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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.65 乱獲
                                    2004年4月17日発行
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■乱獲

「昔はたくさん獲れたけど今はほとんど獲れない」とか「今では貴重な魚です」という言葉をよくテレビなどで耳にしますが、カレイも20年前はびっくりするほど獲れ、10年ほど前でも面白いように獲れたそうです。それが今では大漁になることなど滅多にありません。どうしてこんな状態になってしまったのか、日々思いを巡らしています。

海が汚れたとか水質や環境が悪化したとか言われていますが、どれも他人のせいにしているようにしか聞こえません。確かに昔に比べてそれらが変化した影響もあるでしょうが、カレイの獲れる量が減ったのは、結論から言えば「獲りすぎた」です。

ではなぜ獲りすぎたのでしょう。

これまで何度も書いたとおり漁師は競争が第一です。隣の船に勝つ、隣の漁師に勝つ、あの漁師に勝つ、あいつに勝つ、こいつに勝つ、と常に心のどこかで誰かと競争しています。競争ではどんなことにも常に勝ちたいのです。負けるのは絶対に認めないのです。その意味で大変プライドが高いと言えます。

漁場へは誰よりも早く行き誰よりも早く網をやり、誰よりも早く網を揚げたいのです。網の長さは誰よりも長くしたいし、漁の回数は誰よりも多くやりたいのです。漁の時間は誰よりも長くやり、港に帰ってくるのは誰よりも遅く(ここは早くじゃないです)したいのです。網や漁具の改良・交換も常に人に先んじて行いたいのです。

水揚げ(金額と量の両方)は当然一番を目指します。上記のことがいくら早くても水揚げで勝てなければかえってバカにされるだけなので、水揚げこそ一番を目指します。もし一番になれなければ心の中で誰か競争相手を決め、相手より多くと自分に言い聞かせます。

水揚げを多くするためには、まずたくさんの魚が必要です。大きな魚ばかりあれば水揚げは多くなりますが、自然相手ではいつも大きな魚ばかり獲る事も出来ません。いきおい中小の魚も売って水揚げを積み上げます。小さくても値段がつくのなら数多く獲れば相応の金額になります。

そうです、この瞬間から乱獲の階段を下りることになるのです。

乱獲は獲りすぎた結果ではなく、まだ豊富に獲れる頃から、いえむしろ最初から行われているのです。競争心とプライドが高いがゆえの結果ですが、多くの場合「生活のため」という錦の御旗でもってカモフラージュされてしまいます。

乱獲に対する最も有効な手段は「漁獲規制を行うこと」です。獲って良いサイズ、時期、時刻などの規制が多いですが、「船一パイあたりの水揚げ上限」なんてのも有効かもしれません。ただ現実はカレイを獲っているのはカレ網だけではなく、底引き、引っかけ、釣りと他に多くあり、小さくても買ってくれる人もいるので規制は簡単ではないでしょう。他の地域の漁獲規制を調べると規制には「商品価値のある魚介類」である必要もあるようで、ここ三河湾・伊勢湾でカレイがそれに相当するか微妙です。

この冬採ったムール貝は来年以降を考えて2年生未満の貝を採った場所に再放流しました。ムール貝を採る船もテンマ2ハイだけなので、うまく採れば毎冬ムール採りができると思ったのです。しかしもう1パイの方は最初から2年生未満の小さい貝も売っています。より小さい貝の再放流も潮の通さない別な場所へ行っているので育たない可能性が高いです。3月以降量が採れなくなってからは1年半未満の貝もネットに詰めて売っているようです。

来年以降のことを考えていないのか!?と初めは思いましたが、「今年採りすぎて来年は採れそうにないから今年採れるだけ採っておこう」ということなのでしょう。その意味で来年のことを考えていると言えます。

自分一人だけで乱獲防止を実行していてもまったく意味がありませんが、乱獲防止の協力を取り付けることができないのは自分の力不足でしかないです。いっそ自分も水揚げを増やす階段をおりるのか・・・

しかし、カレイもコチもアサリもムールも、どれも大きく良いモノを獲りたい自分がいます。あぁ、なんて生き方が下手なんでしょう。





■今週のゴーヘー

○4月3日(土)  <ムール採り>

朝予定通りムール貝採りに出た。ソコリでもまだ水深が深いので浅い場所にテンマを進める。そこはムイカラ藻が繁茂してムール貝に付着しており貝もやや小さめだった。しばらく採っていたけどムイカラ藻の多さと貝の小ささに嫌気がさしてきて沖側へ移動した。今度の場所は岩の上で貝は大きめだけど数が少ない。他に良い場所もないので終わりまでそこで採った。1時間半あまりやってカゴに5ハイ分採り売り物になったムールはカゴ1つ余り。効率が極めて悪い。

とろこで今日はFH丸はお休みだった。孫が遊びに来たのかな?


○4月4日(日)  <雨>

ちょっと寝坊して9時過ぎに慌てて出て行った。船着き場へ行くとゴーヘー父が沖から戻ってきており、一緒にテンマに乗って出かけた。鳶ヶ崎にはすでにFH丸がいた。

霧雨が降る中イワテのシマ(岩)のそばでムールを採った。3月最後に採っていた場所だ。前回までは貝が大きめ・重めだったが今日採れた貝はそれを若干下回る感じだった。霧雨がいつの間にか小雨に変わった頃、アサリかきをやる人が海に出てきた。今日からまたアサリかきができるけど、明日以降アサリかきをするかムールにするか・・。

11時までやって帰ってきた。すぐに揃え始めて昼までに半分揃え終わった。雨はしっかり降っておりカッパに穴が開いているのか妙に背中が冷たく寒い。うちに帰ってみたら案の定背中が濡れていた。着替えずにお昼を食べていたら一層冷えてしまい、家を出る前に慌てて着替えた。午後の揃えは14時に終わりネット袋に2つ弱できた。


○4月5日(月)  <凪いだ>

強い風だった。9時にテンマを出すと鳶ヶ崎は波のため一面濁っていた。すぐに退散。しかしお昼前にはその風も凪ぎ波も穏やかになっていた。退散するじゃなかった(苦笑)。


○4月6日(火)  <三千円>

9時半頃からムール貝を採り始めた。10時半過ぎにはカゴ3つ分くらいになる。その頃アサリかきの人達がテンマで出てきて鳶ヶ崎や有料アサリ場へやってきた。今年もアサリが少ないらしく値段も高いらしい。そのため例年に比べテンマの数も多い。

11時前にガマンできなくなり有料アサリ場へ移動した。イワテ(北側)でヤタ○兄弟がかいていてそのイワテにテンマを泊めた。海底は石が多く砂も硬く締まっておりかなり力がいる。大粒のアサリが数個ずつマンガに入るがどうも効率が悪い。ここは3,000円払っているんでせめて元は取りたいと、あちこちかいて廻ったらどうにか10キロ程度かけた。選り分けたら大きいアサリの方が多かった。去年も最初はこんなパターンだったが、重さは倍あったっけなぁ。

ヤタ○兄弟はカゴにそれぞれ2ハイかいていった。ただし小さなアサリも小石もいっしょくたにカゴに入れていたようだ。後で選り分けるらしい。効率はその方がいいけど小さなアサリの行方は?。


○4月7日(水)  <アサリを札場で売る>

今週から札場が始まった。一度札場でアサリを売りたいと思っていたので今日は良い機会だった。

札場では今魚が少ないので高値だった。そんな中アサリを売るのはちょっとドキドキした。村の漁師は普通アサリを仲買に相対で売り、札場で売る人はゴーヘー父も記憶にないそうだ。たぶん札場始まって以来初めてじゃないかと。なのでいくらの値が付くか見当も付かなかった。ゴーヘーがセイロにアサリを乗せて持っていっても他の漁師は一瞥するだけで気にもとめない様子だった。

様子見に中サイズのアサリを売り台の乗せると仲買達の目つきが変わった。アサリの重さを「9キロ」と言うと、仲買の一人が「それを言っちゃおもしろないて〜」という。でもついた値段はおもしろかった。なんと「8,000円!」。普段このサイズはキロ400〜500円で売っている。キロ単価888円なんて相対では絶対でない値段だ。周りにいた人からどよめきが起きた。すぐさま大きいアサリを持ってきて売り台に乗せ、今度は重さは言わないでおいた。仲買は口々に「良いアサリだ」といい、さっきの仲買が一つ割って身入りを確かめ「良い」を連発していた。そしてついた値段が「1万円」。重さ12キロだったからかなりお買い得になった。今度から必ず重さを言おう(笑)。

初めて売ったアサリだが、二日分とは言え20キロ程度のアサリで1万8千円もの値が付いたことになる。さ〜て、この話が明日までにどんな風に漁師の間に広がっていくか、楽しみだ〜。


○4月8日(木)  <アサリ洗うな!>

夕方札場でバカ網の水槽のホースを抜いて、アサリを洗っている年寄りがいた。ゴーヘーはアサリを水槽に活かしに行って丁度その現場を目撃したので、「あんた、どこの人だな?」と聞いてみた。水槽の海水を使ってアサリを洗うと砂や泥が排水口に溜まって詰まるので、組合からの通達で札場では「アサリ洗い禁止」になっているからだ。

ゴーヘーの問いかけにその人は「なんだ!?」という驚きの顔をするばかりで、返事をしない。そこで「札場はアサリを洗っちゃいかんだよ」と言ったのだが、耳が遠いのか返答がない。もう一度繰り返したがやっぱり返事がないから、たぶん「なんで洗っちゃいかんだ!」と心の中で逆ギレしてたんだろな。たぶん村の漁師なんだろなぁ、名前はわからんけど(^_^;。


○4月9日(金)  <値下がり>

今日も札場にアサリを出した。が、一昨日に比べて単価が200円も安い。安くなるとは予想してたけどせいぜい100円マイナス程度だと思っていたので、かなりショック〜。それでもまだ相対で売るより値はいいけどさ。

もひとつ意外だったのが、先日のアサリの値段を見ても誰も売りに来ないこと。札場では重さを計ってくれないし組合に口銭を取られるから損した気分になるののかも。みんなで売りに出せばアサリを売る仕組みが出来て値段も相応の値が付くようになるのになぁ。一人じゃだめだ。

ふと、幸島のニホンザルの芋洗いを思い出した。最初に海水でサツマイモを洗って食べたのは小猿で、塩味が利いてうまかったのかその後も必ず海水で洗って食べたそうだ。それを見て他の小猿がマネをして、更にメスザルに芋洗い文化が伝搬したけど、大人のオスは真似しなかったそうな。最後のとこ、似てない?


○4月10日(土)  <オゴ>

今日はいつになくオゴを採る人が多かったので、うちもいつも捨ててるオゴを捨てずに集めてみた。ネットに1袋ちょっと集まり、夕方海藻加工工場へ持っていった。見慣れない顔が小さな袋を両手に提げていたせいか、工場の人は不審そうな顔つきでこちら見る。オゴを買ってもらいたい、というと若い衆が目方を量って伝票を切ってくれた。が、伝票は入庫伝票で勘定については一言もなく、すぐに工場へ戻ってしまった。

忙しいくて一見さんの相手はしてられないのかもしれないが、なんとまぁぞんざいな扱いだこと。工場で働いていた人達も皆愛想がなくてなんだか暗い感じ。敷地の中全体に独特の臭いが立ちこめていて、あの臭いの中で一日中作業していては愛想もなくなるかもしれないな。

勘定は2千円前後でちょっと惜しいけど、あの雰囲気の中へは二度と行きたくないなぁ。


○4月11日(日)  <オゴ再び>

今日もオゴを集めた。今度は天草と同様に干してみて、トコロテンができるかどうか試すため。ネットで調べるとオゴでもできるようなことが書いてあったので、早速試してみることにした。天草と違ってオゴはたくさん採れるからこれでトコロテンができたら面白いだろな。


○4月12日(月)  <浮いた>

昨日最後に採っていた場所のヤマテをよく確認していなくて、、、つまりまったく覚えていない。しかたなく海底の様子を見ながら場所を探して「ここだ!」という場所へ行ったはずなのに、今日採ったムール貝は昨日より格段に小さい。どうやら場所が違ったようだ。小さい貝だけで1カゴ半もあり、売り物になったのは逆に1カゴ半に足りなかった。ネットに詰めて水槽に入れたらぷかりと浮いてしまった。身も痩せててこれじゃ三流品だ。


○4月16日(金)  <1日早く>

昨日FH丸はムール貝を採りに出たらしいので、1日早いがゴーヘーも今日採りに出た。錨を降ろすとFH丸がみやって(船を近づけて)きて「採れんなぁ」と言うので「まぁ、(ネット)1つちょっとだがぁ」と答えると「大きいヤツばっか、選っとるもんだいだがや」と返してきた。返事せず(-_-;)。

採り始めて2時間もするとソコリになった。ゴーヘーは海底の岩の上のムールを採っているので海底の濁りは少ないが、潮が止まればそれなりに濁る。テンマの上の海草まみれのムールは2カゴ分程度。帰って海草とムールを選り分けるよりこの場で選り分けた方が後始末が簡単なので作業を始めた。しばらくするとFH丸がみやってきて、「こんなに採ったぞ〜」と言いながらこちらの様子を伺っている。「そんなにありゃ、ネットに4つはあるだね」と返してあげるとニヤニヤしてた。ゴーヘーがネット2つ分くらいなのを確認して帰るかと思いきや、途中でまた採っていた。あれだけ採ってもまだ採り足りないんだなぁ。


■エピローグ

今回のテーマはちょっと荷が重かったようです。まだ自分の中でうまく消化できてなくて、気持ちだけ先走ったような感じです。いつかまた再挑戦したいです。


■次回予告

Vol.66 「衝突事故」 2004年5月1日(土)発行予定


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