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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.17 アオリイカ
                                    2002年6月15日発行
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■アオリイカ

5月下旬からボチボチとアオリイカが網にかかるようになります。アオリイカがよく取れる場所はアジモ(アマモ)が生えている場所です。上げ潮と共に浅い場所に上がってきてアジモの中で産卵をすることが目的のようです。この習性を利用して大きなカゴの中に産卵用の竹の枝と、おとりのアオリイカを入れて漁をする地方もあるようです。

アオリイカの長さは概ね30〜50cm程度、胴体の太さは5〜13cm程度で、胴体の上側に前から後ろまで横幅5〜10cm程度の「ひらひら」がついています。海中を漂う際には常にこの「ひらひら」をあおって(波打たせて)います。

身体の色は背中側が濃い赤茶色となったり半透明の白色になったり両方のまだらになったりします。そして薄いブルーグリーンの短い横線がたくさんあります。腹側は概ね白っぽいです。

アオリイカは体内の「フネ」と呼ぶ骨格に相当する部分がコウイカなどに比べて薄くて弱く、身体の下に手を入れて持ち上げたり網にかかって上がってくる時にわずかに身体が曲がったりすると、このフネが曲がり確実に死にます。このため網にかかって上がってきた際には細心の注意を払って船の上に上げて慎重に網の袋から出し静かに速やかにカンコに移します。

カンコの中では勢いよく泳いでカンコの壁にぶつかってフネを痛めることがあります。これを避けるためかならずカゴをカンコの中に入れ、その中にアオリイカを入れておきます。少し窮屈で身動きが取りづらいくらいが丁度いいです。

アオリイカは鯛類とは違い産卵時期でも味が落ちることがなく、身は刺身にするとほんのりと甘くてとても美味しいです。仲買ももちろん高値で買ってくれ、40cm程度の大きさだと安くても2,000円以上、50cmくらいになると5,000円くらいします。今年は豊浜の漁師がアオリイカ専用の網を作って1日で10万円儲けたという話も聞こえてきました。カレ網では1日やってもせいぜい3・4ハイ程度しかつかまりませんが、コチの値段が年間で最安値のこの時期なので1日1度は狙って網をやっています。




■今週のゴーヘー

○5月31日(金)  <広瀬で大漁>
午前5時、上野間(かみのま)で一クラ目をやるもカラだった。小鈴谷(こすがや)でもコチと小カレイ2枚だけだったので、すぐに広瀬(空港島北側)へ向かった。広瀬でカレイが捕れるようになったらしいのだ。
工事中の空港島へのこれまた工事中の橋をくぐると空港島の北側で帆を揚げているカレ網の船が3バイ見えた。彼らの傍に行って下り(南)側から網を入れた。他の船は網を揚げるとそれぞれイワテ(北)へ移動しながら漁をしていくので、ゴーヘー達も網を揚げるとイワテ側に移動した。4ハイの船で交互に場所を替えて網を入れて、昼までの10クラやり、コチが20本、カレイが28枚も捕れた。ほんとに久しぶりの大漁でカンコ1つでは足りず、カンコを2つ抜いて魚を生かした。これも久しぶりだ。


○6月2日(日)  <ゴーヘー父、水槽に転落>
午前3時半出港。西浦に向けて走ること1時間半、5時に広瀬に到着した。すでに7ハイのカレ網の船が皆二クラ目を上げていた。早い船は3繰り目を上げている途中だった。
彼らのイワテ(北)に網を入れて漁を始める。昼までに13クラ、昼から2クラの計15クラやった。大小込みでカレイ39枚、コチ35本、クロダイ4枚、アイナメ、タコ、セイゴがそれぞれ1つずつかかった。昨日に続き2カンコを抜いての大漁だった。
港について魚をカゴに入れて水槽に移した後、売るために大きさごとに揃えるのだが、その際たまたま水槽の上に乗ったゴーヘー父が水槽の中に転落した。足を滑らせた訳じゃなく、丁度電池が切れるように手の動きが止まって前のめりに水槽に浮かんだ魚を入れたカゴの上に転落してきた。カレイを仕分けしていたゴーヘーの目の前での出来事だったので、落ちてくるゴーヘー父の上半身をむんずと捕まえたため胸から下だけ水に浸かるだけで済んだ。余りに突然のことで慌ててしまったが、意識もはっきりしており身体の自由も利き落ちたこと以外普段と変わりなかった。
カゴの中のコチは水槽の中へ放たれてしまい、更にゴーヘー父が落ちたことで水槽の底の砂が舞い上がり濁ってしまったので、隣の水槽に魚の入った他のカゴを移しFH丸に手伝ってもらって逃げたコチをタマ(タモ網)ですくってもらった。冬でなくて良かったが水槽の水は海底の海水をくみ上げて使っているので少し冷たい。すくい終わると魚の仕分けは一旦やめて船着き場に船をつけ、ゴーヘー父をうちに連れ帰って着替えさせた。
病院に行って検査をした方がいいと勧めたが、先日町主催の健康診断をしたばかりなのを言い出し、ゴーヘー父は病院へは行かず仕舞い。頑固なだけが取り柄だからなぁ(困)。


○6月3日(月)  <広瀬以外でも>
午前4時、港を出てすぐの浦前で無線が入った。黄タンポの傍でどうのこうのとしゃべっている。どうやら広瀬で網をやる場所について話しているようだ。今から広瀬に向かっても着くのは1時間半後でもうやり後(あと)ばかりになってしまうため、しかたなく梶島を目指して走る。
梶島では7クラやったけどコチやカレイが数匹取れただけ。8時過ぎに梶島に見切りをつけて田原町に向かう。田原町の一クラめでコチ8本(大1)、カレイ2枚がかかった。すぐ二クラ目をやったけど今度はクロダイ1枚しかかからなかった。そこを諦め次は江比間に向かう。江比間では二クラ目にコチ8本(大3)、ハゴ2枚がかかる大漁があった。実にラッキー。


○6月5日(水)  <危険がいっぱい>
午前4時、とても濃い霧だった。大井からわずか3kmしか離れていない日間賀島の灯りがまったく見えない。無線ではすでに広瀬に到着した人たちが話をしていた。こんな濃い霧の中をよく走っていったものだと感心して聞いていた。ゴーヘー父はとりあえず船を一色方面に向けて途中から梶島に向けて走った。
4時45分、梶島の磯の東で一クラ目をやる。だいぶ少なくなったコノカサ(ヒトデ)と戦いながら、周辺で4クラ網をやった後一色方面に戻り、AH丸やAE丸が漁をやっている一色前の大瀬のモク(アマモなどの藻)のある一帯で漁をやった。ここでアオリイカを4ハイ捕まえた。うち3バイは大きなヤツ。
昼も近づいた頃、網をやっている最中の最後の一反が錘綱(おもりづな)と絡まってしまい、やむなく海に束のまま放り込んだ。残りの少しの網を放り込もうとゴーヘー父のいる前を振り返ると、左手の小指に網が絡まって取れずに窮しているゴーヘー父がいた。急いで後ろの海中に伸びた網を引っ張りクラッチをニュートラルにしたが、惰性で船がゴヘして(前へ進んで)いて網はどんどん後ろに引っ張られた。
とにかく力任せに前にひっぱるとわずかに絡まった網が緩んだようで、ゴーヘー父の手が網からパッと取れてすぐにゴーヘーは網を海に放り込んだ。網は船のあちこちにひっかかって破れて落ちていった。その直後ゴーヘー父がクラッチをゴスタン(後進)--->ゴヘ(前進)と切り替えたため、船が揺れてゴーヘーはバランスを崩して後ろ向きに船の外に倒れかかった。とっさにしゃがんだら船縁(ふなべり)で右の骨盤をしこたま痛打!
なんとかのばした左手でエンジンルーム上のローラー付近に掴まり転落は免れ、すぐ立ち上がると今度は右足の合羽の裾にまだ船の中にあったボンデンの先の旗が絡まり後ろに引っ張られた。必死になって右足を何度か振り払ったら旗がちぎれてボンデンは海の中へ。そこでようやく痛打した骨盤に痛みを感じた。かなり痛かった。
ゴーヘー父の手は無事だったようで、左手小指はこれ以上短くならずに済んだ。その後は何事もなかったかのようにいつものようにガランガランを引き、絡まった網を揚げて揃えて残りの網も揚げ、次の漁をやった。網は大破れのままだった。


○6月6日(木)  <また不漁>
朝ヤマゼ(南東の風)がやや強く波もあった。西浦組はすでに漁場について網をやっているようで、ゴーヘー父は船をオクゴオリに向けて進めた。オクゴオリに着くと風は少し吹いていたけど波はなく、すでにSK丸が網を揚げていた。
黒部で二クラやった後江比間まで走った。そこで三クラやってもたいした漁でなく、更に東の田原町まで行き四クラやった。風はずっと吹いたままで潮も少し速く網に汚れがよく付いた。網にかかる魚は小さなコチやカレイばかりだ。網にかかったコチを船に揚げた瞬間、暴れて網の目から抜け落ちるものさえある。このコチの大きさでは1匹200円程度。ハーッ、ため息しかでない。
また、江比間に戻ってお昼まで漁をやった。午後、マゼ(南風)が強くなった。


○6月7日(金)  <1本100円?>
午前4時15分、梶島の長瀬で一クラ目をやるも小さいコチが1本だけ。去年より明らかに魚がいない。梶島の周りを五クラやって梶島を諦め、三河・一色の生田鼻(いくたのはな)沖にやってきた。いつもの三河組(三河でカレ網漁する漁師達)があちこちで網をやっている。
ここは佐久島・一色・大井を結んだ三角形の中心よりやや東で陸は遠く離れているが、意外と水深が浅い。せいぜい4m程度しかない。ここで昼までに9クラ、昼から一クラやった。カラは2度しかなかったのでコチの数は多かったけど、全体に小さなコチばかりでお金にならない。
夕方札場(市場)でオンヤ(本家)のおじさんと話した時、「小さいコチでも数があればいいかもしれんが、1本100円では20本あっても2,000円にしかならんでなぁ」とゴーヘーがいうと苦笑していた。


○6月10日(月)  <朝寒かった>
出港するとすぐに船のオモテに行って前の方の風陰で仰向けに寝た。漁場に着くまで寝てるつもりだったのだけど、朝の冷え込みが少しきつかったせいで次第に身体が冷えてきて凍えてしまった。寒くてほとんど眠れないまま午前5時に空港島北の広瀬に着いた。網をやると少し身体も暖まったけど、北西の風は冷たくて妙に冷える。しかし朝も8時頃になったら、今度は強い日差しで暑くなってきた(苦笑)。
広瀬ではどこをやってもカラはなかったが、昨日からの冷え込みと先週からみんなが網をやっているせいで、まとまった数のカレイやコチがかからない。特にコチが小さいのが致命的。日も高くなってからようやく大ゴチを2本捕まえたので、水揚げ金額としてはまあまあとなった。


○6月12日(水)  <シャリシャリ>
4時25分、まだ薄暗い中梶島で一クラ目をやる。例年ならもうここで大漁が続いている頃なのだが今年はさっぱりだ。4クラやって梶島に見切りをつけ一色前に向かう。
一色前では大瀬で網をやった。先週網が絡まって危なかった場所だ。この付近一帯は水深3m前後でアジモ(アマモ)が生えているためアオリイカが捕れる場所だ。期待に違わず9時頃には一クラでアオリイカが大小合わせて3バイかかった。がこのうち大きい2ハイがすぐに死んでしまった。死んだアオリイカがカンコの中のカゴの中で白くなってゆらゆら揺れていた。後から捕れてかごに入れたコウイカにちょっとかじられたり、、、。その後も昼までに大小3バイのアオリイカがかかった。
更に網をやろうと付近をゆっくり走っていたら、突然下から「シャリシャリ」という音が聞こえてきて、次の瞬間船のトモ(後ろ側)が断続的に少し下から突き上げられた。潮が干って水深が浅くなっており、ペラが海底の砂に当たったようだ。この時の電探(でんたん、魚群探知機)が示していた水深は「−」m、つまり「1m未満」。ゴーヘー父はすぐに舵を切り船を沖に向けた。船は何度か持ち上がりつつ浅い場所を脱出。
網をやりたい場所が干潮のために浅くなりすぎていて漁ができないので、まだ昼前だったけど今日は諦めて帰ってきた。


■エピローグ

ワールドカップ・サッカーでは日本代表が初めて一次予選を突破。しかも堂々の予選H組1位!ここ数年明るい出来事が少なかっただけに、今回の一次予選突破は心の底から嬉しかったです。決勝トーナメントをどこまで勝ち進めるかわかりませんが、どの試合も精一杯声援を送りたいです。がんばれ!日本代表!

ゴーヘー通信サイトでは「今日のカンコ」にて捕れた魚の写真を随時アップしています。適宜ご利用ください。


■次回予告

Vol.18 「コチ」 2002年6月29日(土)発行予定

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