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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.28 今なぜ漁師か?
                                   2002年11月16日発行
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■今なぜ漁師か?

会社を辞めて実家に戻るという決断をするまでには当然紆余曲折がありました。その中で忘れもしないのは社長との最後の話し合いでの社長の言葉でした。

社長「会社辞めて(中略)その後どうするの?」
ゴ 「(前半略)実家に帰って漁師でもやりますよ」
社長「これからの時代、漁師なんかダメだよ」

漁業について詳しいわけでもなく、漁師の知人がいるわけでもなく、ましてや漁師をやったことがあるわけでもない人が、随分漁師と漁業をバカにしたものだと感じました。
ええ、皆さんお察しの通り、形だけの円満退社でした^^;。

こうして実家に戻ったわけですが、初めから漁師をやろうと思っていたわけではありません^^;;;。失業保険をもらうために職安にも通ったので、一応職探しをしました。職安から名古屋以北の会社の紹介ももらいましたが、会社勤めに正直興味を失っていたので断ってしまいました。自ら選択肢を狭めて退路を断ったというとカッコいいですが、どこか他人のことのようで現実感もなくたいして深く考えていなかったんですね。

いよいよ貯金もなくなり毎月の国民年金や生命保険の支払いに困るようになり、のんびり屋のゴーヘーもついに追いつめられました(苦笑)。バイトでもなんでもやるしかないが、いかんせん中年男性をバイトで雇ってくれるところが田舎にはない。

社長とのあのやりとりが浮かんできました。「よし、漁師をやろう!」

決めるが早いか、翌日から早速船に乗りました。が、初日は風のため途中でUターンして帰ってきました。出鼻をくじかれた恰好でしたがゴーヘーの人生はいつもこうなのであまり気にせず、翌日また風の中を出かけました。今度は戻らずに漁をしてきたので1日中大揺れ状態。ゴーヘーは船の揺れにバランスを崩してカンコの中に右足を突っ込んで(つまり、落ちて^^;)しまったり、船の上での移動もままならず、ただゴーヘー父が漁をする様子を1日見学してただけでした。

「こりゃ大変な仕事だ」と思いましたが、どんな仕事でも大変なことや厳しいことがあるものなんで、漁師が特別大変だとは未だに思っていないです。むしろこんな風の中で70歳を越える人が漁をしていることに驚きました。いったいいくつまで漁ができるんだろう?

さて世間では、「漁師と乞食は3日やったら辞められない」と言うそうです。乞食のことはわかりませんが、「漁師を辞められない理由」ならなんとなくわかってきました。

ゴーヘーが子供の頃は「俺は学校も出てないし、漁師の他にやれる仕事がない」なんて言う人がいましたが、今ではこれは本心じゃないと思うようになりました。「漁師は人に使われることがないからいい」と言う人もいますが、これよりももっと漁師を辞められない理由、いやむしろ漁師から離れられない強力な魅力が漁と漁師にはあると思うのです。

その魅力の第一はまず、「すべて自分で決められる」ということです。
「人に使われることがない」というのを言い換えてるわけですが、漁に出る時間、帰る時間はもとより漁をする場所・時間・回数、獲る数や量、網や道具の作り方・手入れの方法、船の大きさやエンジンの種類、港内以外での船の走らせ方・走る場所・速度などなど、およそ漁に関することで人に指図されることがありません。自分のやりたいようにやることができます。

もちろん航行にはルールがあり漁場にはすべて漁業権があるので、ある程度の制限や取り決めがあります。それらは多数の人が事故や争い事なく仕事や生活を営むためのルールであり、漁師であっても守るべき普遍的なルールにほかなりません。

ところで、複数人で漁をしている人たちはどうなのか?たとえば雇用関係にある船主と若い衆の場合、たいていの若い衆は自分で決める権利がありません。賃金が他の仕事より多少良いかもしれませんが、それだけでは3K職場に人は集まりません。

こういう人たちをも放さない第二の魅力は、「すぐに結果がわかる」ということです。網を海に入れて数十分後、タテコミだと翌日になりますが、網を揚げることにより魚が獲れているかどうかがわかります。このことは人にとってとても重要なことのようで、結果が良くても悪くても実に気持ちがいいもんです。そして結果が良かった時の気持ちよさはたとえようがないです。

賭けやクジ、勝負事もたいていすぐに結果がわかりますよね。そしてそれらにはまってる人は多いと思うのです。漁師の場合は仕事そのものが賭け事のようなものなんです。青森県大間のマグロ漁師はマグロ漁をすることを「海でバクチをうつ」というらしいです。どうりで辞められないわけです(笑)。

上の2つの魅力は魔力と言っていいほど強力なものですが、3つ目の魅力は人の生に訴える無視しがたい魅力、「常に生きている実感がある」ということです。

普通に生活していたら自動車事故などに遭わない限り、生命の危機を感ずることなどほとんどないですよね。それゆえ若い人がスリルとスピードを求めて車やバイクを猛烈なスピードで走らせたり、スピード感溢れる乗り物に乗ったりスポーツをやったりして、エネルギーを発散しますよね。また生活を支える収入においては、倒産や突然のリストラなどがない限り収入が突然途絶える心配はないですよね。

漁師はこれらの危機と常に背中合わせです。風が強く波が荒い時ばかりでなく凪でも航行するタンカーの引き波であわや転覆の危機もあります。衝突しそうなくらいすぐ前を横切る船もあります。エンジン故障もあるし、網がペラに巻き付いてしまうことだってあります。船から転落することもあります。どこに行っても魚が獲れない時もあります。それが何日も何週間も続くとがあります。常に「生きる」ことを意識せざるを得ないのです。そしてそれは、「生きよう」という人としてもっとも強力な欲求に変わります。
「漁師=生きること」となって、もはや辞められません^^;

ここで「いったいいくつまで漁ができるんだろう」という疑問に答えが出ましたね。そうです、「死ぬまで」漁師はできます(^_^)。

ゴーヘーはできれば会社を興したいと思っていました。今でも思っていますが、もし会社を作っても漁師は続けたいです。そして電話を受けた社員に「社長は今漁に出ています」と言わせたいんです(笑)。

あ〜、やっぱり漁師は辞められないです(^_^)。




■今週のゴーヘー

○11月7日(木)  <ゆ・ゆるい?>
11月になって初めての出漁。気候が一気に冬になってしまったため、毎日風で海に出られなかった。ガニ網をやるチャンスもなかった。なんだか最悪のスタートだ。
で、その11月最初の漁に更に輪をかけてひどいことがあった。朝の一クラ目、おならをした時に中身もいっしょに出てきた(>_<)。特に悪いものを食べたわけじゃないけど、ちょっと便がゆるかったみたい・・・・急いでティッシュでお掃除して、、、でも換えはないからティッシュを当ててまた履いた。汚い話で申し訳ないっす(-_-;)。


○11月8日(金)  <本ガニ高値!>
朝小雨の降る中、ガニ網を3カゴ分手繰る。全部手繰って本ガニ3つと青ガニ10コが獲れただけ。もう先月のようにはかからない。ガニ網は2カゴ分だけまたやっておいた。
小雨が断続的に降り続く中海田付近のあちこちで漁をした。カレイは新子(1年生)か2年生が中心で皆網目から抜けるような小さなものばかりだ。大きければ高いというわけではないが、大きければ重いのでお金にはなる。しかしカレイは小物ばかりだ。山田のテトラポットのそばでクロダイを2枚つかまえた。
昨日OA丸が大きなクロダイを5枚売っていて1万円ほどしたからちょっと期待がもてる。あと今日はタコがよくかかった。全部で5つかかり去年のタコカゴよりも成績がよい(笑)。これではカレ網の名前を返上してタコ網に改名しなくちゃいけない(笑)。
雨はいつの間にか止み風が吹いてくるとの予想に反して、お昼にはベタ凪になった。小春日和で実に暖かいが時間もきたので仲買に魚を持っていく。すると前回まで1つ5〜600円だった本ガニ(ワタリガニ)が今日は1つ1,000円もした!青ガニ(タイワンガザミ)も1つ100円だったものが、今日は1つ300円。寒くなってガニがうまくなってきたのとガニが獲れなくなったのとで値段が上がってるみたいだ。逆にクロダイはキロ単価が1,200円で2枚で2,000円ちょっとにしかならなかった。昨日の高値からは想像できない安さ、約半値だね。安定という単語は漁師の辞書にはないな(苦笑)。


○11月10日(日)  <ガニは生きていた>
金曜日にやった網を今朝揚げた。昨日は強風で揚げることができなかったんだが、今朝も相変わらず風が吹いていて結構大変だった。
網にかかったガニの多くは死んでるんじゃないかと心配したが、死んでいたのはタコに喰われた2匹だけであとはちゃんと生きていた。本ガニが2匹いた他は全部青ガニで15・6匹だった。金曜日の相場だったらいいんだけどなぁ。


○11月11日(月)  <青ガニも高い>
昨日はガニ網の他にカレ網を2カゴ分やっておいた。それで今朝はまずそれから揚げてみた。すると小カレイがざっと30枚くらい、ガニが15コくらい、タコ、クロダイ、アイナメがかかっていた。今の時期大きいカレイより小さいカレイの方が値がいいので、これは嬉しい。続いてテグスのガニ網を揚げてみたけどこちらは不発。揚げ終わると一色沖へ向かった。
一色沖で2クラやって小カレイが7枚しかかからないので梶島へ行った。お昼まで梶島でやってたけど中ガレイが5枚、小コチが1本と散々だった。午後海田に戻ってきて残してあった二カゴ分のガニ網を揚げると、1つ目の方に15・6コ、2つ目の方は5・6コかかっていた。みんなちょっと小さいのが難点だったが、今はガニの値が高いからこれでも割合よい水揚げになる。実際夕方の札場(市場)ではガニだけで1万円だった。よかった、よかった。


○11月12日(火)  <タコガメのおやじ>
青ガニのメスがたくさんかかってくる。昨日もそうだったんだけど今日は一層その傾向が強かった。サイズは大きいのもあるけど、全体的にちょっと小さいので単価はそれほど高くないと予想してる。数は多すぎてわからないけど、いつもガニを入れてるカゴが2つとも一杯になってしまった。カンコから引き上げるときも重くてなかなか持ち上がらないほどだった。仲買に持っていったけど値段つける人が不在でお金は後日。
港に戻ってきたら篠島のタコ瓶漁のオヤジが来ていた。タコのエサに使う小さいガニを獲りに来ているこのオヤジさん、長く独身(バツイチと今日知った)で年齢も50代半ばなんだけど、最近結婚したらしい。お嫁さんは30前の中国人女性!!バツイチで子持ちらしい。携帯に写真を入れていて見せてもらったけど、昭和50年代まで日本でもよく見かけたような顔立ちで、いい感じの女性だった。黙ってたら中国人だとわからない(黙ってると中国人と間違われるゴーヘーとは大違い、笑)。篠島には独身の中年男性が多いとのことで中国人とのお見合い話がいくつかあるらしい。「お前もどうだ?」と水を向けられて苦笑してしまった^^;。


○11月14日(木)  <青ガニのメス>
2日ぶりにガニ網をあげる。テグス網から先に揚げたんだけど珍しく40コくらいかかっていた。多くは青ガニのメスで、本ガニも2つ3つ混ざっていた。2カゴ目にガニ網を揚げたらこれになんと63コ(うち本ガニ4つ)もかかっていた。小さい青ガニのメスが多かったけど大漁だった。次の3カゴ目にも40コ近くかかっていたので、全部で140コくらいとなった。水槽に入れる時に重さを計ったら合わせて30kgほどあった。どうりでガニを入れたカゴが重いわけだ。あまり大きくなくてもこれだけかかればそれなりの金額になる。
で、夕方の札場では本ガニが10コで8,000円、青ガニが全部で14,000円ほどだった。久しぶりに2万円の大台に乗って嬉しい。


■エピローグ

今なぜ漁師か?とのお題に、地球環境とか自然保護・自然回帰とか、そんなキーワードをちりばめた内容を期待していた読者は、少なくなかったかもしれません。おおかたの期待を裏切って、「漁師の勧め」みたいな内容にしてしまいました。大上段に振りかぶった割には落としどころが違うジャン!ってお感じだと思いますが、大目に見てやってください。

やっぱり大義名分を使いこなすのが下手なんです。ゴーヘーは大層正直な天の邪鬼なんです^^;。

次回、主役のご登場です。カレイについてやはり書かないわけにはいきません。


■次回予告

Vol.29 「カレイ」 2002年11月30日(土)発行予定

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Copyright (C) 2001-2002 Gohe.

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