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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.106 タコ漁
                          2005年11月12日発行
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■タコ漁

タコと言えば「明石のタコ」が全国的に有名ですが、ここ三河湾でも昔からタ
コがよく獲れます。日間賀島は近年「タコの島」として積極的に売り込み大成
功していますし、私が住む村の和菓子屋さんでは私が子供の頃から蛸壺を模し
たモナカを作っています。

タコ漁は昔からある蛸壺(以下タコ瓶と呼ぶ)の他にカゴ(タコカゴ)を使っ
た方法と釣りによる方法の3種類がありますが、今回はカゴと釣りは割愛して
タコ瓶についてお話しします。

タコ瓶はみなさんがタコと聞いて思い浮かべる最もポピュラーなタコ漁の方法
だと思います。どなたも絵本やマンガなどで蛸壺とタコをセットで1度は見た
ことがあるのではないでしょうか。思い浮かべる蛸壺も底が平らで胴が膨らん
だまさに「壺」という形のものだと思います。冒頭のモナカもそんな壺型をし
ています。

ところが実際に使っているタコ瓶は「壺」のイメージとはちょっと違います。
壺は口を上に向けて「縦」に使う印象がありますが(陸では横にしたら中に入
れた水がこぼれちゃいますからね)、今多く使われているタコ瓶は「横」にし
て使うよう胴に平らな部分があります。こんもりと膨らんだカマボコ型といえ
ばいいでしょうか。

形の違いには2つの理由があります。

1つめは安定性で、これは海底に沈めた時普通の壺型だと潮の流れで転がりや
すく不安定なため入ったタコも出やすいのですが、カマボコ型だと安定してい
るためタコが出にくいためです。

2つ目はタコのいる場所の違いです。タコは普通シマ(岩場)の中に多くいま
す。タコは体を保護する固い殻などがないので身を守るため好んで岩場に隠れ
る習性があるようです。そんなシマの上は表面がデコボコしているので普通の
壺型でも窪んだ場所にはまれば潮に流されることなく安定していられます。

一方タコはエサを獲る場合はシマ以外の砂地の海底へも行きます。平らな砂地
では壺型よりカマボコ型の方が潮に流されず安定するため、こういう場所に沈
めるタコ瓶はカマボコ型になっています。隠れる場所の少ない砂地はタコにとっ
て危険地帯ですが、そこに絶好の隠れ場所があればタコはこれ幸いと入ってく
ることでしょう。海の中はシマより平らな海底の方が多いのでタコ漁のできる
範囲がこのカマボコ型タコ瓶によって格段に広がったと思われます。

さて実際にタコ瓶を揚げる時ですが、ロープを手繰ってタコ瓶を海底から引き
上げる際、瓶から逃げるタコは滅多におらず皆瓶の中でジッとしています。こ
の時タコはおよそ3タイプに別れます。1つ目は瓶の口元で外向けに足の吸盤
を向けて侵入者に備えるもの。2つ目はスタイルは1と同じだけど瓶の底にへ
ばり付いて足の吸盤を外向けにして防護体制をとるもの。3つ目は瓶の中程に
座り正面を向いて外を窺っているもの。

どのタイプも自分の入っている場所がなぜか動いているのできっと不安なので
しょうね。1と2は不安に対してとにかく拒絶・見ないで現実逃避、3は心配
しつつも好奇心で外を見ているのでしょうか。このタイプとは引き上げた時目
が合ってしまうんで、こちらとしてはちょっとバツが悪いです。

タコ瓶はエサが要らず単に沈めておけばタコが勝手に入ってくれ、腹が減れば
自分でエサを獲りまた戻ってきてくれるという、瓶さえ沈めておけばこちらは
何もしなくてよいお気楽な漁ですが、実は難点もいくつかあります。

他の漁師達も近辺にたくさんタコ瓶を入れているので互いのロープが重なって
しまうことが多く、上になっているロープが切られていたりすることがありま
す。一応結んでありますがうちの場合今年新調したロープがすでに2カ所も切
られています。ほんとは切らなくてもテンマで相手のロープの下をくぐればや
り過ごすことができるんですけどね。

また重なっているがゆえ海の上では誰彼の瓶の区別がつきにくく、それを逆手
にとって他の漁師の瓶を揚げていく漁師がいます。この場合伸ばしたはずのロー
プがたるんでいるのですぐにわかりますし、瓶の中に入っているはずのタコは
もちろんなくなっています。

お気楽なタコ漁ですが、人目がない海の上なのでモラルも潮に流されやすいよ
うですねぇ。


■先週のゴーヘー

○11月2日(水) <大ダコフルパワー>

朝また北っぽが吹いていて船を出すかどうか躊躇・・・する間もなくみんな出
て行く。うちも船を出すがリモコンが不調で舵が利かずしばし調べる。スイッ
チの配線が錆びて接続不良になっているのが判明しとりあえずCRCをかけてみた
ら復活したんで、船を出す。

梶島へ行くとTA丸が網をやっていた。すぐそばで一クラ目をやったらカラ。
2〜4クラは1つずつ。8時半にアイバ尻へ出たらそこでカレイ4枚、コチ1
本と今日一番の大漁(苦笑)。8・9クラ目がまたカラになったんで西へ走り
一色沖まで戻る。ここでまたカラ。とうとう今日は諦めて帰ってきた。

船で昼飯を食べてからタコ瓶を揚げに行った。今回は4組中1組のタコ瓶の中
で端っこが2つが揚げられていただけだった。おかげで大中タコが全部で7ハ
イ入っていた。特に1つが大きくてネットに入れる時に一苦労。右手に絡まっ
て吸い付いつかれたらとても痛かった。大ダコも必死だから大きな吸盤でフル
パワーで吸い付いたみたい。しばらく手の甲が痛かった。

夕方札場へ行くとなぜか誰もいない・・・・あぁ!!、今日は札場が休みだっ
たんだ!。それから慌てて魚と大ダコを仲買へ持って行った。う〜ん、この大
ダコを相対で売るのはもったいなかったなぁ〜(残念)。


○11月3日(木) <危なかった>

朝東を目指して走っていたら後ろをついて走ってくる船の灯りを発見。ゴーヘー
父に報せて今日は東を諦め梶島へ向かった。あのまま後をつけられたらうちに
残された唯一のオハコが知られてしまうところだった。危なかった。

梶島ではポツポツと魚がかかったが、労多くして益少なし。FH丸がアイバ尻
へ、TA丸がオクゴオリへ走っていった後、東のもう一つ別の場所へ向かった。

いつもの場所からもう少し東へ走って、ゴーヘーが初めての場所へ行く。しか
しそこで3クラやってもカレイ3枚、クロダイ1枚きり。しかたなくいつもの
場所へ戻るが、二クラやってクロダイ3枚。お昼を食べながらオクゴオリで最
後の一クラをやろうと走ってきたけど、すでに海苔の枠が入っていて場が塞がっ
ていた。

結局三河湾中を走り回って随分油を使っただけだった。


■今週のゴーヘー

○11月10日(木) <大ガレイ暴落>

風やら船を引いたりやらで1週間ぶりの沖だ。ちょっと北っぽが強かったが浜
へ行くとみんな出た後だった。

梶島で一クラやってから久しぶりに東のオハコへ大ガレイを狙って走った。前
半は大当たりはなかったが大ガレイが1枚か2枚ずつ混じって毎クラ数枚ずつ
の中ガレイがかかる。後半はカラが2度あった。まずまずの漁で水揚げも2万
の半ばは期待できそう。

オハコでお昼までやって帰ってくる途中梶島でもう一クラやったのはご愛敬。
水槽に魚を揚げたら大ガレイが10枚あり、中ガレイが28枚あった。大ガレ
イ2枚は金比羅さんのカケイ(お供え物)に取っておいた。

札場は1番売りだった。中ガレイは1枚500〜600円程度の値が付いた。
よく肥えているうえにまだ子(卵巣)は張っていないから良い値だ。大ガレイ
は一層肥えていたんで期待して8枚を売ったら、なんと4,300円の値しか
つかなかった。1枚500円程度では中ガレイより安い。_| ̄|○

1週間札場が休みだったし金比羅さんも明日に控えていたんで、今日の札場に
は大いに期待してただけに、いきなり先週までの半値には腹が立つのを通り越
して力が抜けた。大ガレイが1枚500円なんて子が尾っぽの根元までポンポ
ンに張った頃の値段だ。去年の11月は金比羅さん後でも1度くらいしかなかっ
た。

よく肥えていてまだとても美味しいのになぁ。はぁ〜。
もう大ガレイは要らないな(マテ)。


○11月11日(金) <回復>

今日は梶島に4ハイの船が集まった。狭い場所で少ない魚を取りあっているん
で少ない水揚げが更に少なくなる。はぁ〜。

SK丸は朝1度無線の声が聞こえたきりだった。10時頃には入港していたよ
うでたぶん漁があったんだろう。こちらはカレイ10枚、小コチ4本。大ガレ
イが2枚あったからこれは昨日の分と合わせてカケイだな。

11時に諦めて帰ってきてすぐにタコ瓶を揚げに行った。全般にタコが小さ目
で数も6パイとやや少ない。だんだんタコも少なくなってきたのか。

札場は昨日とは打って変わってカレイの値が良かった。1番売りのSK丸のカ
レイなんて大ガレイ混じりの中ガレイが6枚で4,500円もしてた(昨日の
大ガレイ8枚より高い!)。更に中ゴチも3本7千円ほどで売っていた。みん
なの2倍の水揚げだ。これだけあれば早く帰ってきて油を節約するのもわかる。

それにしてもうちが大漁の時はなぜかいつも値が安いような気がする。巡り合
わせが悪いんだろねぇ。_| ̄|○


■エピローグ

朝の寒さが体に堪えるようになってきました。網を手繰ればまだ体は暖かくな
りますが、昨日のように曇っていたりするとすぐに体が冷えてしまい北風が身
にしみます。もうすぐ冬ですね〜。

漁の方はすっかり冬モードで魚がさっぱりかかりません。いつだったか連続6
クラもカラがあったのはこの11月だったと思います。今年のそんなことがあ
るかもしれません。

先日灯油を買いに行って18リットルが千円で買えなくてビックリしました。
18リットルに千円以上払うなんてたぶん17・8年振りじゃないかと思いま
す。ガソリンも高く船の油代も随分と上がってきました。これ程上がるとヘタ
に沖に出るより休んだ方が儲かる、なんてことになりそうです。ちょっと風が
吹けば休むし、沖に出てもちょっと漁があれば早めに帰ってきた方が良さそう
です。なんとも困ったことになったものです。

というわけで次回は「原油高騰」。ゴーヘー通信丸4周年記念なのになんとも
先行き暗い話題であります(苦笑)。


■次回予告

Vol.107 「原油高騰」 2005年11月26日(土)発行予定

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Copyright (C) 2001-2005 Gohe.


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