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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.44 デン腹
                           2003年6月28日発行
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■デン腹

「デン腹」とは魚の腹が膨れて大きくなった状態を言います。デン腹と呼ぶほど腹が膨れているのはエサをたくさん食べたからではなく、お腹の中に「子」があるからです。もちろんこの場合の「子」とは稚魚のことではなく、卵巣・精巣のことをさします。

産卵の時期が近づいてくると、魚の卵巣・精巣は次第に大きくなってきます。どの魚もお腹の中が卵巣・精巣でいっぱいになるほどまで大きくなります。このような状態のお腹は外から見てもでっぷりと膨らんでよくわかります。この膨らんだ状態を「デン腹」と呼んでいます。

カレ網の漁師が特にデン腹という言葉を使う魚はコチです。コチのお腹がぷっくりと膨らんで丸太ん棒のようになっていると「デン腹になってきたなぁ〜」と言って、コチの横っ腹をさすったりします(さすることに意味はなし、笑)。大ゴチがデン腹になると体が一層大きくなるため、大きな頭と相まって迫力があります。

梅雨時の今はコチがデン腹になるため値段が少し下がります。体重の十何%かが「子」の重さになってしまうので、値段が下がるのもわかる気がします。

昔ゴーヘー父がまだ独身だった頃のある日の夕飯時、コチの煮付けを食べていた時のことでした。今は捨ててしまっている「子」も当時は煮付けにして食べていたそうです。卵巣にはおそらく数千〜数万個の卵が入っていたことでしょう。おじいさん(ゴーヘー爺)が皿に盛ったその卵巣を箸でつつきながら言ったそうです。

「生きとる間にこんだけのコチがつかめたらなぁ」
(自分が生きている間にこれだけたくさんのコチをつかむことができたらなぁ)

たしかに一生カレ網の漁師をしていても、1匹のコチの腹にある卵の数ほどもコチをつかまえることはできません。おじいさんはきっと、一人の人間の出来ることなんてコチ1本に及ばないと思ったのでしょう。それと同時に、神様(自然)はコチ1本の中にも大きな可能性を仕込んでいることに感心したんだと思います。

さてさて、ゴーヘーは生きている間にどれだけのコチをつかまえることができるでしょうか(^^ゞ。




■今週のゴーヘー

○6月15日(日)  <ラッキー>

出る時はまだ降っていなかった雨が朝6時頃から降り出した。降り始めはカッパを着ずにいたんでシャツまで濡れてしまった。小雨でパラパラと降ってくるだけなんだけど、降ったり止んだりを繰り返しなんともウツウツした気分にさせられる。

高峯から内海前で3クリ、上野間で7クリやった。どちらも小中のコチが4〜5本ずつかかりなかなかの大漁。これに大ゴチが1本か2本かかればいうことなしなんだけど、そうそううまくはいかない。また網を岩に引っかけて2カ所も大きく破ったし、坂井前でアオリイカを狙ってやった時に代わりにかかってきたのは大量のアオサだった。11時から40分もかけて網をあげ、その後その沖へ出てアオサ取りのために一クリやった。上げ終わったのは12時半。そのまま昼飯を食べながら帰ってきた。

今日の札場(ふだば:市場)も仲買が全員揃っていて、実に値がよかった。たぶん他の漁港でも魚があがっていないんだろう。うちは今日一番売りだったんで、ゴーヘーは真っ先に魚を売りに出した。するといつもは3,000円しない小コチ10本がいきなり5,000円弱!。それ以後も6〜7本の小中ゴチがどれも5,000〜7,000円、スレのないよい中ゴチ7本など9,400円もした。普段なら5,000円ちょっとの値しか付かないから2倍近い高値だ。こういう高値の日に魚が多いと実にラッキーだ。もし大ゴチがあったらどんな値が付いただろうなぁ(笑)。


○6月16日(月)  <梶島>

久しぶりに朝3時前に起きた。「雨の降る中、こんな早く起きてどこへ行くつもりなんだろう」と思っていたら、片道わずか30分の梶島へ向かった。小雨降る中梶島へ着いた時はまだ薄暗かった。

HA丸が最近ずっと梶島へ通っていたが、我々は久しぶりなので漁がどんな状況かわからない。とにかく網をやってみる。驚いたのは梶島のすぐ北側にアサリマンガの船がいくつもやってきたことだ。少なくともここ3年間は一度もないことだ。10数隻の船がマンガをひっぱってぐるぐると船を走らせている。じきに海水も濁り梶島の北側ではカレ網ができなくなった。

雨も止み島の西へ移動し7クリやってみる。中ゴチが1・2本ずつかかるが時々カラもある。桟橋の東を1つやった後梶島を後にして矢梨へ移動。しかしちょっと都合が悪く大井の鳶が先へ下ってきて一クリやった。東風が吹き雨がしきりに降ってきてもはややる気もなく、上げ終わるとそのまま港に戻った。結局コチが3セイロ、カレイが1セイロとゴイカ、ハゴ(クロダイ)数枚だった。

札場では中ゴチ1セイロが唯一値をとばし9,000円もした。よかった〜。


○6月17日(火)  <雨>

今日も3時起きだ。外は雨、しかも昨日より少し強く降っている。風もヤマゼ(南東の風)が吹いていて船着き場に行ってもHA丸以外誰も来ていない。彼が梶島へ向けて走っていくのを見て、ゴーヘー父も出ることを決めた。今日船を出したのはこの2ハイだけだ。

梶島へ着いてHA丸は磯の東へ、我々は西へ網を入れた。網を揚げている最中にヤマゼが強くなってきたんで揚げ次第帰ってきた。小さなカレイ1枚だけなんで油銭(燃料代)がもったいないなぁ。

大井に近づいたら波も風も急に凪いできたんで急きょ海田(かいた)へ船を向けた。海田で4クリやってコチ2本、クロダイ3枚、タコ、ベラが獲れた。その後矢梨の河口で一クリやって何もかからず今日は諦めた。雨の降る中とんだ無駄足だった。


○6月18日(水)  <網がよく破れてる>

昨夜の天気予報に反して起きた時は雨が降っていなかった。しかし梅雨前線が南に停滞し沖縄に台風も来てるとのことで雨が降り出すのは時間の問題。オクゴオリの江比間に移動した8時半頃からついに雨が降り出した。漁の方は先週までの大漁が夢か幻のような少なさ。毎回カレイかコチが1つか2つしかかからない。江比間で大ガレイが5枚かかったことが夢のよう(苦笑)。

今日を含むこの三日間、三河湾で漁をしたんでガニ(イシガニ)にずいぶん網を咬みやぶられている。帰ってきてからはその破れをきよった(繕った)んだけど、1時半から5時半まで二人がかりでやって5反しかきよえなかった。両端の2反は手つかずのまま。きよった網には人の頭が抜けるくらいの大破れがあったりしてた。これじゃかかる魚もかからなくなるね〜。

札場では最近値がよい。休み明けや昨日のようにお休みになってしまった翌日は特に良い。去年は同じ状況でも魚が安かったから今年はちょっと違うようだ。今日は江比間でつかまえた大ガレイ5枚+1枚で9,890円もした。また、YS丸は大ゴチ2ケタで2万5千円くらいしてた、すごい。


○6月19日(木)  <朝が遅い>

今年は皆朝が遅めだ。去年までは今頃朝3時には出ていたはずだけど、今朝一番に船を出したのは我々でそれも朝3時50分頃。東の空が少し明るくなり始めていた。

高峯前で網を入れ内海の消波ブロック前までの間で5クリやった。その後上野間(かみのま)へ行き6クリやる。2度カラがあり大きなアオサがたくさん網についた時もあったけど、コチが5本獲れた時もあってまずまずだ。11時頃北東の空に風雲らしき雲が流れてきたんで帰るつもりで下った。しばらく走っても風が吹いてくる気配がしなかったんで、高峯前で網をやってみた。他の船は我々の前を通過してどんどん帰っていくのでちょっと寂しい(笑)。網を上げ終わるとすぐに帰ってきた。

で、今日の札場も値がよかった。小コチが1本400〜500円くらいだったし、うちの中ゴチ1ケタ(5本セット、1本擦れあり)は9,890円もした。普段は擦れてるコチがあるとそれに引きずられて1ケタの値段が下がるのに、今日はほとんど関係なかった。


○6月22日(日)  <梶島で大漁>

朝梶島の長瀬へ行った。例年この時期にここ長瀬でコチが大漁になる。それがいつかは例年わからないので、根良く通って初めて大漁にあたる。しかし今年の6月はHA丸がほぼ毎日梶島へ通っている。通っても通ってもなかなか大漁にならないんで、ここ数日は他へ浮気してた。今朝はその間隙をついた恰好だ。

今朝の長瀬の一クリ目はコチが7本、カレイ2枚、アイナメ1本だった。それから7本、15本、9本と立て続けにかかった。1度に20本を越す大漁にはならなかったけどカンコの中はあっという間にコチでいっぱいになった。昼までの間でこの長瀬から北西側を一通りやり尽くした。コチだけで9セイロ・約60本もあった。他にカレイを1セイロ、ハゴを18枚。

ガニ(イシガニ)もたくさんかかったんで、網は破れてボロボロになった。夕方5時半まできよってて(繕っていて)も半反しかきよえなかった。子供の頭が通り抜けられそうな破れがたくさんあるんだもん。

札場の結果は全部で7万円だった。ゴーヘーが漁師になって1日7万の水揚げは初めてだ。1番売りだったんで魚を売りに来た全員がじっくりと見ていった。明日は梶島が大にぎわいになるだろうな、みんな破れてもいい古い網に積み替えて。


○6月23日(月)  <梶島空振り>

朝梶島へ行くとすでにHA丸、ST丸、FH丸の3バイの船がいた。HA丸はすでに長瀬に網をやってぼっている(追っている)最中だった。他の2ハイはそれぞれ思い思いの場所に網をやったけど、ゴーヘー父はHA丸が半分ほど網を揚げるのを待って、HA丸のすぐそばから網を入れた。昔よくこうやってHA丸がゴーヘー父の船のそばに網をやったらしい。意趣返しか?(苦笑)。

しかしかかった魚が小カレイと小ハゴ(クロダイ)では意味がない。この後島の東へ移動してもさっぱり魚がかからない。他の船もさっぱりらしくST丸、HA丸の2ハイは3クリやった後、西浦向けて走っていった。

昨日のゴーヘー達の大漁で皆勇んで来たけど結果は散々。例年こんなはずではないんで皆、特にHA丸の歯ぎしりが聞こえるようだった(苦笑)。昨日の夕方から空気がすこしひんやりしてたんで、夜の間にやや冷えたせいかもしれない。

しかしこの後長瀬の西で網をやったFH丸にはコチが10本ぐらいかかっていた。我々もそばで2回やってコチ8本をつかまえた。網が破れることを考えるとこれではソロバンが合わないけど、全然ないよりずっといい。9時頃FH丸と江比間へ行きそこで昼までやってきた。カレイが5・6枚とれただけだった。


○6月25日(水)  <9時出>

早朝から雨がザーザー降りでのんびりと8時まで寝てた。9時になったら随分凪いでいてすでに船を出している人がいたんで、急に沖に(漁に)出ることになった。

時間も遅いんで近場でやるしかなくクマセ、ホウベ、トンビ、海田と網をやった。雨で水が濁っていてあまりかかるような気がしないが、クマセだけはコチが5本もかかった。トンビや海田ではハゴ(クロダイ)が多かったけど、まだ値が安いからあまり嬉しくない。


○6月26日(木)  <散々>

昨夜もちょっと冷えてたから梶島では魚がかからないと思うのだけど、HA丸、FH丸とうちの3バイは梶島が罪になって(気になって)また梶島へ行った。

我々が梶島へ着いたら長瀬でHA丸が丁度網を揚げ始めたところだった。魚は案の定ほとんどかかっていない。そこでゴーヘー父は船を梶島の東へ回して桟橋の西側へ網を入れた。我々が網を揚げている最中にHA丸もこちら側へやってきて、それから2ハイで競うように網をやったけどどちらもコチが1・2本かカレイが1・2枚程度しか獲れなかった。FH丸は2クリやった後、HA丸は4クリやった後に尾張へ走っていった。

朝やった桟橋の西で網をやったら珍しく大きなアオリイカがかかった。札場で2,000円くらいだろな。これをカンコに入れる時、ゴーヘーがカンコに入れたカゴが手で押さえてもまだ沈みきらないうちに、ゴーヘー父があわくって(あわてて)イカをカゴに入れた。そのとき頭の先が「コツン」とカゴの底に当たった。確かな手応えがカゴを押さえる手に伝わってきたので当たったのは間違いない。去年頭の先をカゴの底に当てたアオリイカはじきに死んでしまったことがあった。今日のイカもカゴに入れた後元気がなく、はたして1時間もしないうちに死んでしまった。あ〜、もったいない。

イカが死んだ後、田原町へ行った。コチを狙ったんだけど、2クリ目でアサリかきに来たテンマ船の漁師に「ちょっとオカ(陸側)へ入りすぎやないか」と注意された。久しぶりに来た船に注意するなんて管理が行き届いている・・・というか、魚5・6匹しか取らないのに、そこまで厳しく拒まなくてもいいと思うけどなぁ。先週の山海といい今日の田原町といい、カレ網がしづらいなぁ。


■エピローグ

今年の東海地方の梅雨は例年より雨が少ないらしく、去年は6月一月で14日しか漁に出ていませんが、今年はすでに18日出ています。順調にいけばあと2日出られるでしょう。去年より魚の値段もよく魚の量もそこそこあって、来月もこの調子が続いてほしいものです。

魚の値が良いのは最近の日経平均の上昇とも何か関係があるかもしれない、と憶測してます(笑)。経済状態が少し上向きになってきてるのでしょうか。

それにしても梶島での大漁は夢まぼろしのようでした(苦笑)。


■次回予告

Vol.45 「海で遊ぶ時」 2003年7月12日(土)発行予定


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