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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.26 カレ網
                                   2002年10月19日発行
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■カレ網

一口にカレ網と言っても話の文脈上いくつかあります。
 1.網そのもの
 2.カレ網漁
 3.カレ網漁をする漁師
 4.カレ網漁をする船
わかりやすくするため適宜「カレ網の連中」とか「カレ網の船」などと補うこともあります。3と4については特別説明が必要なものではないので、1と2について説明をします。

まず、今回は「網」について。

カレ網の網は刺し網と呼ばれる種類に属します。

刺し網とは魚が網目に体を刺して抜けられなくなってつかまることから、こう呼ばれているようです。網目は狙う魚の種類や大きさに応じていろいろな種類がありますが、テグス(釣りで使う半透明な化繊糸)で作られたモノが多く、劣化が進みやすく補修もしづらいため使い捨てが多いようです。基本的には1枚網で上にアバ(棒状の浮き)、下にヤ(鉛製の錘)をつけて使います。アバとヤの仕組みにより、水中では網が立つことになります。このため刺し網は「建網」(たてあみ)とも呼ばれます。魚は網目に刺さるため魚体が傷つきやすい傾向があります。

一方カレ網は複数の網を合わせた「合わせ網」でカレ網漁師は「3枚網」と呼んでいます。網色は赤に近い橙色です。具体的には、目の小さい「中網」(なかあみ)を目の大きい網「大目」(おおめ)2枚でサンドイッチした構造になっています。中網の目の大きさは2寸前後で大目はその4倍です。海中では大目の網目から中網が抜け出て袋状となり、魚はこの袋の中に入ってつかまります。大目でサンドイッチされているため、裏表がなくどちらから魚がやってきても袋に入る仕組みになっています。もちろん中網の網目に刺さってつかまる魚もあるため、1枚網に比べてたくさんの種類の魚が網にかかりますが、刺し網の中では特別構造が複雑な網と言えます。

この複雑さのため、袋の中に入った魚がもがいて暴れると、中網と大目がきりもみに巻いてしまい魚を取り出すのに難儀することが多いです。クロダイやコチ・ガニはこの傾向が強く、特にコチは魚体が弱く「ゴーヘー通信 Vol.18 コチ」でも説明しているとおり、すぐに網糸で擦れて鱗が取れて赤くなってしまいます。ぼやぼやしてるとコチが弱って死んでしまうので、網目から抜けない場合は網を切って取り出します。クロダイの場合は丈夫なので夏場の暑い時以外は手間取っても死ぬことはありませんが、それでも2分が限界かなぁ。

ガニは甲羅やツメにトゲが生えているので大変絡まった状態で揚がってきます。取り出そうとしてるのに更に絡まるなんてこともあり、そうなると一人漫才状態です(笑)。軍手をはめてても指をトゲでついたりハサミで挟まれたりするので、指先が荒れてボロボロになっちゃいます。他のカレ網漁師はツメを折って取り出しやすくしてますが、それでは売り物にならないのでゴーヘーは必ずツメ付きではずします。ゴーヘー父はよくツメ折ってます^^;。

さて、次回はカレ網漁についてです。




■今週のゴーヘー

○10月6日(日)  <天気は下り坂>
今日は天気が下り坂、夜には雨だとの予報。朝起きるとコンビニの旗が東風に揺れていた。微妙な風だ。港に行くと丁度皆出たところで浦口(港前)に船の灯りが見えた。遅れまいとゴーヘー達も船を出す。
無線で明神前まで行ったOA丸の声がした。風が思いの外強いので行くかどうしようか迷っているとのこと。しかし思い切って走り出したようでゴーヘー達も後を追うように走った。
内海前まで行った時、前を走って野間の灯台あたりまで行ったOA丸・SK丸から、風が強くなってきたのでUターンすると無線が入った。せっかく来たから一クラぐらいやったどうだと誰かが話してたけど、一クラやってアオサがびっしり網についたら揃えるのが大変だからやめとく、とOA丸が答えていた。確かに彼の言うとおり。
明神様を回って三河湾側に入ったら、ゴーヘー父は船を梶島方面に向けて走り出した。ゴーヘー父は、生田鼻沖にある赤タンポ(赤い航路標識)まで行ってみるとOA丸に無線で答えていたけど、風陰(かざかげ)になる半島の西側でも強い風なのに、その東側で風が弱いわけがない。波も高く案の定赤タンポまで行く前に引き返すことになった。
船を岸壁に着けたら午前7時だった。家に戻って朝飯を食べる。


○10月8日(火)  <小さい青ガニ多数>
朝から梶島で漁をする。小さい青ガニ(タイワンガザミ)が毎回5・6コずつ網にかかる。売り物になるかどうかのギリギリの大きさだが、一応ツメ付きで網からはずしてカンコのカゴに入れておいた。風が吹いてきて漁を止めた10時半頃までにコウナゴカゴに半分くらいになった(写真撮るのを忘れた)。
今日は札場が休みなので仲買に相対(あいたい)で売ってきた。小さい青ガニもツメ付きのためか、ちゃんと引き取ってくれた。この後帰るかと思いきや、風が少し凪いできたのでガニ網をやりに海田まで走った。前回より少し北側の深い場所に網を入れた後、船を流して昼飯を食べる。
食べた後今度はクロダイを狙いに布土に向かった。しかし潮時(しおどき)が悪いのか、小さい青ガニが5・6コかかっただけだった(ここでも青ガニだ!)。ようやく諦めもつき、ちょっと早いけどガニ網を揚げて帰ってきた。ガニ網には本ガニ(ワタリガニ)が大小1つずつかかっていただけだった。


○10月9日(水)  <朝寒し、そしてハエ>
今朝は寒かった〜。そろそろ朝だけは冬支度が必要みたい。
で、朝から西風が吹いていて海面のシマケ(さざ波)がなくならない。どうもこのまま風が強くなりそうな気配。北の船だまりに船を泊めている連中といっしょに夜明けまで様子を見て6時ちょっと前に出港した。
まず、海田にガニ網を2カゴ分やって梶島を目指した。他の人はオクゴオリに行った模様。風のために波がありオクゴオリ組は早くも無線で愚痴をこぼしている(苦笑)。梶島ではさほど波がなく長瀬や桟橋前、赤灯台東など順番に網をやっていくと、少しずつカレイがかかり14・5枚くらい溜まった。青ガニは昨日より少し大きく相変わらずたくさんかかった。11時頃梶島を後にしてガニ網を揚げに海田に戻る。
海田では梶島より風が強く網が揚げづらかった。ガニは本ガニが10パイ、青ガニが1つで、皆大きかった。指を挟まれないように慎重に扱う(苦笑)。ガニ網を揚げ終わってようやく弁当を食べた。
食べ終わった時、ハエがまとわりついてきてちょっとうるさかった。ふと「宮本武蔵は飛んでいるハエを箸で捕まえた」という逸話を思い出したが、もちろん実際にそんなことはできない。その飛んでいるハエが右足に止まったので何気なく箸を差し出すと・・・・あれ?、つまんじゃったよ(驚)。随分のんびりしたハエだなぁ(笑)。


○10月10日(木)  <絡むガニ網>
朝船着き場へ行くと防波堤の根元でカレ網の漁師連中が火を焚いていたのでその輪に加わる。北の風が強くて冷たく、今年初めての焚き火は暖かかった。
夜が明けてから焚き火を離れ船を出した。浦口(港入り口)を出ると波が少し高めで、今日はこれから風もどんどん強くなってくるらしい。まず海田でガニ網を入れてからハゴ(小さいクロダイ)を狙ってイワテ(北側)を何カ所か網をやってみるがハゴ3枚しか獲れなかった。海田に戻ってきてツキ磯の回りを何ヶ所かやってみたがやっぱり芳しくない。無線で皆そろそろ帰ると言っていたので、ゴーヘー達も最後の一クラをやったところ、なんとカレイ9枚、コチ1本がかかった。実にラッキーだった。
この後ガニ網を揚げたのだが、上げ始めの一把(一束)がくしゃくしゃになって揚がってきた。よく絡まる網なのだけど、ここまで絡まったのは初めて。その後も何ヶ所か絡まってくしゃくしゃになっていた。ガニは本ガニ・青ガニ合わせて10パイだった。
帰ってきて絡まったガニ網を揃えてる時、ゴーヘー父が独り言のように「この人達はどうやってやっとったんだいなぁ」と言う。「この人達」とはこの網の元の持ち主で、ゴーヘー父が昔「この人達」から網を買ったらしい。ゴーヘーは「そやぁ、カゴかなんかにたぐり込んでたんだね〜の〜?。帰ってきてこうやって揃えたんさぁ。」と答えたところ、ゴーヘー父が怒ったように「昔はカゴなんか、あらすか(ないぞ)!」と大声で返事をした。「カゴがなけなぁ(ないなら)、テンマにでもたぐり込んできたんだね〜の〜?」と答えると、すかさず「昔はテンマなんかあらすか!」と怒鳴り声。
いや、別にこんなことで怒らんでもええんじゃね〜の〜?っていうかぁ、なぜ怒るか意味がわからん!


○10月11日(金)  <不漁>
快晴との天気予報とは裏腹にほぼ一日中曇り。そんな中、梶島・田原町・海田と走り回ったけどカレイ10枚(大ガレイ2)、コチ4本(大ゴチ1)、ハゴ数枚、小青ガニ20パイ程度。どうにか1万円の水揚げ、、、はぁ〜〜。
青ガニは週末に食べるために売らなかった。茹でたガニは美味しい〜よ〜♪


○10月14日(月)  <クロダイ大漁?>
朝から梶島で漁をするも桟橋そばでカレイが7枚かかった他は、1枚か2枚程度。9時ちょっと前、一色前に来て一クラ目でカレイの新子(1年生)が10枚ほどかかった。どうやら新子の時期になったようだ。そのうち北の風が強くなってきたし漁の方もサッパリだったので、海田に場所を移し一クラやってみる。しかし、カレイ1枚、コチ1本だけだった。丁度お昼前となり、港に戻って魚を揚げてうちに帰って昼飯を食べた。
夕方札場へ行くと1つの水槽の前にみんなが集まって中を見ている。ST丸がクロダイをたくさん獲ってきたらしく、ゴーヘーも覗いているとそこへ本人がやってきた。
シ:「なんだな?うちの水槽をみんなで覗いて」
ゴ:「ようけ(たくさん)クロダイがあるもんだい、見とっただがぁ」
シ:「そやぁ、あるさぁ。魚のようけおるとこ(たくさんいる場所)へ行っただもん」
ムムッ、ちょっと嫌みな言い方だなぁ。今日はみんな不漁だったんだよ・・・
ゴ:「うちはあかんなぁ。魚のおらんとこ(いない場所)へ行ったでなぁ」
こう返事をするのが精一杯(苦笑)。


○10月15日(火)  <アオサ>
朝東風がちょっと強めでコンビニの旗がなびいていた。こんな時は梶島か西浦なんだけど、梶島は昨日だめだったんで西浦に直行。小野浦に6時に到着して早速網を入れる。ST丸は一足先にイワテ(北側)に行っており、遅れてSK丸がやってきてクダリ(南側)で網を入れた。
小野浦では5クラやったけど、シンマキ(シタビラメ)とカレイが数枚、コチとハゴが2つずつだった。5クラ目に大量のアオサが網にかかってしまい、逃げるようにイワテに行き、野間から奥田の防波柵のそばで漁をした。ところがここでも魚の代わりにアオサが網にかかり、また逃げるようにクダリに向かい小野浦に戻ってきた。それから3クラ連続で小コチが3〜4本ずつかかったのでちょっと嬉しかったけど、続く2クラはだめだった。結局午後1時までここにいた。
ところで、今月も今日で丁度半分が経過した。漁に出た日数は8日間、水揚げ高はやっと10万円を超えたところ。ST丸は今日もクロダイが大漁だったんで、この2日間でうちの今月分の水揚げ高と同じくらいだ。はぁ・・・・


○10月16日(水)  <強行>
朝船に行くも風のため誰も出ていないので、早々に家に戻った。が、明るくなったら風はそれほどでもなさそうだったんで出ることになり、また船に行く。とりあえず海田でガニ網をやる。ST丸はすでに海苔枠のイワテでガニ網を揚げている。随分時間がかかってあげているから、たくさんガニがいたんだろう。揚げ終わると帰っていった。
ゴーヘー達はガニ網をやるとそのまま海田で漁を始めた。風が強いのであまりやる気がでないんだけど、カレイやコチが1つ2つとかかるのでそのまま9時まで漁をした。その頃には風が随分強く海全体に白波が立っていた。普段ならこんなに風が強いと出ないんだけど、こう儲からんようでは気持ちも焦るんだなぁ。


○10月17日(木)  <ガニ網大変>
今朝はまだ北風が残っていたので、オクゴオリへ向けた船をすぐに梶島へ向け直した。風は冷たく今朝は冬用のヤッケを着てきて正解だった
5時55分、梶島の磯の東で網を入れる。カレイが4枚、青ガニが6つと出足低調。このあと梶島で6クラやったけど、カレイが4・5枚、コチが2本かかった程度であとは青ガニばかりざっと50匹くらいかかった。2,500円ぐらいか(苦笑)。
10時ちょっと前に梶島に見切りをつけ、海田に戻ってきた。ここで2クラやったけど、やはり魚が2・3匹かかっただけだった。しかたなく昨日の朝からそのままになっていたガニ網を揚げた。すると意外にも大きめの本ガニや青ガニがよくかかっていた。ツメを縛る輪ゴムが丁度無くなり、そのままカンコに放り込んでいたらお互いにツメでハサミあって大変なことになっていた(苦笑)。梶島で獲った青ガニのツメから輪ゴムをはずして大きいガニのツメを縛るのに使う。梶島の青ガニのツメはハサミを片方折っておいた。
夕方の札場でガニを売る時にセイロに移し替えたんだけど、その時何気なく持った本ガニのツメが縛ってなくてハサミも片方折ってなくて・・・つまり指を挟まれた。左手中指のツメの脇と腹を縦に挟まれて、痛さでとっさに手を引いたのでツメの先の鈎曲がりの部分でひっかかれ見事に裂けました。結構血が出ました(泣)。
できるだけ早く輪ゴム買ってこようっと。


■エピローグ

今週に入ってめっきり朝が冷えてきました。いよいよ冬が近づいてきました。朝の焚き火が恋しくなっています。

去年の10月も儲からなかったけど、今年もやっぱり儲からないです。それで今年は古いガニ網を引っ張り出してきて本ガニを獲っていますが、そのためよく指を怪我してます(苦笑)。

ガニはもうじきに獲れなくなります。コチもたぶん今月いっぱいでしょう。来月にはカレイの値段も下がります。日中はまだ汗ばむほどの陽気ですが、冬の気配がそこかしこに感じられてちょっとブルーな気分。漁が休みの日だけ出来るような、そんな都合のよいバイトがないかしらん^^;。


■次回予告

Vol.27 「カレ網漁」 2002年10月26日(土)発行予定

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