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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.22 コチの刺身
                                    2002年8月24日発行
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■コチの刺身

ゴーヘー通信Vol.18でコチについて書いていますが、その「味」については何も書いていません。スーパーやお魚屋さんでコチを見かけることはたぶん無いと思うので、ゴーヘー通信では良く登場していても皆さんにとってコチは謎の魚だと思います(笑)。

コチは生きた状態でないと商品価値がまったくありません。生きていても身体の色が悪いと「弱っていてもうすぐ死ぬ」と判断され買ってもらえません。札場で売る際にも死んだコチは買う仲買は限られており、その買値も大ゴチでさえ1本100円という値段で、つまりは「持ってくるな」という仲買の意思表示なのです。

死んだコチはその身が白く柔らかくなり歯ごたえも無く刺身には不向きです。さりとて煮魚にすると身がパサパサして口に入れても唾液がコチの身に吸われてしまうような感じでまったく美味しくないです。仲買も買ってくれないわけです。

ところが生きたコチを絞めて刺身すると、透き通ったようなその身は切り口が光を跳ね返すような弾力があり、歯ごたえももっちり・しっかりしています。薄造りにして食べると堪えられないうまさで、白身の魚の刺身としてはフグ・マダイなどとならび最高級に属するものだと思います。しかも刺身として使える部位は腹より後ろ、つまり肛門から後ろのしっぽに相当する部分なので、1本のコチの半分程度しか刺身に使えないため、どうしても値段が高くなるわけです。

そんな高級品のコチをおいそれと食べるわけにはいかないので、たとえ漁師といえどもなかなか口にできません。しかし夏場はそのチャンスが巡ってきます。捕れた時点で元気のないコチはカンコに入れて生かしておいてもほぼ確実に死んでしまうので、早々に氷を入れた発泡スチロール箱の中に入れておきます。もちろん元気なコチでないのでおいしさは幾分スポイルされていますが、まだ死んではいないので刺身にしても充分食べられます。包丁を入れた時の感触が良いものを選んで刺身すれば更にいいです。

まぁ、刺身にするコチを選べるほど死ぬコチが多いという点が一番残念なのですが、こればかりはどうすることもできないので死ぬコチを早めに見分けて氷で絞めておけば、後の楽しみとなります。

暑すぎて早めに帰港して昼飯を家で食べる時などに、コチの刺身が食卓に乗ることもあります。漁師ならではの贅沢と言えますね。




■今週のゴーヘー

○8月12日(月)  <盆休み前>
今日の水揚げはSK丸とAW丸の兄弟だけが少し多めだった他は皆少なかった。
で、こんな日に限って札場(市場)の相場がとんでもない高値だった。昨日は1本300〜400円だった小コチが今日は約3倍の1本1,000円! 小コチを一せいろ(10本前後)も売るとそれだけで1万円もした。中ゴチなんて昨日は1本1,000円だったけど、今日は1本3,000〜4,000円!お盆休みで3連休の前日だから値が飛ぶのは例年のことなんだけど、そんなことすっかり忘れてた。仮に覚えていたとしても魚を捕まえてこないことにはどうにもならない(苦笑)。

そうそう、SK丸は約6万円の水揚げ高で、AW丸は約4万円の水揚げ高だったので、兄弟2人で10万円以上の水揚げだった。SK丸は魚売ってる間中、両手を腰に当てて身体を左右に回す、彼がたくさん魚を捕まえてきた時は必ずするポーズを取っていた。得意げな顔が、ああ、小憎らしい(笑)。


○8月16日(金)  <盆休み明け>
盆休み明けで明日もまた休みなので本来は今日もお休みで構わないなのだが、こういう日に漁をすれば相場がよくて儲かるのではないかと考え皆で相談の結果、出漁することに決まった。もちろん魚を捕まえてこないことには話にならない。
朝梶島の長瀬で漁をするも小さいギマ(カワハギ)が20個ほど捕れただけだった。桟橋付近で二クリやっても合わせて小コチが3本、本ガニ(ワタリガニ)が10個程度。実に心許ない。
しかたなく田原町まで行っての一クリ目。小カレイが10枚、コチが17本(大2)、ハゴ7枚の大漁だった。すでに死にかけのコチが1本あるが、こんな日に限って氷を持っていない。すぐにでも一旦帰港して魚を置いてきたいくらいだったが、ゴーヘー父は更に漁を続け、連続4クリやって小カレイが6枚、コチが4本程度だった。コチは更に1本死にかけていた。なんだか捕まえた分だけ死んでいくような気がする。
10時半に黒部にやってきてクロダイを狙うと見事に大当たり。ハゴが中心だったけど30枚くらい捕まえた。ハゴの背びれで右手親指の先をついたりしながら1時間ほどかかって網を揚げ終わるとすぐに帰港した。港に戻って魚を水槽に移す時コチが更に2本死にかけていた。カレイも堅くなっているヤツが1枚あった。
夕方の札場の相場はまた高値から始まった。しかし今日は1番売りが終わる頃には早くも値が下がり始め、ゴーヘー達2番売りの時には通常の1.5〜2倍程度だった。盆休み前の相場だったらコチだけでも4万円程度だったろうね。残念だけど相場だから仕方がない。幸いクロダイ・ハゴが大漁だったので金額的には満足できる水準だった。
そうそう、魚売ってる時にゴーヘーは滑りやすい場所で滑って転んでしまった。足元においたカゴを避けて左に曲がろうとした瞬間軸足の左足が滑り、左後ろに尻餅を付き更に尻も滑り背中の左側から落ちてた。肺から空気が強制的に押し出されて息苦しかったけど、受け身がうまく捕れてたせいか捻挫・打ち身も含めてどこも怪我が無く、服がびしょびしょになった程度だった。身体に無理な力が入ってるかもしれないので明日にはどこか筋肉痛があるかもしれないけどね。


○8月18日(日)  <台風近し>
昨夜は風が強かった。今朝3時前頃が一番強かったみたいだが、ゴーヘーが起きた3時20分頃にはすっかり収まっていた(^^;)。今日はお休みだろうとたかを括って夜更かししてたんで、かなり眠い(苦笑)。
台風が近づいており今日は下波がえらい(うねりが大きい)と予想して、下波の比較的小さいオクゴオリで漁をした。三河湾には台風を避けて避難してきたタンカーがたくさん停泊しており、帰り際に数えたら60隻以上あった。
今日は主にクロダイを狙っての漁だった。しかしゴーヘー達の期待とは裏腹にカラや1・2匹程度ばかりだった。黒部と田原町でハゴが5・6枚捕れた時がそれぞれ1クリずつあったので、どうにか売り物は確保できた。
帰りには下波がかなり高くなっていて、一番高い時は1.5m程度で波のピーク間が20m近くあって驚いた。


○8月22日(木)  <三日ぶりの出漁>
台風の影響で月・火・水の3日間がお休みになったので今日は3日ぶりの出漁だった。
昨夜の天気予報で今日の午前中はまだ風が強いとの予報だったので、起床は朝4時。外はまだ暗く随分日の出が遅くなったと感じる。
浦口(大井漁港入り口)を出ると北西の風と共に波が少し高めだった。西浦に行った人たちはこの波の中を行ったのだろうか、、、ゴーヘー父は船を梶島へ向けてゆっくりと走り出した。生田鼻沖(いくたのはなおき)付近は一番波が高くてそこを過ぎたら次第に収まってきたので、ゴーヘー父は船の速度を上げて梶島へ急いだ。
梶島ではいつものように水かぶりのそばで一クリ目をやり、夜明けと共にこの網を揚げ始めた。小さいカレイと本ガニが2つかかっていただけだった。このあと二クリやってから吉田港前で一クリやり、思い切って東に走って行き一クリやっただけで、また梶島に戻ってきた。桟橋前、長瀬とやるも結局朝の一クリ目から数えてカレイ4枚、小コチ5本、ハゴ数枚、ガニ10匹程度という散々な結果だった。
で、10時50分に生田鼻沖で一クリ、更に11時25分には大井の海田にやってきて3クリやり小コチ3本、ハゴ2枚、クロダイ1枚、ガニ数匹を捕まえた。カンコは少しだけ賑わってきたけど、小さいハゴばかりだった。
13時近くにイワテに走りながら遅い昼飯を食べ、13時15分布土(ふっと)で一クリやり、クロダイ3枚、ハゴ5枚を捕まえた。ハゴではあまり値段が良くないので、クロダイを捕まえることができてよかったと思う。もう帰るかと思ったら河和(こうわ)の川口でもう一クリやった。しかしカラで残念だった。
今日はクロダイとハゴ、それにガニのおかげでまあまあの水揚げ高になった。


■エピローグ

前号のエピローグで「お盆後は風が強くなって漁に出られない日が続くんじゃないかと、カレ網の漁師の中の年寄り達が心配しています」と書きましたが、見事に年寄り達の予想が当たりました。驚き・桃の木です(苦笑)。

お盆明けで漁に出た日は16・18・22日のわずか3日しかありません。週休4日状態では働らいてんだか、遊んでんだかよくわかりませんが、昨年の8月は19日間漁に出たので、今年もきっとその程度でしょう。水揚げ高も去年並を予想しています。

あまり漁に出ていないので書くことも少ないです。発行号によっては文字数が極端に違うゴーヘー通信でした(笑)。


■次回予告

Vol.23 「ペラが曲がる」 2002年9月7日(土)発行予定

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