(>_<)。すぐ目の前で外れるので悔しさもこの上なく、外れると「ああ!」とか「うぅ!」とかつい奇声を上げてしまいます(@_@)。

外さないためにはあまり近くまで引き上げずに、途中で竹竿を横に動かして水を切るようにして上げるのが良いみたい。それでも外れやすいことに変わりはなく、外れたらすぐにまた引っかけます。ところがこれが超難しいのです(-_-)メ。外れたナマコを追っかけて竹竿をナマコに近づけようとするのですが、竹竿が水の抵抗に負けてナマコに近づかない。うまく竹竿の先をナマコに近づけて、いざ引っかけようとしても刺さった釣り針がすぐに抜けてしまいその勢いでナマコはむなしくゆっくり回転するばかり。そして海底に向かってゆっくり落ちていきます。くっ、悔しい(*_*)

ゴーヘー父も時々外してしまいます。しかしナマコを取って50数年のゴーヘー父はそこからが初心者ゴーヘーとは違います。ふわふわとゆっくり海中を落ちていくナマコを何の苦もなくひょいと引っかけてしまいます!!どうなってるの?ほんとに同じ竹竿?と思いたくなります。




■今週のゴーへー

○12月某日 晴れ、強風
今日もとんでもない強風だ。ナマコ漁にはでられないので、2日前に取ってきたナマコのコノワタ取りをやった。コノワタ取りは通常札場(市場)のすぐそばや船でやるんだけど、今日のように強風だと寒くて作業ができないので家で行うことになった。海水で濡れるから物置でとるものだと思って準備してたらゴーヘー父が家から出てきて「そんなとこでやっとれすかぁ!寒くてどうならぁず!庭(玄関内)でやるだがや!」と怒鳴った。それは先に言ってくれんとわからんよ。
船にナマコを取りに行くと北西の風で小さな港の中が白く波立っていた。船は岸壁に吹き寄せられていた。風に吹かれるととびきり寒い。ナマコ他必要なものを軽トラの荷台に積んで家に戻り、玄関内にたらいをおいてその中にナマコを入れた。1時間ほどするとナマコが水を吸って伸びてきたので、コノワタ取りに取りかかった。そばにストーブを置いたので寒くもないし水も冷たくなくて実に快適。ただドロの吐き具合が良くなくて腸内にまだたくさんドロが残っていた。昔お婆さんがコノワタを取っていた時分は、木のたらいにナマコを入れていたそうだが、たらいの中によくドロを吐いたそうだ。
ナマコの量が少ないので1時間半程度ですべて取り終わった。コノワタ、ニノワタはそれぞれビニール袋に入れて、青ナマコ・赤ナマコのカラも発泡スチロールの箱に入れて軽トラの荷台に積んだ。そのまま仲買に向かって走っていると、消防会館の前でごーへー父が「どいだ、船に行かんかぁ。まんだ持ってくもんがあるがや」という。「そんなことは言ってくれんとわからんがな」と答えながら、信号でUターンして船に行った。先日コノワタを取ったナマコのカラを生かしてあったので、これもいっしょに持って行った。


○12月某日 雨
珍しく雨が降った。のんびり寝てたら9時頃ゴーヘー父がコノワタを取ると言ってきた。急いで支度をして二人で船に行く。雨がしとしと降っていた。ナマコはドウマン(魚を生かす丸い籠)に1つ半分あった。先日を同じように家でコノワタを取るため桶に水を入れて持って帰り玄関にたらいをおいてその中にナマコを入れた。手が凍えるように冷たい。
ナマコが水を吸ってからコノワタ取りにかかった。コノワタ取りを始めてじきに剃刀が切れなくなった。顔をそるためのいい剃刀らしいけど、切れなくては意味がない。すぐに船に置いてあるピンクの柄の剃刀を取ってきた。こちらの方がよく切れる。ナマコの数が少ないので12時にはすべて取り終えた。寂しい限りだ。雨が朝より強くなっている中、仲買にコノワタと魚を持っていった。


○12月某日 晴れ
今日は船でコノワタを取った。風もなく穏やかな日だったけど、途中で曇ってきて寒くなってきた。天気は下り坂だからね。ナマコの量がすくないので、あまり時間はかからなかった。取ったコノワタを仲買に持っていくと、ナマコのカラ(身)が死んでしまったと苦情があった。腹を切るときちょっと切りすぎらしい。切る幅は小指の幅くらいにとどめてほしいとのこと。本来ナマコは腹を切っても死なずに再生するのだけど、切りすぎると死んでしまうとのこと。でも去年までは問題なかったんだけどなぁ、、、
買ってすぐに処理すればいいのだけど、仲買もよそに売るまで時間が必要だろうし、その買った先も処理するまでに時間がかかるのかもしれない。切る幅を小さくするとコノワタ取りがしづらくなって余計に時間がかかるのでほんとはやりたくないけど、買い手の要望には応えないわけにいかない。


○12月某日 晴れ
ナマコ引きは相変わらず不漁つづき。たまに1回で10個くらいナマコが取れるときがあるけど、8割方黒ナマコなので残念だ。今日は10時にあがった。その後昨日の分のナマコのコノワタ取りをやった。たらいに2杯分しかないから1時間半程度で終わる。すぐに仲買にコノワタを置いてきた。でもナマコのカラは置いてこなかった。船のカンコ(船倉)に生かしておいて生き残ったものを次回仲買においてくるつもりなんだって。今日は仲買の要望通り腹を小さく切ったのだから堂々と置いてくればいいと思うのだけどなぁ。


○12月某日 晴れ
今日は餅つきだ。去年はやっていないので2年ぶりの餅つきとなる。9時半頃ごーへー妹と甥っ子2人がうちに来た。旦那は仕事で来られないとのこと。搗き手が一人なのはしんどいなぁ。
10時頃突然ごーへー母が粗大ゴミを捨ててきてほしいと言い出した。なんで今頃?と思いつつも、ゴーヘー妹と町のゴミ焼却センターに行ってきた。
家に戻ると餅つきはもう始まっていた。甥っ子2人(中3と小6)が助っ人(?_?)として搗いたようだ。ゴーヘーが中学生の時には力がなくて危ないからといって、餅つきはやらせてもらえなかったことを、この時期に毎年思い出す。
助っ人はやはり力不足(^_^;)で1臼分を搗くことができないので途中で交代。全7臼中4臼分はゴーヘーが搗き、3臼分は助っ人に1/3ずつ搗いてもらった。ゴーヘーの右腕は完全になまった(笑)。


■エピローグ

2001年も残すところあと3日。今年はイチローの活躍や雅子様のご出産など明るい話題もありましたが、やはりニューヨークの貿易センタービル崩壊が目に焼き付いて消えません。行方不明者は当初発表より半減したとはいえ、2000名を越える人命が一度に亡くなった衝撃は計り知れません。更にその原因が事故でも天災でもなく、飛行機という20世紀の偉大な発明品を武器とした人為的なテロによるものだとわかり、言葉を失ってしまいました。

「戦」という言葉に代表された1年であったようですが、これが21世紀の始まりだとしたらあまりに悲しい世紀の始まりです。この1年は戦争の多かった20世紀の最後の苦い残り香と思いたいです。

さて前回の予告でタイトルを「神業ナマコ拾い、かじかむコノワタ取り」としましたが、ナマコ拾いについて書いているうちに長くなりすぎたので、コノワタ取りは次回に書くことにしました。

それでは皆さん、よいお年をお迎えください。


■次回予告

Vol.06「かじかむコノワタ取り」 2002年1月12日(土)発行予定。

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Copyright (C) 2001 Gohe.

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