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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.47 アイ
                                    2003年8月9日発行
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■アイ

アイとは「アイゴ」のことでちゃんとした魚です。人の「愛」とはぜんぜん関係ありません(笑)。

以前エイに刺された話(Vol.42)を書き、エイはかなり危険な魚であることが読者の皆さんにはご理解頂けたと思います。このアイも実はエイを上回る危険な魚であり、網にかかるばかりでなく釣りでもよく釣れる魚ですので、釣り人の皆さんはその危険さを充分ご承知だと思います。カレ網にとっては「第一級危険魚」と呼ぶにふさわしい魚です。

エイのトゲはシッポについているだけなのでそれさえ注意して取ってしまえば、後の扱いは体がヌルヌルしていることを除けば楽なものです。ところがアイは背びれ、胸びれ、腹びれのすべてに毒があり、背びれの一番前の付け根には前向きにトゲがついていてそこに網糸が挟まるとなかなか取れません。こんな「全身毒だらけ」の魚が網に絡まって海から上がってきたときには、「うわ〜っ」と思わず声が出ます。死んでれば暴れないから網からはずしやすいと、棍棒か何かで叩いた拍子に跳ねてどこかのヒレ先が手に当たろうものなら激痛・痺れ・腫れの3拍子で歓迎してくれます(泣)。

アイが網に絡まって上がってきたら、うちではあまり殺さずにひたすら慎重に網からはずします。アイは自分が毒を持っていることを承知しているのか、船上に揚げても他の魚のように酷く暴れたりしません。おとなしく口をパクパクさせているか、暴れても体を小刻みに左右に振る程度。クロダイのように飛び跳ねて掴まえられないほど暴ることは滅多にありません。

おとなしくしているアイをできるだけ刺激しないように、網の袋の口を捜して一重二重とアイに重なっている網を慎重に剥いていきます。「暴れませんように」と念じながらアイの頭を掴んで網から引っ張り出すこともよくします。時間がかかりすぎるとアイも呼吸が苦しくなるんで暴れることもあり、次第に変わっていく体の色を見ながらの作業となります。

アイは海から上がってきた瞬間はきれいでまだらなうす赤茶色をしています。これが死ぬと黄土色になり実に不味そうな色となります。実際その身は白身なのに少し臭うので刺身などでは慣れていても食べづらいです。アイは草食でお腹に長〜い腸を持っており、身の臭みはおそらく食べている海藻の種類のせいでしょう。フライにすると臭みも消えて柔らかい身がなかなかおいしいです。

かように扱いづらく身もちょっと臭うアイは、当然仲買も買ってくれません。白身フライにするならアイを使わなくても他にいくらでも魚がありますからね。だからカレ網漁師もアイは食べる時以外は持って帰ってきませんし、大抵は叩き殺して捨てているようです。以前防波堤でアイを釣った釣り人を見かけましたが、やはり叩いてからハリスを切って捨てていました。

アイはその語感とは裏腹に、叩かれて捨てられてばかりです(汗)。

アイ





■今週のゴーヘー

○7月29日(火)  <梶島無惨>

昨夜から吹いていた東風が止み今朝は雨が降って北っぽ(北の風)がふわふわと吹いていた。いつもより1時間遅いけど出かけることした。船着き場のカレ
網船はすでにいなくなっていた。

雨でいつもより暗い中を一色前の岸の灯りが見えるあたりまで船を進め網をやった。一色以外はどこもみえないからヤマテはほとんどわからない。皆おおよその見当で網をやってるんだろうなぁ。魚の方はさっぱりで矢作の河口でカレイやコチをいくつか掴まえた程度だった。大ゴチが1本いたのがわずかな救い。10時に大瀬まで行き、そこから更に梶島まで走った。

今日の梶島にはHA丸がいないから魚もいないかもしれないがとにかくやってみる。しかし長瀬でコチ1+カレイ1、水被りで小コチ1、桟橋0と散々だった。今年は水被りにコチやカレイがたくさんいたんだけど、とうとうHA丸に壊されて(やり尽くされて)しまった。当分魚気ができないだろなぁ。

昼飯を食べた後、島西で網をやろうとしたらまたリモコンが利かなくなった。ケーブルの中の線が切れたんだろう。網をやらずに帰るかと思いきやゴーヘー父は「網をやれ」という。仕方なく網をやる。網揚げはゴーヘーが行いゴーヘー父はブリッジで船を操作た。ガニやゴウナ(ヤドカリ)をはずす間は網揚げができないが、はずすのをのんびり待っている気の長いゴーヘー父ではない(笑)。すぐにオモテにやってきて網を揚げ、少し揚げてはまたブリッジに戻るを繰り返していた。ケーブルは交換することになった。

札場では魚の値段が良かった。シッポが擦れた1本を含む中ゴチ4本で7,400円、尾っぽが赤い大ゴチ1本で4,000円!。ここ最近やや安かったんで2倍近い値段にちょっとビックリだった。


○7月30日(水)  <11時出漁>

今日は雨と風が激しくてお休み、のはずだったが、凪いできたんでちょっと早い昼飯を食べてから11時に船を出した。今日出ているのはST丸とHA丸だけ。こんな日にでなくてもいいのにね〜。

網は鳶ヶ崎と海田でやった。どちらもクロダイを狙ったんだけどクロ2枚+ハゴ(小さいクロダイ)3枚しか獲れなかった。他にコチ2本カレイ3枚。雨が降ったり止んだりする中でやってて結局網を破っただけみたい。


○7月31日(木)  <魚がいな〜い>

梶島へ行くとまたHA丸が水被りで網をやっていた。いないはずの魚もあの人が網をやるとかかるのか?(笑)。

こちらは島西で一クラやってから東まで行って2クラやった後更に田原町まで走った。ここで2クラやって今度は江比間で2クラ。10時20分頃福江までやってきた。クロダイを狙うもまた外れ、黒部へ戻って2クラやったらお昼になった。全部でコチが4・5本、カレイ4・5枚にクロダイ4枚。三河湾を4分の3周してたったこれだけ・・・・。

西浦へ行ったFH丸はただ1パイ大漁だった。今日は札場の値も普段も倍近くだったんで今年一番の水揚げだったようだ。明日は西浦だ〜!!


○8月1日(金)  <大野>

今年初めて大野まで行った。昨日FH丸が大漁だった沖の瀬(空港島南)で網をやった後だったんで大野に着いたのは8時半頃と随分遅かった。ST丸が2くら目を揚げている最中でそばによって行き話しを聞く。HA丸が朝大野に直行して網をやっているのでどこが空いた(網をやっていない)場所かもうさっぱりわからない。とにかく「自分の場」で網をやってみたが魚はまったくかからなかった。

この大野には海中にシマがあって昔から魚がよく獲れた場所だったようだが、近年はHA丸、ST丸が夏場毎日のように通いシマの端ギリギリに網をやって主にクロダイを獲っていた。地元の漁師にとっては商売敵となるのでシマのまわりに竹を打ち込んで網ができないようにしていたのだが、それでも竹とシマの端を狙って彼らが網をやっていたので、今年は竹を打つ範囲が200m四方に広がっていた。もやはシマにはまったく近寄れない。彼らの網のやり方が酷すぎたのだ。カレ網はよその地先でやるショウバイだから少し遠慮をしないとすぐに閉め出されてしまう。大野ではもはやまともな漁ができなくなった。


○8月3日(日)  <梶島大漁>

先週金曜日の西浦での漁が散々だったんで、今朝は懲りずにまた梶島へ行った。HA丸はもはや来ていない(苦笑)。

いつものように長瀬で網をやると、いなかったはずの魚がまた集まってきていて、コチが15本、カレイ4枚、ハゴ1枚といきなり大漁だった(嬉)。その後も長瀬周辺や水被り周辺、赤灯台東や桟橋近辺でコチやカレイが2〜6ずつかかった。コチは中ゴチが多く色も良く、結局コチが40本余り、カレイが2ケタ分、ハゴ1カゴ、ガニ・シャコなどが獲れた。もちろん大漁。日が昇って水温が上がるに連れコチが弱ってきてんで少し早いけど12時半に帰ってきた。

帰ってきて札場で魚を水槽に上げていたら、釣り船やってる漁師が水槽にやってきた。エサのエビを取りに来たのかと思ったら奥の水槽の中に釣った大マタカ(スズキ)を入れていたようで、それを魚屋に引き渡すつもりのようだった。

彼は水槽から魚をすくう際に水槽の栓を抜いてしまい、手前の水槽に魚を入れていた我々は水が来なくなって大いに慌てた。暑くてコチが弱っていたから水温の低いここの水槽に入れておきたかったからね。すぐに他の水槽に魚を移したのでうちの魚は死なずに済んだけど、水の来なくなった水槽にはバカ網が掴まえた大マタカも入っていてそれを承知で上の水槽の水を抜いた。この水槽はカレ網専用の水槽で彼らはそれを「勝手に」借りているのだからもう少し遠慮すべきだし、何より勝手に水を抜くな。すぐにゴーヘー父が「水を抜くな」と怒鳴ったけど、蛙の面に小便でまったく意に介さない様子。丁度やってきた魚屋に魚を渡して逃げるように帰っていった。

こういうヤツが客商売をしていてお客の評判も良いのだから、世の中おかしいよなぁ。


○8月4日(月)  <西浦大漁>

今日は船を引く(ドックに揚げる)予定だったんでまた梶島へ行った。

長瀬ではコチ7本、カレイ4枚、アイナメ3本。水被りでは大ヒラメ(全長50cmくらい)がかかってちょっとビックリしたりで、今日も終わりまでカラは一度もなかった。コチが3セイロ分、カレイ1セイロ分とおよそ昨日の半分。

船を揚げようと昼前に港に戻ってきたら、船台(ドック)はすでに船でいっぱいで揚げられなかった。予約してなかったみたいだ。片名(かたな)の船台に揚げようと先方へ電話しても今日は空きがなくてダメだった。せっかく早く帰ってきたのにね・・・。

夕方の札場では西浦組が皆大漁だった。朝から無線で誰もしゃべらんかったし、途中で話した時にはコチが5本10本とかかった話だったからなぁ。SK丸は約7万、FH丸・TA丸はそれぞれ約6万と今日のうちの3倍近い水揚げだった。今日のうちは7月平均よりちょっと良いくらいの水揚げだったから、本来なら嬉しいはずだけどなんだかちっとも嬉しくない。

まぁ、他人の水揚げはしょせん他人のものだから、多くても少なくてもうちには関係ない話なんだけどね〜(苦笑)。


○8月5日(火)  <リモコンケーブル交換代金>

5月に修理し先月ついに交換したリモコンケーブルの請求書が届いた。修理分が8,000円、交換分が34,000円(工賃+部品代)で合計42,000円也。たかだかケーブル1本の交換でとんでもない料金を請求するものだ。修理分は工賃だけだから、それから考えるとケーブル代金が随分高いことになる。工賃も1時間程度の作業にしては随分高い。取りっぱぐれることも多いらしいからそのリスク分が料金に上乗せされてるんだろうが、払わない人の分を払わされてるんだよね、きっと。なんか、むかつく。


○8月6日(水)  <広瀬大漁>

月曜日西浦の広瀬で大漁だったんで、今朝はうちを含めて9ハイのカレ網が広瀬に集結。ところが最初と二クリ目はみんな魚がかからない様子だった。すぐに思い思いの場所へ移動していく。うちはもう少しイワテ(北側)へ移動して3クリ目をやったところ小コチが12本、カレイが3枚もかかった。それからその一帯を東西南北と方々へ移動してどこでもコチやカレイが数匹ずつかかった。HA丸もそばにやってきたんで、知らない人が見たら梶島と言い広瀬と言い常にいっしょに漁をしていて実に仲がいいみたいだ(苦笑)。

下りにいるOA丸とSK丸が無線でこちらの様子を「あそこを動かんから顔が見える(魚がかかる)んだらあ」とうらやましそうに話していた。ところが札場に帰ってみたらそう話していた二人ともうちを上回る大漁だ。いや、まったく信用ならん(笑)。

昼が近くなってきたら、コチが網に絡まって死んで上がってくるようになった。もうこれ以上やっても死んだコチを掴まえるだけなんで、少し早いけど切り上げて帰ってきた。結局50本程度掴まえて6本も死んでしまった。1割以上死んでいる計算、、、3,000円分くらいかな。うちに持って帰るしかない。


○8月7日(木)  <コチがたくさん死んだ>

昨日に続き広瀬で大漁だ予想された。しかし船は梶島へ向かった・・・ビックリだ。何を考えているゴーヘー父?

しかしもっとびっくりしたのは、一クリ目の長瀬でコチ19本、カレイ15枚の大漁だったことだ!。1日分を一クリで掴まえたようなものだ。水温があまり高くないんで網に絡まって死んでいたコチは2本だけで済んだし、カレイが多かったのも嬉しかった。その後梶島のどこでもコチやカレイがかかり、特に9時半頃やった水被りでは再びカレイが16枚もかかった。皆中ガレイから大ガレイばかりで今の時期奇跡に近い大漁だ。

ただ水温が高くない割りにコチがカンコの中で次々と死んでいく。たぶん網からはずしたコチをカンコに放り込む際に頭や体をぶつけるんで、弱っているコチには致命傷になったんだと思う。ゴーヘー父はしきりに不思議がっていたけど、コチを放り込んでいたのはゴーヘー父本人だ〜(;_;)。

結局9本のコチが死に大ゴチも1本死んだ。1本1,000円近くする大アイナメも死に、死んだ魚が全部生きていれば8,000円以上の値が付いたはず。弱ってダメだとわかった段階ですぐに氷にしておいたので、たぶん刺身でも食べられるけど付いた値は1,500円。しかたないね〜。

札場ではYS丸が「梶島で大漁だっただら」と自分の大漁を棚に上げて話しかけてきた。「コチがようけ(たくさん)死んだわ」と答えたら「そや、ようけ掴めたもんだいだわ」という。「何言っとるだな、自分もこんなにようけ掴めてきて。うちの3日分もあるがな(嘘)」と言ったら、そばにいたFH丸が「そうだてや」と相づちを打つので、YS丸は黙ってしまった(笑)。

YS丸はいつもうちの梶島での漁を気にしているくせに梶島へは網をやりに来ない不思議な人。いっしょに船をつけている人の話では、梶島の情報をHA丸に話してるらしい。そうか、HA丸のスパイか!?(笑)。


■エピローグ

最近水温が上がってきたんでコチがよく死にます。すぐに氷に入れておくので鮮度は良いですが、カレ網漁師にとって鮮度は意味がないです。生きて「活きが良く」ないと銭にならんのです。

誰か氷にしたコチをせめて一本300円(箱代・送料別)くらいで買ってくれないものでしょうか(苦笑)。

氷にしたコチ(大ゴチ別)


今猛烈な強さの台風10号が近づいています。これを書いている8日夜9時頃は室戸岬のすぐ近くにあり、この後和歌山方面に向かいます。土曜の朝はここ知多半島も暴風圏内にあるかもしれません。すでにあまりの風の強さで家が揺れ、パソコンのディスプレイも小刻みに揺れています。じっと画面を見ていたらちょっと酔ったような気がします(^◇^;)。

今後台風が通過する地域の方々はご注意ください。被害に遭われた方にはお見舞い申し上げます。うちも何事もなく無事でありますように!


■次回予告

Vol.48 「船を引く」 2003年8月23日(土)発行予定


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Copyright (C) 2001-2003 Gohe.




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