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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.27 カレ網漁
                                    2002年11月2日発行
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■カレ網漁

先週ご紹介したカレ網は1反(たん)または1把(わ)と数えます。1反で約25m(高さは約90cm)、これを7〜8反繋げて漁に使います。繋げた両端には数mの長さの紐をつけ、途中に錘、一番端に目印のためのボンデン(浮き付き旗竿)をつけます。網を繋いだ途中には更にウケ(ウキ)をつけます。このウケは洗濯用柔軟剤などの空容器を使用しています。

こうして用意した網を漁場に設置するわけですが、このとき2種類の設置方法があります。1つは魚の通り道を遮るように横(縦)一直線に設置する方法。一般に「刺し網」と呼ばれている漁法です。ゴーヘー達は「タテコミ」と呼んでいます。網は数時間から一晩程度海に入れたままにしておきます。

もう一つはいつもゴーヘー達がやっている「ドボチン」とか「タタキ」とか呼んでいる方法です。

これはカレイやコチのいる場所を丸く円を描くように囲み、その中を「ガランガラン」と呼ぶ四角い鉄箱を引いて回ります。鉄箱は引くと回転するように作ってありその中には鉄球が入っているので、回転してガランガランと音がします。この音からこの鉄箱を「ガランガラン」と呼んでいます。カレイやコチはこの音に驚いて逃げ網にかかるというわけです。「ガランガラン」を引く時間は長くて5分程度、引き終わるとすぐに網を揚げます。網入れから次の網入れまで20〜40分程度で1日のうちに10数回これを繰り返します。

昔は「ガランガラン」の代わりに紐を付けた直径数cm長さ10数cmの鉄製の錘を海中に投げ入れカレイを追ったようで、錘が海面に落ちる時の「ドボン」という音から「ドボチン」と呼ぶようになり、錘を投げ入れている様子が海面を叩いているようなので、「タタキ」とも呼ぶようになったらしいです。この方法は水深1m以内の浅い場所でしかできず、かつ大変な重労働だったようです。

鉄製の錘の次はエンジンカバー(エンジンの上部分)、その次は一斗缶にコンクリートを流し込んで作ったコンクリート塊だったそうです。コンクリート塊は長く使っていると角が丸くなってしまい使い物にならなくなったとのこと。

魚を「追う」ための道具としてはガランガランがもっとも完成されたものですが、魚の方も慣れてきてる面があり特にカレイなど一度驚くと2度目は身体の上をガランガランが通過してもへっちゃらなヤツもいてたいして逃げません。生物の順応性には驚くばかりで人との知恵比べも尽きないようです。

さて、カレ網漁のこの2種類の漁法ですが、タテコミは「待ち」でドボチンは「攻め」という戦略の違いがあるので獲れる魚も微妙に違います。カレ網の漁師はタテコミとドボチンを適宜使い分けて漁をしています。2種類の漁法の違いとその使い分けについてはまた回を改めて説明したいと思います。


漁網のページ」・・・いろいろな漁法が紹介されています。




■今週のゴーヘー

○10月18日(金)  <ギマ大漁>
今朝オクゴオリでの一クラ目、ギマが大漁だった。東の防波柵のそばでゴーヘー達を含めて4ハイの船が網をやったんだけど、皆一様にギマがかかったようで網を手繰るのに時間がかかっていた。魚やゴミ^^;が大漁になるとやはり2人は早い。今日のギマは大きいものが中心だったので札場での値段も良く、二カゴ(セイロ)分売ったら約9,000円だった。
昼からはいつものように海田でガニ網を揚げた。輪ゴムをまだ買ってきてないのでハサミの片方をペンチで折りカンコに入れているのだが、根元近くを残して折っているのでまだ挟む能力が失われていない。このためガニ同士が互いにハサミあってツメが折れたり、足が折れたり、甲羅が割れたりしてカンコの中はその残骸だらけ。これでは商品価値が無くなってしまうし、値段が付いても安い値しかつかないだろう。やっぱり輪ゴムが必須だ。


○10月19日(土)  <気まぐれ>
今日は雨が降るとの天気予報だったので朝ガニ網を揚げるだけで帰るという話を、昨夜ゴーヘー父はしていた。5時に起きて台所へ行くといつもと同じように準備をしてるのでゴーヘーも弁当の準備をしてると、ゴーヘー父は「(俺は)飯食べてくけど、お前は弁当持ってくのか?」と聞く。なんだ、朝飯食べてから出てくのか・・それならそうと言ってよね、と思ったけど口に出さず(-_-;)すぐに食べ始めた。で、昼食の弁当も持たずに出かける。
船着き場に行くと皆出た後だった。オクゴオリに行ったらしく無線の声がする。こちらは海田に出てガニ網を手繰り始めた。相変わらずアバ(浮き)やヤ(錘)が絡まって揚がってくる。ガニはちょっと小ぶりだったけど本ガニが10コくらい、青ガニが15コくらいあった。ガニ網を揚げ終わるとゴーヘー父は船を梶島へ向けた。ああ、やっぱり漁をするんだなぁ。
しかし、梶島では2クラやってカレイが3枚獲れただけで、後は青ガニとエイばかりかかる。3クラ目をやるかと思いきや止めて帰ってきちゃった。ホント気まぐれだよね〜。


○10月23日(水)  <寒いなぁ>
天気図では東西の弱い高気圧に挟まれてわずかに気圧の谷となって、今日は雲が多いとの予報だった。風は次第に収まっていくだろうと予想してちょっと波が高かったけどみんな出て行った。ゴーヘー達はまず海田でガニ網をやってから梶島へ走った。無線ではオクゴオリ組や三河組が波が高いと言って悲鳴を上げている。
時間が経っても風は一向に収まっていかない。一時ちょっと弱くなったけどまた朝のように吹き出した。風速4〜5mくらいだろうか。漁の方はさっぱりで青ガニだけはよくかかる。11時頃海田に戻ってみるとST丸がタコカゴ&タコガメ(蛸壺)を揚げていた。結構獲れたようだが皆小さいみたい。ゴーヘー達は海田で一クラやってからガニ網を揚げ始めた。一カゴ分を揚げて本ガニ2つ。ここで昼飯を食べてまた一カゴ分を揚げたら、本ガニ3つ、合わせて5つ。はぁ〜。
先週土曜日の梶島からの戻りもそうだったけど、今朝、吉田港沖の赤タンポ(赤い航路標識)付近でスナメリを見た。背中だけだったけどだいぶ太くて大きかった。


○10月24日(木)  <本ガニ多し>
起床は4時45分。かなり遅いが、それでも船を出す時はまだ暗かった。浦前(大井漁港前)の海苔枠のタアカ(岸側)をゆっくりと走ると、雲が朝日を反射して海面が明るくなり海苔枠がシルエットになってに見えた。
少し風と波があって、OA丸は浦前ですぐに引き返してしまった。TA丸はそのまま走っていったみたい。海田に着くとすでにイワテ(北側)ではST丸が網を揚げていた。ゴーヘー達もすぐに網を揚げ始める。本ガニが結構かかっていてなかなか忙しかった。初めは手元が薄暗くて見づらくはずすのに手間がかかったが、明るくなってからはガニが網に絡まってるヤツが多くてやっぱり手間がかかった。閉口。
一カゴ分の網を揚げたらざっと20個、次の網を揚げたらやっぱり20個程度の本ガニ+青ガニが獲れた。網が絡まってる箇所が多くて時間がかかり揚げ終わったら8時を回っていた。揚げた網はまた同じ場所に入れておき、獲れたガニは一旦戻って水槽に生かしておいた。
風も波もたいしたことないんでまた船を出してカレ網をやることになった。しかし矢梨や海田を5クラやってもカレイが5枚、ハゴ1枚しか獲れず、昼には少し早かったけど帰ってきた。船をつけるとそこへST丸がやってきて今日札場(市場)をやるかどうか相談した。しかし漁に出た人数が少ないのと札場で売るほどたくさんの魚が獲れなかったんで今日の札場は中止と決定。で、獲れたガニは午後仲買に相対で売りに行った。本ガニはキロ1850円、青ガニでも全部で4,000円という高値で買ってくれた。よかった〜!


○10月25日(金)  <ガニ網に転向か?(笑)>
起床は5時半過ぎ。船を出したのは6時頃でカレ網の漁師の中では一番遅い。ガニ網を揚げて帰ってくるだけだからね〜(笑)。
昨日海田にガニ網二カゴ、カレ網一カゴ分をやってある。ガニ網を揚げると昨日と同じくらいの数の本ガニがかかっていた。網に絡まったガニをはずしてツメの片方を折りカンコに入れる。これを延々3時間くりかえしていた。ツメを縛るゴムを発注したけどまだ届いていないので手間はまだ少ない方かもしれない。ガニはわずかに残った片方のツメをうまく使って他のガニの足やツメを挟んでいるので、相変わらずカンコの中は折れた足やツメが散乱している。
網を揚げ終わるとすぐに港に戻ってガニを水槽に入れた。本ガニが35コ、青ガニが30コくらいで青ガニは昨日より少なめ。夕方の札場では大きな本ガニは1コ600円程度だったけど、青ガニは全部合わせても5,000円程度だった。本ガニにやっぱり比べると安いなぁ。


○10月26日(土)  <今日は芋掘り>
今日もガニ網を揚げてまた入れた。本ガニが30コ、青ガニが25コくらいだった。9時頃終わって仲買にもっていったが、値を付ける人がいなくて幾らになったかは不明。
帰ってくるとすぐに畑にさつま芋掘りにでかけた。例年より2週間くらい遅いのでイモがどんな状態になっているか心配だったが、掘ってみるとそれほど変わった様子はなかった。今年はサツマイモのできが悪いと聞いていたがうちもやっぱりよくなかった。全体に細いイモが多く、いつものように1つで1kg以上もあ
るような大物(笑)はなかった。


○10月27日(日)  <風が冷たい>
寒気が降りてきているようで冷たい北西の風が吹いてくる。今年初めて手がかじかんだ。
今日もガニ網を揚げてまた入れた。本ガニが10コ、青ガニが15コくらいだった。10時頃仲買に持っていくとそこの親方がいてちょっと良い値で買ってくれた(それでも札場で売るよりも安いけどね)。本ガニがキロ2,000円、青ガニがキロ1,000円。本ガニのキロ2,000円もすごいけど、青ガニの大小取り混ぜてのキロ1,000円にはビックリした。青ガニも大切にして網からはずさなくちゃいけないよ>ゴーヘー父!


○10月28日(月)  <寒い・・・>
今朝は日が昇ってから起床。ガニ網を揚げるだけなんで、のんびりしたものである。7時頃おもむろに船を出しガニ網を揚げに行く。一時凪いでいた風がまた吹き出していた。
2カゴ目の網を揚げている内に風が猛烈に強くなってきた。風速は推定10mくらいでとても寒い。波も1m近くなってきてしぶきが飛んでくる。最後の網は縄たぐりで揚げてほうほうの体で帰ってきた。揚げた網を再度海に入れてる余裕もなかった。
水揚げの方は少なく本ガニが10コ、青ガニが15コくらい。ようやく注文してた輪ゴムが届いたたのでツメはすべて輪ゴムで留めたけど、どうやら値段には影響しないみたい。輪ゴムでツメを留めるのとツメのハサミを片方折るのとでは、見栄えもガニの扱いも輪ゴムの方がよい。輪ゴムで留めてないガニはすぐにツメを振り上げるのでハサミが折ってあって挟まれないと判っていても扱いづらい。将来輪ゴムでツメを留めてあるガニの値段が上がることを期待するなぁ。


○10月29日(火)  <少ない>
急に寒くなったせいか獲れるガニの数が少なくなってきた。今日は本ガニ9コ、青ガニ9コだった。あまりの少なさにカレ網を3クラやってきたがギマが数匹と小コチ、細いセイゴ、フグがかかっただけ。食べる分には充分だけどお金にはならない。
ところで、ガニ網が穴だらけになってきた。古い網だからもう使い捨てのつもりで使ってるのだけど、穴だらけでは肝心のガニがかからない。網も頻繁にくしゃくしゃになる。それでひどい破れの網を交換し始めた。はたしてかかるようになるだろうか?
仲買にガニを売って戻ってくると、船着き場近くでパイプを担いで自転車に乗ってるおじいさんがいた。足元を見ると素足でサンダル履きだった。寒くないのか?(-_-;)


○10月30日(水)  <少ない、少なすぎる>
今朝もガニ網を揚げに出たがかかっていたガニが少なすぎる。本ガニ7コ、青ガニ8つしかない。もっともこの一週間風が吹きっぱなしでカレ網ができないから、もしガニ網をやっていなければ水揚げ0だったわけで、こうしてわずかでもガニがかかるのは悪くない。
今日はガニ網を持って帰ってきた。古いこの網はアバが木製のため、ずっと海に入れてたので海水を吸ってしまい浮力がなくなってきた。ガニ網は船で天日干しにした。寒風でよく乾くだろう。
ガニを仲買にもっていったら全部で7,000円で買ってくれた♪昨日の分も7,000円だったから、それに比べると今日は値がいい。きっと本ガニがモノが良かったのと、青ガニが大きいヤツがあったせいだろな。


○10月31日(木)  <大ガレイ10枚>
久しぶりに朝まともに出漁した。
梶島に着くとすぐにガニ網を沖合に入れた。ちょっと試しだ。その後桟橋前に行ってカレ網を始める。結構北西の風が吹いていて気温も低くて寒い。ずっとヤッケのフードを被ったままだ。網を揚げるとカレイが数枚ずつかかってきて張り合いがあるのが救いだ。いつの間にか本格的に冬になってしまった。
8時頃風が急に強くなってきた。今日は凪いでいく天気予報だったのにどうしたんだろう? ここで漁を止めて帰るにはガニ網を揚げなくてはならず、急いで2カゴ分を揚げた。しかし、揚げ終わる頃には凪いでしまった。う〜ん、参るなぁ。せっかくのガニ網がお試しすらできなかった。
風が凪げば帰る必要もないのでそのまま漁を続けた。カレイやコチが2つ3つとかかるので、まぁ、なんとか我慢してやってられる。昼飯を食べてからもいつもの倍の4クラもやった。久しぶりの漁だったし明日はまた雨だしね。結局大ガレイが10枚と中ガレイ以下が21枚、コチが7本、青ガニ10コ、本ガニ2コだった。
夕方の札場(市場)では大ガレイ10枚で8,000円だった。大ガレイは新聞1面を縦に半分に折ったくらいの大きさなので結構大きいんだけど、1枚800円にしかならない。キロ単価では1,300円程度・・・個人で買うと高いかもしれないが、売る側としては安すぎる。
もっとも個人でこんな大ガレイ買う人はたぶんいないけどね^^;。


■エピローグ

10月下旬から急に寒くなってきました。今週初めには各地の山で初冠雪を記録しましたし、秋を通り越して急に冬になったような気分です。

さてゴーヘー通信はサイトの方が11月6日、メルマガの方が11月18日でめでたく1周年を迎えます。漁師の生活をUターンした人間の目でご紹介したいという思いが自分の拙い文章力でどれほど実現できたか怪しい限りですが、1年続けてこれたのも読者の皆様やサイトを訪問してくださる方々のおかげだと思っています。改めてお礼申し上げます。

さて当メルマガは「Uターン漁師」と題しているわけですが、「なぜUターンしたのか?」、「なぜ漁師になったのか?」は読者の皆さんが持つ素朴な疑問ではないかと思います。Uターンについては理由をある程度予想できると思いますが、漁師については「今なぜ?」とお感じかもしれません。その疑問に対してうまく答えられるかどうか一抹の不安がありますが、次回は「今なぜ漁師か?」と題してご説明してみたいと思います。


■次回予告

Vol.28 「今なぜ漁師か?」 2002年11月16日(土)発行予定

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