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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.72 午後はマゼ
                                    2004年7月24日発行
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■午後はマゼ

今年は梅雨の期間雨が少なく梅雨明けも例年より早かったようで、7月には最高気温が連日30度を超す日々が続き、ここ1週間程は連日35度を超える日々が続いています。お昼近くになるとあまりの暑さに魚より人の方が先に参ってしまっています。カンコの中を悠然と泳ぐコチやカレイ達がが実に涼しそうに見えます。

今年はかように暑いわけですが、例年になく西の風や北西の風が吹く日が多く陽が高くなるまでは涼しい日もあります。こうした風の影響だと思うのですが、海水温が例年よりやや低めで推移しています。7月ともなればコチが網にかかったまま死にかけて揚がってくるものが多く、元気なコチもカンコの中で死んでしまうものが出てくるので氷でカンコの水を冷やすことが欠かせないですが、今年はどちらも少なく氷も未だ持って行っていません。バケツに汲んだ海水に手を入れてもぬるく感じることがないので、日中陽が高くなるとカンコの中が涼しそうに見えるわけです。

朝から西や北西の風がやや強く吹いて網をやるにはちょっとやりづらい時もありますが、多くの場合この風は次第に収まっていき、それまでは涼しくて気持ちが良いです。逆に朝から風が無い日は6時頃からすでに暑くて8時頃には天幕を張ってしまいます(天幕を張っても陽がまだ低いので日除けとしての効果はまったくないのですが)。10時を過ぎる頃からマゼがそよそよと吹いてきて、正午頃には海面に白い波頭が見える程吹いてきて一日の漁もそこでお終いです。午後はずっとマゼが吹きっぱなしとなります。

こうしたマゼは強い陽射しで海の北側にあるオカ(陸)が暖められることにより吹くと思われます。オカの上の空気が暖められて上昇気流になりそれを補うためにまだ暖められていない海上の空気が流入してくるのでしょう。北西の風が凪ぐのはその転換点に当たると思われます。それがわかっているのでカレ網漁師は朝から北西の風が吹いていても、空や海の様子を見ながらガマンして網をやり続けます。

ここ数年午後吹くはずのマゼがお昼前から吹き始め、午後には強めに吹くようになりました。毎年の変動があるので去年と今年では少し違うかもしれませんが、傾向として吹き始めが次第に早く・強めになってきたようです。それはつまりオカの暖まり具合が早く・強くなってきたことを意味しているのかもしれません。実際、三河湾・伊勢湾の北側には濃尾平野が広がり名古屋という巨大な都市があります。夏場、ヒートアイランド現象によりオカの温度上昇が加速してオカの空気が勢いよく上昇し、南からの空気の流入を強めているように思えます。

午後、強いマゼに吹かれながら「あ〜、今日も名古屋が暑いんだろなぁ」と一人考えています。





■今週のゴーヘー

○7月12日(月)  <コチ相場良し>

8日の大漁の翌日反応を見せなかったHA丸が今日は長瀬にいた。ゴーヘー達が梶島へ着いた頃にはほんのりと明るくなり始めていたけど、手繰り始めはきっとまだ真っ暗で網にかかった魚を外せるような明るさじゃない。よく目が見えるものだ。網を揚げるのに随分時間がかかっていたけど、一クラやったST丸が様子を伺ってから三河へ向かったので、HA丸の漁の方はたいしたことなかったらしい。きっとゴウナかガニが随分かかっていたんだろう。うちも二クラやって三河へ向かった。

三河へ来てから8時半頃まで8クラやって3クラもカラで漁の方はサッパリだった。すぐそばでやっていたSK丸が見てる間に4つも魚をはずしてたのにこちらはゼロ。やりきれない。下り(南)はモグリもいてこれ以上やる場所がないんでみんながやってる北側へ移動すると、なんとそこでカレイ9枚、コチ2本がかかった。続けてやると今度はカレイ10枚!。次はカラだったけどそれ以後昼までずっと数枚ずつかかり続けコチも10本近くかかった。まだかかりそうだったけど大ゴチが死んだりしたら元も子もないのでお昼で切り上げた。

夕方の札場はまた1番売りだった。他の人も大漁が多かったからみんな1番売りの値段に注目。すると休み明けだけど明日火曜日がまたお休みなせいか、初っぱなから値段が飛んでいて一週間前だったら3千円くらいだった小コチ8本がなんと8千円!。まわりから驚きの感嘆とため息が出た。大ゴチ2本も7,700円でとっても満足。かわりにカレイは普段並の値段だったけど合計はまた5万の大台に乗った♪。


○7月14日(水)  <暑い>

朝梶島へ行くとさすがにHA丸はいなかった。水かぶりで一クラやってカラだったのですぐに三河へ戻る。しかし8時までの7クラでカラが3つあり、カレイ4枚、コチ1本がやっとだった。8時過ぎからの3クラで大ゴチ1本、コチ5本、カレイ8枚を掴まえてどうにか一息ついた。それから11時半までカラがなくカレイかコチが1つ2つずつかかったので良かった。

でも良くなかったのは暑さだ。8時頃から暑くてたまらず、まだ陽が高くないから天幕を張っても効果がないのだけど、それでも天幕を張った。11時半までに水筒のお茶を全部飲み干してしまい、魚が死ぬ前にこちらが参ってしまって早々に帰ってきた。今年は暑いなぁ。


○7月15日(木)  <西浦組大漁>

朝からどのクラもせいぜい1本だった。2本いた時が1度あった程度。少ない上に中ゴチが1本死んでしまい、今日の相場なら2千円近いので誠に残念。

西浦へ行った人達はクロダイが大漁だった。値段も随分上がってきてクロダイだけで3万前後になった模様。ただ一人ST丸だけコチが大漁でコチだけで5万近くになっていた。全体にコチが少なくて相場が良かった面もあるけど、コチだけで5万近いのはすごい。それだけの数のコチが死なずに帰ってこれるわけないので掴まえた数は更に多いんだろなぁ。


○7月16日(金)  <時間稼ぎ>

朝蒲郡(がまごおり)まで行って一クラやってすぐに帰ってきた。梶島で一クラやってすぐに三河に戻る。2時間ほど無駄にした勘定だが、網をやってみなくちゃわからないからこれもしかたない。

今日の三河は昨日に続き船が少ないのでマノの河口沖から一色沖までの間で11時までやることができた。コチが1本か2本ずつ、時々大ゴチがかかる。水温がやや低めだったのでカンコの中でコチが死ぬこともなく、唯一網で死にかかっていたコチだけが死んだ。

札場は久しぶりの3番売りだった。最近3番売りの日に休みが多かったから土曜休みの前の今日は相場に期待した。出だしは順調で魚がそれほどなかったため相場も堅調に推移。こういう日は後売りほど相場が上がるから期待も一層膨らむ。

1番売りのST丸と2番売りのHA丸はコチがやや多かった。他のみんなの魚がなくて相場が良いため、HA丸は普段では考えられないほど「ゆっくり」と魚を売り始めた。普段ならカゴに入れたコチを選別したりしないのに、わざわざ選別したり元に戻したりして時間を稼ぐ。でも、ゆっくり売るのは後がつかえて迷惑だからどの人もやらないし、彼自身普段は後売りの人が順番待ちしてるとそれを蹴散らすようにカゴを用意して魚を入れて売る人なので、今日の時間稼ぎには正直ムカついた。

結局うちが売り終わる直前に彼は売り終わった。普段より特別魚の量が多かったわけでもないのに2番売りの彼が3番売りと同じに終わったわけだ。もしこれが逆だったらどんな文句・嫌みを言われてたことか。

さて、彼が最後にコチ一ケタ(通常一番良い)を売る時、ゴーヘーがうちの最後のコチ一ケタ(当然一番良い)を持って丁度売り台前の水槽へ着いた。それを仲買全員が横目で見ていて、更に水槽前にいたバカ網の漁師が「擦れてなくてホントにきれいなコチだなぁ」としみじみ言う声が聞こえていたと思う。結局HA丸の最後のコチはうちのコチより3割以上安かった。策士策に溺れる?。


○7月19日(月)  <手応え>

二日間休みの間北西の風が吹いたせいか今日も水温がやや低かった。こういう日はカレイもコチもかかりが悪い。休み明けは大野へ行くと言っていたけど風を考慮して梶島へ向かう。

梶島では二クラやってさっぱりだった。すぐに三河に戻るが魚は1つか2つかかる程度でガマンの漁で、8時半を回ってようやく数が増えてきた。コチも中ゴチがいくつかかかりカンコの中も賑わってきた。

11時半頃網を揚げていたら海中からぐいぐいと網を引く手応えがあった。慎重に網を揚げていくとすでに逃げた後なのか何も網にかかっておらず、諦めて続きを揚げたら海底から大ゴチが揚がってきた。今年一番の大ゴチだったので手元から離れていてもぐいぐいと網を引く手応えが大きかったみたい。無事取り込むことができて良かった。


○7月20日(火)  <北西の風>

朝からまた北西の風が吹いていた。しかし昨日ほど涼しくない。天気予報では強い勢力の太平洋高気圧の縁を回った「暖かい」西風が吹くとのことだったので見事に当たっている。日が高くなれば昨日のように風が弱まるかと思っていたんだけど逆に北西の風が強まってしまった。高気圧の勢力が随分強いみたい。結局9時半頃諦めて帰ってきた。

魚の方は朝からさっぱりでどうにかコチを6本、カレイを2枚掴まえた。大ゴチが2本あるのでそれなりの金額になりそうだ。


○7月21日(水)  <また風>

北西の風は今日もまだ吹いていた。4時に船着き場へ行くとみんな岸壁に座っていたのでそれ列に加わる。例によってHA丸だけはすでに船を出して西浦へ行ったようだ。船を出しても波がえらくて途中で戻ってくるか、網をやっても2つか3つやってやはり戻ってくることになりそうなのでみんな出渋っていた。

風がもっと強くなってくるまで尾張でやればいいからと、5時半を回って重い腰を上げ船を出した。尾張はST丸が昨日まで一週間余りもやり続け、今日は西浦へ行った程だから大した漁は期待できない。まして今日は船が6パイもあり時間も短いのだから尚更。風が一層強くなった9時頃までやり、案の定網をやったうちの半分はカラだった。みんなセイロに1パイ分しか獲れなかったようだ。


○7月22日(木)  <またまた風>

今日も北西の風が吹いていたが凪いでいくとの天気予報に期待してみんな普段通りに出て行ったようで、うちが船着き場へ行ったら西浦組はみんな出た後だった。その中で唯一ST丸だけまだ船が着いていた。今日は尾張でやるつもりのようだ。昨日みんなで半日やったけど漁がなかったのによくぞ尾張でやろうと思ったものだ。

梶島へ着くと島西から長瀬にかけて網をやりながら移動した。風と波がひどくて船が左右に激しく傾くんで踏ん張る足に力が入る。船も風でどんどん流されるので網も揚げづらい。コチやカレイが2つ3つずつかかるのでやってられるけどそうでなければすぐに帰っているところだ。三河も西浦も無線の声が朝から途切れず漁がない様子だったが、西浦は日が高くなって声がしなくなったのでどうやら漁があったようだ。尾張にいるST丸も音沙汰無しだからこちらは大漁なんだろう。こちらは9時頃からさっぱり魚の顔が見えなくなってしまい、10時40分頃ついに諦めて帰ってきた。水温が低めなので本来ならお昼までがんばるところだが、梶島の北側で砂入れ工事が始まって濁りが辺り一面広がった上に、網にコノカサ(ヒトデ)とガゼ(ウニ)がびっしりついて網が広がらなくなったんでこれ以上やってられなかった。暑い陽射しを浴びながら海の上で網を揃える(コノカサとガゼを取る)のも嫌だしね。

夕方はまた1番売り。とっと売って帰ってきたけどみんなコチやカレイは少なかったみたいだ。クロダイが多かった人が2・3人いたようだ。無線の声が聞こえなかったから大漁だと思ったんだけどなぁ(苦笑)。


○7月23日(金)  <無駄足>

梶島で5クラやってから蒲郡を目指して走った。小潮の上に丁度満ち上がり(満潮)が迫っており潮が鈍くて丁度いいからだ。ところが目的地へ着いてみるといつも網をやる場所をボート釣りの船が陣取っていて全部で10パイ近くあった。どうにか網ができないかとあたりを巡ってみても良い場所をすべて押さえられていてどうにもならない。しかたなく網をやらずに帰ってきた。往復1時間の無駄足&油の無駄遣い。

8時15分頃また梶島へ戻ってきた。砂を海に入れてる作業船を気にしながらあちこちやったけど、11時半まででコチが6本、カレイ4枚にクロダイ2枚のみだった。今日は始終風が強くて船がよく揺れたんで足が疲れた。


■エピローグ

今週は関東・東海で猛烈な暑さを記録しました。20日は東京大手町で39.5度を記録しその翌朝は最低気温が30.1度だったそうです。これをニュースで観て思い出したのは10年前の8月3日、東京で39.3度を記録した日のことです。

私は夏休み初日でアパートにいました。翌日から北海道へツーリングに出かけるべくその準備をしており、「この部屋日中はこんなに暑いんだ!?」とトンチンカンなことを考えていました。その日の夜には上野駅から列車にバイクを積んで出発するため夕方都内を向けて走り始めたのですが、まるで熱い空気の中を突っ切っているような熱風が体にあたり気分が悪かったです。

猛暑はまだしばらく続くようです。脱水症状は室内で安静にしているときでも起こってしまうそうですから、水分補給・塩分補給を忘れずに行ってください。


■次回予告

Vol.73 「水上バイク」 2004年8月7日(土)発行予定


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