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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.18 コチ
                                    2002年6月29日発行
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■コチ

コチはこれまでゴーヘー通信に何度も登場してきました。今日のカンコでも写真で何度もご紹介しておりますが、スーパーなどで見かけることもない魚なのでいまいちなじみがなく、よくわからない魚ではないかと思います。

コチをスーパーで見かけない最大の理由は漁獲量であると思います。カレイやクロダイのように数多く捕れる魚ではありませんし、ましてや鰯やサンマのようにトン単位で捕れる魚ではありません。刺し網で細々ととれる絶対量が少ない魚であり、お刺身にするとその身は透き通った白身でとても美味しい魚です。

コチは頭が少し平べったくて口が大きく、身体は紡錘形をしています(今日のカンコ参照)。網からはずす時には親指を口の中に入れ下あごを掴みますが、大ゴチになると顎の力がとても強く親指が痺れるほど強く挟まれることがあります。かなり痛いです。

頭の両側にエラがあり、エラ蓋の先に大変丈夫で鋭利なトゲが2つあります。身に危険が迫った場合は全身を左右に振ってこのトゲで攻撃します。左右に振る力は大変強くトゲがわずかに手に当たっただけでも綺麗に2・3mm切れ、クリーンヒットしようものなら深く長い傷口がぱっくりを口を開けます(T_T)。

このトゲは網にかかった際に最大の効果を発揮します。長さが40cmを越える中ゴチ以上の大きさになると、網の目の大きさより頭の大きさが大きくなり目から抜けずにエラ蓋のトゲ付近で網糸が留まります。網を揚げる際に網が張って力が加わった時に、コチが身体を左右に振ると鋭いトゲで網糸がプツッと切れてコチは網から脱出して行きます。大きなコチ程こうやって逃げていきますから、「逃げた魚は大きい」というのはコチに関しては本当です(T_T)。

網に絡まったコチは逃げられずに上がってきますが、身体の鱗が剥がれ落ちたり背びれが擦れて白くなっていたり、ひどいのは身も背びれも赤く充血していたりするものがあります。これらを「擦れ」と呼び仲買は特に嫌います。擦れは見た目がよくないことはいうまでもないですが、それ以外に擦れは暴れたことの証で、暴れると身が熱を持ったり乳酸が溜まったりして肉質が劣化するらしいのです。

水温が高い夏場は網に絡まったコチは死んでいる場合が多いです。エラ蓋を網糸が押さえてしまい呼吸がし辛いことと高い水温が原因です。コチは酸素不足と高い水温がとても苦手なのです。カンコに入っておとなしくしてても実はすでに死んでいたということは夏場になると毎日発生します。氷を入れて海水を冷やしたり空気を送って酸素を補充したりしてなんとか生かすように工夫します。

網にかかった(または絡まった)中・大ゴチの場合、網目から抜くことができないので前述のように下あごを捕まえて網を一目か二目出刃で切って網目を広げて^^;抜きます。絡まっていた場合は仕方なく盛大に切ります。大抵人の頭が通るぐらいの破れになってしまいます(;_;)。あとできよう(繕う)のが一苦労。

コチはこのように苦労の多い取扱い厳重注意の魚ですが、値段がカレイに比
て高いのでカレ網の漁師にとってはとてもありがたい魚です。




■今週のゴーヘー

○6月14日(金)  <大アオリイカ>
朝のうち広瀬で網をやっていた。6クラやって主に小さいカレイを10枚、コチが4本、ワタリガニが1つ捕れた。少ない(;_;)。8時頃から大谷前のアジモ(アマモ)の中をあちこち網を入れた。10時近くにようやくアオリイカとコウイカが1つずつ捕れた。その後連続3クラ長さ40cm以上の大きなアオリイカが捕れて、全部で5ハイ(大4+中1)になった。
今日は1つも死ぬことなく持ちかえることができ、札場(市場)でも良い値がついた。でもアオリイカが無かったら今日は4,000円ちょっとの水揚げにしかならなかっただろう。


○6月15日(土)  <船を引く>
6月から毎週土曜日は漁がお休みになったので、今日は船を引いて(ドックに揚げて)喫水部分の汚れを落としてペンキを塗る作業をやった。普通は前日の夕方揚げて汚れだけ落としておくのだけど、今日は1日ですべての作業を行うのでちょっと忙しいかった。


○6月16日(日)  <青ガニ>
朝広瀬で2クラやって芳しくなかったのですぐに下って(南下して)苅谷前のアジモ(アマモ)の中で一クラやった。すると掌の長さくらいの青ガニがたくさん網にかかってきた。ワタリガニ以外のガニ(カニ)が網にかかるとツメを折ったり、ガニ自体をたたきつぶして網からはずすことが多いのだけど、この青ガニはツメが付いていれば仲買もそこそこの値段で買ってくれる。それでゴーヘーはがんばってツメ付きのまま網からはずすのだが、ゴーヘー父はすべてツメを折って網からはずしている。ツメを折らずに20個30個とガニをはずすのはとっても面倒だからね。特に今日みたいに50個くらいあるともう考えるだけでも嫌になる。実際この一クラを揚げ終わるまで通常の倍の1時間くらいかかった。
夕方の札場(市場)ではツメあり・無しまざり30個くらいで1,100円だった。青ガニも大きくなればツメ付き1つで100円くらいになるだろなぁ。


○6月17日(月)  <コチ4本>
今日も梶島に行く。6クラやってコチを9本、カレイを7枚捕まえた。コチは中ゴチが2本あったけどカレイが少ないのは痛い。
9時ちょっと前に一色前の大瀬にやってきた。すでにKY丸が漁をしていた。その傍で網をやると小さいカレイが4枚と青ガニ3匹、ワタリガニ1匹がかかった。それから昼まで5クラやってコチを9本(中ゴチ5本)捕まえることができた。
今日の札場(市場)ではKY丸の大ゴチが擦れもなくよいコチだった。これを仲買Aが落札したのだが、仲買Bが実に悔しそうだった。どうしても大ゴチを落札したかったらしい仲買Bは、ゴーヘー達が最後に売った4本のコチに1万円の値を付けてくれた。KY丸のコチより一回り小さかったがこれらも擦れがなくて綺麗だったのが幸いした。


○6月18日(火)  <鵜の鳥>
朝家を出たら雨がポツポツと降ってきた。昨夜の天気予報では今日の午前中は雨で途中で止むとのことだった。寒い季節なら出て行かないが、暖かい、むしろ暑い今の季節はこの程度の雨では休んだりしない。船はオクゴオリを目指して走った。5時頃黒部に到着する頃雨は穏やかに降っていた。気温も低めで肌寒い。合羽を着る。
一クラ目はいきなりカラだった。すぐに東に向けて走り始め田原で二クラ目をやった。ここではクロダイが大漁となり大きなクロダイが6枚もかかった。8月頃ならこれだけで1万5千円近くになるだろう。他にハゴ(小クロダイ)が10数枚。3クラ目を上げている頃雨がひどく降ってきた。風も北っぽ(北より)で少し強めに吹いてきて本格的に悪天候になってきた。
田原で3クラ目もカラだったので江比間に戻ってきた。雨と風の中3クラやった。途中鵜の鳥(海鵜?)が網を揚げている我々の周りで海に潜ったり浮いたりを繰り返していた。網からこぼれるおこぼれを待っていたようだが、カレ網では鵜の鳥が食べるような小魚は網にかからない。ただあまりにねばり強く周りをうろうろしていたので、珍しく網にかかったけどカンコで死んでしまったキスを1つ鵜の鳥に向かって投げると、すぐに拾って食べていた。きっとキス網の船でおこぼれのキスでも獲って食べているんだろなぁ。
この後三河に戻り昼まで漁をやる。雨は途中で止み昼からは晴れてきた。


○6月21日(金)  <仲買フルメンバー>
今日は14クラやって、コチが小を中心に22本(うち中ゴチ4本)、小アオリイカ1つ、本ガニ(ワタリガニ)や青ガニが10数個という少ない水揚げだった。特に殆どのコチが網目から抜けるような小さなコチばかりで疲れが倍増していた。モガニ(イシガニ)もたくさんかかって網の破れが多く、帰港してから網をきよう(繕う)のも大仕事だった。
夕方の札場では珍しく仲買Cがやってきて仲買がフルメンバーの5名になった。するとどうだ、相場が昨日までの1.5倍以上になり、うちの中ゴチ4本には1万円の値が付いた。昨日までの普通の相場で6,000円程度だ。アオリイカをたくさん捕まえてきたHA丸はイカだけで2万5千以上あった模様。ついてるねぇ。


○6月23日(日)  <仲買また3人へ>
一昨日の相場もあって今日は皆いつも以上に意気込んで漁に出ていた模様。特にアオリイカを狙ってやったがゴーヘー達は不発。TA丸は5ハイ捕まえたそうだ。ST丸もつか捕まえたようだが、彼らは札場で売らずに隣村の仲買に相対で直接売ってくるので実態はわからない。
今日は15クラやったけど、中ゴチが1本しか捕れずあとは小さなコチばかり15本程度。カレイが14・5枚あったのでどうにか15,000円程度の水揚げになった。仲買は3人しか来なかった。


○6月26日(水)  <よい水揚げ>
家を出た時から霧雨模様だった。霧の時と同様で景色が霞んでみえない。時間が4時と遅いので西浦には行かず梶島へ向かった。
以前にも書いたが例年この時期は梶島でコチやカレイがたくさん捕れるのだが、今年は未だにサッパリ捕れない。今日もやはりだめだった。小さいカレイがいつもより捕れたけど、仲買の人数が少ない今年は値段も安い。どうにかコチが3セイロ(トロ箱)分、カレイが2セイロ分捕れただけだ。
夕方の札場では先日に続き仲買Cがやってきた。今月やっと2度目だ。でもそのおかげで相場がよくなり2万円に届かないと思っていた水揚げが3万円近くあった。OA丸はコチをたくさん、HA丸はたくさんのクロダイと数匹のアオリイカを捕まえてきたので、どちらも4万円以上の水揚げがあった模様。やっぱり西浦に行かなくちゃだめか?


■エピローグ

毎日はっきりしない天気が多くすっかり梅雨の様相を呈しています。昨年の空梅雨とは大違いですが、雨がたくさん降っているというわけでもなさそうです。愛知県の東三河地区では宇連ダムの貯水率が48%となり5%節水を開始しました。このまま雨の少ない梅雨が続くと8月に厳しい節水を余儀なくされるようです。

雨が待ち遠しいわけですが、この週末は低気圧が東海地方にも近づき、温暖前線が活発になってまとまった雨が期待できそうです。ダムの貯水率が回復して節水が解除されるといいですね。


■次回予告

Vol.19 「梅雨」 2002年7月13日(土)発行予定

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