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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.53 自由競争
                                    2003年11月1日発行
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■自由競争

漁師の行動原理は「競争」の一語に集約されると思います。

漁師が漁をする海は農家の畑と違って自分が所有したり借りたりしている場所ではなくみんなで共有しているものですが、だからといって他の人に遠慮をしていたら他の漁師に先を越されてしまいます。昨日自分が漁を行った場所は今日は他の漁師が先に行って漁を行っているのです。「自分の海ではない」以上これを妨げることはできません。

漁師は獲る量も競争です。常に他の漁師より多くの魚介類を獲りたいと考えています。漁をしている間は常に他の漁師の様子に気を配り、無線のやりとりから会話の裏の情報を読み、自分より多く獲る人がいればその近くへ行って漁をすることもします。日頃から網などの漁具への工夫も怠りません。

こうした漁師の行動は常に乱獲の危険をはらんでいます。実際過去いろいろな魚介類で乱獲が行われ現在は水揚げ高が激減したものも多くあります。こうした乱獲を防ごうと現在の漁業には多くの場合なにがしかの規制があります。

禁漁区が定められていたり禁漁期間があったり、水揚げ高に制限があったり漁獲できるサイズに制限があったり、出漁時刻に制限があったり使用する漁具に制限があったりします。他にも地域や漁獲対象物によって細かいルールがたくさんあるようで、こちらでは違反者への罰則・罰金が決められているケースもあります。

つまり全くの「自由競争」では、漁師自らが自分の首を絞めることなるわけです。さて、我々カレ網の漁師の場合はどうでしょうか?

毎年6〜9月の間は「市場休み・祭礼休み・タテコミ規制」があります。「市場休み」は市場がお休みの日の前日が休漁日になっています。「祭礼休み」はずばり祭礼のお休みです。「タテコミ規制」は休みに際してタテコミを行う場合の規制です。他には使用する網の数に10反という上限があります。漁に際しては必ず全部の網を揚げ終わってからでないと次の漁をやってはいけません。タテコミで毎日同じ場所に網をやるのだからといって、揚げながらその網をまたすぐ海に入れていくことはダメなのです。

これらの規制は主に「網のやり方」に重点が置かれていて、通常他の漁法であるような、「出漁時刻、漁獲高、サイズ制限、禁漁区・禁漁期間、漁の回数」などの規制はまったくありません。自分が漁をしたい場所を誰にもやられないように、人より1時間も早く船を出してもOKです。前日深夜に船を出して漁場へ行き明るくなるのを待った人さえいます。強風が吹いてみんながお休みしても船を出して漁をする人もいます。漁の開始時刻・終了時刻・回数(クラ数)のどれも制限が無く、多い人は1日に20数回の漁をします。網にかかった魚はどんなに小さくても持って帰ってきてかまいません。産卵のため集まっている時こそ漁のチャンスです。

規制がある漁法や漁師からみたらカレ網は「勝手気まま、自由そのもの」と言えるでしょう。

ところでカレイやコチを獲っているのは実はカレ網だけはありません。底引き網や釣り船、引っかけ漁でも獲っています。もちろん彼らはカレイやコチが専門ではなく、底引き網は網の中の魚にカレイやコチが混ざっているだけですし、釣り船は時期をみて釣りに出たりするだけです。これらの漁を行っている漁師は私たちと同じ漁協所属より、他の地区の漁協に所属している漁師が大半であり、漁の規制も各漁協や各部会(同業)の取り決めに従がっています。カレイとコチに関しては漁場が重なる場合が多いですが、我々カレ網の規制は彼らには無関係です。

カレイ・コチ専門ではない彼らですが、しかしカレ網漁師に比べて圧倒的に数が多いのです。よって彼らが獲るカレイやコチの量は決して少なくはありません。たとえば、春のカレイの新子(1年生)は子供の手の平程度の大きさでカレ網にはかかりませんが、底引き網全体ではたくさん獲れます。そしてそれらは唐揚げ用としてスーパーや魚屋さんの店頭に並ぶこととなります。

今、獲れるカレイやコチの量は昔と違って激減しています。三河湾・伊勢湾の中でカレイやコチの生息域が埋め立てなどで狭められているため、昔のままの「勝手気まま」な漁をしていては今後今以上に獲れなくなるでしょう。「資源保護」の観点がまったく抜け落ちた「自由競争」状態のカレ網の規制ですが、今後はカレ網だけでなく他の漁法・組合も含めて伊勢湾・三河湾全体でなんらかの規制が必要な時期に来ているように思います。





■今週のゴーヘー

○10月18日(土)  <カレイ大漁>

久しぶりにオクゴオリへ行った。昨日みんなでオクゴオリへ行く相談をしていたけど、今朝は北西の風が吹いていたんでオクゴオリは波があると判断したのか、実際に行ったのはうちとOA丸だけだった。

福江での一クラ目はアイナメ1本、次は大ガレイ1枚だったため、オクゴオリに来たのは失敗だったかと気がもめたが、3クラ目にようやくカレイ6枚がかかり安心できた。この後も4クラでカレイ20枚とコチ1本がかかった。どのカレイも中ガレイにしては大きく、大ガレイが4枚、特大ガレイも1枚あった。新子が1枚しかなく今晩のおかずを心配するほどだった。

8・9・11クラ目がカラでここでお昼を食べた。昼食後福江のタカ(岸側)に移動して最後の一クラをやったらカレイ6枚(特大1枚、大2枚)とハゴ1枚がかかった。

相対で売るために仲買へ持っていって重さを計ったらカレイが16.5kg、コチが2本で1.3kgあった。勘定は後日。たぶん他の人の漁を見てから魚の値段を決めるんだろう。カンコに残したクイリョウ(うちで食べる分)の中ガレイ2枚を持って帰って重さを計ったら600gあった。これも合わせると今日は17kg余りのカレイが獲れたことになる。大漁だ!


○10月19日(日)  <北っぽ>

朝起きたらまた風が吹いていた。北っぽ(北よりの風)だ。コンビニの旗は力強くなびいていたけど船着き場へ行ったら海面のシマケがなく思いの外凪いでいた。風が山で遮られているためで改めて天然の良港だと感心した。それでも沖は波がありそうだったんみんな陸でしゃべってた。

日が昇る直前、沖の波もたいしたことがないようだったんで船を出した。中西(北西)の風と違い北っぽだとあまり波が高くならない。アイバ尻から吉田港前を目指す人、一色前へ行く人、西浦へ向かった人など各自が思い思いの場所を目指した。うちを含めて6パイがアイバ尻で網をやっていたが、途中から風が強くなってきた。今日は凪いでいくはずなのにどうしたことか。

漁の方はみんなさっぱり。風の中9時半頃に生田鼻沖のタカへ出てきてからようやく数枚ずつカレイがかかるようになった。お昼近くに風も凪いで暖かくなり、カレイも順調にかかりどうにか合計で20枚程になった。コチも5本も掴まえた。やっぱり陽が高くなって暖かい方が魚がかかるなぁ。


○10月20日(月)  <良い天気>

今朝船着き場へ行ったらすでにみんないなくなっていた。空港島の北、前島前を目指して早く出たようだ。完全に出遅れどこへ行くかと思ったらゴーヘー父は船を梶島へ向けた。最近良い漁がない場所だけど今日は他に行くところがない。

赤灯台のそばで一クラ目をやると大ガレイが3枚かかった。次が大ガレイ1枚を含むカレイ5枚とコチ1本。3クラめはカラだったけど4クラ目はカレイ7枚(大ガレイ2枚)がかかった。朝の2時間としては順調だ。次く2クラはカレイ1枚、小コチ1本だったんで梶島を諦め吉田港前へ移動して網をやった。ここで中ゴチ1本とカレイ2枚がかかったが、ここではSE丸が朝から網をやっていたようなのでここも諦めてオクゴオリへ向かった。

オクゴオリでは海苔の枠を入れている最中だった。いつも網をやる場所はほとんど枠の内側になってしまい網ができない。福江のタカでカレイ3枚(大ガレイ2枚)とコチを掴まえた後、しかたなく防波柵のそばで網をやった。昼を挟んで4クラやってカレイ4枚(大ガレイ3枚)、コチ3本(中ゴチ1本)、タコ1パイを掴まえる。数は少なかったけどカレイが大きかったんでまずまずだ。


○10月21日(火)  <朝だけ>

久しぶりに蒲郡へ行った。最初の一クリ目、大ガレイ4枚、新子6枚を含むカレイ21枚がかかった。今日は雨が降ってくる予報なので朝早くからカレイがたくさんかかったのは実にラッキー。すぐさまその付近で二クリやる。しかしカレイが3枚しかかからない。最初の場所に固まっていただけだったようだ。

ここは諦め田原町へ走った。8時半頃到着しいつもやる場所を順々にやって移動した。ここでの3クラ目をやっているとき珍しく保安庁の巡視船が近づいてきて何を獲っているかを聞かれた。なにかあったのか?。

この網を揚げている途中で東風が急に吹いてきたんでここを離れ江比間へ移動した。風は次第に強くなり江比間で2クラやった11時20分頃、少し早いけど帰ってきた。ところが途中で風は凪いでしまい篠島・日間賀島を通過する時には穏やかな曇天。がまんしてやっていた方がよかったかもしれないと思いつつ魚を仲買に卸してきて船を船着き場へつけたら雨が降り出した。やっぱり帰ってきてよかった(苦笑)。


○10月23日(木)  <朝だけ2>

昨夜の天気予報での今日の天気図は等圧線が縦に並んだ本格的な冬型だった。朝すでに風が出ていたんで普段なら北の船着き場へ寄ってみんなと風の様子を伺ってから船を出すところだけど、今日は漁のできる時間が短いから寄らずにすぐ船を出した。

沖へ出るとすでに北西の風と波が強くなってきており生田鼻沖の赤タンポまで行って引き返してきた。海苔の枠近くまで戻ってきてそこから北上し旧都築紡績沖のツキ磯まで行き6時15分頃網をやった。その頃みんなも船を出したようで無線の声が聞こえてきた。みんな三河目指して走ったようだけど波がえらくて迷いながらの走りだったみたい。結局2クラやってみんな帰ってきたようだ。うちも4クラやって帰ってきた。コチ1本、カレイ8枚だった。


○10月25日(土)  <手が凍えた>

今朝の冷え込みは強烈だった。北っぽ(北の風)が強く吹いていて手袋なしでは手がかじかんでしまい、水に濡れた後は凍(こご)えてしまった。もうそろそろ朝はゴム手袋が必要かもしれない。

北っぽが吹いている中漁ができるアイバ尻へ直行。一クラ目の網を入れてガランガランを引き始めたらSK丸とAW丸が到着した。うちがアイバ尻に着いた頃には影も形も見えなかったのになぁ。みんなといっしょに走る時には「スピードが出ん〜」と言って控えめに走っているけど、一人で走る時や今日のように兄弟揃って走る時には随分速い人達だ。

魚の方はあまりパッとしない漁だった。みんな「カラばっか〜」と無線で話しながら徐々に西の方へ移動していった。うちもいっしょに移動していったんだけど11時頃また吉田港前に戻ったところ、大ガレイ1枚、大ゴチ1本、中ゴチ2本と今日一番の大漁だった。昼過ぎにも梶島での二クラで中ゴチ2本、大ガレイ2枚を掴まえたんで、コチだけでも全部で5本になった。この時期では珍しい。

仲買に魚を持っていったら、カレイが9.5kg、コチが5本で4.5kgもあった。しかし朝から終わりまで「カラばっか〜」と嘆いていたSK丸はうちよりも多い13キロくらい掴まえてきていた。やっぱりあの人の言うことは信用できんな・・・・・いや、ひょっとしたら「カラ」の基準がうちらと違うのかもしれないな。感じ方は人それぞれだからな(笑)。


○10月27日(月)  <大ヒラメ>

今朝の冷え込みは少しゆるかった。北西の風の中でも手がかじかんでしまうようなことはなかった。

空港島の北から前島前までの間でみんな漁をしていた。無線であまりしゃべらないからみんなそれなりに魚がいるようだ。うちも大量のパンに悩まされながらも大ガレイ数枚と中ガレイ以下を10数枚掴まえた。11時頃苅谷前に下ってきて二クラ、昼飯を食べてから上野間(かみのま)で一クラやって今日はお終い。いつもより2クラ少ない10クラだった。

夕方の札場ではOA丸がたくさんの大ガレイを売っていた。SK丸も一ケタ特大大ガレイを売っていて8,000円の値が付いた。しかしいちばんビックリしたのはAW丸の大ヒラメだ。AW丸はなぜかよくヒラメを掴まえてくるが、今日のはセイロ(トロ箱)に入れて頭と尻尾がつかえるほどの大きさ。網の大目の目の大きさより横幅が長いのに、よく網にかかったもんだ。たぶん今年一番の大きさで、値段は9,000円だった。うちの一日分がヒラメ1枚かと思うと・・・・。


○10月28日(火)  <ちょっと暖かめ>

日本海を低気圧が進んできているせいで朝から暖かめだ。日の出直前はさすがに少し寒かったけど、あとは快適な曇り日。船を出す時すでに吹いていた東風がいつ強くなってくるかだけが問題だった。

いや問題はまだ他にもある。魚があまり獲れないのが問題だ。どのクラも数枚ずつのカレイがかかるのだが、毎回大ガレイが1枚かかる他は皆カレイが小さいためカンコの中が妙に空いている感じがする。11時に風の気配がしてきて早々と帰ってきたけど、クラ数は9クラもやれた。カレイの量は昨日の半分くらいだ。はぁ〜。


○10月31日(金)  <塞翁が馬>

今朝上野間でいきなり網に大量のアオサをつけてしまった。アオサを取りながら1時間ほどかかって網を揚げたけど、取れたアオサはほんのわずか。2クラ目を確実にアオサのない場所で網をやって、アオサを取りながら網を揚げてまた1時間かかった。すでに8時15分、他のみんなは4〜5クラもやっている。この後はアオサはかからなかったけど、魚もかからなかった。8クラやってカラが3クラもあった。残り5クラでカレイ7枚、小コチ3本ではホントに油銭程度にしかならない。はぁ〜。

先日大ヒラメを掴まえたAW丸が今日はガランガランを海に落としてしまった。ガランガランの「腕」の先の溶接が剥がれて「四角い箱」が海底から上がってこなかったらしい。ガランガランは鍛冶屋で作ってもらうモノで1コ3万円以上もする。まったく「塞翁が馬」であった。


■エピローグ

今年は例年になくカレイの新子が少ないです。今新子が少ないということは来年・再来年は中ガレイが少なく、3年後は大ガレイが少ないと予想されます。周期的に当たり外れがあるから今年は単に外れ年だと信じたいのですが・・・。

さて、最近は朝グッと冷えるようになりました。こちらでの最低気温は10度程度。人には寒い気温ですが産卵を控えたカレイが浅瀬に集まってくるのも間近です。普段は1日やってもカレイが10数〜20数枚獲れるだけですが、集まったカレイ達に当たれば40〜50枚程度、20kg近く獲れるはずです。

去年と違って今年はガニが獲れないので、このカレイ達に今年最後の期待を込めたいです。


■次回予告

Vol.54 「海の上は寒い」 2003年11月15日(土)発行予定


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