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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.16 麦わら鯛
                                     2002年6月1日発行
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■麦わら鯛

「麦わら鯛」と聞いて、昨今新聞やテレビ・雑誌などでよく取り上げられている、名前も知らないような魚を日本人になじみ深い名前に変えて販売している風潮を思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれません。南米産のメロが銀ムツと名付けられたりしていていかにも日本人に好かれそうなナイスな(笑)ネーミングですね。

麦わら鯛というのはそのような不思議な魚の呼び名ではありません。

マダイやクロダイ(チヌ)などの鯛は5月から6月にかけて産卵の時期にあたり、どの鯛もお腹が白子や卵でパンパンにふくれています。雄などは手で捕まえるとお尻から白子がピューッと勢いよく飛び出してきたりします。お腹が膨れるにしたがって身の締まりがなくなっていきます。そして産卵を終えた鯛は身が痩せ締まりが無くなり味が落ちます。煮付けにすると鍋から皿に盛りつけする際にたいてい身が崩れてしまいます。刺身にすると身の透明度が落ちて白っぽくなっているのがよくわかります。

この頃丁度麦が色づく頃であり鯛の味が落ちる目安となります。そこから「麦わら鯛」という呼び名がついたようです。別名「落ち鯛」ともいうそうです。

身に締まりが無く味が落ちたといっても鯛は鯛です。手頃な大きさの鯛を1匹丸ごと塩焼きにすれば見た目もちょっと豪華ですし、焼いたことにより身も締まって案外美味しいのです。煮付けも身が柔らかい分少し濃いめの味付けにして身崩れに気をつければ意外にいけます。

夏から翌年の春にかけては値段の高い鯛もこの時期なら安くお手頃な価格で買うことができます。給料日直後、ちょっと豪華な尾頭付きの夕食なんていかがでしょう?




■今週のゴーヘー

○5月18日(土) <雨の朝>
4時半、外は既に薄明るくなっていた。昨夜の天気予報とは裏腹に未明から降り出した雨はまだ降っていた。
港に行くと他のカレ網の船は既に出た後だった。無線で話す様子からゴーヘー達より10分くらい早く出ただけとわかったが、なんだか取り残されたような気がするから不思議だ。すぐに合羽を着て梶島を目指す。
雨は細かくしとしとと降っているので明るくなってもけむって周りがよく見えない。港を出て直に灯台の灯りも見えなくなった。360度乳白色だ。直接梶島を目指して走ることができず、一旦一色前に出てそこからかすかに見える陸を頼りに梶島を目指す。吉田港前ではキス網の船が漁をしていた。
我々は梶島の西側をあちこち移動して漁をやった。二クラ目に中サイズのアオリイカがかかったが、これ以外は相変わらずカラが続き、よくて小カレイ1枚か2枚だ。雨は断続的に降り続き止む気配が見えない。かなり悲しい。
梶島の西側も網をやる場所がなくなってきて、磯の東側に移動した。この東側は例のコノカサ(ヒトデ)が大量発生している地帯だから気が進まない。9時半頃だろうか、心配していたとおりコノカサがたくさん網にかかってきて、はずすのに随分時間がかかった。
ようやく雨も止みコノカサを避けるように網をやっていたら、突然カレイが数枚と大ゴチが1本かかってきた。その次もカレイが10枚くらいとコチが2本かかった。朝からの不漁はここで一発逆転。大漁とまではいかないが充分な漁になった。こういうことがあるから途中で諦めて帰ってはだめなんだよなぁ。


○5月19日(日) <高峯山前>
5時10分、内海の高峯山(たかみねさん)の前で網をやる。少しイワテ(北)で網をやっているカレ網の船が2・3バイあった。ここで2クラやったけど小さなカレイとコチとヒラメが1つずつかかっただけだった。
高峯山前に見切りをつけ、奥田に向かった。奥田から上野間の間にある防波柵のタアカ(岸側)やオキ(沖側)で9クラ網をやった。カラが3回あった他は魚が1匹か2匹ずつかかり、カレイ、コチ、クロダイ、ハゴ(クロダイの子)、コウイカなどで、全部合わせても5・6千円ってとこか。
9クラ目を上げ始めたら雨が降ってきた。他の船が帰って行く中、上げ終わる頃にはびしょ濡れとなり我々も下る。途中内海前でST丸が網を上げていた。それを見てゴーヘー父はもう一クラやることにしたようで、朝網をやった高峯山前でタアカに入っていき網をやる。ここでクロダイが1枚かかった。
雨はいつの間にか止んでいた。弁当を食べた後少し下ってもう一クラやってみると今度は中ゴチが3本もかかった。更に下りもう一クラやってみるとコチが2本かかった。もう余り時間が無いが山海前で更にもう一クラやった。さすがにこの時はカラだったが、帰りがけの高峯山前で思わぬ拾いものをした。


○5月20日(月) <膚寒い>
朝目を覚ますと冷えて寒かった。コンビニの旗もふわふわと風に揺れている。港に行ってみると他のカレ網の船はまだ岸についていた。防波堤の根元のところで集まって話していたんでその輪に加わる。
寒気が南下して来てるようで冷えて寒いし風も強い。こんな日でも出て行ったのはいつものようにST丸とHA丸の2ハイだけだ。バカ網(ボラ漁)のTK丸さえ戻ってきた(バカ網の船はカレ網の船より少し大きいので風が強い日でも漁ができる)。あたりがはっきりと明るくなると海上の波がよく見えるようになった。今日はお休みだ。


○5月22日(水) <アオリイカとハゴ>
5時15分オクゴオリの黒部で最初の一クラ目をやる。中ゴチが1本とハゴ1枚で幸先は良かった。二クラ目で良い型のアオリイカが1つかかる。三クラ目ではアイナメも1本あった。5クラ目で少し小さいがまたアオリイカがかかった。
7クラ目でクロダイとハゴが合わせて14枚かかった。大漁だったけど今の時期のクロダイは安い上に、どれも網に絡まっていてはずすのにとても時間がかかるのであまり嬉しくない。
で、どのくらい安いかというと、今日の夕方札場(市場)でクロダイ(四年生)8枚を売ったら1,200円也!。更にハゴ(二・三年生)を8枚売ったらなんと100円!!!。1枚100円じゃないですよ。「ハゴは持ってくるな」という仲買の意思表示だね。はぁ〜〜〜〜、力が抜けた。アオリイカが2ハイで4,000円したのがせめてもの救い。


○5月23日(木) <逃げた魚は大きい>
朝から内海、上野間、坂井、奥田と網をやって回ったが、大ゴチ1本、カレイ3枚の他はクロダイやハゴ、セイゴなどお金にならないものばかり。行き場がなくなってFH丸と共に小野浦に下ってきた。ここで4クラやってコチを7本(大ゴチ1本)、コウイカ1パイを捕まえた。
ほんとはもう1本大ゴチを捕まえたのだけど、網を引きちぎりそうにして上がってきて、とりこぼさないようにタマ(タモ)ですくおうとしたその瞬間、網を切って逃げていった。逃げた魚は大きいというが、ほんとに今日一番の大きさだったので残念。
このあと高峯山前で二クラやったら、コチが5本(大ゴチ3本)、カレイ2枚、ハゴ2枚捕れた。結局大ゴチが5本になってこれだけで今日の相場で16,000円あった。よかったぁ。


○5月24日(金)
昨夜の天気予報で今日は風が出てくるとのことだった。ゴーヘー父によると潮が変わる頃(今日の場合は干潮時刻以降)風が吹いてくるとのことだったので、それまで漁をして風が出てきたら帰ってくることになった。
梶島で漁をしていたのだが、実際の風の吹き始めは思いの外早く8時半頃だった。とっとと切り上げて帰ってきた。
午後は町主催の健康診断に行った。


○5月25日(土) <テンマでマンガ>
梶島で手に入れた中古マンガに竹の長い柄をつけて、満を持してテンマ(小舟)でアサリ場へ行く。
塔の下(場所の名前)の背の届かない水深の場所でマンガを海に放り込んだ。マンガを引いてみるとどうやら海底や泥の中の石に阻まれて、マンガがうまく海底に食い込まない。場所を少しずつ変えて一時間半くらいがんばってみたけど結果は同じだったため、鳶が崎(場所の名前)に移動した。
少し浅い場所に碇を降ろしたらそこへ丁度ゴーヘー父が漁から帰ってきて、もう少し深い方が砂地でいいというので、どたばたしながら場所を少し沖側へ移動してマンガを海に放り込んだ。マンガを引くと確かに砂地で引きやすいんだけど、さっきは両手で引っ張っていたマンガが今度は片手でも引ける。なぜかマンガの歯が海底に引っかからず、砂地の上をマンガが滑っているみたい。マンガには何も入ってこない。
そこへタアカでアサリをかいていた50歳代の漁師(初めて見る人・しゃべる人)がテンマで近寄ってきてこちらの様子を伺いに来た。ゴーヘーのアサリがまったく採れてないとわかると、ゴーヘーのやり方をあれこれ批評して、自分のアサリを見せつけた後、またタアカに移動してアサリをかきだした。いろいろ親切に教えてくれると思えばありがたいのだが、彼の言い方にもどうも棘がある。なぜ初めてしゃべった人にゴーヘーのやり方を否定されなくてはならないのか?ゴーヘーにはさっぱり理解できない。
夜、フロに入っている時に、ふとマンガが滑る理由を思いついた。深い場所のためマンガが立ち気味になってしまい、マンガの歯が海底に届かなかったんじゃないだろうか?


○5月26日(日) <反省を踏まえて>
昨日の反省を踏まえて鳶が崎の磯の沖の水深2〜3m程度のところでアサリをかいた。今日はちゃんとマンガが海底をかいていたけど、残念なことにアサリが採れない。マンガに入るのは珊瑚の破片のような紫色をした細かい石ばかり。砂地じゃないのかなぁ。


○5月27日(月) <鋼管の間>
柄長マンガ3日目。ちょっと早いけど10時に家を出て、昔海苔網を張っていた鋼管の間でアサリをかくことにした。
鋼管の間に伝馬船を入れて係留しかき始めたのだが、海底の砂地の固さに悪戦苦闘した。マンガの歯が砂地に刺さるけど砂地が締まりすぎていてマンガを引くことができない。マンガを押したり引いたりしてどうにかテンマの傍まで引き寄せて揚げてみると、アサリ殻ばかりで生きたアサリが一つも入っていない。
鋼管の間はどこもこんな状態だけど、鋼管から数十cm沖にマンガを入れるとちゃんと引くことができ、しかも大きなアサリが1度に10数個入ってた。結局この鋼管の沖側をマンガで引き、3時間あまりやってどうにか5kgのアサリをかいた。


○5月28日(火) <なわばり>
昨日の場所より沖側にある鋼管の間でかきだして1時間ぐらいしたら、1パイのちょっと大きい伝馬船が猛烈なスピードで走って近寄ってきました。そして乗っていた漁師がものすごい剣幕で怒鳴ってきた。
自分たちがお金を出して組合から借りている場所にアサリの稚貝をまいて養殖・管理しているのだから、たとえその周辺であっても勝手にアサリかきをしては困る、ということだった。周辺でアサリかきを認めると同じようなことをする漁師が増えて、いつかは自分たちの管理する場所を荒らされてしまうんじゃないかと危惧しており、危険の芽は即座につみ取る姿勢のようだ。もっと端的に言えば「なわばり近くでうろうろするな」ということらしい。
周辺にはアサリの稚貝をまいていないから関係ない・かかせろ、いや関係ある・だめだ、の押し問答をしばらく繰り返した。つい興奮してこちらの伝馬船に乗り込んできたが、船をロープで泊め忘れていたことに気づいてすぐに引き返した(笑)。なわばりに勝手に入ってきた相手に体当たりをして追い返そうとするアユに似てるか?でもアユと言うよりは狸という顔立ちだったなぁ(笑)。同じ船に立ったらゴーヘーの背が思いの外大きいので、案外ビビッタのかもしれない(笑)。
その後少し冷静になって、こちらの船名を見てゴーヘー父の名前がわかると態度を軟化させて、しばらく話し込んだ(笑)。付近のアサリ場を数人で共同管理していること。漁業権と機械堀り許可証?があること。腰マンガは漁業権の無い場所ならどこでも掘れること。稚貝がキロ300円であること。組合に払う年間費用が150万円であること。付近の海底は砂地の層が10cmくらいしかなくそれが締まって堅くなっていること。砂地は季節によって大きく移動してしまうためアサリの生育に適さないこと。何年もかけて海底を掃除して管理してようやく今の状態になったこと。夏の暑さを越せずに毎年多くのアサリが死ぬこと。死ぬリスクを避けて成長しきらないアサリを7月終わりまでにかき終えること。そのため値段が安いこと(キロ300円)。コストとリスクを勘案するとアサリ漁は他の漁師に勧められないこと。などなど。
怒鳴られてから1時間くらい話しただろうか、今日の所はもうアサリが出そうにないし、彼の手前、やめることにして話を切り上げて帰ってきた。そうそう、話していて長柄マンガによるアサリかきは村の海では適さないことがよくわかった。残念だ。


○5月29日(水) <三河湾半周>
4時30分、オクゴオリの沈んだ防波柵の黒部側から網を入れる。1クラ目から3連続カラの後4クラ目にようやくコチが1本、5クラ目に小カレイ2枚と散々な漁だった。6クラ目にクロダイとコチの他に大きなジンメガレイがかかった。17インチディスプレイの画面サイズ(斜め)くらいあるな。
オクゴオリに見切りをつけ梶島に向かった。8時5分、梶島につくとすぐ長瀬から始めて磯の東、桟橋そばなど6クラやったけど、カレイ5枚(大1枚)、コチ1本だけだった。今度は梶島にも見切りをつけ、11時30分大井のイワテ側にある海田に来た。ここで昼飯を挟んで3クラやったらコチを1本、クロダイ+ハゴで10枚程度つかんだ。
今日は三河湾を半周したけど、こんなに走る日は漁がない証拠だ。


○5月30日(木) <トビウオ>
今朝は内海前から漁を始めた。カラはなかったが3クラやって小コチ5本、小カレイ2枚。イワテ(北側)の内海港を回り込んで小野浦側に入る時、船の左の海面に水切りのように波紋が2つ3つ現れた。なんだ?と波紋の行方を注意して見てみるとその先にトビウオがいた。
胸びれをピシッと広げて海面から30cmくらいの高さで滑空していた。昔はよくトビウオがいたとゴーヘー父から聞かされていたが、生きて飛んでいるトビウオを見たのは生まれて初めてだったので、驚くと同時に感動した。滑空距離はほんの30m程度だと思うが滑空している姿はかっこいいぞ!


■エピローグ

サッカーのワールドカップがいよいよ開幕しました。日韓共同開催というワールドカップ史上始めての試み。どちらの国でもそれなりに盛り上がり、ゴーヘーのようなサッカーに疎い人でも中村俊輔の代表落選に落胆したり、中山・秋田の代表入りを喜んだりしています。日本代表が決勝リーグに進めることを祈っています。


■次回予告

Vol.17 「アオリイカ」 2002年6月15日(土)発行予定

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