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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.50 速い潮
                                    2003年9月20日発行
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■速い潮

昔田沢湖へ行った時のことです。写真で見た「たつこ像」は湖水の中に立っていましたが、実際に目にした「たつこ像」の周りには水がありませんでした。思わず友人に「ああ、丁度干潮かぁ」と言ったところ「湖に干満はない」とすぐさま突っ込まれました(笑)。ええ、その通りです。湖に干満はなくその時はたまたま湖水面が水不足で下がっていただけでした。

湖と違って海には干満があります。月と太陽の引力、月の位置ならびに地球の自転によって毎日ほぼ2回干潮と満潮を繰り返しています。干潮から満潮までの時間は大潮時は6時間10分前後、小潮時は4時間から9時間と幅があります。秋の大潮時は干満の差が約180cm、春の大潮時は約220cmにもなり、6時間程の間でこれだけの差を埋める海水が流れることになるので、当然その流れは速くなります。

最も早い時は干潮と満潮の丁度間頃となり、三河湾では場所によって流速が秒速1mくらいに達します。網をやるとボンデンやウケが波を切って見えるので相当早いです。25mプールでたとえると秒速1mだと端から端まで25秒かかることになるで、一般の方の平泳ぎくらいの速さでしょうか。この潮の流れに入ったら大人でもかなりの泳力がないと泳ぎ切れないですね。

このような速い潮の流れの中でも漁はし続けます。流れに逆らう時は流されないように少し船足を上げて進みますが、網は流されてしまうので予定していた場所にうまく沈まないことが多いです。

海底に達した網は本来垂直に立っているのが理想ですが、流れが速いと網が斜めになってしまいます。ひどい時には網自体が流れに引きずられることもあり、ガゼやコノカサ(ヒトデ)がたくさんついたりします。また流れにのってアオサが流れてきて網に大量につくことも多いです。こうなると魚を掴まえるどころの話ではなく、「アオサで船が満船」となるわけです。

斜めになって網の高さが「低く」なると魚のかかり・特にカレイのかかりが悪くなります。おそらくカレイの泳ぐ高さが丁度垂直の網の一番上あたりで、斜めに低くなった網の上をカレイが通過していくのでしょう。このため速い潮の流れをカレ網漁師は嫌います。潮が速い時はできるだけ潮がのろい場所へ行って網をやったり、ガゼやアオサなどの汚れ物が少ない場所へ行って網をやったりします。もちろん魚がいる場所じゃないと意味がないので網がやれる場所は随分限られてしまいますし、近くにそういう場所が無い時は諦めて速い潮の中で網をやります。

ただ大潮時は魚もよく流れてくる(流れに乗って泳いでくる)ので、干潮や満潮近くになって潮がのろくなれば魚がかかる可能性も高くなります。ですから大潮自体はさほど嫌ではありません。

ちなみに秋の大潮時は満潮時の潮位が春より高く、春の大潮時は干潮時の潮位が秋より低くなります。つまり春は良く「干る」わけです。このため潮干狩りは春の大潮時が適しています。





■今週のゴーヘー

○9月7日(日)  <海苔の枠>

昨日海苔の枠が入った(海に設置された)。おそらく県内で最も早い枠入れだろう。去年も早かったが今年は更に一潮早い(約2週間)気がする。その海苔枠だが去年は枠半分タアカ(岸側)に入っていてナマコ引きができなかったんで、今年は元の位置に戻してもらうようFH丸が海苔部の部長に話をしてくれていた。

しかし入った海苔枠を見たら去年より更に枠半分ほどタアカに設置されていた。話が全然通っていない。いやむしろ無視された感じだ。参ったなぁ、また今年も浦前(大井前)でナマコ引きができないよ。


○9月10日(水)  <雷雨>

朝長瀬で一クラやった後小雨の中を蒲郡まで走った。網を入れたらにわかに雨が激しくなり頭上の雲の中でピカッと光り始めた。水面は雨粒に叩かれて水が跳ね白くなり、50m程東にいる船が霞んで見えた。網を揚げ始めて数分後、その船の方向で強烈な光と共に、太い木を力任せに引き裂くようなバリバリッという轟音が響いた。どうやら海の上にカミナリが落ちたようだ。ゴーヘーは丁度しゃがもうとして足元を見た時で稲光は目撃しなかったけど、すでに明るいにもかかわらず一瞬もっと明るくなったからかなり近かったんだと思う。

この一発を最後にカミナリはなりをひそめてくれたんで良かった。海の上では逃げ場がない上に船はマストなんていうカミナリが落ちそうなものを立ててるからかなり心配だった。自分が直撃を喰らっていたら光も音も感じないだろうから、それらを感じられるだけ生きてる証拠なんで安心かも?。

ところで不思議とカミナリが落ちた漁船の話は聞かないなぁ。


○9月11日(木)  <青ガニとボラ>

梶島も三河もさっぱりだった。そのため8時40分頃には尾張に戻ってきてしまった。河和港(こうわこう)のすぐ南でクロダイを狙って網をやったけどハゴが4つに青ガニが4つ。飴屋前でハゴ10枚、青ガニ4つ。マリーナ前でハゴ4枚、青ガニ2つとクロダイを狙ってるんだか、青ガニを獲りにいってんだかわからないような状況。この後も青ガニはよく網にかかり全部で27匹獲れ、いつものカゴに溢れるほどとなった。皆大きくてずしりと重く茹でたら美味しそう。

布土(ふっと)での最後の漁を終えちょっと遅い昼飯を食べながら帰ろうとしていた。今日の布土はボラの大群があって漁をしている最中も船の前や後ろでぴょんぴょんと海面に飛び出していた。飛び上がったところをタマ(たも)ですくってやろうかと何度か構えていたけどやはりそう都合良くは飛んでこない。すくえないならいっそ船の中に飛び込んで来ないかと更に都合の良いことなどを考えていた。大きなボラは高さ1m、距離3mくらいのジャンプをするから船にも充分飛び込める(笑)。

ブリッジのすぐ後ろに立っていたゴーヘー父が突然「あちかぁ!(痛い!)」と叫んだ。何事かと思ったらゴーヘー父の足元でボラが跳ねていた。どうやら本当にボラが船に飛び込んできたようだ(笑)。正確にはゴーヘー父の前掛けと足に当たって船の中に落ちたようで、長さ50cmくらいある立派なボラ。もちろんすぐにカンコに活かした。夕飯にボラの刺身が追加されたのは言うまでもない。


○9月12日(金)  <台風14号の影響>

台風14号は九州の西にあってかなり遠いにもかかわらず、その影響で東風が強く吹いた。本来なら西浦へ行くべき日だがあえて一番波が激しい尾張に繰り出した。昨日のガニの多さに今年初めてガニ網を出してきてためだ。

浦口を出て海苔枠の沖を迂回しイワテへ走ると、浦口を同じくイワテに走ってくる船が見えた。ST丸が朝から尾張で漁をするのは珍しい。今日はこの波だから尾張はうちの船だけかとおもったんだけどなぁ。山田前でガニ網をやって更にイワテに行くと蟹川橋前でHA丸が網を揚げていた。ありゃ〜、これでは自由に網をやらせてもらえない。しかたなく矢梨(やなし)沖から河和(こうわ)の知多マリーナ前までの間で網をやった。

10時半までにガニ網を含めて8クラやったけど今日はガニが少なかった。代わりにコチが11本、カレイが5枚、クロダイが3枚獲れたんで水揚げは1万5千円ほどになった。先週までに比べると半分くらいだけどこれからこの程度の水揚げが多くなるんだよなぁ。なんとかガニを獲って水揚げの底上げをしたいものだ。


○9月15日(月)  <ラッキーなクロダイ大漁>

朝西の風が吹いていて北の船着き場ではみんなが岸壁に座って風がやむのを待っていた。その並びに加わってしばらくしたら風が弱まったんで一斉に船を出した。みんな西浦へ向かう中うちだけ尾張へ向かった。

海苔枠の沖を回って行くと風は北西に変わっていて強く吹きつけていた。もちろん波もある。西浦はかなりの波だろうから尾張に来て良かったようだ。ところが肝心の魚がさっぱりいない。7時頃風が少し弱まったんで東に船を向けた。7時半に吉田港前に着きそこで一クラ、次が梶島の水被りで一クラやったけどわざわざやってきたにもかかわらず連続でカラ。

カラついでとばかり長瀬にも網をやったところ、なんとここでクロダイとハゴが大量に網にかかってきた。ハゴだけで40枚、大きいクロダイが10枚、中のクロダイが30枚あった。あっという間にカンコはクロダイでいっぱいになってしまい腹を仰向けにし出すものまで出る始末。網を揚げてる途中で2つめのカンコのヒを抜いて大中のクロダイをそちらに移した。クロダイの他にアイも10数枚網にかかっていてはずすのにものすごく手間取った。結局この一クラに1時間15分もかかってしまった。

この後はまたさっぱりかからなくなり、11時半に布土に戻り一クラやってからお終いにした。今日は長瀬の一クラが大漁になってラッキーだった。


○9月16日(火)  <今日もラッキー?>

朝蒲郡へ行って2クラやってもカレイが5枚しか獲れなかった。更に東へ向かい豊川の河口付近で網をやってみた。過去3年間でこの場所でカレイがまともにかかったことはないんだけど、以前は大ガレイがよく獲れた場所らしい。

網を揚げ始めてすぐに本ガニ(ワタリガニ)が網にかかって上がってきた。しかも1つだけじゃなく次から次へと上がってくる。多くは網に絡まっていてツメを折らずにはずすのは一苦労なんだけど、網に絡まらずにただひっかかっているだけのヤツもあって船の上はツメに輪ゴム掛け待ちの本ガニがゴロゴロ。ゴーヘーが必死に輪ゴム掛けをやる。カンコの中のカゴはあっという間にガニで溢れてしまった。あとで数えたら37ハイもあった。

普通ならこの場での漁はこれでやめるとこなんだけど(ガニはずしは時間がかかって大変だから)、今日は魚が獲れそうにないんで急きょガニ網に変身し(笑)、すぐイワテ側にまた網をやった。すると今度はさっきよりたくさんかかってきててんやわんやの大騒ぎ。数はまたしても数えられなくて、、、たぶん50パイ以上あったと思う。

更に2クラやって30パイ以上の本ガニを掴まえた。カゴ2つにガニが溢れカンコの中は本ガニだらけになった。カレイは実に居心地が悪そう。ちょうど輪ゴムも無くなってしまいこれ以上は本ガニもいないような感じだったんで梶島へ戻ってきて昼までやっていた。その間魚はさっぱりかからず。

夕方の札場ではうちが本ガニをたくさん売るんでみんなビックリしていた。本ガニだけで3万円近くありこちらもビックリ。でもガニの体のあちこちにあるトゲで手は傷だらけになったんで、当分カレ網でガニを獲るのはやりたくない(笑)。


○9月17日(水)  <魚がいない?>

朝少し冷えて肌寒かった。もう夏も終わりのようだ。

昨日ST丸が三河でいい話をしていたんで今朝はみんな三河へ向かった。生田鼻沖で11パイの船が一斉に網をやって網のはいる隙間もないくらいだった。しかし皆魚がいないようで三クリ目にはちりぢりになってしまった。しかしイワテ(北側)の一色前の方に船が2・3バイ集まれば、みんなすぐにそこへ集結しまた一斉に網をやった。でも魚がいなくてまたちりぢり。さほど暑くないからいいけどこれが7月下旬並に暑かったらガマンできないだろね〜。

10時頃また生田に戻ってやってみたらカレイが9枚もかかった。今日一番の大漁だ。うちのカレイに気づいたのか、OA丸がすぐに西側へやってきて網をやってしまった。やろうと思ってた場所だったんで残念。しかたなくイワテへ網をやりその後は東へ出て南・南と下っていった。大ガレイが1枚ずつかかったんでいつの間にかカンコが賑わい、札場で魚を水槽に揚げる時カゴがずしりと重かった。カレイもコチも2セイロずつもあった。


○9月18日(木)  <参った>

今日はひどい一日だった。朝1時間半近くかけて本ガニを狙ってまた豊川の河口前へ行ったけど二クラやってカラで戻ってきた。梶島の長瀬で一クラやってもやっぱりカラ。生田鼻沖で二クラやっても新子が数枚でクイリョウ(家で食べる魚)を残して全部放す。一色前でもカラ。

クロダイを狙って布土まで戻るけどハゴ1枚、青ガニ1つ。この時点で10時半。知多マリーナの東まで下がって青ガニ4つしか獲れずさすがに嫌になってきた。西浦組も9時頃までは無線で泣き言ばかり言っていたけどその後パタリと静かになったんできっと漁があるんだろう。気持ちばかり焦る。

最後の一クラと思い旧都築紡績前で網をやるとようやく大ゴチ1本とカレイが4枚、ガニ3つがかかりホッとした。せっかくだからともう一クラやって小コチ2本、カレイ1枚、青ガニ1つを掴まえる。もうお昼も過ぎていてお弁当を食べながら帰ってきた。

札場では案の定西浦組は多くのコチを売っていた。特に泣き言が甚だしかった人ほど多いんで、大袈裟な泣き言はカモフラージュのつもりなんだろなぁ。ちなみに、今日の水揚げは5千円に届かず・・・・4日前のクロダイ大漁から比べると10分の1にしかならない(泣)。


○9月19日(金)  <ちょっと安堵>

今日は久しぶりにオクゴオリに行った。福江から黒部、10時頃には江比間まで行く。どこでやっても昨日と違ってカラがないため少しずつだけどカンコが賑わってきた。江比間では小型のサメが多く網に掛かったが売り物にはならないんですべて捨ててしまった。大ゴチは2本ゲットできたけど1本は体の色が悪くて案の定値段が安かった。札場では全体に値段が安かったような気がする。それでも2万の大台に乗ったから今日はこれでOK。


■エピローグ

9月半ばというのに日中はまだ30度以上になる日が続いています。さすがに朝や夜は涼しくなってきたので着実に秋は近づいているようです。

海は海苔枠が入り魚がいたりいなかったりと、しっかり秋模様になってきました。今台風15号が沖縄近辺にありますから、これが北上して過ぎ去ればいよいよ秋本番でしょう。今年もガニ網を出してガニを狙いたいです。


■次回予告

Vol.51 「景気は海から」 2003年10月4日(土)発行予定


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