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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.67 アジモ
                                    2004年5月15日発行
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■アジモ

「アジモ」、人によっては「アモジ」と呼ぶこともありますが、どちらも「アマモ」という海草のことを言っています。

アマモは稲科(注1)の植物だそうで陸上から海へ戻っていった変わり種らしいです。稲科の植物らしく葉は細くて平べったく稲のような穂を伸ばして実(種)を作ります。穂が葉の間から伸びてくる様子はまさに稲のようです。茎は根元で株分かれしその根は砂地の中に地下茎を伸ばして他の株を生やします。種と地下茎の両方で子孫を残す仕組みです。

地下茎はアマモの特徴の一つです。多くの海草の根は海底の石・岩に付着するためのものであり、体を支える必要のない海中では潮の流れに流されないことが根の重要な役目です。このため海底が動く可能性のある砂地や泥より、動かない岩場に多くの海草が茂ることとなります。つまり砂地や泥の海底は元から海にいる海草には進出しづらい環境であり、陸上で根と地下茎を発達させた稲科植物であるアマモにとっては逆に好都合な環境だったわけです。

しかし泥の海底には問題があります。潮の流れや波によって水が濁りやすいのです。光合成には太陽光が欠かせませんから水の濁りは致命的です。潮の流れや波の影響を受けない水深の深い場所では太陽光が届きにくいので、アマモの生育場所は水深の浅い砂地に限定されたのでしょう。地下茎のおかげで砂地でも速い潮や波に流されることもありません。

こうしてアマモは平らな砂地一面に背丈のある草原のように広がります。アマモの草原は大きな魚の進入を困難にし結果的に小さな魚達や生物を守ります。小魚の数が豊富となれば当然この小さな獲物たちを狙って小さなハンター達が集うこととなります。エサを獲るにも逃げたり隠れたりするにも好都合ゆえ、卵から孵った子供達のために大きな魚やイカ達もわざわざアマモの中に卵を産むものがいます。アマモの群生は小さな魚や生物にとって恰好の隠れ家・ゆりかごとなり、生物の誕生や食物連鎖の重要な舞台装置となっているわけです。

さて、海の生物にとって重要なアマモの群生ですが、現在日本各地の海では消えつつあります。アマモにとって好都合な浅い砂地の海は人間にとっても利用しやすい場所(埋め立て)であり、人間の活動の影響(家庭排水・工業排水)を強く受ける場所でもあります。

漁業の面でみれば、魚や他の生物の種類が豊富ゆえ良い漁場であると言えます。刺し網や流し網は昔からアマモの群生の中や周辺で漁をしてきました。今でもそれは変わらずカレ網でもよく漁をします。クロダイやコチ、カレイ、ヒラメが獲れたり、5〜6月にかけては産卵に来たアオリイカも獲れます。

しかしアマモの中でカレ網のガランガランを引き回すとアマモがガランガランに絡まってちぎれてしまうので、アマモの群生にとってはマイナスです。一方板引きの底引き網だとアマモを根元から刈り取ってしまうのでアマモの群生へのダメージが大きいです。時々四畳半ほどの大きさで海面に浮いているアマモの束を見ることがあります。決まって朝なので夜暗闇に紛れてアマモ場で底引きをやり、網に溜まったアマモを捨てていったのでしょう。

ゴーヘーが子供の頃は村の漁港の中にもアマモが生えていました。港内の埋め立てが進み海水の循環が悪くなるにつれそれらは消えてしまいました。アマモは種からの育成が難しいそうで一割程度しか育たないらしく、地下茎ごと移植しても根付く割合が悪いそうです。昔は邪魔になるほど繁茂していたアマモも現在の海の環境では人の計画したようには育たないみたいです。

海の小さな生物にとって重要なアマモの草原を各地の海で復活させるには、アマモが育つような海のルールと環境作りから手をつけなくてはいけないのかもしれません。

注1: メルマガの原文のまま載せていますがこれは間違いです。正しくは稲や麦などと同じ単子葉植物で、「木蓮(被子植物)門百合(単子葉植物)綱オモダカ亜綱イバラモ目アマモ科」です。ネット上を検索すると「単子葉類オモダカ目ヒルムシロ科アマモ属という多年草の海産顕花植物」という紹介もあります。






■今週のゴーヘー

○5月5日(水)  <川のよう>

苅谷の沖、空港島の東へ直行。丁度満ち上がり(満潮)で潮が止まっていたが、1時間もすると下り潮が利き始めた。空港島とオカとの間は2kmくらい開いているのだけど下り潮がよく利く場所で、特に今は大潮のため川のような流れがソコリ近くまで続いた。延々5時間以上ボンデンも浮けも下りへ向けて流されっぱなしだった。この場所へ海草が流れてきたら網が揚がらないほど付きそうだ。


○5月6日(木)  <三河湾半周>

毎年この時期は魚がさっぱり獲れなくなる。去年もオクゴオリ・田原・梶島を廻ったことがあったが、今日は逆向きに廻った。どのクラも魚が1匹かかれば良い方で、カラが多かった。ぐるっと回って江比間まで行ってようやく大ゴチが捕まった。それがなければひどいものだった。

今年は東風があまり吹かないから魚の動きが悪いのかなぁ。


○5月7日(金)  <汚れは嫌>

去年はよく大ゴチがいた内海前でやってみたが、やっぱり去年の話だった。

高峯前をやりたいけどタテコミがやってあって網をやる場所がないんで、内海のちょっと下りでお茶を濁す。6時半に小野浦へ移動すると網が汚れながらもカレイがかかるので4クラやる。汚れにガマンできなくなり9時に大谷まで上ったけど一クラやってカラだったためまた小野浦に戻った。

今度はコチがかかったので汚れてもガマンして13時までやった。


○5月8日(土)  <大ゴチ逃げた>

今日はずっと小野浦でやった。網は昨日以上に汚れたけどカレイやコチが昨日以上にかかったのでガマン・ガマン。途中、大ゴチが網にひっかかって海底から揚がってきたけど、海面間際で体を振って網を引きちぎって逃げていった。ネットローラーを使って網を揚げていると手応えが鈍く、にも関わらずその手応えがあまりに大きいため、ゴーヘー父は去年のGWにかかった大きなサメを連想し「どうせサメだから」とテキトウに網を揚げていたらしい。見もしないうちから決めつけていたのが敗因。

大ゴチに逃げられて網を叩きつけて悔しがっていたけど、それなら始めから慎重に揚げろよ、と大ゴチを見損なったゴーヘーは思った。逃げた魚は大きいよね(苦笑)。


○5月11日(火)  <オオアリクイ>

朝起きたら雨は止み風もなかったので出かけた。今日は風が吹いてくる予報だったせいか、船着き場にはカレ網全員の船がまだ着いていた。風が出てきてもすぐに帰れるよう今日は尾張で漁をすることにして浦口をイワテ方向へ曲がった。
まだ4時半で薄暗い中鳶ヶ崎の造成地前で網をやる。

ふと下りを見るとテンマが一杯やってくるのが見えた。鳶ヶ崎のムール貝を採っていた場所へ入っていったのでFH丸だとわかる。雨だった昨日、午前中彼がうちにカレ網の様子伺いに来た時、「ムールには行かんの?」と聞いたら「まんだ(まだ)早いで行かすかぁ」と答えていたくせに、今日は薄暗いうちから出てきた。しかも今日は小潮で朝はまったく潮が干らない上にすでに上り潮が始まっている。ムール貝を採る条件としては良くないけどそれでも採りたいわけだ。

昨日の夜NHKの「地球ふしぎ大自然」で南米のシロアリの放送をやっていたが、その中で1匹のオオアリクイが1つの蟻塚から食べるシロアリの数は150匹前後で時間も1分程度だと紹介していた。蟻塚を壊すのもほんのわずかで舌が入る穴をあける程度。蟻塚の中には100万匹のシロアリがいるそうなので本来なら食べ放題だけどあえてそれをしない点に、自然の叡智を感じてしまった。オオアリクイこそまさに「生活のため」なのだ。

翻ってこちらは・・・・。


○5月12日(水)  <クロダイ大漁>

朝小野浦でやった一クラ目でクロダイが大漁だった。3年生・4年生ばかりで実に42枚!。ハゴ(2年生)ならこれだけの数がかかることも1年に2・3度あるけど、3年生以上ばかりだと滅多にない。皆大きいので網への絡み具合も少なめではずしやすかった。ハゴだったらキリキリ舞になっていて40枚もはずすのは骨が折れただろう。クロダイは今安いけどこれだけ数があれば相応の値段になるはず。同時にカレイも8枚かかっていたので値段の方はクロダイ以上に期待が持てる。その後は内海前で一クラやった他は11時過ぎまで小野浦でやっていた。ずっとカラが無くてコチやカレイが数匹ずつかかったので、どちらも大漁になった。

今日の札場は一番売りだから安いクロダイをたくさん売るにはもってこいだとほくそ笑んで帰ってきた。うちのクロダイだけで相場が崩れちゃうだろな。

札場の始まる時刻に札場へ行ったら札長が真新しい売り順表を壁に掲げている最中だった。なんと今日から売り順が変わるらしいのだ。それによるとうちは今日2番売りで、今日の1番売りの組にはハゴが大漁だったHA丸がいた。なんという不運、悪い星の巡り合わせ(T_T)。

HA丸の売る様子を見ていたら、1カゴ20枚ぐらいずつ5カゴか6カゴ売っていた。ハゴが100枚くらいあったようだ。結局うちのクロダイは1枚1キロ近くある4年生でも300円にしかならなかった。コチとカレイが大漁で良かった〜。


○5月13日(木)  <駆け引き>

朝から東風が吹いていたが船着き場へ行ったらみんな出て行くところだった。波はまだそれほどなかったけど明神様を廻って豊浜前まで結構揺れた。今日は東風がどんどん強くなってくるから途中で帰ってくることになると予想。

小野浦へ到着し一クラやり終えるとSK丸がイワテから下がってきた。イワテでカラだったらしく無線で魚がおらんかったことと風が強いことを愚痴り、「これでおらな、まぁ帰るだが」と怒ったように話していた。こう話していてもこの人はいつも帰るのが人より遅いけどね。この後OA丸とFH丸がイワテから下ってきてそのまま帰っていったが、網を揚げたSK丸もそばにいたAW丸も予想通り帰らず。うまく2ハイの船を帰したけど、うちが漁を続けてたからきっと気が気じゃなかったろう。結局うちはOA丸達が帰った後3クラやって帰ってきた。

が、浦口へ来てクマセで網をやった。小野浦より波も風よひどいがこういう早く帰ってきた日にゴーヘー父はよく浦口近辺で網をやる。今日もそうだったわけだが狙ったコチはかからずじまい。残念。

鳶ヶ崎にはテンマでムール貝を採るFH丸の姿が見えた。南東の風で波も高いからとっても採りづらいはずなのによくやるもんだ。


■エピローグ

今毎日てんぐさの世話をしています。アサリかきとムール貝採りの最中に採ったてんぐさを、洗っては干し洗っては干しを繰り返してようやく半分が完成し1キロほどできました。ゴミを採るのに時間がかかったり、今年は雨がよく降るので生乾きのまま取り込んでちょっと臭ってしまう失敗があったりしましたが、順調にいけば合計2キロ程度はできそうです。時々トコロテンを作って食べてます。

来年はもっとしっかり準備して10キロ単位のてんぐさを作り、ネットで販売したいです〜(^_^)。


■次回予告

Vol.68 「テングサ」 2004年5月29日(土)発行予定


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