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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.12 漁村の春
                                     2002年4月6日発行
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■漁村の春

カレ網は例年立春後雨水までの2週間の間で北西の風が止んで穏やかな日に初出漁します。梅はすでに満開を迎えていますが、春というにはまだほど遠く冬の一番厳しい時期が終わったばかりです。

漁村の春はコウナゴ(イカナゴ)漁で始まります。2月下旬コウナゴの試験引き(調査のための漁)が行われ、コウナゴ・イカナゴ連合会の協議を経て本格的な漁が始まります。まだ気温が低く朝の冷え込みは厳しいのでとても春という感じではありませんが、暦の上では雨水を過ぎて啓蟄ももう間もなくという時期であり、コウナゴ漁の船団の音が春の足音代わりとなっています。

コウナゴ漁が後半戦を迎えると天気予報でも桜の開花予想が発表されます。海苔網が片づけられた海苔枠だけが海に目立つようになり、アサリの口開き(解禁)と前後してソメイヨシノと山桜の開花が始まり、そしてコウナゴ漁と海苔が終わりを告げます。カレ網もフルメンバーでの出漁となり、いよいよ春本番です。

小学校や公園、道路沿いなどでソメイヨシノが満開を迎えます。小学校以外の場所のソメイヨシノは比較的若いため一本一本の枝振りが今ひとつで、こんもりと丸い桜の木のイメージとは違いちょっと貧相なのが残念です。そんな若いソメイヨシノも並木となっている道路沿いや観音様の参道などでは、桜色がひときわ目立って見え春の雰囲気を盛り上げています。

一方の山桜は松のくすんだ濃い緑色と葉が落ちたままの広葉樹の枝が目立つ山肌に、点々と白い斑点を作ります。生育条件としては悪い山の北斜面にあるものも多く、長い年月を経て大きく成長して見事な花を咲かせているものもあります。その様子は集団で自己主張する若いソメイヨシノと違い、いまだ冬模様の山肌の中で一人大きく手を広げて静かに春を歓迎しているように見えます。




■今週のゴーへー

○3月22日(金) 曇りのち雨
上野間の1クラ目、カレイ4枚にマタカ(スズキ)が1本かかった。全長60cmくらいの大きなマタカで、網から外すのにちょっと苦労した。釣りでこのくらいのマタカが釣れたら引きが強くておもしろいだろな。
空気中の湿気が多くてベタベタする中、風が少し吹いたり止んだりを繰り返す。
9時半頃の7クラ目、ボラがかかった。ちょっと小さめ(40cmくらい)で昔ならボラとは呼ばずイナダと呼んでたくらいの大きさだ。カンコ(魚を生かす船倉)の中でしきりに飛び跳ねて壁にあたりコンコンと音を立てている。そのうち諦めておとなしくなった。海上に黄色く層をなしていた黄砂もいつのまにかどこかに消え失せていた。


○3月25日(月) 曇りのち晴れ
午前4時起床。コンビニの旗が北西の風になびいていたが、天気予報では凪いでくる予報だったのであえてでかける。
明神様の鼻(半島先端の岩礁にある灯台)を回ると案の定波が高くなった。左前方から50cm以上の波が押し寄せてくる。少し速度を落とすも波を割って進むたびに波しぶきがブリッジを越えてくる。小佐(おざ)前で戻ってきたカレ網の船とすれ違った。後でSK丸だとわかる。
山海前でまた戻ってくる船がある。バカ網(ボラ漁)の船でTK丸だった。無線でイワテの様子を教えてくれ、彼らが戻ってくるようではカレ網はできそうもないので引き返す。ゴーヘー父はまだイワテに未練があるようで、戻る船足はスローだった。
明神様まで戻るとIY丸が無線でSK丸を呼んでいる声が聞こえた。浦前(大井前)でも波がエライので出ようかどうか思案しているとのこと。SK丸はすでに一色前にいてそちらは波も穏やかで漁ができそうだと返事をしていた。それを聞いてゴーヘー父も船足を速め一色前に向かった。
一色前はあさり屋さ(アサリ捕り専門の底引き船)が30隻くらい出てアサリを引いていた。海苔そだ(海苔網をはる竹の棒)の中の竹のない場所で網を入れた。しかしカレイは1枚もかからない。風が冷たくて軍手で作業してたら手が凍えてしまった。
近くでもう1度やると小カレイが1枚かかった。場所をもう少し東に移して矢作古川の河口前でやったがまたカラだった。更に東に移動しアイバ尻付近で2クラやるも小カレイ1枚のみ。しかたなく梶島に行って2クラやったが小カレイ1枚ずつ。吉田の港前でFH丸がやっていたのでそのそばに戻り網を入れる。網を上げたFH丸が近寄ってきたので様子を聞くとやっぱりダメみたいだ。ゴーヘー達もここで切り上げて帰港した。
カレイ達はどこに行ってしまったんだろう。


○3月26日(火) 晴れ
午前3時50分起床。いよいよ起床が午前3時台に突入!昨日までよりわずか10分早いだけなのに、なんだかとても早起きしている気がする。(笑)
今朝は風もなく穏やかな海だった。ただ、冷え込んでて案外寒かった。5時40分ごろ上野間に着くとすでにSK丸とOA丸が漁をしていた。SK丸は2クラ目らしい。早いなぁ(苦笑)。ゴーヘー達の1クラ目はカレイが10枚(小3枚)がかかった。2クラ目は2枚だった。3クラ目はイワテ(北)に走って大谷で網をやった。ここでは5枚かかった。この時点で午前7時半。ゴム手袋をはめた手が結構冷たい。
4クラ目で3枚いたが、そのあとはどこをやってもカラばかり。8クラやってカレイ2枚。代わりにガランガランで網を引っかけて2反の網をそれぞれ1カ所ずつ破ってしまった。引っかけて海底を引きずったので汚れも大量についていたので、破れた網は別な網と交換して漁を続けた。
帰りはゴーヘー父が破れた網をきよい(繕い)、ゴーヘーが舵を取ってきた。穏やかな海に加えなぜか他の船が走っていないので引き波もなくとても走りやすかった。仲買にはカレイ20枚を置いてきた。朝の水揚げが無かったら今日も悲惨な一日になっていたなぁ。


○3月28日〜31日
今日はアサリの口開き(解禁日)だ。今日から4日間アサリをかく(採る)のだが、道具はカギ(20cmくらいの棒の先端に長三角形の鉄板がついた道具)1本のみ。いわゆる手堀だから量はあまり期待できない。めざせ1日20kg。
が、結果はやはりというべきか、あまりよろしくない。毎日5〜7kg程度。もっと装備をよくしないと20kg以上とれない。場所も変えた方がよさそうだ。


○4月2日(火) 快晴
午前3時40分起床。昨夜は寝る時刻が遅かったので眠い。コンビニの旗がゆっくりと揺れていた。空は晴れ陰暦20日の下弦の月が西の空に煌々と輝いている。暗いはずの船のブリッジ上もほんのりと明るくなっていた。
5時半頃上野間に着いた。すでにSK丸が網をやっている。ゴーヘー達が網をあげ始めた頃、東の空に太陽が昇ってきた。白っぽい色をしている。こういう日は風が出てくるらしい。
2クラ目でカレイ8枚+マタカ(スズキ)1匹、3クラ目で7枚のカレイがいた。小さいものが多いからカンコ(魚を生かすの船倉)の中がやや寂しい。マタカが悠然と泳いでいるのが印象的だ。
7クラ目で大きさ50cm位のクロダイがかかってきた。狙ったわけでなくしかも大きいのでちょっとビックリした。1匹だけというのも珍しい。まるまると太って重いクロダイだった。
昼近くなりとても暑くなった。朝は10℃以下だったようだが日中は25℃くらいありそう。ヤッケ、セーター、トレーナーを脱いで肌着と長袖シャツだけで作業した。5月中旬から下旬のような暖かさだ。
港に戻る頃風が強くなっていた。今日から札場(市場)が始まるので、魚は札場の水槽に生かしておいた。


○4月3日(水) 快晴
午前4時40分頃起床。寝坊した。慌てて支度をして出かける。
出発時刻が遅いせいもあり今日はオクゴオリを目指して走る。5時40分頃着。すでにOA丸が網をやっていた。ゴーヘー達は十八番の場所で一クラ目をやる。が、カレイ4枚+アイナメ1匹だった。カレイがちょっと小さいがアイナメが40cm近くある大物だったので良しとしよう。2クラ目は大きいカレイも混じって5枚いた。
5クラ目、大ガレイに混じって今年初めてのコチがかかった。去年より1ヶ月くらい早いコチだ。暖かいせいだろう。7・8クラ目でもコチがかかった。7クラ目のコチは50cmくらいの大ゴチで、8クラ目のコチは3本もかかっていた。ちょっと小さめだったけど、コチ5本は大漁だ。
結局13クラやって大ガレイが8枚、中ガレイ以下で2セイロ(トロ箱)分、コチ5本、アイナメ1匹と先週までの不漁がウソのような大漁だった。


■エピローグ

ようやくカレイがかかるようになりました。更にコチまでかかるようになり、カレ網にもようやく春が来たようです。世間とは逆に遅い春だったなぁ(苦笑)。好天が続かないのが残念ですが、出られる日はがんばって出漁したいです。


■次回予告

Vol.13「あさりかき」
2002年4月20日(土)発行予定

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