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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.68 テングサ
                                    2004年5月29日発行
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■テングサ

寒天はトコロテンから作り、トコロテンは天草(テングサ)から作ることは皆さんご存じだと思います。寒天とトコロテンは食物繊維を多く含みダイエット食品としても注目されており、どちらもスーパーで売られていて手軽に食べることができますが、トコロテンを天草から作って楽しんでいる方はどの程度いらっしゃるでしょうか?

テングサは紅藻類テングサ目テングサ科の海藻だそうで「テングサ」と呼ばれているものが何種類かあるようですが、こちらでは「マクサ」という種類を特に「テングサ」と呼んでいます。3月下旬頃から海岸にテングサが流れ着くようになり、これを拾って「テングサ」を作ります。潜って採るのは5月からが解禁だそうです。

テングサを「作る」と書きましたが、海岸で拾ったテングサは砂まみれで見た目ではわかりませんが小さな貝やエビなどがたくさん付着しています。何よりその色がテングサの「黄色」ではなく「黒っぽい紅色(あかいろ)」をしています。テングサは紅藻類なので海にある時は本来の「紅」色をしているわけです。これを真水で洗って干すわけですが、昆布やワカメなどと違うのは洗って干す作業が1・2度で終わりではないことです。

一度洗って天日に干せば砂は落ちますが小さな貝やエビなどはまだ落ちません。色もまったく変わりません。これを2・3度繰り返すと貝やエビはすべて落ちますが、色はまだ半分以上紅いままです。そしてここから先が長いのです。真水で洗っては天日干し、洗っては天日干しを繰り返すこと正味2週間ほど。天候にもより延べにしたら3週間から1ヶ月くらいかかってようやく紅色が抜けて黄色くなります。

収穫してから食べられるようになるまでの手間は昆布やワカメとは比べものにならないくらいかかりますが、脱色には化学薬品を使わず防腐剤も保存料も使わずに「完成した」テングサは、湿気を防いで保存すれば3年くらい味も風味も変わらないトコロテンを楽しむことができるようです。

そのトコロテンですが、寒天と違ってテングサの濃厚な香りがします。酢を少量入れて作るので酢の香りもしますが、室温でさましたトコロテンを冷蔵庫で更に冷やすと酢の香りも気にならなくなります。半透明で弾力のある歯ごたえはトコロテンならではですし、食物繊維を多く含んでカロリーゼロなので冒頭でもご紹介したようにダイエット食品としても注目を集めているようです。

私が子供の頃は毎年夏になると、母が押入れのどこか奥からビニール袋に入ったテングサを引っ張り出してきてトコロテンを作っていました。今考えると一体何年前のものを使っていたのだろうかと甚だ疑問になりますが、テングサの保存が利く特性を最大限利用していたと考えて、深くは追求しないことにします。






■今週のゴーヘー

○5月15日(土)  <大漁から急変>

天気予報では移動性高気圧が日本上空を通過し東からゆるく日本を覆う天気図だった。風は南東の風がゆるく吹いてのんびりとした初夏のはずだった。

4時50分頃小野浦へ行くとすでに3バイの船が網をやり終えた後で、TA丸が丁度網をやるところだった。うちがやりたかった場所はみんなやられた後で、しかたなくTA丸のすぐ下りに彼の網にかかりそうなくらい近くに網をやった。こんなに船が多くなってはダメだと諦めてたこの一クラ目で、なんとカレイが30枚近くかかる大漁だった。カレイはやや小さめだったけど網を揚げるそばから次々と揚がってきて二人とも大あわてで網からはずした。次も10枚くらいかかりそのまま続けていたら他の船は皆イワテに走っていってしまった。皆カレイより大ゴチを狙いに行ったみたい。

5クラめを揚げている時東風がふわりと吹いてきた。風当たりがしっかりしていてこのまま吹いてきそうな気配。案の定、そのまま吹き下ろしてきて1時間後の8時過ぎには海一面に白波が立った。漁は諦めてフォースピード(かなり速く)で走り出すと高峯前で前方から6・70cmの波が1mくらいのうねりに乗ってまさに波状攻撃でやってきた。船の前半分は船底が浮いてるんじゃないかと思うほど上下に揺れ、フォースピードで走るのはやばいと感じたがゴーヘー父はなかなかスピードを落とさない。10分ほどしてようやく先を走っていたYS丸に追いつきスローに落とし一緒に帰ってきた。


○5月17日(月)  <濃霧>

朝南東の風がちょっとあって行くかどうか迷った。北の船だまりでみんなと相談してるうちに風が弱まり行くことになった。

明神様を廻って豊浜前を走っていたらイワテからモグリ(潜水漁)の船が走ってきた。夜のショウバイでもやってたのかと訝っていたら次々と走ってくる。どうやらレンゴウカイ(一斉休漁)になったらしい。今度はなぜレンゴウカイになったのかと訝っていたらじきに理由がわかった。一足早くイワテに行っていたバカ網の船から無線が入って、イワテは暗くなって(霧が出て)いるそうだ。それも滅多にないほど濃い霧らしく夜が明けたのに近くのオカが見えないらしい。

小野浦へ行くといつも見える野間の灯台がまったく見えない。かすかに灯台の灯りだけが見える状態。灯台からイワテは濃霧だ。ヤマテがよくわからない中とりあえずいつもの場所らしいところで網をやる。この一クラ目は首尾良くクロダイが大漁だった。周りでやっていた他の船は一クラ目を揚げると無線でうちの様子を「時間がかかっとるなぁ」と話ながらイワテの濃霧の中に消えていった。

霧は次第に晴れてヤマテもよく見えるようになってきたので調子よくやっていたら、7時過ぎにイワテから妙に濃い霧がやってきて網を揚げているうちにその霧にすっぽりと包まれ方向感覚がなくなった。頭上に飛んできた鵜の鳥が50mほどの先の海面に降りながら消えていく。すぐ沖にいたコウナゴ漁の船団もオカもまったく見えず、周りすべてが白くなった。映画なら幽霊船がギシギシと音を立てながら現れるところだ。

網をやってもボンデンやウケが見えないほどなのでしばらく船を流していたら、目の前に山の頂上が見えて驚いた。随分岸に近づいていたみたい。山を目印にゆっくり下ることにした。ヘイジ(タコガメ)のボンデンや釣り人のゴムボートや内海の港湾の防波堤を思わぬ近くに見ながら、その防波堤の下りへ入ってそこなら万一の走り船もやってこないだろうと船を止めた。

しばらく待っていると霧が少し薄くなったのでもう少し下ると、YS丸が網をやっており揚げる様子を見ていた。周りの霧が晴れていったので内海前で一クラやったら網を揚げ終わるまでにまた霧に囲まれてしまった。この付近での漁は諦めてもっと下りの山海で一クラやり尾張へ戻ってきた。

浦前まで来ると海の水が赤くなっていたので魚を一旦水槽に揚げてからまた船を出した。西浦の霧といい尾張の水の色といい今日は変な日だった。


○5月18日(火)  <難関>

昼間近の12クラ目にゴーヘー父が突然「網をやる時の操船をしろ」と言い出した。場所は三河のマノの河口の沖で、はっきり言って海のど真ん中。近くに目印になるサシアゲ(小型定置網)もタンポ(航路標識)もなく、オカははるか彼方でヤマテも全然わからない。指で丸く輪を描いて「そっからそこへ(船を)やれ」というからやってみたけど、海底の段がある場所とは違うとんちんかんな場所へ船をやってしまった。7反半の網で直径80mくらいの円を目印もなく描くなんてムリ〜。

更に13クラ目は船が当たりそうなくらい浅い場所に行き、そこをこするように網をやれとの指示。海底ばかりが気になって円を描く操船がおろそかになり直径100mくらいの「半円」になってしまった。円にするには網が倍必要だ(泣)。

魚を網からはずしたり網をきよったり(繕ったり)手繰ったりはカレ網の難しさレベルのほんの初歩。「網をやりながらの円を描く操船」は難関だし、「ヤマテ」を見るのはカレ網最難関だ。


○5月19日(水)  <6クラで2本>

朝から漁は不調だった。いつもの小野浦での漁が3クラでカレイ9枚、ハゴ8枚とフグのみで、そのままやり続けても獲れると思えなくて久しぶりにイワテに走った。上野間(かみのま)から網をやりながら大谷まで上り、また下ってきた。大谷での二クラ目からお昼を食べるまでの3時間半で6クラやってコチが2本(小1+中1)しか獲れず、網が汚れるばかりだった。11時頃から雨も降り出しさすがに帰りたくなったけど、お昼を食べたら元気が出てきて最後の一クラを内海の港湾前でやった。そこで大ゴチ2本とクロダイを8枚ほど掴まえたのでホッとした。

帰ってきて雨の中網の汚れを取る。うちに帰ってきたらシャツまでびしょびしょだった。


○5月22日(土)  <時給にしたら?>

朝小野浦でやった4クラと上野間でやった2クラまではまずまずだった。その後8時頃からお昼までの8クラのうち始めの3クラと終わりの2クラがカラで、海に入れた網をただ手繰っているだけの状態。間の3クラもコチ1本+クロダイ5枚のみで札場で売っても2,000円しないだろうから、二人分の時給とか考えると情けなくなる、、、ので計算したくない。


○5月23日(日)  <50%>

今日は天気が良いはずだったのに起きたら暗かった(霞んでいた)んで、西浦はやめて梶島へ直行した。途中ゴーヘー父は方向を見失った(何しろ明るくなってきてもオカがまったく見えない)ようだが無事梶島へ到着。

長瀬でハゴ(クロダイ)1枚とアイナメ1本を掴まえたあと二クラ連続でカラで、桟橋前にてようやくコチとカレイの顔を見た。しかし苦難の道はその後も続き吉田港前、大瀬、三ツ瀬と三河を西へ移動する間4連続でカラ。生田沖に来て2クラ目でようやくカレイ5枚がかかり、その後続けてコチが1本ずつかかったのでどうにか二セイロ分の売り物が掴まった。結局14クラやって半分の7クラもカラだった。夕方の札場で魚の値が良かったのが唯一の救い。


○5月24(月)  <今日も霧>

今日は昨日より濃い霧だった。島の灯りがほとんど見えない状態。天気予報で風が吹いてくるとのことだったので、西浦へは行きたくない。かといって三河ではオカがまったく見えない。迷った揚げ句ゴーヘー父は三河を選択。走り出して2〜3分でオカの灯りが見えなくなった。生田の赤タンポまで行くと案の定四方が真っ白で何も見えない。う〜ん、判断ミスじゃない?

7時過ぎ頃ようやくオカが見えだしたが、この頃からカラが続き4クラで大ゴチを1本だけだった。北西の風が強くなってきて完全に霧が晴れてからようやくカレイがかかりだしたので、帰りたいのをガマンしてお昼までやってきた。

札場ではカレイの値がよくてガマンしてやった甲斐があった。


○5月26(水)  <イカ刺し>

今年はアオリイカが少なくて中サイズで1パイ千円もする。今日久しぶりにアオリイカが獲れて売るのが楽しみだったけど、11時頃には死んでしまった。内海の川のそばで網をやっていたのだが、同じ場所にいたTA丸もゴイカが死んでしまったと言っていた。下げ潮で悪い水(塩分濃度の薄い水)が川から出てきてその水がカンコに入ってしまったんではないかと推測。

死んだのはとても残念だったけど、売ると今年は割りにいい値段が付く。でも久しぶりのアオリイカだったので、持って帰って食べた。イカそうめんや薄く切ったイカ刺しはもっちりとしてほんのり甘くてうまい。ゲソは唐揚げにしたら柔らかくて美味しかった。


○5月27(木)  <クロダイ超大量>

「大量」は間違いではありません(笑)。

うちの話でなくて残念だけど、ST丸がクロダイとハゴ(3年未満のクロダイ)を大量に掴まえてきた。それはもうカレ網が掴まえるような量ではなく、底引き網でも滅多にこれだけの量は獲れないと思うほどの量。すべてのクロダイを網からはずし4つのカンコに入れどうにか帰ってきて札場で水槽に揚げたようだけど、3つの水槽に分けて入れても船の4つのカンコにはまだ大量のクロダイが入ってる状態。当然たくさん死んでいる。死んだものも合わせて1,000匹くらいあるかもしれない。今クロダイは安いので1枚100円としても、これだけあれば10万くらいなるかなぁ。

カレ網にかかったハゴをはずすのはかなり大変な作業なんだけど、それが1000枚近くあるんじゃ二人でやってても泣けてくるだろね。1時間や1時間半では終わらないだろし、カンコにはコチも入っているからそれを死なせるわけにはいかないし、ホントに10万になるかどうか売ってみなくちゃわからんし。

見てた他のカレ網漁師はただ呆れ顔。羨ましいとは誰も思わない。だって一人じゃこれだけの数のクロダイを外せないし、時間かけて外したとしても弱ってしまうから持って帰ってくるまでに大半が死んでしまうだろうし、仮に死ななくても弱っていては労力の割りにたいした値段にならないから。うちだったら4つのカンコに入るだけ入れても、それ以上は大きいクロダイだけ選んで後は海に放してくるだろなぁ。


○5月28(金)  <エイばっかり>

梶島での5クラ目、小は手のひらくらいから大はA3サイズくらいまでのエイ(アカエイ)がたくさんかかった。数は数えてなかったけど50枚以上はあったはず。網に絡まっている上に尻尾のトゲを取らないと網からはずせないんでハゴ並みに時間がかかる。丁度東風が強く吹いていた時なのでエイをはずしている間に船は流され、立て直してちょっと手繰るとまたエイをはずし船は流され、の繰り返し。朝7時半から手繰り始めて終わるまでに1時間もかかった。終わったら東風もいつのまにか凪いでいた。

この後一色前へ戻ったけど毎回カレイ1枚かコチが1本のどちらかで、カラも1回あった。西浦へ行った人達がほとんど無線で話さないから、みんな大漁なんだろなぁ。


■エピローグ

去年は4月に霧が多かったですが、今年は5月になってからの方がなぜか霧が多いです。一方で海の水色が早くも赤くなってきて赤潮の兆候もちらほら見られます。朝はまだ冷え込む日が多いのに、海はすでに夏の気配が漂ってきてなんともちぐはぐです。ST丸のクロダイ大量事件で「地震が近いのか?」と心配になった週末でした。でも他には何も変わったことがないので、単に彼がラッキー(アンラッキー?)だっただけですね。


■次回予告

Vol.69 「若い衆」 2004年6月12日(土)発行予定


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