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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.37 黄砂
                                    2003年3月22日発行
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■黄砂

小学校高学年の頃の3月のある雨上がり。家の雨樋の排水口に雨水受けとして置いてあった金属製のボールに溜まった水の端に黄色い粉状のものを見つけました。暖かくなってきて何かの花の花粉がたくさん飛んだのかなぁ、とその時は考えました。

後年、中学の社会か高校の地理で「黄砂」現象を学びましたが実際に黄砂の飛ぶ時期にそれを意識することはなく、大人になってテレビの天気予報などの解説で「黄砂」という現象を再学習して、この時期の空の様子を気にするようになり同時に、あのときの黄色い粉はこの「黄砂」だったんだと初めて理解するに至りました。

黄砂はご存じのように中国大陸・黄河台地から風で舞い上がった細かな黄色い土埃が、偏西風の流れにのって日本まで飛来したモノです。したがって大陸により近い西日本の方が黄砂になじみ深いことでしょう。

しかしここ知多半島でも黄砂は毎年確実に見ることができ、雨上がりの水たまりの縁に黄色い帯を形作っていることが多いです。また晴れた日でもぼんやりと霞がかかったようになって、湾の対岸の山々が見えなくなる時もあります。風のない日の朝の海上に、海面からある程度の厚さの層をなして薄黄色の帯が見えることもあります。日が昇るに釣れて気流の流れや風などによってその薄黄色の層はいつの間にか霧消しています。

去年は近年まれに見る黄砂の当たり年だったようで、遠く札幌でも黄砂が降ったと天気予報で気象予報士が話していました。海上でも薄黄色の層をはっきりと見ることができましたし、対岸の山々が見えない日も多かったです。

さてこの黄砂ですが、実は漁になにか影響を及ぼすようなことはありません。当然「黄砂が降ったら〜」のような言葉もありません。我々にとってはちょっと視界が悪くなる以外これといってイベントになるようなものではありません。

ただ、黄砂が降る頃はアサリの口開き(くちあき:解禁日)の頃でもあり、桜の開花が近いことの証でもあります。ぼんやりとした視界の中で春の足音だけが確実に大きくなってきます。

実は今年はまだ黄砂をはっきりとは見ていません。3月に入っても北西の風が強い日が多く、アサリの口開きとなりましたが海はまだなんとなく冬模様です。水温はまだ低くアサリをかいている最中ずっと水に浸かったままの手は冷たくなって痺れてきます。カレ網に出てもカレイはさっぱり獲れません。春の足音は未だ届いてきていません。例年より黄砂の恋しい3月下旬となりました。





■今週のゴーヘー

○3月13日(木)  <クラゲ大量>

6日ぶりの出漁。まだ昨日までの波が残っていて波しぶきを被るようにして矢作川河口を目指して走る。

カレイは相変わらず少ないがサイズは中の上程度で身が厚くしっかりしている。網からはずしたカレイは甲板の上でビックリしたような顔をしてる。生まれて初めて海から出てきたのだから無理もない。口をぱくぱくさせて、案外可愛い顔。

途中梶島へ行ってみた。2クリやったけど両方とも大量のクラゲで網を揚げるのが大変。なんでもクラゲは体の98%くらいが水分らしく、親子丼のどんぶりくらいの大きさのクラゲだと、ドンブリ1パイ分の水の重さと同じ程度だ。それが網の長さ1mの間に2つ3つとかかっているのだから重さも潮の流れによる水の抵抗も半端じゃない。ゴーヘー父が網を振ってクラゲを振り落としつつどうにか網を揚げて、まさにほうほうの体で逃げるように梶島を後にした。もう一度矢作川河口付近に戻りクラゲ取りのため1クリやって帰ってきた。

仲買にカレイを持っていったら、キロ2,000円で買ってくれたけど、カレイ7枚、合計2.8キロ・・・はぁ。


○3月14日(金)  <ボラ大漁>

今年初めての西浦、去年の同じ時期毎日通った上野間に行った。しかしカレイは掌サイズが1枚だけだった。今年はダメか〜?

海にはまだ海苔枠がたくさんあって漁のできる場所が半分程度しかない。海苔枠のそばをあちこちと網をやって移動してたら、何回目かの漁でボラがたくさんかかってきた。3月に入って東京湾に注ぐ河川で「大量発生」してたあのボラだ。大きさもちょうど同じくらいで、20本くらいかかった。

ボラは群れで移動するのでかかる時は今日のようにたくさんかかるが、そもそもカレ網にかかること自体が珍しい。かかるとメチャメチャに暴れるので数匹がからまってかかっていたりすると、ボラをはずすのにものすごく時間がかかる。手こずっているうちにボラは急速に弱ってしまい、はずしてカンコに入れても腹を上に向けて虫の息だったりする。

お昼近くになって大谷の沖でAE丸の隣に網をやったらまたしてもボラがたくさんかかってしまった。ゴーヘー父ははずしたボラを甲板にほったらかしにしたり忌々しそうに海に放り投げていたけど、ゴーヘーは一本一本丁寧にはずし甲板のボラも皆カンコに入れておいた。仮に1本50円でも数が多くなればそれなりの金額になるからね。ちなみにAE丸にもたくさんのボラがかかっていたみたいで、1クリ揚げるのにとても時間がかかっていた。こういう時に一人と二人の差がでるなぁ。

カレイを片名(かたな)で売ってきた後札場(市場)に戻って、ボラを大井の仲買の水槽に入れておいた。全部で43本、カンコにクイリョウ(うちで食べる分)として4本残しておいた。


○3月15日(土)  <オクゴオリ>

今年初めてのオクゴオリ・・・初めてが続くなぁ(ボソ)。
天気は下り坂の曇り空だったけど漁をするにはまずまずで、風も波もなし。ついでにカレイもなし。あぁ〜。

AE丸も今日はオクゴオリにやってきた。うちと同じで昨日のボラに懲りたみたいだ(笑)。しかし、ここも海苔枠がまだたくさんあって網のできる場所が狭い。カレイは時々網にかかる程度だが、一度だけカレイが4枚かかった時があったりして結局今日の売り物は13枚になった。皆良く肥えていて身が厚く全部で5.5kg、今年初めて1万円の水揚げだった。


○3月16日(日)  <×>

朝オクゴオリの福江でカレイが4枚かかった。こりゃ幸先が良いと思ったらその後さっぱりカレイがかからない。オクゴオリを諦めて梶島へ行って9時半頃ようやくカレイが1枚かかり、その後11時半頃吉田港前でまた1枚かかっただけだった。全部で6枚・・・今年の春はいったいどうしちゃったんだろう。

これだけ漁が少ないとゴーヘー父も仲買に行くのが恥ずかしいようで、カレイはゴーヘーが軽トラで持っていった。


○3月19日(水)  <アサリの口開き>

アサリの口開き、いわゆる解禁日だ。いつもの鳶ヶ崎へ行くと時間がちょっと早いせいかまだ誰もいない。少し寒いのでもう一枚着込んでこようと車を戻すと、途中でFH丸に出会った。右手に包帯を巻いているので尋ねると、コウナゴ漁の最中に綱をまくローラーに右手を挟んで親指側をひねり小指側を骨折したそうだ。1週間前のことらしく、コウナゴ漁が終わりに近い時の事故だった。しかし比較的小さいケガでよかった、1ヶ月もすれば直るからね。下手したら右腕が無くなっていたかもしれないから。

アサリの方は去年のシーズン終了間際に買ったマンガを、今年は最初から使えるので好調だった。マンガが砂地用のマンガのため大井の石が多い浜にはあわないけど、それでも手カギで掘っているよりまし。2時間半ほどやって11キロのアサリが採れた。大きいアサリを選っていなければたぶん20キロ以上採れただろうが、例年通り「大物狙い」(笑)だったので半分ほどになった。

仲買に持っていくと「おっ、いいアサリだな」と言ってくれたので、ちょっと嬉しかった。単価もキロ700円とビックリするような値段。去年の高値より更に100円も高い。今年もアサリが少ないようだから、明日からは中アサリも採ってこよう。


○3月20日(木)  <穴>

今日は昨日より潮が干って少し深い場所へ入っていくことができた。前半は昨日と同じ場所、後半はその深い場所でアサリをかいた。深い場所の方が砂が多くてゴーヘーのマンガは絶好調〜。カゴにつけた発泡スチロールの浮けの浮力が足りなくてカゴが沈むほど採れた。途中で半分ほどかごから出してネットに入れ岩の上に置いておき、また懸命にアサリをかいていた。

ちょっと疲れてきてたのか、マンガを引き上げる時不注意からマンガの歯が右足に当たり胴長にひっかかってしまった。すると右膝の下あたりがじわりと冷たくなってきた。右足を上げてみると膝下に小さな穴が開いていた。う〜ん、失敗、胴長に穴を開けてしまった。去年買ってまだ4・5回しか使ってないのに・・・・

そんな思いとは無関係に水はどんどん侵入してきた。やめて帰ろうかと思ったけど、穴を開けてしまったからにはお金がかかる。むしろここでやめて帰るわけにはいかない。周りの人が皆絶好調でアサリを採っている中、一人だけ帰るわけにもいかない。そうしてがんばってアサリをかいていたが水が溜まる右足が不自由で調子が悪い。なにより冷たい。

右足への浸水が広がりパンツまで濡れてきた頃ようやく帰る決心がついた。まだ残り30分くらいあったけど右足の冷えがガマンできない。よりによって今日は北西の風も強いからいつもより寒いしね。

採ったアサリは大中2つに選別して仲買に持っていった。勘定は後日になったので重さも金額も不明。それより胴長の穴を塞がなくちゃいけないから、その足で自転車屋さんへ行ったけど、胴長の穴あきの修理はやってないと断られてしまった。しかたないんで、ホームセンターで塩ビ用の接着剤を買ってきて自分でパッチを当てて補修した。はたしてちゃんとくっつくだろうか?


○3月21日(金)  <新マンガ>

今日は開始から即昨日の場所へ行ってアサリをかく。補修したゴム長は浸水せずOK〜♪。

今日はマンガの柄にロープを巻いてマンガを引きながらアサリをかく。しかし採れる量が少ない。昨日6人で散々さばいた(かき回した)からなぁ。それでも一人でやっているうちは好きな場所がかけたのでカゴに3分の1程度まで溜まった。途中から二人やってきてガンガンさばかれたら思うようにできなくなり、ゴーヘーの調子は落ちてしまった(シクシク)。

灯台のソバに行った人はものすごい勢いでアサリをかいていた。昨日までは深くて入れなかった場所だからまだ誰もかいていないせいだ。テンマがないとそこまで行くのが大変なのでこちらで指をくわえているだけだ。結局ゴーヘーは大中あわせて15kgほどかいた。まぁまぁかなぁ。

うちに帰ってテレビを見ていたらゴーヘー父に電話がかかってきた。去年某氏の倉庫で小さいマンガを見つけて以来、それを手に入れようと思っていて、今日ようやく連絡がついたらしい。で、早速倉庫に行くとすでに持ち主が到着していて、目をつけていたマンガを手に入れることができた。もう使わないからと無料で譲ってくれた。ラッキー♪これで岩の間の狭い場所でもアサリかきができる〜。


■イラクの自由作戦

イラクで戦争が始まってしまいました。フセイン大統領の危険性は看過できないものでしょうが、戦争突入はあまりに多くの危険をはらんだ決断であったと思います。21世紀の世界秩序は危険な人たちにゆがんだ口実を与えるものになろうとしています。

戦争になれば兵士も市民も多くの人が死にます。たとえ兵士であろうとも、家族のある人であることに変わりはありません。戦争が始まってしまった以上、なるべく死傷者が少なく、一刻も早くこの戦争が終わることを願っています。

願わくは、早期に戦争が終結し世界秩序が本来あるべき姿に戻らんことを。


■エピローグ

アサリかきが今年もまた始まりました。しかし場所が狭いため3日目にしてすでに採れるアサリが少なくなってきました。今回の潮はあと2日間アサリかきができますが、残り2日間、どこでアサリをかこうかなぁ〜。


■次回予告

Vol.38 「梶島の春」 2003年4月5日(土)発行予定


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