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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.06 かじかむコノワタ取り
                                    2002年1月12日発行
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■かじかむコノワタ取り

こちらではナマコの内蔵を総称してワタと言っています。
コノワタはナマコのワタ、特に腸の部分をさします。ナマコのワタにはこの他に、ニノワタとコがあります。ニノワタは腸を包むようにしてナマコの体内にあります。コとはずばり「子」すなわち「卵」で、ニノワタに紛れています。1月中旬以降にコの入ったナマコが多くなります。

ニノワタとコはコノワタに比べ腐りやすく、特にコはすぐに痛んでしまうのでコノワタやニノワタのような塩漬けで食べる習慣がありません。コは捨ててしまう漁師もいるようですが、他の地方では数個のナマコのコを集めてヒモなどに▽状につるして乾燥させ、「コノコ」として食べたり販売したりするところもあるようです。ゴーヘーの家でもそれに習ってコノコを作って、ちょっと火で焙って食べたりしているのですが、ややもっちりした食感でお酒にも合いそうです。

コノワタ取りを行うにあたっての事前準備として、ナマコの腸内にあるドロを吐かせるのが1番目にすることです。採ってきたナマコはドウマン(海中に沈めて魚を生かす蓋付きのカゴ)に入れて1日か2日海中に沈めておきます。コノワタ取りの当日これを海中から引き上げ、ナマコを作業場に移動します。作業場といっても専用の小屋があるわけではなく、市場横の風が当たらない物陰や船の上、自宅物置や自宅玄関内です(笑)。そこにタライや底の浅い生け簀をおいて海水を入れナマコを入れます。移す際にナマコは腸内から海水を吐いてしまうため、また海水を吸うまで約1時間待ちます。海水を吸ってナマコの緊張が解けて体を伸ばしたらコノワタ取りの始まりです。

ワタをナマコの体内から取り出すには、下に海水を入れた洗い桶などを置いて、その上で片手に持ったナマコの腹を刃物で切って取り出します。地方によって道具が異なるようですが、ゴーヘー達は使い捨ての剃刀を利用します。剃刀は切れ味の落ちるのが早いのが欠点ですが、刃の大きさが手頃で使いやすいのです。

ナマコの腹は縦に小さく切ります。あまり長く切りすぎると切り口が塞がらずにナマコが死んでしまうようです。小さく切れば切り口が塞がりナマコは生き長らえて内蔵が再生します。よって切る長さはせいぜい3cm程度。理想は1cm程度なのですが、あまり短いとワタを取り出しにくくて作業効率が悪いので、慎重に切ります。
(注:ゴーヘーが子供の頃のナマコは腹を切る長さが多少長くても死ななかっ
たと記憶しています)

ワタの取り出しは途中で切れないように慎重に行います。ニノワタやコは切れても構いませんが、コノワタはその中にドロがまだ詰まっているものが多いので、切れて内部の水が出てしまうとドロを取り出しづらくなるためです。先にニノワタとコを取ってボールなどの容器に入れ、コノワタをゆっくりナマコの体内から引き出します。口先側と肛門側がそれぞれ身に繋がっているので、これを引っ張って取ります。赤ナマコと青ナマコの身は「カラ」として仲買人が買ってくれますが、黒ナマコは見た目が真っ黒で悪いため引き取り手が無く、これらはまた海に帰します。

身から取ったコノワタは色の悪い口ワタ(口先側の2・3cmの部分)をまず取ります。次に口側を上に持って胃にある消化液と水を腸側へゆっくりと押し下げます。すると腸の途中に残っていたドロが押されて下に下がって行き、最後は下に受けた海水の入った洗い桶の中に散っていきます。これで腸内にあったドロはきれいになくなります。

でも腸の途中に破れがあったりすると水が抜けてしまいドロがうまく落ちません。ドロが多すぎた時も腸が途中で破れてしまったりしてやはりドロが落ちません。時々割れた貝殻の破片を飲み込んでいるナマコもあって、その破片が腸の内側にひっかかってドロが落ちて来ない時があります。そんな時はドロの詰まった腸を片方の掌において剃刀で腸を縦に裂き、洗い桶の海水で腸をゆすいでドロを落とします。腸の太さは大きなナマコで7mm程度、小さいナマコだと3・4mm程度しかないので大変面倒な作業です。剃刀が切れないととてもイライラする瞬間です(>_<)。

先にも書いたとおり、作業している場所は家の玄関を除けば基本的に屋外です。風が当たらないように工夫していても、冷たい海水に手を突っ込んで作業しているので手がかじかんできます(凍えて動かしづらい)。12月中はまだ海水の冷たさもそれほどではないですが(10℃以上)、1月に入るとてきめんに冷たくなります(8〜9℃)。そうなるとかじかんだ指がうまく動かず、剃刀で腸を裂くのも一苦労(-_-)。そばに七輪をおいて鍋でお湯を沸かし、手がかじかんできたらそのお湯に指をさっと突っ込んで暖を取るようにします。指についたお湯を両手で揉んで指になじませると、じわっと暖まってきて指がよく動くようになります(^_^;)。

作業中はずっと座るか、しゃがんだままなので腰にも悪そうです。漁師にとって水の冷たさはどの漁も変わりないですが、それでいてコノワタ取りはさほどよい収入になりません。一冬(2ヶ月間)での値段の変動も大きく、最安値と最高値の差が2倍以上あります。海苔と比べると水揚げ高の面で遠く及ばず、値段変動の大きさもはるかに大きいです。生活の糧を得る漁としてはあまりよい漁ではないので、うちの村でもナマコ&コノワタ取りを行う漁師が数名しかいないのもうなずけます。

ナマコ漁は後継者のほとんどいない漁ですが、今やっている中ではゴーヘーが一番若いので、あと30年くらいは続けられるでしょう(^_^)v。




■今週のゴーへー

○1月1日 晴れ
午前0時。初詣に出かけた。村にある4軒のお寺と神社にお参りするためだ。お寺からお参りしていつもは順番待ちの人が多くてつけない鐘も初めてついた。ゴーヘー母も初めて鐘をついたのだが、つき棒がうまく鐘にあたらなくて小さな音しか出なかった。その時ゴーヘー父はすでにその場にいなくて次のお寺に向かっていた(-_-;)。最後に神社にお参りしてそこでふるまいの甘酒をいただいた。境内の焚き火が暖かかった。


■エピローグ

この2週間一度も漁に出ていません。例年年末3日間、年始7日間は漁をお休みしているのですが、今年は新年になって猛烈な寒波のため強風の日ばかりで、ずっとお休みです。というわけで、今週のゴーヘーは何も書くことがありません(-_-;)。テレビの年末年始の特別番組を片っ端からビデオに撮って見まくっていました(*^_^*)。

ここへ来て少し寒波も緩みましたが、低気圧が近づいてまた天気は下り坂。自然相手の商売なのでこんな時はどうすることもできません。今はただじっと風がやむのを待つのみです。


■次回予告

Vol.07「天然の牡蛎もおいしい」
2002年1月26日(土)発行予定

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