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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.57 水平線までどのくらい?
                                   2003年12月27日発行
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■水平線までどのくらい?

中学の理科か社会のどちらで習ったか忘れましたが、昔エジプトのアレキサンドリアの港の人が、沖から港に近づいてくる帆船がマストの先から見えることで地球が丸い事実に気づいた、とありました。教科書のコラムか何かに書かれていたのだと思いますが、それを読んだ時「その人は大層目が良いんだなぁ」と皮肉と疑いの気持ちでいっぱいでした。

そもそも海の水平線は随分陸地から離れたところにあるはずだし、その離れた水平線の更に向こうにある帆船のマストが見えるなんて、とっても大きな帆船でないと見えないだろう、と考えたわけです。

その時の疑問はこうして切って捨ててしまったわけですが、漁師になって毎日海と陸と船を眺めているうちにふと「水平線と帆船のマスト」を思い出しました。

港から船を出し陸を離れるにつれて、初めちゃんと見えていた港の防波堤や防潮堤が次第に高さが減って「薄く」なってくるのです。逆に行く手に見える陸は近づくにつれて海の中からわき出してくるように見えます。遠くに見え始めたタンカーは妙に高さが詰まって見えますが、ある程度の距離まで近づいて来ると水平線上に船全体が乗っているように見えます。

そこで、水平線までの距離を簡単に計算してみることにしました。

船上にある自分の目の位置を海面から2m、地球の半径は6,371kmとします。中学の数学で習う「円の接線とその接点から中心へ引いた線(半径)は直角で交わる」とお馴染みの「三平方の定理」を利用し、計算途中の小さすぎる値を無視して近似計算すると(2×2×6.371)の平方根(ルートを計算)で約5.0kmとなります。

意外に近いです、水平線。

これほど近いなら、冒頭のアレキサンドリアの港に立つ人が、近づく帆船のマストの先端から見えていたという話も納得です。防波堤・防潮堤が「薄く」なっていくのもタンカーの高さが妙に寸詰まりなのも、距離が5km程度なら人の目で充分見える範囲なので納得です。海にそそり立つ断崖絶壁に立たなくても地球の丸さを実感できるわけです。

その断崖絶壁に立った場合ですが、高さ50mとして計算すると(2×50×6.371)の平方根になるので水平線までの距離は約25kmとなります。随分遠くまで見えることになるので、開放感は抜群です。光も遠くまで届くので灯台はやはり高い場所に設置するのが良いですね。

上記の水平線までの距離は、地球表面は曲面なので厳密にはそれを考慮した計算が必要ですが、人の目で見える範囲は地球の大きさに比べたら誤差の内と考え大まかな仮定の下で計算しました。厳密な計算より水平線までの距離が想像したよりずっと近いという事実を楽しんでいただけて、海に遊びに行った時に思い出していただけると嬉しいです。

特に初日の出を海へ見に行った時など(^^)v。





■今週のゴーヘー

○12月13日(土)  <声を掛けられたけど>

午後ムール貝を採りに出かけたけど、北西の風が強くなってきたためわずか1時間で帰ってきて揃えていた時のこと。時刻は15時半頃だった。岸壁に人の気配がして振り返ると釣り人がいた。しばらくするとその人が「○平さんですか?」とこちらに尋ねてきた。ゴーヘー父が「違います」と即答。

5分ほど経ってから、さっきのは「ゴーヘーさんですか?」じゃないかと気づいた。その時は良く聞き取れなくて釣り船の船頭を捜しているのかと思ったのだけど、冬の夕方から船釣りにでることはありえないんだからその場ですぐに気づくべきだった。

勇気を出して声を掛けてくれたのに大変失礼をしてしまった。
これに懲りずまた声を掛けてください。


○12月14日(日)  <マンガ30杯分>

昨日までの分を朝9時に業者へ持っていき午前中は終了。

案外凪いでいたので、昼飯を食べている時相談して午後からかきに出た。海に出ると久しぶりの凪で暑いくらいだった。テンマの前後のバランスを考慮して、かいたムール貝を途中でカゴに入れてトモに移動した。今日は目標をマンガ30杯分に決めていたんで、それだけ積むためには工夫が必要というわけだ。

14時半を回って少し海面がシマケてきてちょっと心配になってきたが目標にはまだ足りず、15時まで粘ってようやく30杯分に達した。既に波が出てきており急いで錨を上げてそろりとテンマを進めて帰ってきた。港に戻ってムール貝をすべてネット袋に入れ換え大船から海中へ吊しておいた。揃えるのは明日の朝だ。


○12月15日(月)  <ようやくお休み>

朝8時から揃え始めて終わるまでにお昼を挟んで14時半までかかった。5時間半もかかった。ネットに9.5コ分で昨日テンマでゴーヘー父が揃えた分2コを合わせて11.5コとなった。売り物にならない小さいヤツが2コぶんあった。しんど〜。

揃え終わってすぐに業者へ持っていった。業者は昨日うちがかきに出ていることを知らなかったんで予定外のムール貝に少々戸惑い気味だったが、それでも快く全部引き取ってくれた。これでようやく明日から2日間お休みだ。ふ〜。


○12月18日(木)  <再開>

また朝からのムール貝採りが始まった。6時20分頃出ようとしたけど曇っていたせいでまだ暗く、40分まで待って出かけた。鳶が崎にはすでにFH丸のテンマが見えた。すぐに支度をして鳶が崎へ行きいつもの場所付近へ錨を降ろした。錨綱を伸ばしたら予定してた場所と違うところにテンマが移動したけど、その近辺もまだムール貝があったのでそのままそこで採った。

始め風も強く波もあったけど次第におさまり8時頃一旦凪ぎ、その後また少し風が出てきた。錨一つなので凪よりもテンマが風で流される少し風がある方がやりやすい。8時半頃から潮が上り始めて、それまで下りへ流れていた海底の濁りが上ってきてしまい急速に海底が見えなくなった。テンマ上から見える範囲の海底がすべて濁ってしまい、しかたなく20m程イワテ(北側)に移動し錨を降ろした。そこでマンガに7ハイ分かいたところで風が強めに当たるようになってきたので錨を上げて帰ってきた。全部でマンガ27杯分、丁度9時だった。

戻ってきたらじきに風が強くなってきたので戻ってきたのは正解だった。昼を挟んで14時半まで揃えてネット袋に10コになり、業者へ持っていった。


○12月19日(金)  <電線がうなる>

朝から西の風が強かった。今年は西の風が良く吹くが、これなら鳶が崎でムール貝がかけるんでありがたい。

昨日と同じ頃にでかけFH丸のテンマのすぐそばに錨を降ろした。風下へテンマが流れて錨綱が伸びきったところでかき始めたのだが、イマイチ場所が悪い。その上今日は早くも潮が上ってきており、下り潮のつもりでかき始めたのでかく予定の場所が濁りで見えなくなった。しかたなく錨をもう少し下りへ入れ直しテンマの位置を下り側へ移して上り潮を見込んでかき始めた。全体のペースは昨日よりよくて8時半過ぎにはマンガ27杯分をかくことができたが、風が強まるのも早くてそこで切り上げて帰ってきた。

その後西の風は一層強くなり午後からは電線が唸りだした。「ひゅ〜」という音が一層寒さを感じさせる。ムール貝に付着してるカキのため、揃えるペースがなかなか上がらない。15時半までかかってようやく揃え終わると全部でネットに9コ半だった。ちょっと少なめだ。


○12月21日(日)  <凍えた>

昨日は雪でお休み。今朝は西の風が吹いていたので、ソコリ(干潮時)の10時までムール貝を採ることができた。

戻ってきて揃えていても陽が当たっているにも関わらずちっとも暖かくなってこない。軍手では手がかじかんでしまうのでゴム手袋をはめたのだが、作業はすこしやりづらいんで時間もかかり、結局16時までやっても残ってしまった。揃え終わった分だけ業者へ持っていった。


○12月22日(月)  <第3の>

ちょっと寝坊して9時半近くに慌ててテンマを出した。鳶が先のいつもの場所へ着くと海中が激しく濁っていて海底が見えない。我々が来る前にFH丸兄弟がかいていったようだ。水深が深くても朝かけばその日の夕方までに揃え終わるから毎日業者へ出せるからだろう。

「やられた」というのが第一の感想。これだけ濁っていてはかきたい場所でかくことができない。しかたなくタアカ(岸側)のかいたことが無い場所へ行きかくが、今日の潮は早くも上ってきていて海底の濁りがイワテ(北側)へも広がってきた。実にまずい。そこへFH丸兄弟がテンマでやってきた。朝に続き2度めのご出勤だ。こちらのすぐ近くで錨を降ろした。

ゴーヘーがかいていた場所はじきに濁りでいっぱいとなり、しかたなく来た時濁っていた場所へ移動した。だいぶ濁りも取れておりペースもようやく上がった。しばらくしてFH丸が「(貝)ガラばっかだがぁ」と声を掛けてきたので、「朝やったでええだね〜」と返事をしたら不審そうな顔をして「朝は、昨日の分を揃えとっただがぁ」と返してきた。おや?、そうすると朝ゴーヘー達が来る前にかいていったヤツだ誰だ?

昼飯にうちに戻る際に港の岸壁を巡ってみたけど、テンマでムール貝を揃えている人は見つからなかった。いったい誰がムール貝を採っていったんだろう?。まるで俺たちから逃げるようにして、わざわざ水深が深いうちに採っていったことが癪にさわる。誰だ、いったい?。


○12月23日(火)  <いない>

8時に出て行き海沿いを走って鳶が崎の様子を確認すると、テンマも人影もなく誰もムール貝を採っていない。昨日採っていって揃えるのに時間がかかってイヤになったのだろうか。

9時半まで昨日の残りを揃えて、それから採りに出た。いつもの場所へ着くと海は澄んでおり海底がよく見える。やっぱり取りに来ていないようだ。ちょっと西の風があって降ろした錨が何度も外れてしまい安定するまで場所を度々変えて錨を降ろしなおした。ソコリが近づくにつれ風は弱まり適度な風でかきやすくなった。潮は速いので濁りもよく流れるのだが、下り側の海底の岩場が少し高くなっているので濁りが沖側へ流れていった。

10時半頃FH丸兄弟がイワテ(北側)から下ってきた。今日はカキを引きに行っていたようだ。今年はカキの当たり年でたくさん引けるから、手間のかかるムール貝より効率がいいんだろね。ただ、彼らがいなかったおかげでかく場所も自由に選べたのでうちとしては幸いだ。

マンガに27ハイ分かいたところでゴーヘー達は帰ってきた。入れ違いでFH丸兄弟がムール貝採りに出てきた。戻るとすぐに揃え始めて昼を挟んで16時までやり、その後業者へ持っていった。昨日の分も合わせて、ネット袋が全部で13コだった。


○12月24日(水)  <今年最後>

8時から10時半まで昨日の残りを揃えて、10時半から30分だけかきに出た。残っている分だけではちょっと足りないと思ったからだ。マンガに11杯半ほどかいて帰ってきた。あとはひたすら揃えて16時までにネット袋12個となった。しかし一昨日の残りが一カゴ残ってしまった。これは後日揃えて正月休みにうちで食べることにした。

以上で年内の作業はすべて完了。例年よりちょっと早いけど、年末年始休みに突入。


■エピローグ

月並みで恐縮ですが、今年も残り後わずかとなりました。1年の経つのがホント早いです。

1年を振り返ってみると、4月までは例年以下の水揚げが続き先行き不安な日々でした。5月に一息入れて6月から10月まで例年プラスαの月が続きました。そして12月ムール貝で思わぬ忙しさとなり1年を締めくくることとなりました。終わってみれば良かった1年であったと言えるでしょう。昨年が良くなかったので余計良さを実感するのかもしれません。

ゴーヘー通信もついに3度目の正月を迎えることとなりました。読者やサイト常連の皆さんとの交流という面では、サイト訪問カウンターがこの1年で5000程度アップし何名ものキリ番ゲッターを得たり、読者の方の訪問を受けたりメールを頂いたりして、より広がった1年であったと思います。来年も更に活動範囲を広げられたら嬉しいです。

それでは、今年1年ありがとうございました。来年もよろしくお願い致します。
そして、迎える新年に皆様の幸多からんことを!


■次回予告

Vol.58 「お正月」 2004年1月10日(土)発行予定


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