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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.70 夜光虫
                                    2004年6月26日発行
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■夜光虫

4月上旬、朝の気温がまだ5・6度しかない頃から海では夜光虫が青白く光り始めます。毎朝光るわけではありませんが浦の中をゆっくりと進む船がかき分ける海面や船の後ろの引き波がボヤ〜ッと青白く光ります。

季節が進むにつれて青白い光は頻繁にはっきりと現れるようになります。6月はほぼ毎日暗い海のどこかで青白い光を見ることができます。港の中で船を動かした時のわずかな波紋の中や走り始めた時の海面を切って進む時にできる波の中。あるいは船を動かす前、船のトモ(後ろ)に掛けてある定錨のロープをはずして海に放り込んだ時、夜光虫が光ってロープの輪の形がくっきりと青白く見えることもあります。更には波も何もない海面がキラキラと光る時さえあります。

以前梶島で夜明け前の薄暗い中網をやった時、海中を逃げ惑うボラが青白く光っているのを見ました。ボラは泳ぐスピードが速いので体に当たった夜光虫が光っていたのでしょう。紡錘形をした青白く光る物体が真っ暗な海中を四方八方へ猛烈なスピードで移動している様は、まるで船の下が宇宙空間になっていてそこで敵味方が入り乱れて射撃をしているような感じがしました。

港を出て船を普通のスピードで走らせている時、船の下全体が青白く光ることがあります。舳先によって切られた波が船の両側へ広がるその形がそのまま青白い光のベールのようになって広がっていきます。そばを走る別な船を見るとまるで青白い光の上に船が乗っているかのようです。どれほどたくさんの夜光虫が光っているのでしょう。

ある時強烈に青白く光っている瞬間をカメラで撮影しました。ところがうっかりフラッシュを焚いてしまいせっかくのチャンスを逸してしまいました。いくら強烈に光ったとはいっても青白い光はフラッシュにはかなうはずもありません。一応撮ったものを確認するとそこには白く砕けた波ではなく、赤茶けた波が写っていました。どうやら強烈な青白い光の正体は「赤潮」だったようです。正確には夜光虫が大量発生して死に赤潮状になっていて、生き残っているものが発光していたのでしょう。

以来夜明け前後に赤潮の中を突っ切るとほのかに青白く光ることに気づきました。きっと日中でも光っているのでしょうが太陽光が強すぎて見えないのでしょう。

夜光虫による赤潮は毒性がないそうなので、夕方海岸で赤潮を見かけたらペットボトルなどに入れて観察してみると面白いかもしれません。その赤潮が夜光虫のものだったら暗くなればボンヤリと光るかもしれませんよ。





■今週のゴーヘー

○6月14日(月)  <魚の動きが悪い>

台風崩れの温帯性低気圧が去った後強い北西の風が吹いて随分涼しかった。今朝もやや冷えていたのでカレイやコチの動きが悪いんじゃないかと心配していたが、案の定金曜日に比べてカレイがさっぱりいなかった。コチはちょっと少ないなぁという程度だったが、カレイは冷えに弱いんでどこかに隠れてしまってエサも食べに出てこないようだ。ただ、日中は暑くなったんで明日は期待できそうだ。


○6月15日(火)  <予想違い>

今朝も冷えてた。昨日の予想に反し魚がいない。今日も日中は暑かったのになぁ〜。一日やってコチが5本、カレイが5枚にタコ、アイナメ、小アオリイカ程度では、さすがに心身共に疲れた。


○6月16日(水)  <プチッ!>

10時半頃梶島の赤灯台の東で網を揚げていた時、大ゴチかかった直後にまた1本コチがかかってきた。かなり勢いよく引くのを注意深く揚げてきたらやっぱり大ゴチで、すかさず「タマ、タマ!」と叫んでゴーヘー父にタマ(タモ網)を準備させた。コチはぐいぐいと網をひっぱり海底へ沈んでいったので、またそ〜っと引き上げると今度はタマから逃げるように左回りに回転し始めた。次の瞬間「プチッ!」という音と手応えとを残しコチは網糸を切り、さっきまでとは打って変わって悠然と体を左右に揺らして逃げていった。

ゴーヘー父は「あ、バカ!」と言う。でもね〜「バカ!」はないよね、「バカ!」は。しかしゴーヘーは「プチッ」と切れるわけにはいかないんで、「しかたねぇわ、1枚だもん」と言って自分を慰めた(「1枚」とはコチにかぶった網が1重なことで、コチのエラ先のトゲで網糸が切れやすい状態のこと)。


○6月17日(木)  <遅い出発>

昨日の午後から吹いていた東風がかなり強かったので今日はお休みになるだろうとたかをくくっていたら、浜の様子を見に行ったゴーヘー父が慌てて帰ってきた。みんないつも通りに出たらしい。それから慌てて支度していつもより1時間以上遅く船を出した。

東風吹きと波で三河ではショウバイができないんで遅くても西浦へ行くしかない。こういう時みんなの中へ後から入っていくのが嫌いなゴーヘー父は船を小野浦で止めた。しかし小野浦では小さなコチがかかるばかりで一向にお金になるものがかからない。

9時半を回ると風は随分凪いできたので三河へ行ってもいいがなぁ、と思っていたら10時過ぎにゴーヘー父は船を走らせた。30分で浦前まで来て鳶ヶ崎、クマセ、灯台周りとシマばかり続けてやってクロダイを20枚ほど掴まえた。キロ200円ではたいした水揚げにならないからシマで網を破っただけ損したようなものだが、無いよりはマシだ。


○6月18日(金)  <ダメだ〜>

今日は4時ちょっと過ぎの出発だったからそれほど遅くなかったんだけど行き先は三河だった。昨日は西浦でみんな漁があった(たくさん獲れた)んだから西浦へ行くべきだよね。ん〜。

で、その三河では朝からカレイが1枚獲れたら良い方。カラかアオサで満船のどちらかが昼まで続く。西浦組はYS丸を除いてみんな大漁でそれぞれ3〜4万ぐらいあったようだ。うちは1万に届かず。今週は不調だったなぁ。


○6月23日(水)  <参った>

4日ぶりの沖で出だしも好調。珍しく大きなアオリイカが4ハイも獲れて気分も上々。心配は水が悪くて(台風で雨水が海に流れ込んだ)イカが死ぬかも知れないこと。ヒ(栓)を閉めたカンコに海底付近の海水を入れて空気を送るブクブクを入れて朝からイカを入れていたのだけど、11時頃にはついにイカが1パイ死んでしまった。残る3バイも色が白くなってきていつ死んでもおかしくない。カンコの中はブクブクの泡で一杯になっていて水が悪くなってきたようだったので、カンコのヒを2つ抜いて水が入れ替わるようにした。

ところがこれが逆効果だったようで、帰ってくる途中で残る3バイも全部死んでしまった。水が悪い場所があってその水がカンコに入ってしまったんだろなぁ。ヒを抜いたのが失敗。全部生きてりゃ8千円くらいになったはずなのになぁ。


○6月24日(木)  <今日も>

今日のイカは帰る途中の山海まで生きていた。その後帰り着くまでの30分の間に2ハイとも死んでしまった。ゴーヘー父曰く「カゴからイカが飛び出して死んどったで、(船が)走ってカンコの水が抜けたんだ」とのこと。うちの船のカンコは船を走らせると水が抜けやすくなるんで、水の抜けるヒに蓋をして走るようにしてたんだけど、今日はそれをやらずに走って帰ってきてしまった。また失敗。

今日は中ゴチ、大ゴチが合わせて12本もあり相場も少し良かったんで昨日のように凹むことはなかったけど、死んだアオリイカ1パイとセイゴを一緒に売ったら1,800円もした。生きていたらなぁ〜。

もう一つは家へ持って帰ってきたので今夜はアオリイカのお刺身だ♪<立ち直った。


○6月25日(金)  <びしょ濡れの大漁>

雨だった。みんなは普段通りに出たようだったがうちは1時間遅れで出た。

昨日の西浦の漁から考えたら今日も西浦が正解だけどゴーヘー父は船を梶島へ向けた。例年ならすでに梶島で大漁の日が続いているのだが今年はまだその気配さえない。日間賀の漁師が夜テグス網をやっているのかもしれないが、それにしてもどこをやっても魚が少なすぎる。

今日は南東よりの風が強く吹いてきたのでできるだけ風影になるシマの北側でやったら朝一から3回連続でコチが2本ずつかかった。波も高くなってきた中を更に3クラやって梶島を諦め一色前へ出てきた。こちらは風も波も梶島の半分程度で網は揚げやすかったけど魚がいなくて、更に尾張へ向かう。古布のツキ磯でコチが5本かかったので続けて下り(南側)をやると今度は6本かかった。1本は小さかったんで逃がす。更にタアカをやると3本かかり、4クラ目はさすがにコチはかからず本ガニと青ガニが数匹かかっただけだったが、3クラで13本は大漁だ。ここへ来てよかった。

これで昼になったんで帰ってきた。魚を水槽へ揚げてうちへ帰ってきたらシャツもパンツもびしょびしょ。カッパを着てると汗でずぶ濡れになっちゃうんだよなぁ。

夕方の札場では西浦組がクロダイをたくさん売っていた。無線でたくさんかかると話していた通りだった。値段も1ヶ月前に比べれば5割増しくらいになった。代わりにいつもは多いコチ少なくて相場は意外に高値だった。相場は尻上がりに上がってきて、3番売りで一番最後だったうちは随分それで得をした。6月はずっとうちだけ漁が少なかったからたまにはこういうことがあってもいいよね。


■エピローグ

6月は本来稼ぎ時なのですが今年の6月は例年になく儲かりません。18日までに13日間出たのはここ4年で最も多いですが水揚げ高は最も少ないです。他の人達(主に西浦へ行く人達)に比べると半分程度しかなく、普段でも悪い顔つきが仏頂面で更に悪くなってます(苦笑)。「乱獲」で書いたことが脳裏をよぎりますが、今月のうちの網には小さいコチもカレイもかからないから水揚げの底上げすら思うに任せません。漁師はこういう事(例年になく水揚げが少ない)があるので、獲れる時にはとことん獲って水揚げを上げておきたいと考えてしまうのです。はぁ〜。

それでも今週に入って23〜25日(20〜22日は台風がらみでお休みだった)の3日間で18日までの半分を稼いだので(逆に18日までが少なすぎると言える)、二人とも口数が増えてきました。今月残りは4日間しかありませんが、雨降りでカッパを着てびしょ濡れになろうともとにかく出て、まだ例年の6月の半分程度しかない水揚げを少しでも増やしたいです。


■次回予告

Vol.71 「初めての総会」 2004年7月10日(土)発行予定


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