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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.31 ナマコ
                                   2002年12月28日発行
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■ナマコ

ナマコは不思議な生き物です。変わった生き物が多い海の中でも際だった存在だと思います。

日本のナマコは夏場、岩の隙間などでじっとして動かなくなるそうです。「夏眠」と呼ばれる行動で夏の暑い間何も食べずジッとしているようです。どうりで夏いくら海底を捜しても見あたらないわけです。

水温が下がってくると岩の隙間からはい出してきて、エサを食べるためにあちこち動き回ります。よく見ないとどっちが頭だかお尻だかわかならいあの体ですし、目も足もないので活動範囲はある程度限定されてしまいますが、一定範囲の海底でモソモソとよく動き回ります。移動は体を伸び縮みさせ体の下側にたくさんある管足という細長い器官で、海底や岩などに張り付き行います。

エサは砂や泥の中に含まれた有機物などで、口から出した触手を使って砂や泥をそのまま体内に取り込みます。消化吸収器官は一本の管のようになっていて、胃に相当する部分が他より少し太くなっています。その中には橙色の消化液みたいな液体が入っていて管の色もちょっと橙色っぽいです。

この消化器官を「このわた」と呼んでいるわけですが、身に危険が迫ったと感じるとナマコは時々「このわた」を体外にはき出してしまいます。自分の大切な消化器官を体外にはき出して相手にくれてやる生物は、たぶんナマコくらいしかいません。普通の生物はそんなことしたら死んでしまいますし、やろうとしても出来ないですよね。捕食者も捕らえた獲物の内臓から最初に食べますよね。それが労せずして得られることになるので、ナマコはなんて捕食者に都合がよい生き物なんでしょう。

しかし、普通の魚はナマコを襲って食べたりしないです。悪食のタコでもそんなことしません。これがまたナマコ七不思議(笑)の一つなんです。

普通の魚は体の表面に寄生虫がよくつきます。カレイの腹側にはたいてい小さな虫がへばりついています。またカニの甲羅には海藻が付着しているものがあります。海中ではあまり活発に動かないものにはすぐに海藻がついてしまうようです。よく動くといってもしょせん這っているナマコのことなので大した運動量ではありません。寄生虫や海藻にとっては絶好の住処のはずなのですが、砂や泥をまとったナマコを見ることがあっても、海藻のガウンをまとったナマコは見たことがありません。

どうやらこの秘密はナマコの体にあるようです

ナマコの体からはサポニンと呼ばれる強い抗カビ作用を持った物質が、粘液とともに分泌されているらしいんのです。このサポニンは白癬菌(水虫・タムシ)、カンジタ症病原酵母やトリコモナス症原虫などにも有効な物質だそうです。自分で体の掃除ができないナマコは、このサポニンにより付着物から身を守っているようです。

サポニンは更に捕食者である魚に対しても有効です。魚がナマコに近寄るとその付近を漂っているサポニンをエラを通して体内に取り込んでしまうようです。強力な抗カビ作用を持った物質が血液中に入ったら?ええ、もう魚は一巻の終わり。すぐに死んでしまいます。永い進化の過程で魚はナマコが危険であることを学んだのでしょう。今では余程のオマヌケさんでないかぎりナマコにちょっかいを出したりしないし、はき出された内臓を食べたりしないのです。

こんな強力な武器?を持ったナマコですが、体の再生能力も強力ではき出した内臓は再生できます。何かに突っつかれたりつかまったりすると体を硬くして備えますが、万一切られてもまた再生します。つかまったまま脱出できないときは、体を溶かして!脱出さえ図るそうです。こうして書いててビックリするほど、ナマコは丈夫で死なない生き物です。日本全国どこの海岸でもまんべんなく見られるのも頷けます。

これほど丈夫なナマコですが、乱獲と水質汚染には勝てません。ナマコがいなくなれば海底を掃除する生き物がまた一ついなくなり、海底のバランスは崩れ汚れがひどくなるでしょう。

私たち漁師ができることは乱獲しないこと。
ナマコ以外でも同様ですが、肝に銘じて漁をしなくてはいけないです。




■今週のゴーヘー

○12月14日(土)  <今冬一番の冷え込みが続く>

毎朝今冬一番の冷え込みを更新している。今朝はとうとう気温が0度以下になったようで、水たまりも氷が張っていた。そんな中、日の出とともにナマコ引きを始めた。北西の風が吹いていて寒く特に手足が痺れるほど冷たい。いよいよフリースのソックスの出番だ。

ナマコの漁は相変わらずいまいちで、少ない時は1度で4コしか獲れない時もあった。痺れるほど寒い上に不漁ときてはやる気がでないが、淡々とナマコマンガを引いて、それを引き上げてはナマコを取ってまたマンガを引いて、を繰り返す。

マンガを引いている間はゴーヘーは何もすることがないので、日が高くなって少し暖かく感じられるようになってきたら、眠くなってきてしかたがない。気温はまだ5・6度で手足も冷たいんだけど眠い。どこででも寝るゴーヘーである。

ナマコマンガにはナマコの他に時々魚が入る。今日もモガレイ、コウソガレイ、ハゼ、ミミゴチ(メゴチ)やイザリウオ(<やっと名前がわかった)などなど。イザリウオは見かけがユーモラスで案外可愛い。今日のイザリウオは2匹あって1匹はこぶし大の大きさだった。お腹をプクンと膨らましてなかなかちいさくしない、、、で、できないのかもしれない。しばらくカンコで活かしてたけど2匹とも逃がしてあげた。

逃がして1分ぐらい後に突然トンビが海面に舞い降りてきてなにやら拾っていった。さっき放したイザリウオがつかまったみたいだ。トンビは掴んだイザリウオを2度3度確認して飛んでいった。多分つかまえてはみたものの、食べられるものかどうか自信がなかったんだね〜。それにしてもだ、どこから見てたかしらないが、波立つ海面に浮かぶ人の拳ほどの大きさのものをよく見つけたものだ。


○12月15日(日)  <ナマコ&タテコミ>

今朝はフリースのソックスを履いて出た。効果抜群!昨日のような足な指が痺れるほどの冷たさは感じなかった。風も穏やかで船の引き波以外は波もなく結構快適なナマコ引きだった。これでナマコがたくさん獲れたら言うことないんだけど、今日のナマコも多くなかった。加えて小さなナマコが目立つ。掌の横幅より小さい、たぶん今年生まれのナマコが多かった。小さすぎるヤツもゴーヘー父は拾ってカンコに入れてるんで、隙を見てゴーヘーが海に放した(笑)。来年のことも考えて漁をしなくちゃね。

イザリウオは今日もマンガに入ってきた。昨日の反省からしばらくカンコに活かしてお腹の水をはき出させたんだけど、その後もカンコの中でひっくり返ったりしてて自分の力で泳ぐ気力なし。マンガの中で揉まれて具合が悪いのかもしれないと思い、そのまま港まで運んできてテンマを繋留してから海に放してみた。するとちょっと海面でフラフラしてからゆっくりと海底に向かって下っていった。元気でな〜。

午後はまたタテコミをやりに出た。明日の午前中は網上げとコノワタ取りで忙しそう。


○12月16日(月)  <コノワタ取り>

今朝は風もなくよい冬晴れだった。8時頃には少し体がぽかぽかしてきたほどだ。

タテコミはわずか3カゴ分だったので7時から揚げ始めても8時半ごろには終わって帰ってきた。珍しく大きなクロダイが2枚あり、モガレイも3kg近くあった。何もかもひっくるめて4・5千円ってとこだろね。

船を岸に着けるとすぐにナマコを活かしたドーマンを海中から引き上げて、コノワタ取りの準備にかかった。いつもの場所にナマコを運び浅い水槽に活かしてから、家に「コノワタ取り7つ道具(笑)」を取りに戻った。今日は暖かいのでコーヒーはなしだ。9時半頃ナマコがよく水を吸って体を伸ばしてきたので、コノワタ取りを始めた。結構量があるわりには始めた時刻が遅かったので午前中に終わりそうになかったけど、途中でゴーヘー母が応援に来てくれてどうにか12時前に終わることができた。すぐに仲買にコノワタと魚を持っていく。後かたづけをして今日はこれでお終い。


■エピローグ

え〜、今月後半は開店休業状態です。町長選挙があってその応援にゴーヘー父がかり出されたり、風が強かったりしたので、出られる日が極端に少なくなりました。ナマコ引きに出てもナマコは少ないし、獲ってくると数が少なくてもコノワタ取りをしなくちゃいけないし、取ったコノワタは安いしで、ゴーヘー父は面倒になったみたい。ハハッ・・・

今号は今年最後となるわけですが、この1年、欠号を出すことなくよく続けてこれたと感心しています。これもひとえに読者の皆さん、サイトに訪問してくださる皆さんのおかげだと思っております。改めてこの1年のお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

単調な漁師の生活をただ単純に日記にしているだけのこの「ゴーヘー通信」も、読者数は若干ずつですが伸びる傾向にあり、発行の励みにもなっております。来年もマイペースでこの「単調な生活」をお届けすることと思いますが、是非また1年お付き合いくださいますようお願い申し上げます。

年末年始、サイトの方は掲示板も含めてお休みすることなく活動する予定でおります(<ああ、単に暇なのね〜)。お時間のある方は一度サイトの方にも足を延ばして遊びにいらしてください。

それでは、良いお年をお迎えください。


■次回予告

Vol.32 「年間180日」 2003年1月11日(土)発行予定

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