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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.64 漁業無線
                                     2004年4月3日発行
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■漁業無線

無線と言えばアマチュア無線が一般の人になじみ深いと思います。ご近所でも家の庭や屋根にアマチュア無線のアンテナを立てている人がいらっしゃるかもしれません。一時流行ったパーソナル無線と違い、アマチュア無線はちゃんと無線局の免許の交付を受けた無線従事者でなければ開局できません。

無線従事者(無線通信士および無線技士)の資格には「総合、海上、航空、陸上、アマチュア」5つのグループがあります。アマチュア無線はこの「アマチュア」グループのことです。5つのグループのうち「海上、航空、陸上」の3つには「特殊無線技士」の資格が設けられています。「海上」の「特殊無線技士」は更に「第一級〜第三級およびレーダー級」の4つに分かれています。我々の漁業無線は「第二級海上特殊無線技士」の免許で利用しています。

資格・免許がこのように細かく分かれているのは、人が利用できる電波の周波数に限りがあるためです。現在のデジタル技術を用いれば携帯電話のように特定の周波数帯域を数千万人で利用できますが、旧来のアナログ技術ではそれは困難であり法体系もアナログ技術を前提とした体系となっているのでしょう。

有限な電波を有効利用するために無線通話は特定の周波数を多人数で共有して行うようになっています。簡単に言えば、無線機のマイクに向かってしゃべった自分の声は同じ周波数を利用している全員に聞こえる、ということです。このため無線の導入前と後とでは情報伝達の速さが劇的に変わったようです。無線がない頃は誰がどこにいるのかは見える範囲しかわかりませんでした。自分から離れた場所で誰かが魚を掴まえても、それは札場で売るまでわかりませんでした。仲買に相対で売ってきたらもうわかりません。このため無線を導入したら魚を掴まえた情報がすぐに伝わって、今まで以上に魚をたくさん掴まえられると考えた漁師もいたようです。若かったゴーヘー父はそんな漁師に向かって「無線で魚が掴まるもんか!」と言ってケンカになったそうです(苦笑)。魚は網で掴まえるものなんで正論ですが、相手を選んで言った方が良かったみ
たいです。

事故やケガが発生した場合、一度に情報が伝わる無線の仕組みは大変便利です。反面、仲間の船と漁の情報を交換しようとしても話が筒抜けになってしまうので、自分とその仲間の間だけで情報交換したい場合は不便な仕組みです。自分だけ離れた場所で漁をしたくても誰かに無線で呼ばれると返事をせざるを得ないのも難点です。逆の立場に立てば便利な仕組みなので痛し痒し。

そこで仲間同士では「符合や暗号」を用いて会話するようになり、カレ網のように一人一人が別々に漁をするケースでは相手に「嘘」を言って誤魔化すようになりました。

嘘をつくのが上手な人は魚がたくさん獲れても言葉巧みに誤魔化します。それが嘘だとわかっても100%の確信があるわけじゃないので、他の人は今漁をしている場所から移動する決心がつきません。結果的にかの人は他の船を寄せ付けずに漁ができます。嘘をつくのが下手な人はしゃべると本音が出るので自分からはあまり無線を使いません。ダンマリを決め込んで網をやりつづけますが、それが魚がいたことの証になるので結果的に他の船を呼び寄せてしまいます。

無線は文明の利器であり情報を得るには便利な道具ですが、正直者や他人の情報に頼らずに漁ができる者にとっては扱いがちょっとだけやっかない道具です。





■今週のゴーヘー

○3月20日(土)  <アサリかき>

テンマを出してアサリかきに出た。毎年みんなが最初にかく場所へ行くとまだ水深が深く胴長では水に入れずしばらく待つ。しかしなかなか水が引かないので鳶ヶ崎へ移動すると、有料のアサリ場にテンマが10パイくらい泊まっているのが見えた。去年ゴーヘーがかいた場所だ。今年も次の潮でかこうと思ってたけど、あれだけの人数でかかれてはもうアサリが採れないかも。残念。

鳶ヶ崎では例年かいている場所を探したけど、今年は海藻が海底を覆っていて見つからず、しかたなく堤防のそばでかく。ここで5キロくらいかいただろうか。これでは全然足りない。テンマの近くに戻ってかいていたら偶然捜していた場所を見つけた。今度はしっかりヤマテを覚える。しかし既に潮が上ってきており3キロくらいしかかけなかった。

マンガの歯で胴長の左足先を突いてしまい穴が開いたようだ。海水が染み込んできて冷たい。補修しなきゃ。


○3月21日(日)  <11キロ>

10時ちょっと過ぎに出て行って帰ってきたのが14時近かった。3時間半あまりアサリをかいていたわけだけど、採れた量は全部で11キロ。去年は20キロ前後ずつ採れたことを考えると半分程度しかない。参ったなぁ。

明日は浅い場所で見つけた大きなムール貝を9時頃から採りにいこうと思う。ネットに1つ分採れればいいから、その後アサリかきをやろう。


○3月23日(火)  <やられた>

ムール貝を採った跡が広く砂地になっている。そのうちの岸側を少しかいたけどアサリはほとんどいなかったんで、諦めて岬を回って西へ行った。

ところが後から来た人が沖側でかいたら大きなアサリがカゴに一杯採れたらしい。やられた!。ムール貝を採った跡はアサリがいないと思いこんでいた。明日は是が非でもそこへ行ってかく。


○3月24日(水)  <ムール+アサリ>

アサリかきの前にムール貝採りをやった。雨の中1時間ほど岩の上をかいてネット2つ分くらいありそうだったけど、後で揃えたら1つ+α程度しかなかった。海藻がたくさんついていて嵩(かさ)が増えていただけだった。

アサリの方は予定通り鳶ヶ崎でかいたけど、ムール貝を採った跡には売り物になるようなアサリはいなかった。昨日採った人はホントにラッキーだっただけのようだ。運のいい人にはかなわない。しかたなく他を捜してまわりわずかな砂地を見つけては懸命にかいてどうにか9キロのアサリが採れた。

ムール貝を揃えた後アサリを仲買に持っていき前回の勘定をもらった。単価は過去最低を下回っていてがっかり。今年は粒が小さい上に身が少ないらしいからしかたないけど、一昨年も同様だった割りに値が良かったので、今年の値の安さが際立った。う〜ん。


○3月25日(木)  <単価アップ!>

昨日のアサリの単価がショックだったんで今日はムールに重点をおいた。できるだけ粒の大きいモノを捜して放浪する。浅いところのムール貝はやや軽い感じがして、貝同士当たるとカラカラと音がする。深い方はそうでもないようだ。どうにかマンガに10杯分をかき、揃えたらネットに2本半になった。

ゴーヘー父が仲買に魚を持っていった際、昨日持っていったアサリの勘定も一緒にもらってきた。単価が50円アップしていて嬉しかった。わずか50円、20キロでも千円の違いでしかないが、心理的な違いは大きい。50円アップしてようやくボーダーラインに乗った感じだ。


○3月27日(土)  <二日目>

昨日の猛烈な風の中テンマを出して鳶ヶ崎ヘ行ったら、ビックリするような高い波が押し寄せてきていて慌てて帰ってきた。今日もまだ風が吹いていて出られるかどうか朝から心配だった。

少し早い昼飯を食べて12時半頃テンマを出した。鳶ヶ崎にはすでにFH丸がいて、下りのガラ(貝殻)が多い場所でかいていた。近くを走る時テンマの中に山積みになったムール貝が見えた。海藻とガラが多いだろうが、あれだけあればネット4つはあるだろう。鳶ヶ崎のムールは彼が全部採ってしまいそうな勢いだ。

うちはイワテ(北側)のシマのすぐそばまで行った。前回良いサイズのムール貝があった場所だ。海底が岩に覆われている場所でその岩の上にムール貝が着いている。それをマンガで丁寧にこそげて採った。時々マンガが岩に引っかかるのでやりづらい場所だけど、今はもうこういう場所にしか良いムールがない。1時間ほどやってカゴに5ハイ分ほどかいて帰ってきた。その後16時まで揃えてネットに2つになった。


○3月28日(日)  <なんだか疲れた>

午後からムール貝採りに出て1時間ほどかき帰ってきて16時まで揃えた。ネットに1つちょっとなので大した量じゃないが、なんだか疲れた。昨日から右目の下まぶたが少し腫れてる。腫れと疲れは、なにかの感染症の影響だろうか。


○3月30日(火)  <鶏頭> 〜掲示板より〜

免許証とクレジットカード、その他の会員カードを入れたカードケースを無くした。正確には無くしたことに今日気づいた。無くした日は22日かひょっとしたら3日かも・・・やっぱ鶏頭(大汗)。

今日ネットでちょっと支払いをしようとした時、クレジットカードが無いことに気づいた。それから慌てて部屋中探し回り車の中も捜してきたけど、どこを捜しても見つからない。22日にパソコン量販店に行った時、たすき掛けしてた布製肩掛けバッグをさわった人があったような気がした。その時財布はちゃんとあったのでそれ以上気に留めなかったのだけど、あのときスリにあったかも・・・・。

とにかくカードを止めて再発行手続は明日。免許証の再交付が面倒だなぁ。警察へも届けを出さなくちゃ・・・。


○3月31日(水)  <続鶏頭> 〜掲示板より〜

無くしたカードの口座類はすべて止め、その際不正利用のないことも確認でた。今朝警察に遺失物届けを出して、午後にたまたまお休みだった妹に頼んで、免許試験センターまで送迎してもらい運転免許の再発行をしてもらってきた。再発行には手数料がかかるものが多いので、その出費だけでもバカにならない。実に参った。

今回しみじみ思ったのは、
 ・日常必要のないカード類は持ち歩かない
 ・現金、キャッシュカード、クレジットカードは分けて持つ
 ・カバンのチャックは閉めておく(最重要)
だった。サラリーマン時代の習慣では貴重品類はすべて身につける前提だったが、今は外出時貴重品はカバンに入れているので、これを前提に安全策を講じなくてはいけなかったようだ。

なにより「田舎だからといって油断してはいけない」ということだった。


○4月2日(金)  <歯が欠けた>

数日前、大きな詰め物をしてあった歯の残り少ない自分の歯が一部欠けた。今日午前中に初めて行く歯医者へ電話したらすぐに来てと言われ非常に不安を覚えた。予約なしで飛び込み客を見るなんて・・・そんな暇そうな歯医者、大丈夫?。それでも行って治療を受けたけど・・・。

3月は無駄な検査費用を使い、歯が欠けた上に免許証・カード類を無くした。散々な1ヶ月だった。


■エピローグ

1・2日とも強烈な風が吹いていたが、FH丸はムール貝採りに出ていた。出ると常にネット3〜4つ分のムール貝を採ってくるので、ゴーヘーの倍以上採っていることになる。

彼がたくさん採ることをやっかんでいるわけではない。採りすぎていることを心配している。

と同時に、自分が採ることを控えていたその分彼に全部採られてしまい、自分が儲からないことが腑に落ちない。そりゃぁ、やっぱり自分も出るしかないよね、というのが今の結論。

う〜む・・・。


■次回予告

Vol.65 「乱獲」 2004年4月17日(土)発行予定


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