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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.54 海の上は寒い
                                   2003年11月15日発行
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■海の上は寒い

小学生の頃夏休みに船に乗って漁についていくことがありました。当時ゴーヘー父はオンヤ(本家)と一緒にバカ網をやっていて、大人3人に両家の子供が2人で船の上は合わせて5人も乗る賑やかな状態でした。

当時の船はスピードが今よりずっと遅かったので家を出るのは午前3時前。日の出の早い夏とはいえ当然あたりは真っ暗です。子供2人は船に乗るとすぐにトモ(船の後ろ)のカンコに入って眠っていました。カンコの中はちょっと油の臭いが漂っていて酔いそうでしたが、窒息しないようカンコの蓋を少しずらしておくので、そこから入ってくる空気が少しひんやりしてて気分が良かったのを覚えています。

家を出る時は夏なのに決まって一枚余分に服を着せられました。「沖は寒いでなぁ」が両親の口癖でした。

さて夏の真っ盛り、風もない海の上は日を遮る物もなく船上はすこぶる暑くなります。天幕を張らないとそのまま干上がってしまいそうなくらい暑いです。カンコのコチが弱るのを気にしながら暑さに追われるように港に戻ってきて、船を岸に着け陸(オカ)に上がると途端に全身をモワ〜ッとした熱気が包みます。陸の上は海の上より更に暑いのです。日陰切望、冷水渇望で、水筒に残った冷たい麦茶を一気飲み(笑)。

春や秋だと日の出頃は冬のように冷えても日中はセーターやトレーナーが要らない程暖かくなります。それでも風に当たると冷えるのでヤッケは欠かせませんが、陸に上がるとそれを脱ぎたくなります。

冬は陸の上がすでにかなり寒いので首まで覆う毛糸の帽子を被って防寒をしっかりとしますが、海の上に出ると防寒の意味がないことに気づかされます。ゴム手袋をしていても冷たい海水や吹きつける風によって手がとても冷えます。風はほんのそよ風程度でも冷たく寒く感じ、強く吹きつけてくればただガマンあるのみ。とにかく海上は冷たくて寒いため、ひたすら「耐」の一文字です(苦笑)。

海の上が陸の上より気温が低いのは、1つには太陽光が当たっても陸より暖まりにくいせいでしょう。夏の日中に海風が吹くのは陸が太陽によって海より早く暖められて上昇気流が生じ気圧が下がり、海からそれを補うように空気が移動するからですね。

もう1つは海上には風を遮る物が何もないせいでしょう。陸も海もまったくの無風は滅多にないですが、陸は山や谷・森林・建物など障害物が多いので風が吹いてもすぐに遮られてしまい、部分的に無風状態が多くなります。海上には風を遮る物が何もないため、一旦吹いた風は気圧の低いところへ向かって吹き続けることになります。海面に風が当たれば水の蒸発で熱も奪われるでしょうから、勢い、陸より温度が下がることになります。

この風により人の体感気温も下がります。海の上が寒く感じるのは実は体感気温の低下が一番大きい原因かも知れません。

いずれにせよ海の上は陸より冷えます。フェリーやレジャーボートなど船に乗る機会がある時は夏でも必ず一枚余分に羽織る物(長袖がベター)を持ってでかけましょう。雨合羽などを持っていくのもよいですよ。旅行や釣りなどで楽しみにしていた船上を少しでも快適に過ごせると良いですね。





■今週のゴーヘー

○11月1日(土)  <札場休み>

今日から11月だというのに、朝から随分暖かくて気持ちがいい。湿度が少し高めのようで春みたいだ。これで魚がたくさんかかれば言うこと無しなんだけど、2週間ぶりに来たオクゴオリは海苔の枠が設置してあってもはやいつもやる場所は枠の下。枠の周辺で3クラやったけど一クラカラだった。

防波柵の間に移動して一クラずつ東へ移動して網をやった。毎回中カレイ以上のサイズが2〜5枚かかった他、中ゴチが4本もかかった。東の江比間の方へ行き4クラやって2クラカラだったため、また防波柵の間にへ戻ってきて2クラやったらカレイ3枚と中ゴチ1本がかかった。結局ここで中ゴチを5本も掴まえたことになる。

普段なら札場の値段を期待するところだが残念ながら今日は札場がお休みのため、仲買へ持っていった。こういう日に限って魚が多いんだよなあ。


○11月2日(日)  <塞翁が馬、再び>

今日も札場がお休みのため魚は片名の仲買に持っていった。船を泊めるため岸壁に繋がれた台船の左へゴーヘー父が船を進めた。オモテでゴーヘーが台船のロープをモカギで引っかけて手に握ったら、いつもはそこでゴスタン(後進)がかかるのだが今日はなぜか「ゴヘ」(前進)した。

「あっ」と声を上げる間もなく船は舳先の水切り部分を消波ブロックにぶつけ、「ドガン」と大きな音がしてブロックに乗り上げた。付近にいたたくさんの釣り人が「何事が起こったか?」という驚きの目で一斉にこちらに視線を向けた。ゴーヘー父がすぐにゴスタンをかけたんで船は、ゴリゴリッという音を立てて後ろに移動し海の上に浮かんだ。

「まったくなにやってんだ」とぶつぶつ言いながらゴーヘーはロープで船を係留し仲買に向かった。何事もなかったかのように我々が行動するんで、釣り人達は2度ビックリ。

ぶつかった箇所はちょうどボルトが入っていてそこから海水が内側にしみ出してきてた。しっとりと濡れる程度。片名の造船所に船を揚げることができたんで明日修理予定だ。今日はコチが1.9kg、カレイが13kgも獲れたけど船台費用+修理費用でなくなりそう。


○11月5日(水)  <・・・>

船の修理とついでのカーペン塗りで2日間お休みだったが、実は3日は村の体育祭、4日は風休みだったので誰も沖に出ていない。不幸中の幸いというところだろうか(変)。

海も2連休だったわけだが今日の漁はさっぱりだった。始めは新子しかかからなくて、途中から中ガレイがかかりだした。結局カレイが10枚程度、コチが2本、新子が10枚程度だから油銭程度にしかならない。11月だからしかたがないけどやる気が萎えるなぁ。


○11月12日(水)  <テンマを引いた>

1年ぶりにテンマを(船台に)引いてゼンボ(フジツボ)取り&カーペン塗りをやった。ゼンボの他にミドリイガイというムール貝の3分の1くらいの大きさで緑色をした貝がたくさんついていた。

これでテンマの準備が出来てもういつでもナマコ引きに出られる・・・解禁は12月1日だけど(笑)。


○11月13日(木)  <寒いなぁ〜>

西風が吹いていて港の水面もシマケていて行けるかどうか微妙。しばらく様子を見て明るくなってから船を出した。なんだか久しぶりの沖だなぁ。で、沖へ出ると風は北から吹いていた。あれ?風向きが変わったのかな。波はあまりなくこれなら網をやれそう。

沖は先週までの暖かさはどこにもなくかなり冷えた。顔の部分だけ丸く開いたすっぽり被るタイプの毛糸の帽子を被ってきて正解。朝日が昇ってきても雲に遮られて顔が見えない。陽が差せば暖かくなるんだけどなぁ。

吉田港前に到着すると早速網をやった。ここで大ガレイ2、中ガレイ3、新子9がかかった。朝一番で幸先が良い。この後一度もカラが無く午後1時まで12クラやった。カレイの他にクロダイ1枚、コチ2本も加わり札場で魚を揚げる時、カゴがずしりと重かった。大きさ別に分けると、大ガレイが全部で15枚、中ガレイが20枚くらいあった。新子はより小さいモノを3分の1くらい逃がした残りが20枚くらい。久しぶりに大漁だった。


○11月14日(金)  <良い天気>

朝いつもの時刻に目覚めても階下で人の気配がなかった。今日はお休みか?、とまた寝たら6時頃「いくぞ〜」と声がした。さほど風も強くないしお休みする理由はないしな。

船を出すと無線の声が聞こえた。みんな船を走らせている最中らしい。

ゴーヘー父は船を蒲郡に向けて走らせ1時間近くかかって到着。早速網をやるがカラだったので「もう1度」とばかりに、すぐ隣に網をやってみたが大ガレイ1枚きりだった。3クラ目をちょっと北側へやってようやくカレイ6枚がかかった。その頃北西の風が強くなってきており、ここを諦め梶島へ戻った。

梶島での1クラ目がカレイ4枚、2クラ目がカラ。風はなお強めに吹いてきて帰る人の声が無線で聞こえてきた。吉田港前でもう一クラやってカラだったんで、まだ11時前だったけどうちも潔く帰ってきた。昨日はずしりと重い漁だったが今日は片手でセイロが持てそうなほどの漁だ。

午後からは風も収まりのんびりとした小春日和になった。晩秋はこんなもんだ。


■エピローグ

ゴーヘー通信の発行を始めてこの18日で丸2年を迎えます。サイトの方は一足早く今月6日に丸2年を迎えました。この2年間隔週で1度も欠かすことなく発行し、サイトも多少更新が滞ることはありましたがお休みはせず、どちらも我ながらよく続いてやってこれたと感心します。

この間読者数は着実に増加し前号で238名、通算サイト訪問者数も13,000名を越えるに至りました。漁師はなんでも自分でやらなくちゃいけない、案外孤独なショウバイですが、メルマガの感想を頂いたり掲示板に書き込みを頂いたりすると、すぐそばで見守ってもらってるような不思議な感覚を覚えます。

寂しがり屋の私にとって、この「一人でない」感覚が2年間続けられた原動力であるように思います。みなさんに支えられていることに感謝しつつ、また次の1年間、単調だけどなにかと上下動の激しい(笑)カレ網漁師の生活をお届けしたいと思います。


■次回予告

Vol.55 「生まれた時から」 2003年11月29日(土)発行予定


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