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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.15 昔話:チリ津波
                                    2002年5月18日発行
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■昔話:チリ津波

日本時間で昭和35年5月23日朝チリ沖で発生した地震は、最新の研究によるとマグニチュード9.5という20世紀最大の巨大地震でした。その24時間後チリ沖で発生した津波が遠く日本の沿岸を襲い、特に北海道南岸、三陸沿岸、志摩半島付近では甚大な被害が発生したそうです。

当時ゴーヘー父はまだ独身で間もなく結婚を控えた身でした。遠いチリの地で地震と津波が発生したことなど知る由もなく、24日未明は自身の父(ゴーヘーからみて、おじいさん)と兄(同おじさん)の3人でおじいさんの船に乗り、矢梨前にて夜建て(夜の漁)を行っていたそうです。この時の漁ではいつになく大量のクルマエビが網にかかり不審に思いつつも大漁に喜び、他の魚類と一緒に当時矢作川河口付近にあった一色の市場に持っていったそうです。

夜明け頃市場に着きクルマエビを始め捕れた魚を水揚げしていたところ、突然港の水位が急上昇し岸壁に係留されていた船が岸壁に顎をかけるようにして乗ってきたそうです。水揚げ中は船のエンジンをかけたままにしておきますが、当時のエンジンは「電気着火」という始動やゴスタン(後進)が難儀なエンジンだったそうで、突然の出来事に慌ててしまってゴスタンに失敗する船やエンジンが停止してしまう船が相次いだようです。

おじいさんの船はうまくゴスタンして矢作川の流れの中央付近で下流に向かって全速で走ったそうですが、船の位置が変わらないほど上げ潮がきつかったそうです。数分後今度は潮が引き出して下流に向かって急速に流れ始めたので、船を反転させて上流に向かって全速で走ったそうです。これを都合3度繰り返してようやく潮が収まり、あたりを見回すと岸壁に顎をかけたまま傾いている船がいくつもあったそうです。

一方伊勢湾では常滑付近で漁をしていた大井のカレ網の船が速い潮の流れに網を流されてしまい、十数杯の船の網が一つの縄のように絡まってしまいました。しかたなく適当に切り分け持ち帰ってから、各自の網を分けたとのことでした。

今は地震の発生も即座にテレビで報道されますし、津波の恐れがある場合はきちんと警報もでるので、昔より人的被害が小さくて済むでしょう。当面の心配は東海地震なので、わかるかどうか怪しいですが、地震の前兆となるような現象にも気を配り、万一発生した場合の対処の仕方も検討しておきたいです。




■今週のゴーヘー

○5月5日(日) 曇りのち晴れ <クロダイの背びれ>
濃い霧の中、約1ヶ月ぶりに西浦に行った。野間の防波柵付近から奥田までの間のサシアゲ(小型定置網)の周りで網をやる。カラになったのは1度だけで後はコチが1本ずつかかった。先週から西浦にコチが上がり始めたようだ。大ゴチも時々かかるようだが、今日の所は中以下のサイズ。本数も大きさも今ひとつだ。
10時頃みんなが(南に)下がり始めたので我々も小野浦まで下がる。二くりやってコチが4本(うち大ゴチ1)、クロダイが2枚かかった。このクロダイをはずす時足元で元気よく暴れて背びれの先が長靴を突き抜けて右足の親指にちょっと刺さった。長靴のおかげでたいしたこと無かったが、長靴には穴が開いてしまった。恐るべし、クロダイの背びれ。


○5月6日(月) 晴れ <荒波の中>
この季節にしては北西の風が強い。よって少し寒い。こういう日は魚がかからない。風は凪いでくるとの予報なので、朝散々迷った揚げ句日が昇る頃港を出て、クマセで一クラやった。ひどい風と波だ。ハゴ5、小コチ1、小カレイ2。
網を上げると梶島を目指して走り始めた。左舷から横波を受けて大きく傾く。この時いつになく傾いたまま1秒くらい傾きが保持される時が何度かあった。そこへまた左舷から波が来るのでひっくり返るんじゃないかととても怖かった。
西浦へ向かったけど途中から戻ってきて梶島にやってきたHA丸も魚がかからないみたいで、8時半頃オクゴオリを目指して走り去った。我々はもう一クラ吉田の港前でやってカラだった。結局梶島では9時過ぎまで5クラやったけど小さいカレイやコチ、ハゴが数匹しか捕れず、オクゴオリに向かった。
15分後オクゴオリに着き、それから13時まで5クラやる。網にアサリ殻や小さいカニ、海藻などの汚れがたくさん付くため一クラに時間がかかった。大ガレイ3枚、小カレイ4枚だった。
帰りはヤマゼ(南東の風)が強くなってきて波が次第に高くなってきた。そんな中ゴーヘーが舵を取ってきたのだが、日間賀島を通過する際に右手のツキ磯に近づきすぎてしまい、ゴーヘー父の指示で急減速して舵を切った。そこへ漁から戻ってきたコウナゴ船の船団が左から猛進して来て、その迫力に押され一瞬立ち往生してしてしまい、急遽ゴーヘー父に運転を代わった。ドキドキしていたゴーヘーには目もくれず、ゴーヘー父は梶を右に切り荒波の中船を猛烈に加速させてコウナゴ船団を振り切り、正面から迫ってきた高速フェリーとすれ違った。フェリーの引き波を越える時の衝撃がズシンと響いた。


○5月7日(火) 晴れ <下波>
朝冷えて寒かった。セーターを着てくるんだったと後悔しきり。
奥田のビーチランド前から始めるが、小さなコウソガレイが1枚かかっただけ。二クラやった後、空港島南の沖の瀬まで走る。ここで小さなヒラメを捕まえる。大谷の沖で一クラやった後このあたりに見切りをつけ、小野浦に下る。この頃下波が少し出てきた。小野浦でも芳しくないので、更に高峯山(たかみねさん)前まで下る。下波がかなり高くなってきて船が大きく揺れるようになった。ここでも小コチとハゴ2枚だけ。
10時頃伊良湖方面の水平線近くの海の色が青黒くなっていた。OA丸が下りに向けて走ったのを見て、我々も帰ることにした。案の定豊浜前まできたらヤマゼ(南東の風)が強く吹きつけてきた。


○5月8日(水) 曇り <ハゴ>
昨夜は雨だったので今日は行けないかと思っていたが、起きる時刻になったらすっかり止んでいたので出かけ、オクゴオリでいつものように漁をする。朝方時折雨がぱらついたが合羽を着るほどではなかった。8時半頃には霧が濃くなってオクゴオリの山々がほとんど見えなくなった。
今日の漁はコチやカレイの他にクロダイやハゴ(二年生以下のクロダイ)が多かった。ハゴは網に絡まっているのではずすのにとても時間がかかる。しかも今は値も安いからかかっていてもあまり嬉しくない。夕方札場(市場)でハゴをまとめて10数枚売ったら2,000円ちょっとだった。1枚200円しない計算。塩焼きにしたら美味しいんだけどなぁ。


○5月9日(木) 曇り <アオサ>
昨日の夕方から北西の風がふわふわ吹いていたんだけど、今朝になったら結構強く吹いて冷えていた。船着き場でしばらく様子を見ていたら、次第に風が弱まってきたので出かけた。
皆オクゴオリを目指して走っていた。これでは船が多すぎるからたいした漁にならないかもしれない。昨日と同じような場所をやろうとしたのだが、すでに他の船がやっていたりして思うようにできない。そこで田原まで行き二クラやってみた。結果はコチ2(大1)、カレイ2(大1)、コウイカ1。大ゴチが一本捕れたのでラッキーだった。
風が北→西→北→東→南と30分くらいでくるくる変わった。江比間に戻るとヤマゼが強く吹いていた。ここで一クラやったらアオサがびっしりと網についてしまった。網を上げながらとり続けたけど半分くらいで諦めてとにかく上げた。これだけ汚れると次の漁ができない。時刻は11時半でまだ少し早かったけど今日はこれで終わり。


○5月12日(日) 晴れ <腰振りマンガ>
今日のアサリかきは昨日までと場所を変えて鳶が崎側(浦の外、北側)でかいてみた。こちらは潮が干ってもほとんどの場所が水の中なので人が少ない。まだ掘られていなさそうな場所を求めて歩き掘ってみる。マンション下よりも少し大きめのアサリがぽつぽつと出る。後半、腕がやっと届くくらいの水深の場所で大きなアサリがたまっている場所に出会った。ほとんどの場所が水の中だからこういう所もまだ残っているのだなぁ。
アサリかきが終わって一旦船に行ってみると中古の腰振りマンガが船のオモテに置いてあった。ゴーヘー父がどこかで手に入れてきたのだろう。とりあえず仲買にアサリを持っていった後、うちに戻るとゴーヘー父とは入れ違いだった。どうやら腰振りマンガの代金を払いに行ったらしい。
夕方戻ってきてそうな頃合いを見計らって港に行ってみた。戻ってきていた船に乗り腰振りマンガの件をゴーヘー父に聞く。梶島でアサリをかいている漁師に話をして譲ってもらったらしい。ゴーヘー父が若い頃吉田港のとなりの宮崎港に行って漁に使うエサの魚を買っていたらしいのだが、今日話をした漁師が偶然その時の相手船の船長の息子だったそうで、マンガを譲ってくれたばかりでなく、マンガの使い方や修理の仕方・今頃のアサリの生態などをこと細かく教えてくれたそうだ。更に代金を払いに行った際にもう一つ中古マンガを譲ってくれた。多少痛んでいるが補修すればいいことだし、なにより本職ではないので、安く手に入ることが大切だ。腰振りマンガ2つで1万円は、かなり安いと思う。


○5月13日(月) 晴れ <腰振りマンガを使う>
昨日の腰振りマンガを実際に使ってみた。本来はマンガの柄に長い竹竿をつけて伝馬船に乗り、水深2〜5mくらいの水深の場所でアサリをかくマンガなのだが、初めての使用なので水深の浅い場所で自分が海に入って使うことにした。
まず最初に困ったのはマンガを使う場所だ。アサリをかく場所は砂よりも石が多い。石が多いとマンガの歯がうまく海底に食い込まないので役に立たない。腰まで水に浸かった状態でマンガを使えそうな場所を求めてさまよい歩く。どうにかできそうな場所で試してみる。使い方が今ひとつわからんが、見よう見まねでマンガを引き、適当なところでマンガを引き上げてみる。泥や石が入ったマンガはひときわ重く、水面から持ち上げるにはかなり力を使うが、手堀よりはずっと効率がいい。マンガを引いて持ち上げてみると10個〜20個くらいのアサリが見つかる。サイズもアサリとは思えないほど大きいものがたくさん採れた。今日一番多かった時は1度で85個もマンガに入っていた。
途中から赤潮が押し寄せてきて海底がまったく見えなくなった。岩の間のわずかな砂地がまったく見えない。足で探りながら適当に歩いて場所を探していたので、時間ばかりかかって効率が悪くなった。それでも昨日までとは雲泥の差で9kgのアサリをかくことができた。マンガ1個分の元はとれたことになる。


○5月14日(火) 晴れのち曇り <アサリがでない>
昨日の反省を踏まえ今日は発泡スチロールの箱を持ってでかけた。マンガを持ち上げたままアサリを選るのはとても力がいるので、一旦発泡スチロールの箱にあけてからアサリを選ることにした。お腹まで水に浸かるとマンガから箱に移すのも大変なのだが、マンガを抱えたままアサリを選るよりはるかによい。発泡スチロール箱は大いに活躍してくれた。
アサリかき自体は昨日に比べてアサリをかく場所が限られてきたため苦戦した。相変わらず赤潮で海底は見えないので、探り足で砂地を捜して岩場をあちこち放浪する。時間ばかりが過ぎてちっともアサリが溜まらない。採れたアサリも昨日に比べると少し小さめだ。結局潮が満ちるまでやっていってわずか3kgしか採れなかった。手堀とさほど変わらないため、帰りの足取りは極めて重かった。


○5月17日(金) 曇り、強風 <東風>
二日続けて強い東風が吹いている。昨日は雨もひどかった。今日は雨が降らず風だけだ。三河湾から白い波頭がどんどん押し寄せてくる。


■エピローグ

漁が終わって港に戻っても夕方まで網をそろえる作業を連日夕方までやっています。この作業は、網にたくさんの小さいカニや、アオサなどの海草類がついたりするため、これをすべて取って網の破れをきよい(繕い)翌日の準備をすることです。毎日2時間くらい、長い時には4時間くらいかかる作業ですが、1日でもおこたると翌日に響くので怠けることができません。この作業がカレ網のネックなんですね〜。


■次回予告

Vol.16 「麦わら鯛」 2002年6月1日(土)発行予定

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