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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.14 東風
                                     2002年5月4日発行
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■東風

4月中旬から5月上旬のこの時期、南知多町ではよく東風(こち)やマゼ(南風)が吹きます。特に東風が強く吹く時は大抵低気圧が近づいている時で、じきに天気は下り坂。激しい風雨になることが多いです。

この地は知多半島の先端付近のちょっと東に曲がっている部分の内側(東側)にあたるため東風をまともに受けます。強い風は高い波やうねりを引き起こし、潮が満ちてくると防潮堤に強烈な波を打ち付けます。砕け散った波しぶきが時に高さ3m近い防潮堤を越えて飛び込んできて、防潮堤のすぐ内側の道路に水たまりを作るほどです。

風に吹き飛ばされた細かい波の飛沫は容赦なく陸(おか)に舞飛んできて、家々や車の金属部分の腐食を早めます。テレビアンテナも見た目に錆びているのがわかるお宅もあります。我が家の外壁も東側の塗装は他の壁面に比べ剥げるのが著しく早いです。

植物も塩気で枯れるものが出てきます。近所の防潮堤の傍の空き地に山桜の木がありますが、この木の海側の葉がすっかり枯れてしまっています。周りの雑草や傍の松の木が元気な緑色を呈しているので、枯れた様子が一層目立ちます。

そんなあまり歓迎できない東風ですが、カレ網の漁師にとってはむしろ好ましい風です。

例年3月はカレイが良く捕れますが4月になるとぱたりと捕れなくなります。これは暖かくてぽかぽかした陽気の後に急に寒気団が入ってきて冷たい北風(北西の風)が吹くと、気温が下がってカレイの動きが鈍くなり水深の浅い場所に上がって来なくなるためとカレ網の漁師は考えています。

しかし東風が吹くとその後の天気の崩れと共に暖かくなり、またカレイが動くようになるみたいです。このため昔からカレ網の漁師の間では

 「春は東風の時に魚が捕れる」

と言い伝えられています。
東風がよく吹いてカレイがたくさん捕れることを期待したいです。




■今週のゴーヘー

○4月19日(金) 晴れ <大きなエイ>
北っぽ(北の風)が吹いていて少し寒い。オクゴオリは大波でゴロンゴロンしているだろうから、今日は梶島に向かった。しかし例年と違って今年の梶島ではカレイがまったく捕れない。今日も吉田の川口付近も含めて9時までに都合8回漁をしたけど、網にかかるのはクラゲばかり。手より小さいカレイがわずかに4枚捕れただけだ。
風が凪いできたので梶島に見切りをつけてオクゴオリに向かった。9時半頃福江に着くとカレ網の船が2ハイいた。SK丸とAW丸だった。朝からオクゴオリでやっていたみたいだが、おそらく朝から大変な波だったはずだ。その中で70歳前後の二人が網をやっていたのだから恐れ入ってしまう。
昼からの2クラ目で大きさがコタツ板くらいのエイがかかった。これだけ大きいと網の袋には入らなくて、しっぽの毒バリ(長さ10cm以上)が網に絡まって上がってきた。いっしょに少しさいエイも上がってきた。刺されないよう慎重に毒バリをはぎ取る。いつもは捨ててしまうエイだけど今日は持って帰って札場(市場)で売ってみた。大小2枚合わせて350円也。安!
今日は一日中ゴロンゴロンしてて足が疲れた。


○4月20日(土) 曇り一時雨 <東風吹き>
今朝は東風が吹いていた。普通なら西浦に行くのだが、アサリ屋さ(アサリ専門の漁師)が休みなので、場があくオクゴオリに向かった。5時頃、オクゴオリにはすでに主なカレ網のメンバーがいた。我々も早速黒部の防波柵の間で網をやる。波で船がゴロンゴロンと揺れて網を入れるのも一苦労。
二クラ目から昨日と同じ場所に行って同じように網をやる。大ガレイやクロダイ、アイナメなどがぽつぽつかかる。30cmくらいのジンメガレイもかかった。珍しいジンメガレイの中でもこれだけの大きさは珍しいと思うが、値段は他のカレイと変わらないから不思議だ。
風は一層強くなり波もより高くなってきた。8時頃SK丸が一足先に帰った。それに続き網を上げた人から帰り始める。ゴーヘー達は網を入れたばかりだったので、それを上げて帰ってきた。仲買に着いた頃、雨が降ってきた。
今日もゴロンゴロンで足の疲れ増幅。


○4月22日(月) 晴れ <2倍、2倍>
4時50分、オクゴオリの黒部に着くとすでに4杯のカレ網がいて、HA丸はガランガランを引っ張って魚をぼって(追って)いた。みんな、出港が早すぎる(苦笑)。少ししてSK丸が無線でOA丸をよばった(呼んだ)。今出港したそうで、OA丸が「はよこな(早く来ないと)、やるとこ、なしんなっちゃうよ(網をやる場所がなくなるよ)」と応えていた(笑)。
皆思い思いの場所で連続して網をやっている。無線でもほとんどしゃべらん(話さない)から、ある程度魚がかかっているのだろう。それに引き替えゴーヘー達は一回おきくらいにカラになるのでカレイもコチもなかなか溜まらない。
SK丸が無線で江比間の方でコチが一度に三本かかった話をしていたので、網を上げた後そちらに行ってみた。あたりにはアサリ屋さの船がたくさんあって、漁をしているカレ網の船が紛れてよくわからないほどだった。こんな混んでる中でよくやるなぁと感心したのだが、ゴーヘー達もやっぱりやるんだよなぁ(笑)。とりあえず船の少ないタアカ(岸側)で網をやる。4クラやってコチが2本きりだった。きっともう捕られた後だったんだなぁ(苦笑)。
夕方、札場(市場)では皆うちよりたくさんのカレイやコチを売っていた。OA丸とHA丸はうちらの倍くらいあったなぁ。感心するやら悔しいやら、、、


○4月23日(火) 晴れ <今頃ナマコ?>
5時5分頃、オクゴオリの黒部に着くと昨日より更に船が増えて6杯のカレ網がすでに網をやっていた。参ったなぁ。とりあえずみんなの中に入って一クラ目をやるとカレイが3枚かかった。
二クラ目からTA丸と共に沈んだタアカ(岸側)の棒杭(防波柵)の傍に行って網をやる。この付近で6クラやったらカレイが大小合わせて15枚捕れたが、コチが1匹もかからない。
4ハイの船が黒部から江比間に向けて網をやりながら移動していった。SK丸がまた一クラでコチを3本捕まえたと無線で話すのを聞いて、TA丸が江比間に向かった。ゴーヘー達はいったん黒部のタアカで1クラやってから江比間に行った。江比間港の東側でどうにかコチを4本捕まえることができた。
オクゴオリから戻ってきてホウベ(家の前の海)で一クラやったら、小さいコチが1匹とナマコが10匹くらいかかった。冬にナマコマンガで引いても一クラで10匹捕れなかったのになぁ(笑)。


○4月24日(水) 曇り <残り者には福がある>
朝8時頃までに、江比間から黒部の西までの間で5クラやって、小さいカレイが2枚捕れただけだった。他の船も皆似たような状態だったが、HA丸はオクゴオリにはいなかった。昨日みんなが大漁だったから今日はあまり捕れないとふんで、最近行ってない西浦に行ったようだ。
あまりに捕れないんで思い切って江比間の更に東、田原町までいった。ここでようやくコチやカレイが捕れ、特にコチが計7本捕れたのが良かった。
他の船もあまりの不漁に辛抱たまらず、三河に走っていったりオクゴオリの西側に行ったりしてたようだった。一人AW丸だけが黒部に残ったところ、潮が変わって上げ潮になってからコチやカレイが大漁となった。ついてたね。
そうそう、帰りがけに黒部の沖2kmくらいのところでスナメリの群れを見かけた。たぶん4頭だったと思う。三河湾でスナメリを見るのは久しぶりだ。


○4月28日(日) 晴れ <アサリ、高値>
アサリかき3日目。もうあまりアサリが採れないから人の出足が鈍い。11時頃待ちきれずに浜に降りた。今日は今まで掘ったことがない西側の岩場で掘ることにした。すると数は多くないけど大きなアサリが出てきた。大きな石がごろごろしていて実に掘りづらいところなので、これまであまり掘る人がいなかったんだろう。他の場所よりも干潮時の水の引きが悪い点も掘られなかった一因かもしれない。とにかく水の中で石やアサリ殻や泥をひっくり返してアサリを捜すとぼつぼつと大きなアサリ(貝長4cm以上)が出てきた。しかし数が増えない。どうあがいてもカゴに1/4程度しか採れない。計ったら5kgだった。はぁ〜、力が抜ける。
仲買ではゴーヘーの持っていったアサリを見るなり「こういうアサリがいいんだよ」と言ってくれた。おお?あれで良かったのか?会計を済ますと3,000円くれた。なんとキロ600円也。余りの高値にビックリした。だって2週間前は少し小さいだけでキロ300円だったからね。どうやらアサリが採れないので値段が上がっているみたい。


○5月2日(木) 曇りのち晴れ <相場は水物>
アサリかきをしていたので、ゴーヘーは一週間ぶりの漁だ。一路梶島を目指して走る。他の船はまたオクゴオリに行っているみたい。
一クラ目は吉田の川口でやった。小さいカレイが3枚。そこから澪スジに沿って沖へおきへとやっていくと、大きいカレイが1枚2枚とかかった。4クラ目がカラだったので梶島の西、長瀬付近に行ってやってみるとラッキーなことに大ゴチが1本かかった。それからこの付近を北へ西へと移動して5クラやったところ、いずれも大ガレイや中小カレイがかかりカラがなくて助かった。
次に干上がり(海上に出ている磯)の東に行ってやってみた。ここはいつもコノカサ(ヒトデ)が多い場所なのだが、今回も始めから多くのコノカサが網について上がってきた。網の後半になったら抜群にたくさんのコノカサがついていて、これを取らないことには次の漁が出来ないのでひたすら取る!何百個あったかわからないコノカサを網からはずしているうちに、手にはめた軍手の親指部分が両手ともすり切れて穴が開いてしまった。握力も無くなってきた。全部取るまでに1時間程度かかって、終わったらお昼の12時を回っていた。南東の風が強く吹いていたのでお弁当を食べながらゆっくり走って帰ってきた。
夕方の札場(市場)では魚の値段が通常の1.5倍くらいして、コチがたった2本(大1小1)で4,700円だった。特にイカが高く、先週は1匹300円だったのが、今日のAW丸は4匹で4,000円だった。もう少し魚があればなぁ(笑)。


■エピローグ

漫然とした日記ではちと読みづらいと思い、今回は日記の日付の後にその日のタイトルを付けてみました。

ゴーヘー通信のサイトでは「今日のカンコ」というコーナーにおいて、捕れた魚や三河湾・伊勢湾の景色や近所の風景などを写真で紹介しています。またバックナンバーのページではこのメルマガの発行部数(前号が216部)の推移もグラフでご紹介しております。メルマガと合わせてご利用ください。


■次回予告

Vol.15 「昔話:チリ津波」 2002年5月18日(土)発行予定

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