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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.77 休みの日
                           2004年10月2日発行
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■休みの日

「年間180日」(Vol.32)で書いたようにカレ網は普通のサラリーマンより休
みの日の方が多いです。6〜9月の定休日の他、風があって海が荒れてれば沖
休みとなります(あくまでも「自主的」)。12月から翌年の2月半ばまでは
魚が獲れないので自主的にお休みとなります(あくまでも「自主的」)。いわ
ばシーズンオフなわけです。

シーズン中の休みの日は朝から網をきよう(繕う)ことが多いです。前日のう
ちにきよい終わらなかったとか、翌日が休みだから「明日できることは明日や
ろう」ってな感じで網をさわりもせず帰ってしまったとか、用事があったとか、
だいたいそんな理由で休みの日の朝から網をきようのです。

夏場で朝明るくなるのも早いし陽が高くなると暑くなるのでなるべく早い時刻
からきよい始めます。中には夜明け前の暗い時からライトをつけてきよう人さ
えいます。ゴーヘーはのんびり屋(単に怠け者ともいう)なので6時頃からで
ないとやり始めないですが、父と二人できようので案外早く終わります。他の
人達も奥さんや親父さんに手伝ってもらって二人でやっている人が多いです。
朝の涼しいうちに終わらせるなんて、小学校時代の夏休みの宿題を思い出しま
す。ただし夏休みの宿題は涼しいうちに終わりませんでしたが。

網以外では船の備品や船周りの修理・修繕を行ったり、船を引いて船底を掃除・
カーペン塗りをしたりします。エンジンや電装系の修理は工場(コウバ)の人
に来てやってもらうので費用がかなりかかります。たとえばブレーカーを1つ
交換するだけで1万円くらいかかります。ですから簡単な修理・修繕・交換は
なるべく自分でやるようにしてできるだけ出費を抑えるのですが、ワンシーズ
ンで1回か2回程度なので面倒な時は任せちゃいます。

シーズンオフになるとナマコ引きかカキ引きをやります(去年はたまたまムー
ル貝採りをやりました)。ナマコもカキも風が強いと漁ができないのでお休み
です。シーズン中と違ってこのお休みはホントにやることがなく完全休養日。
一昨年の冬などナマコが獲れなかったので1月から2月半ばまで1ヶ月半程お
休みでした。その時はたまたまあったバイト(週2くらい)をやって過ごしま
した。

シーズン中のお休みはいろいろと作業があるようで実はサクッと終わってしま
いシーズンオフのお休みは完全に暇という、一年を通して休みの日は実は暇が
多いカレ網です。

そんなカレ網にあっても年寄り連中は働き者が多いというか皆貧乏性というか、
とにかくジッとしてるのが嫌な人達ばかりです。畑仕事している人や禁止日以
外は常にタテコミをやっている人や網屋から頼まれた網仕事をやっている人(
ゴーヘー父はこの部類)などなど、何か仕事をしていないと気がすまないよう
です。仕事が生き甲斐、を地でいっている人達でゴーヘーのような怠け者はい
ません。そしてみんな元気です。

この人達を見ていると休んでなんかいるよりも、老後も死ぬまでできる仕事を
持って常に何か作業をしていることが幸せのような気がしてきます。

さて、ゴーヘーの老後はどうなっていることでしょう?。


■今週のゴーヘー

○9月19日(日)  <9日ぶり>

9日ぶりの沖だ。風もなく穏やかで星がきれいな絶好の漁日和の中を梶島へ行
く。しかし梶島へ着く頃には南東の風が吹き出して波が出始めた。波に揺られ
ながら長瀬で一クラ、風陰の桟橋前に回って二クラやった。カレイが5枚、ハ
ゴ1枚、ギマ1枚。梶島にさっさと見切りをつけオクゴオリへ走る。

7時半、黒部に着いて網をやる場所に迷っているとそこへ東からシンコ○丸が
走ってきた。江比間沖ももう魚がいないようだ。他へ行くあてもないので黒部・
福江間で昼までやった。毎回ハゴが1枚か2枚かかり、時々カレイがかかる。
西浦へ行った人達はほとんど無線で話さないからそれなりに漁があるようだけ
ど、こちらはさっぱりだ。

久しぶりの沖でこんな状態では疲れも倍増だ。


○9月20日(月)  <コチ6本>

今日は西浦へ行った。奥田で1クラ、上野間で2クラやってから前島前まで走っ
た。ここでようやくコチを掴まえた。6クラやって5本。1クラで3本もかかっ
たり別なクラでは2本のうち1本が逃げたり。休んで体がなまったせいか水深
が5m以上あるこの場所での網揚げは腕がなまってきて辛かったから、コチが
かかるのは随分励みになった。でも辛かった。

10時40分に苅谷沖へ下がってきてクロダイを狙うもはずれ。かわりにコチ
が1本と大きな青ガニが5ハイかかった。朝から本ガニも1つ2つとかかって
いたのでガニだけでも全部で10杯以上になった。

札場ではコチ6本が15,000円になった。随分値が良くて驚いた。ガニも
2,300円ほどでこの時期としては良い値だった。こちらはやはり大きいか
らだろう。他にカレイを10枚くらい売って全部で2万以上となりホッとした。

今夜は昨日に続きシオ(カンパチ)のお刺身♪


○9月21日(火)  <このタコ!>

朝マゼが少し強く吹いていた。ヒ○エイ丸がテンマで海田へ網をやりに行った
り、ショ○トク丸がタコガメを入れに行ったりしただけで誰も出て行こうとし
ない。6時近くになってコ○エイ丸が出て行き、うちも重い腰を上げた。

海田へ行くとコ○エイ丸の姿はなく、もっとイワテ(北)いるようだ。うちは
海田の下り沖で一クラやった後は風と波が比較的穏やかなタアカ(岸側)へ寄
りイワテに移動しながら4クラやった。タアカでの一クラ目でコチが3本もか
かっていたおかげで全部でコチが5本になった。他にカレイが3枚、タコが1
パイ。タコは昨日の1パイが残っているので合わせて2ハイになった。

朝だけの漁にしては実に良い結果に満足し悠々と引き返し、船をつけて魚を仲
買に持って行くべくカンコの蓋をあけてビックリ。昨日のタコが1本のコチに
取り付いているじゃないか!。ゴーヘー父が慌ててタコを引きはがしたが後の
祭り。コチはすでに死に体で体が変色し始めていた。中ゴチで1本2千円以上
するコチが1パイ300円程度のタコのおかげでタダになってしまった。もう、
腹が立って仕方がない。まさに「このタコ!」と怒鳴りたい心境。

仲買に持って行って事情を話したら同情してくれたのか、タコ2ハイと死んだ
コチを合わせて千円で買ってくれた。あ〜、いまいましい、タコめ!。今度か
らはすぐにネットに入れておくからな!


○9月23日(木)  <昼飯抜き>

9時半まで小野浦でやっていた。小コチが13本、カレイが7枚で大ゴチや中
ゴチはなし。無線の声は朝からよく聞こえていたけど、普段よくしゃべるシン
コ○丸がほとんどしゃべらず1度か2度しゃべった時の声が嬉しそうだったか
らきっと漁があるんだろう。それに比べてこちらのカンコの内容ときたら・・
・。内海で一クラやった後思い切って尾張へ帰ってきた。

11時に古布のツキ磯で一クラやった後更にイワテに走り布土のタアカで網を
やった。クロダイを狙ったんだけど網にかかっていたのは青ガニ(タイワンガ
ザミ)だった。ここは時々こいつが数十個かかることがあるんだけど今日はそ
んなレベルではなく、海面から船に上がるまでの間に5つぐらいかかっている
ような状態。海中にある網の見える範囲にびっしりとガニ。どれも甲羅がこぶ
し大の小さいヤツだから網に絡まっていた。

12時前から揚げ始めた網が1時間経っても浮け2つ分しか揚げられなくて、
すでにカンコの中はガニで一杯。ゴーヘー父は「コチが死んじゃう」とぶつぶ
つ言っていたんで、「もう一つカンコを抜いてそっちに入れやええがや!」と
ゴーヘーが怒鳴りすぐにカンコのヒを抜かせた。後ははずしたガニをひたすら
2つ目のカンコに放り込んだ。

もうどこまで網を揚げたのかよくわからなくなっていた。右足を船縁に載せ網
を踏んで押さえながらガニをはずしているので足腰が痛くなった。これだけ時
間がかかるとガニ以外の魚はほとんど死んでしまう。実際小コチが5本、中ゴ
チが1本かかっていたけど全部死んでいた。よりによってこういう時に限って
コチがたくさんかかってるんだよなぁ。こうなったらせめてガニだけでもツメ
付きで全部はずして持って帰りたい、とその一心でひたすらガニをはずしカン
コに放り込む。ゴーヘー父はしょっちゅうツメを折っている。銭になるのはも
うガニしかないんだからもっと大事にしてよ、と心の中で思うゴーヘー。

4つ目の浮けにたどり着いたのがたぶん2時間後。風で船が流され網を引きずっ
たせいか、残りの網が途中で折れ曲がりかかっていたガニによって網がひっか
かりくしゃくしゃに絡まっていた。もうこのまま網をたぐり込むしかない。残
りを全部たぐり込みうちへ向けてスローで船を走らせながら、ガニが死なない
ように時折海水を掛けつつひたすら網からガニをはずした。全部はずして港へ
入ったのは15時頃だった。

カンコの中からタマでガニをすくってカゴに入れたのは初めてのことだった。
カゴ5つに分けて入れておいた。数はよくわからないが・・・・500個くら
い?。札場での値は全部で16,000円ほどだった。死んだ6本のコチより
高かったから良かったとしよう。

昼飯は結局食べずじまいだった。腹減った〜。


○9月24日(金)  <穴だらけ>

昨夜夜半から強い東風吹きとなり今日はお休み。

朝飯を食べてから船に行き網をきよった(繕った)。昨日絡まっていた最後の
2反の網からきよい始めたのだが、予想通り穴だらけ。頭がすっぽりと通る程
の大穴がいくつも開いていて、小さな穴などいくつあるんだかわからんほど。
7時過ぎ頃から2時間きよっても一人半反しか終わらない。

途中あまりの強風に天幕を支えていた横木が真ん中から折れて危うく頭に当た
るところだった。天幕と折れた横木はすぐに片づけたので、9時過ぎに雨が降
り出した時には雨よけがなく網きよいは中断。残りは明日だ。


○9月26日(日)  <はずれ>

ガニ網を持って勇んで豊橋まで走った。去年本ガニ(ワタリガニ)が100あ
まりかかった場所でガニ網をやるためだ。去年はカレ網にかかったんではずす
のが大変だったが今年はガニ網で一網打尽のつもりだった。が、現実は甘くな
く二カゴ分のガニ網をやってわずかに4つ。そのうち1つは死んでしまったし
ね。ガニ網を揚げるまでの間に二クラカレ網もやったけど二クラともカラ。そ
れで9時に蒲郡へ戻ってカレイを掴まえるまで本ガニ3つという惨憺たる結果
だった。

10時に梶島まで戻ってきてお昼までやっていた。中ゴチが3本もかかったん
で良かった。カレイと合わせてそこそこの水揚げになるだろう。

午後は頼まれてムール貝を引き取りに佐久島まで走った。港ではなく海上で待
ち合わせてネットに入ったムール貝をこちらに積み直し戻ってきた。海上で慌
ただしく積み荷を移すなんてあやしい取引みたいだ(笑)。


○9月28日(火)  <川の流れのよう>

中秋の名月、つまり秋の大潮時。空港島の東側、苅谷沖はまるで川の流れのよ
うな潮の流れだった。ボンデンも浮けも波を切って動いているように見え、網
を揚げれば船はたちまち下流へ流される。ゴヘ(前進)はなんとかなるけどゴ
スタン(後進)は全然ゆうことをきかない。

こんな速い潮の流れなのかで朝6時から昼13時まで13クラもやった。しか
し流れが速すぎるせいか、あるいはやる場所が悪いせいか、一クラで1匹魚が
かかれば良い方。たまにコチがかかっているかと思うと、潮の流れに押されて
網に押しつけられて死んでいたりする。他の人にはそこそこコチやクロダイが
かかっているのだから余計イライラする。場所が悪いのか、網のやり方が悪い
のか・・・。


○10月1日(金)  <解禁>

台風後の流れ物を警戒してみんな遅かった。うちより先に出たのはヒ○エイ丸
だけだ。暗い中を師崎前まで行くと早くも流れ物が帯になっており幅の薄いと
ころを探して通り抜けた。流れ物はそれ以後も多く時々木ぎれが船腹に当たる
音がしてた。

小野浦の海岸は大量の木材が打ち寄せていた。野間(のま)の港湾からイワテ
(北側)の海岸にも幅2・30mで2キロくらいに渡って木材やら木ぎれ・ゴ
ミが打ち寄せられていた。川を下って伊勢湾に流れ落ちた流木が台風の南東の
風と吹き返しの北西の風で野間付近に集まったんだろう。東風でも吹こうもの
ならまた海に流れてくるからできるだけ早くかたづけて欲しいけど、かたづけ
るのは並大抵のことではないだろな。

こうして流れ物を避けつつ目指したのは空港島の北側。今日から進入禁止区域
が解除になって岸壁近くまで漁ができることになったからだ。西側も解除になっ
たけどまずは浅い北側へ向かった。着いてすぐ進入灯の東側で網をやると小コ
チが1本だけかかった。次も小コチと小カレイのみ。5年間も誰も網を入れて
いない場所なのにいったいどういうことだ!?。

しかしかからないのはどうにもならん。すぐに諦めてイワテに移動して網をや
り続けた。後から来た人達も一クラやってから三々五々散っていった。唯一タ
○エイ丸だけ進入灯の西側へ移動してそこからまったく動かない。どうやらか
かっているようだ。時折近づいて網をやった際に様子を伺うと2本、3本とコ
チをはずしている。う〜ん、やられた。かといって今更邪魔しに行くのも気が
引けるんでそのまま広瀬でやり続けた。

帰ってきてから話を聞くと一クラで30本くらいかかったクラがあったらしい。
せっかく早く行っても後から来た人にやられていてはダメじゃん。


○10月2日(土)  <流木>

昨日心配していた東風が今日早速吹いた。しかもまだ潮が大きい時だから岸の
流木が海に流れ出しやすいときたもんだ。心配しつつ西浦を目指して走ってい
くと明神様(半島先端)を回ったあたりから無線に流木情報がどんどん入って
きた。先を走っている人達はみんなスローにして流木をかわしかわし進んでい
るらしい。

内海にさしかかると流木の数が一気に増え「寄せ」と呼ぶ潮目にある帯状の流
れ物の集まりがタカから沖まで繋がっていた。先頭を行くヒ○エイ丸以外の船
はみんな帰りだした。うちは帰る前にせっかくだからと内海前で一クラやって
いくことにして網をやった。上げ潮はさほど強くなかったけど網を揚げたら海
草やら草木の根や葉やらが網にびっしりと着いていた。魚は小コチが2本きり。
参った、大仕事を作ってしまった。しかたなくこの一クラでやめてすぐに帰っ
てきた。

この分では内海から上野間の間では海上ばかりでなく海中の流れ物もしばらく
多そうだ。


■エピローグ

秋雨前線と台風21号による大雨・大風・吹き返しの風は大量の流木という置
き土産を置いていってくれました。1日(金)に空港島まで走って行けたこと
が奇跡のような気がします。岸に寄りついていた大量の流木は東風と潮に流さ
れて内海から上野間の間をしばらく漂うかもしれません。漂う流木は西よりの
風が吹かない限り再び岸には寄りつかないでしょうし、岸に残った流木もあま
りの量の多さに片づけることが困難なのでいつ海に戻ってくるかしれません。

野間の漁師達は商売あがったりかもしれませんが、カレ網漁師も商売あがった
りです。漁師となって5年目、とんだ10月スタートとなりました。


■次回予告

Vol.78 「昔話:網」 2004年10月16日(土)発行予定


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Copyright (C) 2001-2004 Gohe.


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