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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.61 仲間で仕事
                           2004年2月21日発行
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■始めに

2月13日のウィークリーまぐまぐ・コミュニティ版にて「おすすめメルマガ」として紹介されて、200名を越える方が新たに読者登録をしてくださいました。新規登録をしてくださった皆様、ありがとうございます&初めまして。これからよろしくお願いします。


■仲間で仕事

今カレ網の漁師の多くは一人で船に乗って漁をしています。テレビで観る漁と漁師の多くは複数人でやっているものが多いので、皆さんが抱く漁師のイメージからはかけ離れているかもしれません。

テレビで観るカニ漁や巻き網、大型定置網などでは船主や漁協が雇い主となって漁師を雇って漁をしているものが多いようです。彼ら漁師達はそれぞれその漁の「仲間」であり、チームで仕事をする点において会社員に似ています。仕事場や仕事内容が「危険できつい」会社員も少なからずいることでしょう。水揚げ高に応じて給料が支払われる点も、出来高払いの営業や昨今の「能力主義」に基づき賃金をもらう人達に似ているかもしれません。

我々がいう「仲間で仕事」はこれらのケースとは少し様相が異なります。

漁をする場合、まず「元手」が要ります。これは船や網などの漁具などを指す場合とそれらを購入する「お金」を指す場合があります。仲間で仕事をする場合、これらの元手は仲間の頭割りで負担することとなりますが、途中で新調したケースでは共有として水揚げから引く時もあります。

仲間を組むに当たっては一応リーダー格となる人が決められます。強い権限はなく労使関係もありませんが、リーダー格の人の指示には皆従って行動します。

仕事の分担は本人の得手・不得手、器用・不器用があるので、それらを考慮しつつ「おおまか」に決めます。時に不公平になることがありますが、様々な場面で負担を分けて不公平さをならしていきます。

そして水揚げは油代(燃料代)を引いてから、船を一人分と数えてすべての人数を足した頭割りにします。つまり船を出した人は二人分をもらい、身一つで参加した人は一人分をもらうわけです。全員が船を出していれば単純に頭割りになりますし、まだ漁師になって日が浅い若手の場合は一人前もらえない場合もあります。

「仲間で仕事」をする場合、上記のように「一人一人の負担と取り分が平等」になるように神経を使っています。リーダー格だからといって人より余分にもらえるわけではありませんし、20歳未満だからとか60歳を過ぎているからとかいって一人前もらえないわけではありません。一人前の仕事をすれば一人前分もらえるという、至極当然な世界です。

しかし、元手の平等な負担はもめるポイントでもあります。特にすでに元手(漁具)がある仲間に新たに新メンバーが加わった場合の水揚げをどう分けるかは頭の痛いところです。負担を求めれば新メンバーは不満を抱くし、求めなければ旧メンバーがいい顔をしないでしょう。それぞれどこかで折り合いをつけいるようです。

こうした「仲間」の組み合わせとしては、「兄弟・姉妹」が多く、次いで「おじ・甥」、「友人」、「近所」と続きます。「姉妹」といっても船に乗るのは姉妹の「ダンナ」です。やはりお金が絡むことなので、血縁が重視されるようです。

そして、その仲間を維持するもっとも重要なポイントは、「仲間で分けるに充分な水揚げがある」ことです。儲かれば多少嫌でもガマンして続けますが、取り分が少なくなればもうお終いです。特に一人で漁をすることになれている人達は見切りが早いです。

だからカレ網漁師は一人が多いのかもしれません(^^ゞ。





■今週のゴーヘー

○2月7日(土)  <風強し>

今日の風は西南西から吹いてきた。風陰になる鳶ヶ崎では風は岬を回って北西や南西から気まぐれに吹きつけてきて、片錨のテンマは風に流されあっちへふらふら、こっちへふらふら。その度かく位置が随分と移動した。濁りを避けるためには都合がいいけど、マンガの長い竹の柄が強い風を受けて扱いにくかった。ゴム手袋をしていても手が冷えて痺れてしまった。

FH丸は予想に反して遅れてやってきて、かきながら「まぁ、あかんなぁ」と何度も呼びかけてきた。しかしうちと同じくらいの量をかいてうちより少し早く帰っていった。なんだか忌々しい(苦笑)。

午後揃えていたら15時頃から急に冷えてきた。雪もちらついてきて、明日の朝は冷えそうだ。


○2月8日(日)  <冷たい>

朝業者へ持っていった後、昨日の残りを揃え始めた。すぐに挟を持つ右手が冷たさで痺れてきた。挟の柄が金属なので冷たさも一塩。ときおり挟を放して右手を振りながら揃え続ける。

今日も西風が強いが、11時に鳶ヶ先へ行く。FH丸はなかなか姿を現さず、12時近くにイワテ(北側)から彼の兄とテンマで下って(南下して)きた。またカキを引きに行っていたようだ。うちは12時半頃までやって帰ってきた。


○2月9日(月)  <4〜5倍>

今日かいている場所はタコ瓶が沈めてある場所のタアカ(岸側)で、この一帯でかき始めて5日目。少し場所が変わるとムール貝のサイズやガラ(貝殻)の多さが変わるのだが、貝表面に付着しているカキや海藻などの「汚れ」の多さはどこもいっしょ。ネット(袋)に1袋分揃え終わるのに2時間から2時間半かかる。11月下旬は30分で1袋だったから4倍から5倍も時間がかかることになる。

一日揃えてると夕方にはさすがに嫌気がさす。この汚れの多さは、2月に入ったらムール貝採りは止めろ、という海からのメッセージなのかもしれない。この先どうしたもんだろうか。


○2月10日(火)  <31杯>

予定より30分以上早く11時半頃かき(採り)に出た。鳶ヶ先に行くとまた海がやや濁り気味。2月に入ってから海全体の透明度が下がったようだ。潮が引いて水深が腰程度になったら海底もはっきりと見えるようになったけど。

かいた(採った)場所は昨日と同じ場所だで、ガラや海藻は多いけど大粒な貝が多い場所だ。明日ここの少しタアカをかこうと思っていたその場所を、後から来たFH丸にやられてしまった。残念。FH丸は午前中カキを引いていて、それが終わるとすぐにムール貝採りに出てきた。昼飯はおにぎりだけらしいく、この一ヶ月ほぼ毎日昼はおにぎりだと言っていたので、「昼飯ぐらいうちでたべりやぁ」と言ってあげたら、苦笑いしていた。

13時過ぎまでやってマンガに31杯分かいた。それでもテンマの沈み込みが思ったほどではないから、またガラが多いんだろう。港に戻って16時まで揃えたけど全体の5分の1も終わらず、その後17時までかかって貝とガラを粗選りして貝をネットとカゴに入れて海に活かしておいた。

今日一日風が無く穏やかで暖かかった。


○2月11日(水)  <春近し>

今日も昨日に続き暖かい。挟を持つ手が痺れないのは嬉しい。

朝、二日分を業者へ持っていった。全部で12コ。先方へ行くとこの業者を紹介してくれた仲買が偶然いて少し話をした。仲買に「カキを引けぇいかんの?」と聞かれて「ガラがエライ(大量)でマンガが重くてよう上げんがぁ」と応えたんだけど、「紹介してもらったんだで、他に浮気はできんてぇ」と応えておいた方が気が利いてたなぁ。

昼をうちで食べてからかきに出たら、FH丸がすでにかなりの量をかいていた。今日は昨日の下りタカ(南・岸側)をかいたんだけど全体に貝が小さかった。潮も鈍くて13時半頃から濁りがひどくて思うようにかけなくなった。出てくるのが30分程度遅かったなぁ。少し場所を移しながら14時半までがんばって、マンガに21杯分をかく。普段より少ないけどしかたない。

港に戻って揃え始めると、昨日と同様すぐに小さいハエが寄ってきた。一昨日までは随分寒かったのに、昨日の暖かさで急に成長して成虫になったんだろうか?、不思議だ。小さいハエはショウジョウバエだろうか、ムール貝と海藻・ガラの山を巡ってうるさく飛び回り、ときおり顔に当たる。鬱陶しいことこの上ないけど、夕方になって冷えてきたらいつの間にかいなくなった。


○2月12日(木)  <大粒・重い>

朝業者へネット5つを持っていき、その後昼まで揃えネット5つができた。まだ揃え残しがネット3つある。

昼飯を食べて鳶ヶ先へ行くとFH丸が帰ってくる所だった。今日は早く出ていたようだ。今日かきたいと思っていた場所を先にやられたかと心配したけど大丈夫だった。その場所は昨日かいた場所の数mイワテ(北側)。すでに随分水深が浅くなっていて大粒のムール貝がはっきりと見える。あまり密集している場所ではないので効率は悪いけど、どの貝も皆重くてマンガの手応えも充分だった。前半は潮も速くてもかきやすかった。

後半の水深は膝上くらいまでしかなかった。今日の場所は砂よりも岩が多いところで、水深が深いととてもかきづらい場所だ。今日くらいの水深にならないとマンガが岩にひっかかって思うようにかけないから、今日という日はまさにうってつけだ。15時までやってマンガに22杯分をかく。


○2月13日(金)  <認められた?>

昨日の夜、業者の社長から電話があって明朝取りに来たいとのことだった。仲買から仕入れたヤツが少し小さすぎたそうで、うちのやつが良いから欲しいと言われた。11月半ばからムール貝採りを始めて3ヶ月近く経ってようやく社長の口から「良い」という言葉を引き出せた。丁寧に揃えてきてよかった。認められた瞬間だ。

今朝9時半過ぎに缶コーヒーとお茶を持って社長はやってきた。それを飲みながら話していると、同業者の社長がもう一人やってきてムール貝や牡蛎についていろいろ話しを聞くことができた。今年はムール貝の当たり年らしく夏から随分多く採れたらしい。うちは良い時にムール貝採りを始めたようだ。

今日は暖かい一日で揃えるにはもってこいの日和だ。社長達が帰った後も昼を挟んで15時まで揃え、すべて終わった。ガラを捨てるついでに以前から気になっていた場所である「マガナ」に行きムール貝があるかどうかを探索した。マガナには海中にシマがあってそこにムール貝がついているはずなのだけど、捜したがなかなか見つからなかった。ようやく一カ所に小さいムール貝の群生をみつけたけど、シマの上、つまり岩の上についているので今のマンガではうまくかけない。やはり鳶ヶ崎でかくより他ないようだ。


■エピローグ

せっかく社長に認められたかもしれないのに、18日からのムール貝採りは体調不良でお休みせざるを得なかったです。医者では「胃腸性の風邪」と言われたけど、掲示板への書き込みを参考にして過去の体験を振り返ってみると、「ウィルス性腸炎」の可能性が強いです。ゴーヘー父は結局医者に行かず仕舞い。

3日間お休みしたおかげで体調も戻りまた再開できます。日も長くなり日中は随分暖かくなってきたので、テンマでの仕事も随分と楽になるでしょう。今年初めてやったムール貝採りですが、3ヶ月間でわかったことを次回はまとめてみようと思います。

ムール貝採りの終わりも近く3月からはいよいよカレ網を始めます。あっ、3月でも日の出前はまだ冷え込むんだった(×_×)。


■次回予告

Vol.62 「ムール貝」 2004年3月6日(土)発行予定


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