前一覧次
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.107 原油高騰
                          2005年11月26日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


■原油高騰

先週の14日から20日までは、11月にしては珍しくずっとお休みでした。
本格的な冬を前に出漁できる日が限られてくる11月なので、この長期連休に
はほとほと困ってしまいました。

長期連休の主な原因は大陸からの強い寒気団の南下に伴う北西風(もしくは北
風)です。この地区で吹く冬の伊吹おろしは全国でも有数の風の強さを誇って
いる風ですが、今年は本格的な冬を目前に控え早くも伊吹おろしが吹きまくっ
たというわけです。

毎日毎日天気予報の天気図とにらめっこし、夜明け前の風と海の様子をジッと
観察をしています。そうすると日によっては多少風が弱い日もあるのでそうい
う日はムリをしてでも船を出します。アイバ尻や梶島なら多少風が強くても波
がないので網をやれるからです。

しかし今年は様子が違います。みんな船を出す元気もなく岸壁で熾した火に当
たって暖をとっています。原因は不漁に加えて油代(以後油銭)の高騰です。
去年に比べて50%も上がってしまっては油銭だけで1日4,000円〜5,
000円程度かかってしまいます。魚が掴まらなくてちょっとあちこち走り回
ればすぐに5,000円をオーバーしてしまいます。今月は1日の水揚げが1
万に届かない日も多いのに、水揚げの半分かそれ以上が油銭でなくなってしま
うのでは、いったい何のために沖へ出ているのかわからないので、どうしても
尻が重くなってしまうのです。

「油銭を気にして沖に行けんなんて情けねぇなぁ」とみんな話しています。戦
後漁船にエンジンが導入されて以後オイルショックの一時期を除いてずっと、
水揚げに占める油代が月50%に迫るようなことはありませんでした。漁のな
い冬は例外としても本来カレイの多く掴まる10・11月は10日分の水揚げ
があれば油銭の支払いに困ることはなかったのです。それが今年は一変しカレ
網漁師の多くが困っています。

もともと漁師はどんぶり勘定です。使った油以上に儲けてくればそれでいいと
思っています。多少儲からなくても毎日沖へ出ていられればそれなりに水揚げ
も揚がって儲けも出てくると思っています。それゆえ毎日沖に出られるように
船もエンジンも大きくして魚がたくさん獲れるように設備も充分にしてきまし
た。中でもエンジンにはみんながお金をかけて大きい馬力のエンジンに替え、
他の人より早く走れるようにしてきました。

ここにきてこの大きなエンジンが負担に転じてきました。大きなエンジンは力
がありますが、その分油もたくさん消費します。ちょっと走るだけですぐに千
円単位で儲けが消えていきます。値が下がってキロ500〜800円のカレイ
では余程たくさん掴まえてこないと油銭が稼げません。

しかし以前は多かったそのカレイが今年は1日やっても10数枚しかかからな
いのです。これでは他の魚がないと油銭にもなりません。毎日沖に出れて少な
い儲けを積もらせる、という理屈は、毎日沖へ出て赤字を積もらせる、に転じ
てしまいました。「休んでいるのが銭儲け」なんて言い合う始末。まさに万事
休すであります。


とまぁ、風の日の朝は集まって焚き火を囲んで悶々としているわけですが、凪
いでいれば愚痴をこぼしているわけにもいきません。沖に出れば赤字かもしれ
ませんが、沖に出なければ儲けにもなりません。とにかく船を出してどこかで
魚を掴んでこなくちゃいけません。油銭を引いた残りがたとえわずかでも、と
にかくプラスにすることが大切です。陸でバイトがある人以外は、今年も11
月一杯はこうやって沖へ出て行くことでしょう。


■先週のゴーヘー

○11月13日(日) <網が取れない>

また北っぽが吹いていた。浜で様子見してたらST丸が出て行ったんで、みん
なも船を出した。うちは少し迷ったけどやっぱり船を出した。

三河が近づくと波は穏やかになっていったが風は強かった。この風のため寒い
朝が余計寒かった。

4クラ目まではなんとか魚がかかったけど5・6クラ目はカラ。7クラ目は途
中で網がシマにひっかかってしまい引っ張っても取れず。それを見ていたゴー
ヘー父が自分で引っ張ろうとゴーヘーの手から網を取り「離せ!」と苛ついた
声で怒鳴る。魚がかからないからって怒って怒鳴ることないじゃないか。「引っ
かかって取れんだわ!」と言い返しす。

結局網は引きちぎれて揚がってきたんでその一反だけ交換し、この後2クラやっ
て諦めて帰ってきた。


○11月18日(金) <ロープ切られた>

一週間ぶりにタコ瓶を揚げに行った。風で沖が休みだったんで揚げに行くタイ
ミングを失ってそのままだった。大きなタコがたくさん入っているかも?(笑)

ま、現実はそんなに甘くなく小さなタコばかり。それでもまだタコが入ってい
ただけ良かった。

タコ瓶は4セット中1セットが瓶の半分が一カ所にまとまっていて、そのうえ
端っこのロープが切られて瓶一つがウケと一緒になくなっていた。これまでロー
プを切られるのは何度もあったけどその都度結んであった。今回は切りっぱな
しで捨て置かれてる。やることがめちゃくちゃだね。


■今週のゴーヘー

○11月21日(月) <札場終了>

朝明るくなってから浜へ行くとみんなの船がまだあった。少し風が吹いている
から出てこないみたい。しばらくしたらAW丸が船を出した。それでもまだ思
案してたけどやっぱり船を出した。SK丸の船はすでにないことに気づく。早
くに出て行ったようだ。

7時20分頃梶島へ着き一クラ目をやる。小コチ1本、寒い。2クラ目、大ダ
コがかかってきた。たぶん今年最大級。2キロ以上あるかもしれない。3クラ
目を揚げている時FH丸がやってきた。やっぱりうちの後を追いかけてきたね。
4クラ目はカラ。5クラ目は小カレイが5枚、中カレイ2枚、小コチ1本。数
だけは今日一番多い。6〜8は1枚か2枚。11時半にとうとう帰ってきた。

昼飯を食べてからタコ瓶を揚げに行った。またウケが1つ無くなっていた。ウ
ケを繋いだ紐が海底側で切れていたからたぶんカレ網の誰かがガランガランで
引っかけたんだろう。こうなると前回の件もカレ網の誰かが怪しい。といって
もこの場所で最近網をやる人は限られているけどねぇ。

タコの方は大ダコが2ハイ、それよりやや小さい大ダコが1パイ、中ダコが4
ハイと全部で7ハイあった。大漁だ。梶島の大ダコと合わせて大ダコだけで4
ハイもあって札場が楽しみだ。

その札場だが今日売りに来た人数はわずか5人。ST丸を除きみんな漁もない。
それで今シーズンの札場は今日でお終いにすることになった。

その最後の札場で良い値を期待したんだけど、大ダコ4ハイで7,900円と
期待はずれで、キロ千円するかどうかだ。やっぱりタコも安くなってきたなぁ。
値が良いのは本ガニとクロダイくらいだな。

今日は1週間ぶりの沖だったけど、もう、今シーズンのカレ網も終わりだなぁ。


○11月23日(水) <4千円(T_T)>

朝は明るくなってから出かけた。良く?言えば後をつけられるのを警戒して、
悪く言えばやる気がない(苦笑)。

後をつけてきそうな人は1名を除いてみんな先に出た後だけど、どこで見てい
るかわからないら警戒して進路を取る。佐久島の下りを走って三河湾の中央付
近を東へ行く。これなら沿岸付近で網をやっているカレ網の船からは見えない。

こんな警戒をして、かつ距離を走るから油をたくさん使って行ったにも関わら
ず1クラ目はカラ。しかたなくまた走って8時20分頃次の場へ着く。普段な
ら5クラ目を揚げてる頃だね。

前回と打って変わって今日はカレイが少なく4クラやって9枚。うち大ガレイ
は2枚。諦めて梶島へ戻ってきて一クラやったけどカレイ1枚。アカン、今日
はアカン。

仲買へ持って行ったら全部で4千円だった。_| ̄|○

2枚の大ガレイのうち1枚を持って帰って煮付けにした。3つに切っても大き
すぎて鍋に収まりきらず鍋を交換(笑)。身はまだしっかりしていてうまかっ
た。


○11月24日(木) <久しぶりに大ゴチ!>

朝浜へ行くとすでにOA丸、FH丸がいない。どうやら昨日西浦で漁があった
ようだ。それならとうちも西浦へ走る。

小野浦まで行くと先の2ハイが網を揚げていた。うちもそばへ網を入れたらア
オサがびっしりと網に付いてしまった。先の2ハイも揚げるとすぐにイワテへ
行ったんでうちも後を追う。

空港島南へ行くと2ハイは少し東でやっていた。たぶん昨日そこでかかったん
だろう。うちはいつもの場所で網をやる。小コチ3本と小ヒラメ2枚。コチが
もっと大きくないと銭にならない。

その後も続けてやると多い時は小コチを中心にコチが6本ぐらいかかることが
あった。時々中ゴチがかかる。1本だけ大ゴチもかかった。大ゴチを見るのは
いつ以来だろう・・・1ヶ月半振り?(苦笑)。

今日は漁の方はまずまずだった。ただカレイも小コチもキロ単価が800円に
下がったんで水揚げとしては今一歩。

はぁ〜、いよいよ800円かぁ。いや、先日大ガレイでキロ500円を体験し
てるから、まだまだ大丈夫(負け惜しみ)。


○11月25日(金) <また切られた>

朝西の風っぽかったけどたいして吹いてなかったんで船を出した。ところが明
神様を回ったら波が高く、豊浜前まで行ったら随分と白波も目立ってきた。船
をスローにして随分迷ったけど結局引き返してきた。

10時にタコ瓶を揚げに出た。前回ウケと瓶1つが無くなっていたところへ行
くと、またウケが無くなっていた。またかよ、と思いつつ反対側から瓶を揚げ
ていったら、なんと途中でロープが切られていた。今度は瓶2つが無くなった
ことになる。

ロープの切れ端はぐるぐるにヨリがよっていて明らかに何かに引き吊り回され
た形跡あり。これはカレ網のガランガランで網を引っかけた時にそっくりだ。
つまり犯人はカレ網の中の誰かだ。前回も同じ場所で引っかけているのだから
わかりそうなものだが、そういう気を遣わない人ということだな。

まぁ、今この場所で網をやっている人はわかっている。その人は去年のナマコ
引きで隣村のタコ瓶を引き吊り回した前歴もある。その時のことを「ウケさえ
かわして(避けて)いけばひっかからんでな」としたり顔でしゃべっていた。
本人は引っかけていることすらわかっていないご様子(いや、わかっているけ
どしらを切ってるだけかも)。

いずれにせよ現行犯じゃない限り文句も言えない。何しろカレ網がやるタコ瓶
やタテコミは同業に「引っかけられても文句を言っちゃいかん」という前提に
なっている。

 #でも普通の人はそれを「引っかけて良い」と解釈はしないけどね

肝心のタコは小さいのが3つ。1つはうちで食べることにして2つを仲買に持っ
て行った。1,300円也。_| ̄|○

仲買にはうちのタコ瓶を引っかけたであろう人のカレイがあった。たぶん7,
千円分くらい・・・・


■エピローグ

油は高いし魚は獲れないしタコ瓶は無くなるしで、今回は愚痴ばっかりでした。
せっかくゴーヘー通信も5年目に突入したというのに、これではイカンです、
イカンですよね(苦笑)。

まぁ、カレ網も今月残り4日のみ。来月からはナマコ引きが始まります。もう
しばらく辛抱です。


■次回予告

Vol.108 「おっかぁも漁師」 2005年12月10日(土)発行予定

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Copyright (C) 2001-2005 Gohe.


前一覧次