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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.63 風雲
                                    2004年3月20日発行
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■風雲

沖に出た時、目に入ってくる景色は空と海が大半で、オカ(陸)は遠くなります。天気が良ければ上(空)も下(海)も青一色、悪ければ鈍色の空に重苦しい色合いの海が果てしなく続きます。オカの雑踏や賑わいと比較したら単調で退屈な景色です。

オカの人が見たら、沖にいる時の大半はだたぼんやりこれらの景色を眺めているだけのように見えるかもしれません。網を揚げたり魚をはずしたりと忙しい時もありますが、工場の流れ作業のように時間中ずっとその作業をしているわけではないし、ヤマテを見る時など単に景色を眺めているようにしかみえないでしょう。

実際、操業時間の半分はぼんやりとあてもなくあたりを眺めているだけかもしれません。でも後の半分はちゃんと目的を持ってあたりを見回しています。

網を揚げている時は当然揚げているその網を見ます。魚がかかっているか、かかっていれば外れそうになっていないか、ゴミは多いか少ないか、破れはあるか、網の入れ方が悪くなかったか、潮の速さはどうか、などたくさんの情報をチェックし続けます。

こうして網を見ながらも頻繁に顔を上げて船の周りを見ています。他のカレ網船がどこにいるか、どこへ移動したか。他の船がこちらに近づいてこないかどうか、網に魚がかかっていた場所のヤマテはどうか、など近くから遠くまでまんべんなく見回しています。

風が吹いていたり吹いてきたりすれば、上記の情報の他に空と波のチェックを怠りません。沖の方で白波が立ってくれば帰り支度のカウントダウンが始まります。ガマンできるかどうかは漁次第で、ガマンして良いかどうかは風の強さ次第です。ガマンして良いかどうかの判断のため特に空のチェックが重要です。

空のチェックとはすなわち「風雲(かざぐも)」の有無のチェックです。

「風雲」とは、春や秋の伊勢湾上空や三河山地上空で強い北西の風が吹く時に現れる綿雲で、見かけの大きさは腕を一杯に伸ばした時の小指の爪程度から親指の大きさ程度の雲です。強い風の吹き始めこのような雲が風上から連続で流されてきます。風雲が現れたら30分から1時間程度で海上も強い風に見舞われるので、カレ網では大急ぎで網を揚げ一目散に帰ってきます。

「風雲」には偽物も多く、その典型は火力発電所の煙突から出る煙です。風が吹いている時上空のいつもと違う場所に「風雲」が現れるとそれは大抵煙突の煙がちぎれて流されてきたものです。上空に風はあるのですが海上を荒れさせるような風ではないのです。

偽「風雲」のうち判断が難しいのはやはりいつも現れる場所に見える「風雲」です。流れてくる間隔が妙に間延びしていたり、形がはっきりしていなかったりすると風はそれ以上吹いてきませんが、それの見極めはやはり難しいです。

朝船を出す前にそんな「風雲」を見つけると船を出すかどうか、ゴーヘー父でも迷います。吹いてくるという確信が今ひとつ持てないまま「吹いてくると思うけどなぁ、吹いてきたら帰ってくやええで」なんて言いながら船を出します。

吹いてくると思うのなら船を出さなけりゃいいと思うのですが、そういって船を出して、途中で帰ってきたことはほとんどありませんf(^ー^;。





■今週のゴーヘー

○3月6日(土)  <ムール再開>

ムール貝採りは3月いっぱいやって欲しいと言われているが、少ししか採れないから普段は一人で出ることにした。が、今日は風が強くてカレ網も休みなんでゴーヘー父と二人で出た。

西の風が猛烈に吹いていた。最後に採っていた場所へ行き残っていたヤツを採ったけど、風が強すぎてテンマが左右に流されてとても採りづらい。風は次第に強くなってきたので1時間で止めて帰ってきた。マンガにわずか6パイ分。揃えたら1時間で終わりネット1.8個分しかなかった。食べようと活かしてあったムール貝を加えてネット2個分にして、業者へ持っていった。


○3月7日(日)  <50円アップ>

今日はFH丸もかきに出てきた。彼も(納入先から)頼まれたそうだ。彼は少し小さめのものも売ってしまうので採り過ぎが一層心配だけど、こちらが口出ししてよい筋合いのものでもない。う〜む(悩)。

風は昨日に続きよく吹いていた。風向きは北西に変わっていたので錨を入れる位置もそれに合わせる。ただ、かく場所がなかなか決まらずうろうろした。腰を据えてかける場所がもうない。海にいた2時間のうち半分以上はムール貝捜しに費やしたかもしれない。最後に見つけた場所が少し期待が持てそう。明日もう一度やってみるつもり。

午後揃え終わったムール貝をネット2つに入れて持っていくと、それを見た社長は残念そうだった。昨日の勘定をもらう時伝票の単価が変わっていなかったので不審に思ったら、重さで調整していると教えてくれた。確かにネット2つ分にしては重すぎる重量が伝票に書いてあった。単価は50円アップだそうだ。
うれしい♪


○3月8日(月)  <今日も風>

今日はゴーヘー父がカレ網に出たので一人でかいて揃える予定だったが、10時に船着き場へ行ったら船があってゴーヘー父は網をきよって(繕って)いた。朝一旦出たそうだけど沖に出たらえらい波ですぐに戻ってきたそうだ。で、支度をして二人で出た。

昨日の続きの場所をかいた。他の場所では見つかりにくい大きくて重い貝が採れるからだ。ガラが多いのは相変わらずだけど、小さい貝が少ないのが特徴。1時間弱でマンガ10杯分をかいたので、やめて帰ってきた。

貝の表面に付着しているカキと海藻を取るの時間がかかった。11時から昼を挟んで14時半までかかる。ネットに3つ分となった。よし♪。


○3月9日(火)  <コウナゴ+ムール>

コウナゴ漁には村の漁師の8割くらいが出ている。船着き場の船もコウナゴ漁でほとんど出払っていて閑散としている中を、一人テンマでムール採りに出た。

今日は天気が良く気温も高くなってきて暑かった。1時間ほどやってマンガに10杯分をかいた。ネットに3つ分の予定だ。戻って揃えていたら12時ちょっと前にゴーヘー父が沖から帰ってきた。朝機械の調子が悪くて出発が遅かったせいでやりたい場所をすでに他の人にやられてしまった後らしく、思うようにカレイが獲れなかったらしい。

午後FH丸はコウナゴ漁から戻るとすぐにムール採りに出たらしい。海苔屋さも顔負けによく働く人だ。コウナゴ漁で1日5〜10万円の分け前があるのだから、今更数千円のムール貝などムリして採りに出なくてもいいと思うのだけど、どうだろう?。うちが採るのを黙ってみていられないのか?

夕方近くにはTA丸が様子を見に来た。彼は冬うち(の間)土方(土建業のバイト)に出ていて、今はコウナゴに出ている。ムールのような手間のかかるものはやりたくなそうだった。人それぞれだね〜。


○3月10日(水)  <けんか腰>

鳶ヶ崎でかき始めた頃、下りから一杯のテンマが走ってきた。どこかのモグリ(潜水漁)の船だ。マガナへ行ってそこで潜ったので、ムール貝をかき終わってからどこの漁師かを確認するためにそのテンマに近寄っていった。もし島のモグリだとすると、島の周りでは漁をさせないくせにこちらにやってきて勝手に採っていくのは見過ごすことができないからだ。

海底から上がってくるのを待っていたらそこへFH丸がやってきた。丁度モグリが上がってきたのでFH丸が「ナマコを採っとるんじゃねぇだらぁなぁ」と問いただした。ちょっと言い方がきついかと思ったら、相手の返事はすでにけんか腰。師崎のモグリで大井の南の地先(海)を借りているヤツらしいが、今日はオゴ(オゴノリ)の様子を見に来たそうだ。

「オゴならええだら。いかんていうなら、師崎の地先を通らせんぞ、ゴッチも通らせんぞ。」とえらい剣幕で怒鳴り手袋を甲板に叩きつけた。地先を借りているのはヤツなのに貸し主側の漁師にずいぶんな態度をとるね。FH丸は相手をなだめすかして、別れ際「気をつけてなぁ」と一声かけると「まぁ、帰られ」と捨てぜりふを吐いていた。いや〜、とんでもないヤツだ。漁師の評判がよろしくないのもうなずける。

ところで、ボンベを背負った潜水漁は三河湾でやってもいいのか?(謎)


○3月11日(木)  <油>

船着き場へ行ったら強烈な油の臭いが立ちこめていた。海面を見ると油膜で虹色にテカってた。誰か知らないがかなり大量の油を船から捨てたようだ。油を直接捨てたのではなく、ビルジポンプで機械室に溜まった油混じりの水を船外に排出したのかもしれない。いずれにせよ漁師以外にこんなことするやつはいない。

採ってきたムール貝をテンマで揃えている時、まわりに漂う油のせいで気持ち悪くなりそうだった。


○3月12日(金)  <まだ残る>

油はかなり薄くなったがまだ残っていた。今日揃え終わったムール貝は日曜まで海に入れて活かしておくので、ネットを海中へ入れる時油が付く心配がある。懸命に海面をカギ棒でかき回し油膜を切ってからネットを海中へ入れた。


○3月13日(土)  <油臭い>

出る前から風が強めだったが採りに出たら更に強くなってきて、早々に帰ってきた。ネット1つ半分で揃えるのも早く終わった。

昨日大船で活かしたムールを引き上げてテンマに移動させていた時、ネットが油臭くなっているのに気づいた。ムールをネットから取りだし臭いをかぐとちょっと油臭い。油は海面だけだと思ってたけど、どうやら臭いは海中にも溶け込んでいたようだ。油膜の張った海に活かしたのは失敗だった。

急いで札場の水槽へ持っていきネットからムールを取りだしきれいな海水で洗う。カゴに入れて水槽に入れるとたくさん浮いてきた。手に持つと確かに昨日より軽い。たぶん油臭い海水に窒息してたんだろう。まだ死んではいないようだけど随分弱ってしまったみたい。洗って貝の油臭さは取れたけど中身が心配だったので割れたムールの身を取りだし丹念に臭いをかぐ。油の臭いは身にはついていなかった。

弱って随分軽くなってしまったけどとにかく水槽に入れておいた。明日持っていく前にもう一度チェックして、業者にも事情を話しておこう。


○3月14日(日)  <ITサポート?>

朝業者へムール貝を持っていった。昨日の事情を話して帰ろうとしたら社長の奥さんにつかまった。先週木曜日に来た時に12月に開設したネット通販ショップの件で相談に乗って欲しいと言われていたのだった。

今まで指導してくれてたところが自分のサイト管理が忙しいからと言って対応が悪くなったらしい。こちらを煽るだけ煽ってハシゴをはずすなんてちょっと無責任だよね。奥さんはいろいろな指導を受けていたようだけど、専門用語のシャワーでずぶ濡れだったみたい。その上ハシゴをはずされて不安が一杯だけど、ショッピングサイト主催のバーゲンセールに参加したいと意気込みだけは充分。

掴まったゴーヘーはマニュアル片手に商品設定をやり、メーラーの再設定を行い、更にパソコンの設定を一部いじる。夕方5時近くまでかかった。ゴーヘー用のタイムカードがすでに用意してあって、次回からこれを使うように言われた。今風に言えばITサポートだけど、まぁ、不定期のバイトだな(笑)。


○3月15日(月)  <カレイが少ない>

久しぶりにゴーヘー父とカレ網に出た。オクゴオリへ行ったけど、一クラでカレイが1枚ずつしかかからない。6クラ目でようやく2枚かかった。その後お昼までで15枚かかったけど2年生か3年生ばかりで大ガレイがかからない。昼からの二クラでようやく大ガレイが5枚かかった。

魚を売った後ゴーヘー父が「終いのがなかったら今日はゼロだが」と一人ごちていたけど、「ゼロ」なわけないだろ、とツッコミを入れ・・・なかったよ(^^ゞ。


○3月16日(火)  <アサリマンガ完成>

去年まで使っていたアサリ用大マンガを修理に出して、ついでに改造した。マンガの柄の角度をもう少しきつくしてその柄も木製に変更するため、金属の柄を取り払って木製の柄をつける鉄板を取り付けた。木製の柄は二日に渡って角材を削り丸棒にした。最初から丸棒を買ってくれば早いけど、マンガへの取り付け部分は四角くないといけないんで角材を削る方法を取った。実際に使ってみないと使い勝手はなんともいえないが、取り付けてた感じではまずまずだ。


○3月17日(水)  <51枚>

今日は梶島へ直行し2クラやった後吉田港前で10時半過ぎまでやっていた。昨日まではカレイがほとんどいなかったようで今日は誰も来ないが、今日は毎回カレイが3枚前後ずつかかる。6枚かかったことも2度あった。丁度カレイが上がってきたのだろう、良い時にやってきたもんだ。

9クラ目がカラだったんで梶島の桟橋そばへ行くと11枚、6枚と続けざまにかかった。それも大半が大ガレイで特大ガレイも1枚あった。マゼが次第に強くなってきたけど、これだけかかるとすぐには帰りたくないから、風と相談しながらやり続け、昼飯を食べた直後の一クラで今日はお終いにした。全部で51枚もかかりその多くが大ガレイだ。水揚げ時のカゴがずしりと重かった。これで単価が去年並だったら金額面でもいうことなしなんだけどなぁ。


○3月18日(木)  <午後からバイト>

午後例のネット通販の件でバイトに行った。昨日バーゲンセールを実施したらしいけど注文が1件もなかったとメールがあったので、今後どうやってネットショップを運営していくかを話し合った。今は方向性が曖昧でネットショップ店長のキャラクターも活かされていないので、ショップの方向性を提案しそれをもって社長とよく話してもらうことにした。


○3月19日(金)  <アサリかきの準備>

明日アサリの口開き(解禁)なので、アサリマンガを用意したりアサリを入れるカゴの準備をした。用意万端だ。


■エピローグ

ムール貝採りを再開したけどやっぱりあまり採れません。来年以降のことも考えて採らないようにしているのだけど、考えずに採ってる人もいるので自分一人だけではその効果がないことを実感中です。アサリも始まるのでもうムール貝採りには出ないかもしれません。

突然ネットショップのサポートをすることになって、いつになく忙しい3月となりました。まだほとんど売上がないショップなのでバイト代をもらうのもなんだか面はゆい感じです。社長も店長もどう運営していいかわからなくて、霧の中を彷徨っているように見受けられます。ゴーヘー自身ネットショップを運営したことがないので、自分のアドバイスでどの程度売上を上げられるかわかりませんが、できることをやっていきたいです。


■次回予告

Vol.64 「漁業無線」 2004年4月3日(土)発行予定

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