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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.51 景気は海から
                                   2003年10月4日発行
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■景気は海から

ここ数年「デフレ」という言葉が定着し、官業や一部のセレブな商品を除いて物の値段が安くなってきています。収入が減少してもなお暮らしやすさが損なわれないのは、物価が下降線をたどっているからでしょう。100円ショップで物が安くが買えるのは実にありがたいことです。唯一の難点はここから100円ショップまでは車で随分走らなくちゃいけないことくらいでしょうか。

カレ網漁師にとって「景気がいい」とはずばり「魚(カレイ、コチ、クロダイなど)がたくさん獲れて単価も高い」状態です。一年のうちには「景気がいい」時もありますが、たいていそれは数日で終わってしまうものです。瞬間風速みたいなもので一年を通じて見てみれば「景気がいい」のはほんの一瞬の出来事です。

昔は「景気がいい」時期が長続きしたようです。冬は魚が獲れませんからもっぱら春〜秋の間の話だったと思いますが、数年に渡って単価が高く魚がたくさん獲れたようです。その後は逆に「景気が悪い」時がやってきたようですがそれは「景気がいい」時期ほど長くは続かなかった模様。

このようにカレ網漁師の景気も好不調が循環するのですが、この循環どうやら世間のそれより少しずれて早いようなのです。世間がまだ景気が悪いと言っている頃カレ網では単価が上がり始め魚の獲れる量が特に増えなくても水揚げ高が増加して「景気がよく」なったそうです。逆に世間の景気がまだ良い頃(近年ではバブル景気の頃)いち早く単価が低下し始めて「景気が悪く」なったそうです。バブル景気以来景気低迷は10年に及ぶわけですが当時これほど長く低迷が続くことは、それ以前の経験則から想像もしていなかったことです。

この10年余りの間にITバブルなる好景気もありましたが、その期間が短く魚の獲れる量そのものも減少してきているため、カレ網漁師の景気にはなんの影響もなかったようです。

しかし、今年の札場(市場)は例年と少し様相が違っていました。5月までは例年通りの安相場だったのですが、6月に入ると急に魚の単価が上昇し9月までの4ヶ月間ずっと例年より高めで推移しました。魚の量自体は昨年と大差ありません。もちろん瞬間的に下がることはあったのですがすぐに持ち直して平均すれば少し高い結果となりました。こんなことはゴーヘーが漁師になって丸3年で初めてのことです。いえ、この10年余りの間で初めてのことでしょう。

折しも5月下旬から日経平均株価も上昇に転じ、9月30日現在でバブル後最安値(4月28日、7,607円88銭)から34%も高くなりました(日経新聞10月1日付より)。株価は景気の先行きを示す指標とも言われています。6月、これまでにない魚の単価上昇と日経平均の上昇を見て今後景気は回復するかもしれないと考えましたが、よい単価と日経平均の上昇が4ヶ月も続いたことには正直ビックリしました。

カレ網漁師の間では「景気は海から」と言われています。9月末現在での魚の単価と日経平均のどちらも景気回復を暗示しています。デフレはまだ当分の間続くかもしれませんが、海からは景気回復の「風」が吹いてきたように感じます。





■今週のゴーヘー

○9月24日(水)  <あと一クラ>

5時ちょっと前に起きると昨夜強く吹いていた東風もすでに止んでおり、代わりに雨がざーざー降っていた。支度をしているうちに雨が小降りになり迷わず船を出した。

すでに明るくなり始めていたが海苔枠の沖を回って西浦を目指す。5分ほど遅れて他の人も出てきて海苔枠のタアカ(岸側)を走ってきた。こちらが明神様を回る頃には誰の船かわかるほど近づいてきた。

台風一過の北西の風で随分冷えてしまったんで今日はあまり魚が獲れないかもしれないが、そんな心配を振り払うように船を飛ばして野間まで行き、まだ強めの風と波に揺られながら防波柵のタアカ(岸側)で網をやった。しかし心配した通り魚は一つもかからなかった。続いて奥田で2クラやって小コチが各1本、苅谷沖で小コチ1本とカラ、と寂しい限り。すでに9時を回っていた。更に北上して空港島へ渡る橋をくぐり前島前で網をやるとハゴ3枚、黒1枚、カレイ1枚がかかった。ようやく魚がいそうな気配がしたので、イワテ(北側)へ続けて3クラやり、カレイ8枚、ハゴ5枚、コチ1本を掴まえた。ここで時刻は11時半。もう一クラやりかけたけどせっかく止んだ風がまた強く吹いてきそうな雲行きだったんで、やりかけた網を途中で止めて上げ帰ってきた。

うちが網をやりかけて止めた場所に、すぐ後からFH丸がやってきてハゴとクロダイが大漁だったという話を、夕方の札場で聞いた。一クラで1万円分以上あったみたいなので、残念だ〜。


○9月26日(金)  <不漁>

風が出てくるとの天気予報で皆出るのを渋っていたが、うちが船を出したら嫌々な様子で船を出してきた。風はたぶんソコリ(干潮時)から吹いてくるんだろう。

一昨日からの雨で川水が出てきていて尾張は海水が白く濁っていた。海底近くまでこの濁った水の状態みたい。そんな中を蟹川橋から飴屋前までで5クラやってハゴや小カレイが数枚程度。やはりこの水では魚がいない。皆も魚が掴まらなくて無線でぼやいてばかりだ。

8時過ぎに梶島へ向けて走った。梶島ではいつもの場所を順に回って網をやったが、魚がいたのは桟橋前と隣の石組みそばだけだった。この2カ所で大ガレイを中心にカレイ15枚、コチ4本が獲れたんで、魚の値段に助けられて2万円弱の水揚げになった。

他の人も似たような漁だったが、ST丸とFH丸だけは大漁だった。特にST丸はまた西浦のツキ磯で網をやってきたらしく、大グロ十数枚にハゴが5カゴ分くらいあった。札場でST丸のかごに入ったクロダイをみんなが覗いていたら、「そんなに見るな!」と彼が怒鳴っていた。魚覗いたくらいでそんなに怒らなくてもいいのにね。


○9月28日(日)  <前島>

今朝は空港島の対岸・前島を直接目指した。ここも今回の空港建設に合わせて埋め立てられている場所なので漁場が狭い。一昨日来た時カレイの顔が見えたので今朝はまっすぐここにやってきたのだが、あいにく他の船もいっしょにやってきて狭い漁場がすぐに船だらけになってしまった。

進入禁止区域にそって2クラやったらもうやる場所がなくなり、仕方なく沖に出た。こうして徐々に沖へ出て行き5クラやってからまた前島前に戻った。朝網をやった場所から今度は一クラずつ沖に出ながら下っていった。

今は大潮時(正確には昨日まで)なので本来潮が速いはずなのだけど、ここはあまり速くない。空港島と前島との間(空港島東)は潮の流れも速くなっているだろうが、おそらくここは空港島に下り潮が当たって流れが少し滞っているのだろう。一方沖の瀬(空港島の南)は下り潮が沖から流れてくる。たぶん空港島と陸との間の速い流れに引っ張られる形で潮が沖から流れてくるのだろう。

その沖の瀬にお昼前にやってきて一クラやった。コチの顔が見えたけど弁当を食べながら下って野間で最後の一クラをやった。今日も今一歩の漁だった。


○9月29日(月)  <衣浦港>

台風が日本の東を北上する影響で、今日は風が強くなってくるとの天気予報。すでに朝から北西の風が少し吹いていて北の船着き場ではみんな船を出さずにしゃべってた。普段ならその輪に加わるとこだけど風の強くなってくるまでに少しでも網をやりたくてすぐに船を出した。

浦前に出ると風と波が吹きつけてきた。その中をイワテへ走ってまず蟹川橋前で網をやった。その頃みんなが出てきてイワテに走ってきた。次に旧都築紡績沖で2クラ、知多マリーナ東で一クラやって風の中更にイワテに走り中部電力武豊火力発電所南まで北上し網をやった。ここまで来たのはゴーヘーが漁師になってから初めてだ。風が一層強くなってきたけど発電所前から延びる衣浦港の防波堤に遮られて波はさざ波程度。ここも漁が無く更にイワテに走り衣浦港内に入った。

沿岸には工場群と西岸に武豊火力、東岸に衣浦火力という2つの巨大な火力発電所がある。重油を積んだ巨大タンカーも入港するので水深は十数mあってカレ網ができる場所はごく限られている。衣浦港を中山製鋼前まで走ったけど、強風の中網をやる適当な場所がなく漁を諦めて帰ってきた。


○10月1日(水)  <冷える4年目>

朝まだ風が吹いていたけど船着き場へ行ったらみんな船を出そうとしてた。「こんなに風が吹いているのに!?」とぶつぶつ言いながら船を出したら、沖はたいした波もなく西浦へ回っても穏やかだった。意外だ。

この2日間の北西の風で随分冷えてきて沖は寒いほど。トレーナーを着てきて正解だった。最低気温が14・5度の予報だったから風に当たるとホントに寒く感じる。

今日もまた前島まで走り、日曜日と同じく前島前からその沖までの間でお昼までやる。最初と二クラめで中ガレイ以下が10枚獲れたけど後は1枚か2枚。コチは小さいのが1本だけかかったけど海に放した。水揚げ高は1万円ちょっと。もう10月だもんなぁ。

そうそう漁師になって丸3年が過ぎた。今日から4年目だ。


○10月2日(木)  <カレイがキターッ!>

今朝はちょっと早く目が覚めてめずらしく出港は一番最初だった。

まっすぐに梶島を目指し石組み西で網をやるとカレイが6枚かかった。次に桟橋前でやると大ガレイ4枚を含めてカレイが7枚もかかった。前回来た時もここでしか獲れなかったっけ。このあと梶島周りを三クラやってから8時頃吉田港と恵比寿の鼻の間で網をやった。この場所で網をやるのは1年ぶり・・・以上だ。前回の漁はどの程度だったか覚えてないほど、前だ。

で、ここでカレイが5枚獲れた。やってみるもんだ〜。次の一クラがカラだった他は、3クラ連続で5枚、5枚、7枚と続き大ガレイも4枚も獲れた。吉田港前でカレイが獲れたのも久しぶりだなぁ。

これだけ良い漁が続いたのにゴーヘー父はなぜかこの後長瀬へ船を走らせた。たぶんクロダイを狙ったんだと思うが残念ながら思惑は外れカラだった。9時半頃から吹き始めた北西の風でこの頃波も出てきたので、次は吉田川の西、アイバ尻の海苔のソダ(竹)そばへ移動。1クラ目にコチ2本とカレイ1枚で途中で大ゴチを取り逃がした。すぐ西側で二クラ目をやると今度はカレイ7枚に大ゴチ1本がかかった。さっき取り逃がした大ゴチ・・・じゃないよね(笑)。

今日はカレイの大漁だったけど、西浦に行ったSK丸もうちを上回る大漁だった。前島前でたくさんかかったらしい。う〜ん、残念だけど、船も体も一つしかないから両方同時に行くことはできないしなぁ(苦笑)。


○10月3日(金)  <朝寒と風>

昨日の午後から吹き出した北西の風が今朝まだ少し残っていて寒かったが、予想天気図では次第に凪いでいくような気圧配置だったので躊躇無く船を出した。明神様(半島先端)を回ったところ意外にも波がなく「すでに凪いでしまった」と考えた。

ところが山海前に達した頃から急に風が吹いてきて波が高くなってきた。先を走っていたFH丸、ST丸が船を止め、ゴーヘー父も船を止め、後から走ってくる人達も船を止めた。OA丸はすでにUターンさえしていた。風と波を見ながらゆっくりと走り内海の新港あたりで風と波が収まる気配があり本格的に走り出した。後の人達もまた走り出した。野間を過ぎたら波も風も嘘のように収まっていき6時半に前島に着きすぐに網をやった。

網を揚げ始めたFH丸が慌ててタマ(タモ)で大きな魚をすくっているのが見えた。午後の札場でそれが大きなヒラメだとわかった。長さは50cm以上あったんで随分重かっただろう。値段を聞くのを忘れた。

FH丸以外は皆漁が無く無線でぼやいてばかりだった。昨日から今朝にかけて吹いた北西の風が悪かったというのがみんなの一致した意見。その北西の風がまた吹き始めた10時頃、とうとう前島前を諦めて空港島の東、苅谷沖へ下った。他のみんなも後を追うように下がってきた。うちはここに来ていきなり大グロを2枚とハゴ4枚を掴まえたんで、その後続けて4クラやった。結果大グロを2枚、クロダイとハゴを10数枚掴まえた。前島前での漁だけでは今日は油銭にしかならなかっただろうから、ここでクロダイとハゴが獲れたのは運が良かった。

風は午後更に強くなってまるで冬のような北西の風だった。明日は行けるだろ
うか。


■エピローグ

漁師になって丸3年が過ぎついに4年目に突入しました。3年経って網きよいも板に付き痩せ体型を除けば、日焼けした顔がいかにも漁師らしくなりました。スーツを着てサラリーマンをしていた頃、お昼休みに銀行へ行ってお客として店にいたおばさんに銀行員と間違われたのが嘘のようです(笑)。

この3年うちの2年近くの間、このメルマガを発行しています。時々内容や文章がだれているときもありましたが、なんとか発行を続けてくることができたのは、やはり読者やサイト常連さんの応援のおかげです。これからもゴーヘーとゴーヘー通信をよろしくお願い致します。

最後に、久々にメルマガ広告です。本好き、読書好きな方必見です。

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■次回予告

Vol.52 「中西の風」 2003年10月18日(土)発行予定


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