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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.21 網の破れ
                                    2002年8月10日発行
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■網の破れ

毎日漁から戻って魚を水槽に揚げた後、札場の時間(魚を売る時間)を除き、夕方まで網をきよって(繕って)います。早くて17時、遅い時は18時過ぎまでやっています。

網は毎日毎日破れます。網に絡まったコチをはずす時に出刃で切ったり、海底のツキ磯に引っかけたり、ゴウナ(ヤドカリ)をはずす時にすり切れたりなど理由は様々ですが、破れの最大の原因はガニ(カニ)です。

カレ網にかかるガニはいくつもありますが、網を破るガニは限られます。最もよく破るガニはモガニ(イシガニ)です。この時期三河湾ではモガニが至る所にいて、網2・3mに1匹程度かかってきます。梶島は特に酷くて網1mに2・3匹ずつかかってきます。こうなると網はもうボロボロです。

さて、ガニはどうやって網を破るのか?あのツメで挟んで破るのか?

ゴーヘー父曰く、「噛んで破る」んだそうです。

ツメは指などを挟まれると大変痛いですが網の糸のような細いものには絡まるだけで無力のようです。甲羅の周辺のギザギザもよく切れそうですが、それは網に絡まったガニを人が手ではずす時にすり切れるだけで、ガニが自分で上手に切るようには思えません。はやり本命は噛んで破る、のようです。

網にかかったガニはもがくうちに網糸が口にも絡まるのでしょう。ツメで口に運ぶガニもいるかもしれません。後は噛み切るだけです。絡まっては噛み切り、絡まっては噛み切りを繰り返し、網を揚げる10分程度の間でゲンコツぐらいの穴はすぐにできます。酷いのになると人の頭くらいの穴になっていたり、絡まった網を噛み切るので一目か二目の破れが50cm四方にいくつも開いていたりします。

こんな具合ですからたくさんのガニがかかると網きよいにとても時間がかかります。ガニの特に多い梶島で一日漁をすると、網1反きようのに2時間以上かかります。通常7・8反の網を使うので今日中にきよい終わりません。きよえない網は別な網と交換するしかありません。きよい残した網は漁が休みの日(土曜日など)にまとめてきようことになります。実質休みの日がないです(T_T)。

夏場の梶島は結構カレイやコチが捕れますが、少々カレイやコチが捕れたぐらいでは、ゴーヘー父以外誰も好んで漁をしたがらないわけです。




■今週のゴーヘー

○7月28日(日)  <ラストスパート!>
朝一の梶島はハゴが3枚だけで大量のガゼ(ウニ)やゴウナ(ヤドカリ)がかかった網を揃えながら(汚れを取りすぐに使えるように整える)三河に走ってきた。生田鼻沖(いくたのはなおき)という赤タンポ(赤い航路標識)が浮かんでいる場所まで来た。大井・佐久島・一色のほぼ中間点だ。この赤タンポの北側と東側を重点的にやった。ここもガゼやゴウナが多くて大変なのだが、カレイが一クラで6〜12枚くらいずつかかるので、がんばってガゼをつぶしゴウナをはずして次々に網をやった。イワテ(北側)にAH丸が一パイ居るだけだったので、好きな場所に自由に網を入れることが出来たのもラッキー。
その結果カレイだけで70枚くらい捕まえた。コチも12・3本捕まえた(3本死亡)。水揚げ高は4万5千円弱。まさにラストスパート!


○7月29日(月)  <予想通り>
今朝は迷わず生田鼻沖へ向かった。4時35分網を入れる。明るくなってきて回りをよく見回すとカレ網の船が1パイ、2ハイと目に付いた。ゴーヘー達が網を揚げ始める頃にはカレ網の船は全部で9ハイになっていた。ゴーヘー達が昨日1日がかりでやったクラ数とほぼ同じだ。これではもう網をやる場所が限られる。メルマガのエピローグで書いたとおりになってしまった。
それでも2時間粘って5クラやった。カレイが1枚か2枚かかる他はゴウナとガゼばかり。多い時には1クラで100個くらいゴウナがかかる。2人でなかったらどのくらい時間がかかるだろうか、、、とにかくここにいてはカレイもコチもかからないので、場所を梶島へ移す。ここでもゴウナやガゼが多かったけど、今日は珍しくコチが13本かかり、大ゴチ・中ゴチも2本ずつあったためどうにか売り物が捕れた。
札場(市場)では3番売りで最後だったため大ゴチ・中ゴチもちょっと冴えない値段だった。一番売りの人の大ゴチは1本5,000円と飛び抜けた値段もあったので、余計残念に感じてしまう。まっ、2万5千円以上の水揚げがあったからよしとしよう。


○7月30日(火)  <大台>
朝、東の内緒の場所(笑)へ走って2クラやり、大ガレイを中心に13枚捕まえた後、梶島に戻ってきた。
いつものようにあちこちやってみるとそれなりに形がある(一クラで魚が数匹捕れる)。特に桟橋付近では一クラでカレイ14枚、コチ12本もかかった。カンコは2つ目を抜いてコチをそちらに移す。実に順調! 昼までやってコチが22本(大3本)、カレイも29枚捕れた。
しかし、網に絡まって揚がってくるコチは元気のないものが多く半ば死んでいるものもあるため、それらは即氷入りの発泡スチロール箱へ入れる。毎年のことながら実にもったいない。
今日の水揚げは久しぶりに5万円の大台に乗った。まったくもって順調だ。
夜は氷で締めたセイゴとコチを持って帰ってお刺身にして食べた。コチは少し身が柔らかくなりすぎてたけどセイゴは弾力のある歯ごたえで実に美味しかった。


○7月31日(水)  <大台再び、しかし、、>
朝5時に梶島へ行くとST丸が一クラ目を上げていた。見ているとコチやカレイがよくかかってくる。我々もST丸のすぐそばに網を入れると、カレイが9枚、小コチが1本かかった。二クラ目はゴウナやガニが多い長瀬に網を入れた。するとカレイ20枚、コチ20本、ヒラメ、アイナメ2本の大漁だった! すぐに二カンコ目のヒ(栓)を抜いてコチをすべてこちらに移す(しかし後で裏目に出る)。網に絡まったコチがすでに4本ダメになっていてこちらもすぐに氷で締めた。この二クラ目は上げ終わるまでに1時間かかった。
続けて付近を2クラ、東の桟橋のそばを1クラ、島の西側に戻ってきて一クラやると全部でカレイが16枚、コチが4本かかった。両ガンコ共ちょっと弱ってきたカレイやコチが目立つ。まだ10時だったけど漁を止めて帰ってきた。
札場(市場)でコチを水槽に揚げて驚いた。カンコにコチを入れすぎていてたくさんのコチが死んでいた。すでに氷で締めたものと合わせて全部で15本!大ゴチも1本死んでいた。夕方売る時までに更に中ゴチ1本、小コチ1本が死んだ。カレイも小さいものが2枚死んでいた。全部氷で締めたので「締めゴチ」として売ったけど、わずか2,900円だった。これらの死んだコチがすべて生きていたら今日の相場で1万8千円くらいしたはず。特に大ゴチと中ゴチが死んでいたのが悔やまれる。一気に力が抜けた。
今日の水揚げはまた5万の大台に乗ったのだけど、妙に嬉しくなかった。


○8月1日(木)  <コチがまた死ぬ>
朝梶島へ行くと今日もST丸が網を揚げていた。しかたなく水かぶり(満潮時に水没する岩)の傍で一クラ目をやるとカレイが12枚、コチが7本かかった。2クラ目は長瀬に網をやった。カレイが8枚とハゴ1枚だった。いつのまにかOA丸がST丸の傍に来ていた。どこから来たんだ?
3クラ目は島の西側の砂を入れた場所でカレイ8枚、大ゴチ2本。4クラ目は水かぶりの傍でカレイ5枚、大ゴチ2本。両ガンコを抜き魚を分ける。その頃にはTA丸も来ており梶島にカレ網の船4ハイと随分賑わった(苦笑)。
5クラ目は長瀬のまだ誰も網を入れてない場所に網を入れた。するとカレイ19枚、コチ14本、アイナメ2本の大漁だった。次々とカンコにカレイやコチを放り込んでいたらコチが随分弱っていて、西風で波が少し高い中を慌てて帰ってきた。
港についてすぐに水槽に魚を移していると流し網漁をやっている漁師が様子を見に来た。彼が「またすぐに行かなあかんなぁ」とやや皮肉混じりにいうのを聞いてゴーヘー父は「まぁ船ばっかで、あかすか(だめだ)」と答えていたけど、水槽へ魚を入れ終わると再び船を梶島に向けた(苦笑)。もちろん全速!(どうも言ってることとやってることが違う気がする、笑)。
1時間後梶島に戻っても網のやり後ばかりで網をやる場所に困った。西風がいよいよ強くなり網を揚げた船から帰っていく。ゴーヘー達はこの後3クラやったけど、カレイが7枚捕れただけだった。
夕方までに大ゴチを含めてまた10本近くコチが死んだ。大台には少し届かなかった。


○8月2日(金)  <船が多い!>
朝4時半、梶島へ行くと船の灯りが4つもあり驚く。長瀬で陣取っていたのは例によってST丸だった。毎年梶島で大漁になると朝3時から場所取りしていたHA丸が今年はなぜか来ない。西浦でよっぽど大漁なのか?
とにかく一クラ目を水かぶりの傍でやるとカレイが4枚しかかからない。その頃ST丸はまだ一クラ目を半分までしか網揚げしていない。どうやら大漁だったようなので様子を見に行く。ゴーヘー父が「満船か?」と聞くとカンコからカレイを取りだして見せ「小せいやつばっかだがぁ」と答えていたけど、言い終わらないうちに彼のオヤジが揚げている網に大ガレイがかかってきた。「今初めてだが」と言い訳してたけど、そんなはずはないよね(笑)。間違いなく両ガンコを抜く大漁だ。
このST丸を囲むようにゴーヘー達・OA丸・FH丸・TA丸が二クラ目の網をやった。この時ゴーヘー達はカレイ24枚、小コチ14本、ヒラメ1枚、ハゴ1匹、ワガ1匹の大漁だった。
網を揚げたST丸は1時間近くかかって、網にかかったゴウナやガニをはずして網を揃え、その後一色方面を目指して走り去った。場が狭い割りに船が多くなった長瀬より場の広い所へ行くのは大漁ゆえの余裕だね。
その後西風が次第に強く吹きつけてきて10時半頃までには皆帰っていった。ゴーヘー達は最後にもう一度長瀬で網をやると風と波でいつもより網が引きずられてゴウナとガニが猛烈に網にかかった。はぁーッ。
水揚げは3万円ちょっとだった。やはり船が多すぎたようだ。


○8月4日(日)  <梶島は終わった>
4時50分、梶島へ行くとまた長瀬でST丸が網を揚げていた。しかたなくゴーヘー達は水かぶりのそばで一クラ目をやり、それが終わってもST丸はまだ網を揚げていたのでそばに行き様子を聞くと、今朝はサッパリダメとのこと。大量のゴウナとガニに悪戦苦闘していた。ST丸の言葉を確認する意味で、念のため長瀬の東側に網を入れてみた。やはりゴウナとガニばかりだった(苦笑)。
網を揚げ終わったST丸は40分ぐらいかかって網を揃えた後一色方面に走り去った。
残念ながら梶島の大漁は終わったようだ。


○8月5日(月)  <1/10>
朝珍しく海田で網をやった。3クラやったけど小コチ2本、小カレイ2枚、ハゴ1枚だった。
無線では一色前で漁をしている人たちの声が聞こえていた。時刻は6時、ちょっと出遅れたけどゴーヘー達もそちらに向かい漁をやった。しかしここでもカレイは小さいものが一クラで1枚か2枚かかる程度。ゴウナとガニは嫌と言うほどよくかかるのに、、、結局10時半まで7クラやったけどカレイが10枚かかっただけだった。
で、このあと梶島へ走った。水かぶりのそばを二クラやってカレイが4枚、小コチが1本。梶島はやっぱり終わったんだな。
港に戻って網をきよって(繕って)いると、西浦に行ったHA丸、FH丸、TA丸が両ガンコを抜いていて大漁で戻ってきた。こりゃ明日から西浦が賑わいそうだ(笑)。
今日の水揚げは6,000円。1週間前と比べてざっと10分の一の水揚げ高だ、はぁ〜。


○8月6日(火)  <久しぶりの西浦>
昨年大漁だった大野に直行し一クラやってみた。が、今回はさっぱり。下りにいたHA丸も大野に上がってきてツキ磯の西側で網をやり、ゴーヘー達は2クラ目をツキ磯の東側でやったけどカラだったので、すぐに蒲池(かばいけ)まで下った。網をやる場所を慎重に選んでいると、HA丸が猛烈な勢いで下ってきた。
それから昼までずっとこの付近で漁をした。コチは小さいモノが中心でカレイは小〜大までいろいろだった。いずれにしても毎クラ、カレイなら4・5枚、コチなら2・3本ずつかかっておりあわただしくも楽しかった。
夕方の札場では仲買A、仲買Bの2人の仲買人が買いに来なかったため、値段が一セイロ(トロ箱)あたりいつもより1,000円くらい安かった。仲買Bが買いに来ないのは初めて見た。


○8月7日(水)  <網の破れ、甚だし>
今日も西浦を目指して走っていたのだが、途中で船を反転しそのまま東へ向かった。意外に波が高かったせいだ。
11時半頃まで梶島で漁をしたが、例によってゴウナとモガニがたくさんかかり、網はびりびりになってしまった。たぶん今年一番の破れかもしれない。昼には帰港して昼食後すぐに網をきよい(繕い)始めたのだが、札場が始まる16時になっても二人ともそれぞれ1把(1反)の網をきようことができない。
網は全部で7把あるから残り5把は全くの手つかず。とにかく魚がよくかかる部分は別な網に交換して明日に備え、破れた網は家に持って帰ってきた。3時間座りっぱなしでお尻も痛い。


○8月8日(木)  <強烈なマゼ>
今日はマゼ(南風)がやや強く吹く中、西浦の蒲池で漁をした。朝は7ハイいたカレ網の船も三々五々下っていき、いつの間にかゴーヘー達1パイだけとなっていた。
11時頃風がひとしきり強くなってきたので、船を下りに向けて走り始めた時はもう帰るのかと思った。しかし、ゴーヘー父は船を沖の瀬(空港島南)で止め、すでに4ハイの船が漁をしている中でゴーヘー達も一クラやり、小コチばかり8本捕まえた。その間に風がかなり強くなっていた。
網を揚げ終わるとすぐに下りに向けて走り出した。天幕を張ったままではとうてい走ることが出来ず野間前で強風と波に煽られながら天幕をはずした。そこから下り側ではマゼによる南からの波が急に高くなり、波高が1.5mくらいでその間隔も狭く船が上下に激しく揺られた。昨年・一昨年も季節は違うけどこのようなマゼと波があったが、今日はそれを上回って一番激しかった。
以前横波で船が傾きペラが空転することがあったが、今日は正面からの波で船がシーソーのようにバタンバタンとなりペラが空転することが何度もあった。途中船のオモテに置いていたガランガランが転がるのでそれをロープで固定するためにゴーヘー父がオモテに行った。船はすぐに波に対して横向きになりかけあわててゴーヘーが梶を取り船を波に対して立てた。今日の波を横から受けたら確実に転覆する。
野間灯台から明神様まではいつもは30分くらいだけど、今日は1時間以上かかって走った。明神様で左に曲がる際に波を横から受けることになるのでずっと心配だった。実際曲がる時は、どうして転覆しないんだろう?と思うほど傾いた。
こんな波の中豊浜前で底引き網漁の船が操業していた。大きな船はへっちゃらなんだなぁ。


■エピローグ

毎日暑いですが皆さんいかがお過ごしでしょうか?
先月の水揚げは最後の4日間よい水揚げが続きどうにか一息つきましたが、昨年と比べるとやや見劣りする点が残念でした。1パイだけで漁ができたらなぁとしみじみ思いました。

8月は今のところ昨年より良いです。この2週間毎日良い漁日和だったためですが、あまりに順調だったためこの後お盆後は風が強くなって漁に出られない日が続くんじゃないかと、カレ網の漁師の中の年寄り達が心配しています。

はたして如何に?


■次回予告

Vol.22 「コチの刺身」 2002年8月24日(土)発行予定

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