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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.76 札場
                           2004年9月18日発行
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■札場

農産物の場合、決まった時刻に農家が農協へ持ち寄りその場でセリにかけられ
て、という話はほとんど聞いたことがないので、農協はもっぱら「商社」の機
能に徹しているのかもしれません。農協と同じような名前の漁協でも当然商社
の機能を持っていて、漁協を通して地方の卸売市場へ出荷したり海苔のような
独自市場への出荷(共販という仕組みらしい)を行っていますが、それとは別
に漁協独自に市場を開設している所もあります。

ゴーヘーが所属する漁協も市場を開設していて、カレ網漁師はそれを「札場(
ふだば)」と呼んでいます。札場の由来はこの市場が「入札」によって取引が
行われている、つまり「札」を入れる「場」ゆえ「札場」と呼ばれるようになっ
たようです。このため市場と札場は同義で使われています。

札場では決まった時刻(現在は夕方4時半)に取引が始まります。あらかじめ
決められた順番で漁師達が思い思いに魚をセイロ(平たいカゴ)に入れ仲買人
がその周りで待つ台の上に乗せます。この時魚は「活魚」つまり生きている事
がポイントであり、魚の目方(重さ)は計らず仲買は目分量でおおよその見当
をつけます。重く見積もるか軽く見積もるか、目の前の魚の善し悪しも含めて
仲買人の魚を見る「目」が問われる瞬間です。

魚を吟味した仲買人は希望金額を札に書き込み浜長と呼ばれる仕切人(組合職
員)に差し出します。浜長は最も高い値札の金額とそれを書いた仲買人の名前
を大声で読み上げ記録係にその札を渡します。以下同様に、代わる代わるに漁
師が出すセイロの魚に値が付けられていきます。

漁協の組合員なら誰でも札場で魚を売ることができますが、かわりに落札代金
の5%を手数料として組合に支払います。落札代金は月に3度(10日、20
日、月末)組合からまとめて組合員の口座に振り込まれるので、手数料はこの
時天引きされる仕組みです。

魚を買う側の仲買人は現在は5人います。仲買人は誰でもなれるわけではなく、
なるためには組合に申請を出し補償金を差し出した後組合から許可が降りなけ
ればなりません。どこぞのプロ野球の新規参入問題でも話題になっている仕組
みと同じです。プロ野球の場合と違って、補償金は万一仲買人が魚を買った代
金が払えなくなった場合に備えるためのもので、過去に一度だけ取り崩され漁
師への支払いに充てられたことがあったそうです。

札場で取引された魚介類はその後直ちに地元の旅館や料理屋・魚屋などへ売ら
れたり、翌日各地の卸売り市場へ出荷されたりします。地元消費よりは卸売り
市場への出荷の方が多いので、札場は魚介類の流通市場の末端市場であり出発
点でもあるわけです。


■今週のゴーヘー

○9月5日(日)  <ミツガンコ>

朝東風が吹いて雨が降っていた。船着き場へ行ってもまだ誰もいなくて行くか
どうか迷う。そこへコ○エイ丸がやってきて少し話しすぐ行くことに決定。西
浦を目指して走り出した。しかしゴーヘー父は師崎前で急に方向を変えオクゴ
オリへ向かった。西浦は下波がえらそうだったんで気が変わったそうだ。

福江で一クラ目をやるとハゴが15枚ほどかかった。雨東風(あめごち)の中
でハゴを網からはずしていると船は風下へ流されるんで網揚げが一苦労。二ク
ラ目で10枚程、三クラ目でも5枚程ハゴがかかった。久しぶりにカンコが賑
わったけど2・3年生が多いんであまりお金にならない。

7時半に江比間へ移動して4クラやったけど二クラカラで大ゴチ1本、小コチ
1本、ハゴ2、ギマ(カワハギ)3枚のみだった。漁が少ないうえにアオサが
多くて参った。しかたなくまた西へ戻って黒部で網をやったら大グロが8枚も
かかった。次のクラは小コチ2、クロダイ2と少なかったが、この時点でもう
一つのカンコのヒ(栓)を抜いて大グロをそちらに移す。3クラ目はクロダイ
10枚、4クラ目でクロダイ10枚、ハゴ10枚、ギマが40枚くらいかかっ
ていて網揚げに1時間程かかった。1つ目のカンコに入れたハゴやギマが酸欠
気味になっていて慌ててギマをカゴに入れて2つ目のカンコに移し、更に3つ
目のカンコのヒを抜いてハゴを数枚そこへ移した。お昼過ぎていたがそのまま
4クラ目をやった。今度はクロダイ30枚くらいがかかった。3つ目のカンコ
を用意しておいて良かった。

まるで呪文のような「ミツガンコ」は、「3つのカンコ」が「魚でいっぱい」
の意味。久しぶりのクロダイの大漁♪。クロダイを狙ったのは正解だった。ミ
ツガンコ(ヒを)を抜いて船を走らせるとさすがに船足が重い。今はクロダイ
の値も高いから水揚げ高の期待も膨らんで重い。


○9月9日(木)  <台風明け>

猛烈な16号台風だったけどおかげさまでここでは特段の被害もなかった。た
だしヤマゼ(南南東の風)が吹いたせいで魚が獲れないかもしれない。不安を
胸にオクゴオリを目指す。

5時15分福江で一クラ目をやる。ハゴとクロダイが合わせて20枚くらいか
かった。幸先が良くてそのまま東へ一クラずつ移動していった。しかし二クラ
目はカラでその後も一クラで2・3枚程度しかかからない。台風前のクロダイ
はどこへ行ってしまったのか。やっぱりヤマゼが吹くとダメかもと思いながら
も他へ行くあてがないんで、黒部から福江の間で行ったり来たりしながらお昼
過ぎまでやって、どうにかカンコ2ハイ分のクロダイとハゴを掴まえた。ちょっ
とハゴが多めかなぁ。

11時過ぎから南東の風が吹いてきた。台風19号から熱帯性低気圧に変わっ
たヤツが東海沖にあったからたぶんそれが近づいてきたんだろう。熱帯性低気
圧といどあなどれないので心配していたけどそれ以上風は強くならずに済んで
良かった。

今日の札場は1番売りだった。いの一番にハゴを持って行くと予想より安い値。
あれ?、休み続きだったからそれなりの値がつくはず・・・・が、休み前より
3割安。朝掴まえたクロダイはちょっと擦れてたけどお昼近くに掴まえた大グ
ロはほとんど擦れていなかったから、どうしてこんなに安いのか不思議だった。

札場が終わってもしばらく考えていて、昨日漁に出た船があったことに気づい
た。ショ○トク丸とヒ○エイ丸だ。今日無線で昨日の話をしていたのを思い出
した。昨日の朝まだ風が強くて波があったけど出て行ったんだろなぁ。きっと
たくさんのクロダイを掴まえてきて相対で売ったから、仲買が買いあぐんでし
まって今日の相場が安くなったのかもしれない。なんか、釈然としない。


○9月10日(金)  <検査通院>

ゴーヘー父の大腸の内視鏡検査通院で今日はお休み。朝一で病院まで送りその
まま待合いでしばらく待つ。1時間程してゴーヘー父がやってきて、まだかか
るから一旦帰れ、とのこと。終わったら電話をもらうことにしてうちに帰る。

昼頃には終わるだろうと予想してたんだけど、昼過ぎても電話がない。イライ
ラして待つ。検査状況によっては一日入院するかもしれないと言われていたの
で、夕方ゴーヘー母が病院へ電話するも「そのような患者さんはいない」との
返事でまったく要領を得ない。しかたなく病院へ出向き窓口で事情を話すとパ
ソコンを操作した係員がまたしても「そのような患者さんはいない」との回答
でムッとする。自分が今朝連れてきたこと、検査が大腸の内視鏡検査であるこ
とを話してもう一度確認をとってもらう。

しばらくして内科の看護婦さんらしい年配の方が来て現在検査の最中であるこ
とを告げられ、検査室前まで案内してくれたのでそこで待つことにした。本人
の所在がわかってホッとする。

待っている間中行き交うスタッフ・看護士の方々が立ち止まっては時間がかかっ
て申し訳ない旨を話してくれるので恐縮してしまた。検査が始まるまでに他の
人の検査で時間がかかっているので、ゴーヘー父に何度も家に電話するように
勧めてもくれたらしいけど、本人は電話するのをためらったらしい。内心不安
でうちで心配している人がいることにまで気が回らなかったのかもしれない。

8時頃ようやく終了した。ポリープを8つも取ったらしいので3時間近くかかっ
たようだ。とにかく無事に終わって良かった。時刻も遅いので一晩泊まること
になって、そのまま入院病棟へ直行しベッドに横たわると、疲れているのかす
ぐにうとうとし始めた。明日の朝電話をくれるように言い置いて帰ってきた。


■エピローグ

ようやくコチとカレイを諦めてクロダイを狙いに行って首尾良く大漁だったの
でホッとしたのもつかの間。台風やゴーヘー父の検査とその後の1週間に及ぶ
安静で9月も18日になると言うのにまだ5日間しか沖に出ていません。うち
が休んでいる間にコチが大漁だった人もいたという話を聞くと尚更じれてしま
います。

でも、こういうことがあるのも漁師です。おかげさまでゴーヘー父は体調万全
となりました。明日からまた沖に出られることを感謝して元気に漁をやりたい
です。


■次回予告

Vol.77 「休みの日」 2004年10月2日(土)発行予定


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