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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.43 丸い歯、とがった歯
                                    2003年6月14日発行
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■丸い歯、とがった歯

陸上の生物には雑食性の生き物が案外多くありますが、海の生物は特定の食物を食べて暮らしているモノが大半です。魚も食べるけどプランクトンも食べる、海藻が主食だけど貝をたくさん食べる、という生物はあまり知られていません。

栄養の面から見て特定のエサを食べることがはたしてよいのかどうかわかりませんが、体の構造は特定のエサに特化して進化できるので、より捕食行動がやりやすくなるでしょう。カレイやヒラメは海底にへばりついてエサを待ち、カツオやマグロは流線型の体を活かして速いスピードで泳ぐことによりアジなどの魚を捕らえることができます。

こうした体の特徴の一つとして「歯」があげられます。今回は肉食?の魚について見ていきたいと思います。

他の生きた魚を捕らえる魚の歯は、牙こそありませんがネコ科の動物の歯のように一本一本が鋭くとがっています。歯と歯の間隔は少し開いていて上下のかみ合わせがしっかり出来るようになっています。この鋭い歯で噛みつかれたら小魚など体が途中で切れてしまいますし、一旦噛みつかれた容易には逃げ出せません。

このような歯の持ち主の代表はマダイです。赤ダイと呼ばれる鯛ですね。マダイの歯は鋭くアゴはがっちりとしてそれゆえ頭が大きいです。この種の歯の持ち主は皆頭がでかいです。大きなマダイに指を噛まれたらちぎれそうな気がします。

同じ生きた魚を捕らえるのに鋭い歯ではなく、ヤスリのような歯を持ったモノもいます。三河湾ではコチがその代表格です。コチは捕らえた獲物を大きくしっかりとしたアゴで噛んで放しません。網にかかったコチをはずす時はコチの口に親指をグッと差し込んで下あごを掴むのですが、これが大ゴチだと親指を強列に噛んで締め付け痛くてガマンできないほどです。思わず「痛たたた」と声が出てしまい手を放しそうになります。

一方生きた魚ではなく貝を食べる魚もいます。クロダイはその代表でムール貝や蟹・エビなどをよく食べています。ムール貝は岸壁や岩礁にかたまって生息していますが、クロダイの歯はこれを食べやすいように前歯がとがっています。とがった前歯で貝ごと噛んで口に含み、奥歯でかみ砕いて飲み込むようです。奥歯はかみ砕き易いように歯が丸く半球状で互いに離れて2〜3列に並んでいます。一定時間が経過すると飲み込んだ貝殻をはき出すので、クロダイをつかまえるとカンコの中が黒い貝の破片だらけになります。

カレイは一見すると歯がないんですが、口の中にヤスリのような歯があります。エサの種類は豊富でミジと呼んでいる小さな貝、ゴカイ、小さな蟹・エビ、アサリのメ(水管)、果てはコウナゴまで食べます。アサリのメなど触れたらすぐに貝の中に引っ込んでしまうのによく食べられるものだと感心します。きっとヤスリのような歯のおかげですね。

先日クロダイの胃の中から茶色くなった未消化のアオサが出てきました。これは初めて見たので少々驚きました。というのも、クロダイは草食ではなくその腸は植物であるアオサを消化できるようにはなってないはずです。アオサについていた小さい蟹をアオサごと食べてしまったのか?、それともアオサに含まれる特定のビタミンを補給するために食べたのか?。身近なはずのクロダイなのですがわかりません。つくづく生物って不思議だと思います。

クロダイの歯


カレイのよく食べるミジ(大:長さ2.5cm)





■今週のゴーヘー

○6月3日(火)  <大ゴチ〜>

朝内海(うつみ)前で3クリやって大ゴチを4本つかまえた。うち1本は頭にキズがあり、1本はシッポが少し擦れていた。頭の傷はたぶんマンガ(底引き漁)によるものだろう、これはしかたない。シッポのスレは網に絡まっていたためだ。これもどうにもならない。大ゴチ以外にも小さいコチが10本ほど獲れたんで、朝から大漁だ(^_^)。

この後小野浦でやったらものすごい量のアオサが網にかかってしまった。しかたなく小野浦を諦めてイワテ(北側)に上り奥田・境と網をやりながら移動した。しかし2クリおきぐらいにアオサが大量に網についてきた。毎回小さいコチが1本か2本かかり途中大ゴチも1本かかったんでガマンしてやってるけど、そうでなかったら絶対やらない。こんな状態なんでいつまでたってもアオサが網からとれず、結局帰る時になってもたくさんのアオサが網についたままだった。

今日の札場(ふだば:市場)は仲買が全員揃っていて、全体的に値がよかった。中でもうちの大ゴチ3本は9,600円の値が付いた。1本3,200円!。今日売った全員の中で一番の高値だったんでとても嬉しかった。


○6月4日(水)  <え〜、邪魔なんですけど>

台風が日本の南の海上を北東方向に進んでいて午後3時頃から雨との予報だったが、天気の崩れは思いの外早く11時には小雨が降ってきてお昼近くには土砂降りになった。今日は起きるのも遅かったんで尾張(半島の東側)で漁をしていたため、雨が降り出すとすぐに帰ってきた。

港に戻ってきたら札場の前でシロメ引きの船が方向転換をしており、舳先をこちらに向けたかとおもったら錨を投下し、そのままゴスタン(後進)で札場の岸壁に近づきはじめた。どうやら積んでいる網の入れ換えをやるみたい。時々ここで網の積み替えを行う船があるけど、獲ってきた魚を札場の水槽に揚げるカレ網の船にとっては実に迷惑な行為。今日もこの船のために帰ってきたカレ網の船は岸壁につける場所に困ってしまい大混雑。ほとんどのシロメ引きの船は他で網を積み替えるのに、どうしてこの船はここでやるんだろう?

そうか、今日は雨が降ってきたからか(^^ゞ。


○6月5日(木)  <網汚れ>

朝内海の消波ブロック前で二クリやってコチ8本をつかまえた。大ゴチ1本、中ゴチ3本を含む絶好のスタートだった。しかしその後内海の浜前で網にアオサをつけてからが良くなかった。小野浦で網をやった2回とも、初めから終わりまでびっしりとアオサや小さな木の枝のような海藻がつき、網に絡まってしまってまったくとれない。こうなってしまうともう魚はかからず、10時半にはやめて帰ってきた。

帰ってきてから網を揃え(汚れを取って破れを繕う)はじめたんだけど、1時間かかってどうにか1反終わる程度。2人がかりで昼飯と札場を挟んで11時半から5時半までかかってようやく全7反を揃え終わった。お尻痛〜、背中痛〜。


○6月6日(金)  <暑い〜>

昨日の網の汚れに参ったせいか、今日はうちだけでなく皆オクゴオリを目指して走っていた。しばらく網をやっていないから少しぐらい漁があるかもしれないと、淡い期待を持って船を走らせる。

黒部で最初に網を入れ次第に東へ移動していった。どこもコチやカレイが1つ2つずつかかり悪くはない。第一汚れないのが良い。しかし江比間に近づいたらさっぱり魚がかからなくなった。みんなも「これなら汚れても魚がいる西浦の方がいい」なんて無線で話してるほど。

魚が獲れないのに加え暑いというのはやってられない。大量のクラゲの中に網をやったのを最後に11時半で切り上げてきた。午後は船を上げる(ドックに上げる)つもりだったらしいが、漁協の係員が午後留守にするとのことだったんで札場が終わってから上げた。上げると早速送水ポンプで水を噴射して船の喫水から下の汚れを洗い流した。明日はカーペン(船舶用赤ペンキ)を塗る予定。


○6月7日(土)  <カーペン塗り>

カーペン塗りはゴーヘー父が一足早く朝7時からはじめた。ゴーヘーは40分ほど遅れて船台へ行きすぐにカーペン塗りを始めた。8時半には終わりペラの汚れをサンドペーパーで落として作業終了。使わない網を軽トラに積み倉庫に移して10時前にはうちに戻ってきた。暑くなる前に終わって良かった。後は夕方まで乾かして午後4時に船台から海に下ろした。


○6月8日(日)  <朝飯前の大漁>

朝4時半からまた内海の消波ブロック前で漁を始めた。2クリ目でコチ9本(うち大2)、3クリ目でコチ10本(うち大1)と、まさに朝飯前の大漁だった。ほとんどが小さいコチであまりに小さいヤツは逃がしたんで、実際に網にかかった数は更に5〜6本多いはずだ。コチがかたまってかかるようになって嬉しい。

その後もコチやゴイカ(コウイカ)がよくかかり結局コチだけで40本以上獲れた。ゴイカも6つ、アオリイカも3つ獲れた。大ゴチは4本あったんでこれだけで1万円。全部合計でも3万円以上の水揚げとなり、今月2度目の大台だった。嬉しい〜(^_^)。

ゴイカは他のゴイカや魚をすぐに食べようとするんで共食いしないように注意してたんだけど、港に戻ってくるまでに2つ犠牲になってしまった。しかたなく死んだゴイカはうちに持って帰ってきた。今日の値だと1つ500円だから1,000円分の刺身&おかずとなる・・・かなり贅沢な気がする(笑)。


○6月9日(月)  <連続大漁>

今日も内海の消波ブロック前で漁を始めた。小さいコチを中心に3クリで14・5本のコチをつかまえ、また朝飯前からカンコの中が賑わった(嬉)。ただこの3クリ目で網を海底の石にひっかけて2カ所大きく破ってしまった。急いで代わりの網と交換し内海の浜前へ行き3クリやる。また大ゴチ2本を含むコチ9本をつかまえた。

8時に高峯の南に下り3クリやって、特大の大ゴチ1本、普通の(笑)大ゴチ3本を含むコチ20本程をつかまえた。この後内海の消波ブロックの沖でコチを4本つかまえたんだけど、9時頃から吹き始めていたマゼが急に強くなってきたんで、網を揚げ終わるとすぐに帰ってきた。丁度10時半だった。

札場に戻って魚を水槽の上げる時はコチが多すぎて大変だった(笑)。小さいコチばかりだけど微妙に大きさが違う。あまりに小さいコチはすぐに逃がしたんだけど、カンコから上げてみると案外混じっていた。小さい方から順にサイズを揃えてカゴに分け、小さいコチが2カゴ、それよりちょっと大きいのが2カゴ、さらにわずかに大きいコチが1カゴ、やや小さめの大ゴチが1カゴ、特大大ゴチを入れたカゴが1カゴで合計7カゴにもなった。

肝心の値段の方だが、コチが小さめでデン腹(精巣・卵巣が大きくなった)になってきてるんでやや安かった。特大大ゴチは大ゴチ2本と合わせて売ったんだけど、特大大ゴチのシッポが赤く擦れていたんで3本で7,500円しかしなかった。かなり残念。


○6月11日(水)  <梅雨入り>

昨日梅雨入りした。今日も雨かと思いきや朝雨は止み風も随分収まっており、4時に飛び起きて出かけた。

船だまりにはOA丸とYS丸がいた。TA丸はまだ来ていなかったけど、その他の連中はもう出たとのこと。風が気になったけど出ることにした。

北っぽ(北よりの風)が吹いている中皆西浦(常滑方面)へ行ったけど、随分下波(うねり)がある様子だった。うちの船だけここ尾張(半島東側)でやるつもりらしく、浦口を出るとイワテ(北側)へ向けて走り出した。程なく海田のツキ磯に着き網を入れた。

6時頃からだろうか、急に風が変わり東風が吹いてきて波も高くなってきた。三河組が早々に帰るも西浦組は誰も帰る気配なし。波は船をゴロンゴロンと横に揺らしており、船上でしゃがんだ折り丁度後ろ側(船の右)から波をもらい、船がぐらっと傾いて頭から海の中へダイブしそうになることが2回あった。ちょっと焦る。この揺れの中8時半までガマンして網をやってたけど、さすがに限界に達し帰ってきた。


○6月12日(木)  <特大大ゴチ2本>

再び内海の消波ブロック前に行った。今朝は昨日準備しておいたテグスの刺し網をやってみた。大ゴチを狙った網で一枚網なんで汚れに強い。網は長く延ばしてやり、その近辺でガランガランを引いて魚を追い、引き終わるとすぐに網をあげた。しかしコチは小さいヤツが1本かかっていただけで、後はシンマキ(シタビラメ)が5枚かかっていただけだった。

2クリ目からはいつものようにカレ網に戻った。内海前から高峯前までをあっちこっち移動して網をやった。高峯前では特大の大ゴチを2本もつかまえた。9日の特大大ゴチとほぼ同じ大きさで今度は体のどこも擦れなかった。よし!。

この高峯前で網を揚げている時、いきなり船名を呼ばれてビックリして振り向くと地元の釣り船らしき船がそばにいた。お客さんはなく老船長一人で乗っており、「おい、もうちょっと沖をやってくれい」と拡声器で怒鳴られた。こちらはその後も黙々と網をあげ、その間その船はずっとそばにいた。見張っていた感じだ。しかたなく網を上げ終わるとすぐに帰ってきて、大井前で3クリやった。やってる間に東風が強く吹いてきて結局今日もお昼前に切り上げた。

札場は昨日から値が高く、今日のきれいな特大大ゴチ2本は9,890円の値が付いた。1本4,900円以上とはまたビックリ!


■エピローグ

世間は梅雨に入って毎日雨がシトシト降っていて、急にじめじめしてきました。しかしこの梅雨をものともせず、6月に入ってうちは絶好調です。小さいコチばかりでなく大ゴチや去年は1本か2本しか獲れなかった特大大ゴチがすでに3本も獲れました。今週後半は札場の値段もいつになく良かったし、これで休みがなければもっとイイです(笑)。

まぁ、とはいえ、休みがないと「海が休めない」状態となるんで魚のかかりが悪くなます。適度にお休みがある方がいいです(^_^;)。


■次回予告

Vol.44 「デン腹」 2003年6月28日(土)発行予定


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