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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.79 あんばり
                          2004年10月30日発行
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■あんばり

まずはこちらの写真をご覧ください。


「あんばり」とは網をきよう(繕う・作る)ための道具です。大きさはいろい
ろあって網や網糸の太さによって使い分けます。材質は現在はほとんどプラス
チックですが、昔は竹を自分で削って作りました。木に比べて竹の方が細くし
た場合の「曲げ」に対して丈夫なため竹を使ったようです。うちでは今でも竹
のあんばりが残っていて太い網糸を使う場合に使ったりしています。

あんばりは網をきようためにはなくてはならないものです。網をきようために
は破れの状況により様々な長さの網糸が必要ですが、十分に長い糸をあんばり
に「かいて」おけば、必要に応じてきよった後にハサミで切れば済みます。

あんばりに網糸を巻くことを「あんばりをかく」と呼びます。「糸をかく」と
も言います。「かき方」は(右利きの場合)左手にあんばりを持ち最初に中心
の「針」の根元に2〜3度糸を巻きつけ、



その後あんばりの下の凹みに糸をかけ左手であんばりを手前に裏返します。





そのあと糸を上の針に引っかけてまた下の凹みに糸をかけます。



以下それを繰り返してあんばりに糸をかいていきます。針先いっぱいまで糸を
かいたらある程度の長さを残して糸を切り、ほどけないようあんばりに巻き付
けておきます。なれると手元を見なくてもかけますが、ちょっと面倒な作業で
す。






「あんばりかき」は漁師の子供のお手伝いの最初の一歩で、ゴーヘーも5歳の
時に初めてあんばりかきを教えてもらいました。かき方が悪いと網糸がゆるく
て使っている最中に糸がほどけやすいので、しっかり力を込めてかくように教
わりました。この時一緒にいたオンヤ(本家)の次男坊(同じ5歳)もあんば
りかきを教わりやったのですが、左手であんばりを返すのが難しく面倒になっ
た彼は糸をあんばりに横捲きにしてしまいました。ゴーヘーはなんとかかくこ
とができて、その場にいた大人達から誉められたのが嬉しく、そのためこのこ
とをよく覚えていたようです。

ただし、それ以後ことあるごとにあんばりかきの仕事が回ってきたのは言うま
でもありません。


■今週のゴーヘー

○10月17日(日)  <寝坊>

30分寝坊して5時ちょっと過ぎに起床、慌てて支度して出かける。船を出す
と無線でオ○エイ丸の声がした。今、高峯だそうだ。寝坊した分だけ遅れてる
ことになる。ただし早い人は彼らの30分前に出ているらしいんで、先発隊に
遅れること約1時間。

朝が遅かったけど蒲郡まで走る。前回行った時に大ガレイを10枚ばかり掴ま
えているのでそれを期待したのだが、今日は4クラやって5・6枚。中ガレイ
を合わせれば10枚にはなったかも。かわりに珍しくクロダイが10枚ばかり
かかった。まずまずかな。

梶島へ戻り長瀬をやるとギマ(カワハギ)がたくさんかかった。みんな小さい
からあまりお金にならないだろう。その後島の北側で三クラ、西側で三クラやっ
た。カレイが数枚、大ゴチ1本を含むコチが6本。梶島もまずまずだった。

夕方の札場は売る人がやや少なくて、おまけに魚が少なくて寂しかった。気を
吐いていたのはクロダイを掴まえてきたヒ○エイ丸とショ○トク丸だけだ。


○10月22日(金)  <野菜は高いが>

月から木まで台風休みだった。先週の金・土もお休みしてるからこの1週間で
1日しか沖に出ていない。なんだかものすごく久しぶりに沖に出る気がした。

例によって流れ物注意で明るくなるのを待っていたが、5時半にショ○トク丸
が出て行ったのでもはや待ちきれずみんなも一緒に後を追った。6時40分頃
空港島南の進入灯に到着しその西で一クラ目をやる。小潮なので潮はあまり速
くない(それでも他の場所に比べたらずっと速い)が、空港を回って潮が沖(
西)から入ってくるので北っぽの風と向きが合わず網が揚げづらい。二クラ目
と三クラ目は空港島の南西角を回ったところでやり、4クラ目と5クラ目はま
た進入灯そばへ戻った。9時に空港島の北へ行くと(川の)水のせいで海が白
濁していたので、北西角で一クラやっただけでまた下り、下りながら何カ所か
で網をやって帰ってきた。

夕方の札場でコ○エイ丸から聞いた話だが、空港島の北西角は朝一でショ○ト
ク丸が二クラやったらしい。それが証拠に札場では良い中ゴチを5本も売って
いた。ただし値段の方は休み明け&土曜休み前のはずなのに安めだった。値が
良かったのはクロダイとカレイのみで、ショ○トク丸とシンコ○丸、エイ○丸
の水揚げが良かっただけだ。野菜の高値は魚には無関係みたい。


○10月24日(日)  <ガマン>

久しぶりにオクゴオリへ行く。海苔枠が設置されているかもしれないと心配し
ながらだったが、実際にはタアカ(岸側)の方だけで沖はまだなかった。

黒部での一クラ目でクロダイとハゴを合わせて7〜8枚掴まえて出だしはまず
まずだったけど、その後はカレイかハゴが1・2枚かかれば良い方で昼までひ
たすらガマン。お昼過ぎの13クラ目にようやく一クラ当ててクロダイとハゴ
を合わせて40枚くらい。続けて隣をやって今度は5枚。連続大当たりとはい
かなかったが、とにかくガマンしてやっていて良かった。


○10月25日(月)  <カレ網というよりは>

また蒲郡へ行って三クラやって帰ってきた。成果は大ガレイ3枚と大グロ1枚
のみ。かろうじて油銭になった程度。8時に梶島へ戻ってきて桟橋前で大ガレ
イ5枚とコチ1本を掴まえ、続く西側で大ガレイ6枚を掴まえてやっと一息入
れることができた。

10クラ目に長瀬でタコを5ハイも掴まえた。西よりの風で船が流されシマに
引っかかった網を取るのに苦労してようやく外れ網を揚げるとタコが網にかかっ
ている、ということの繰り返しだった。網にかかったタコがシマの中に逃げ込
んで吸盤でシマを抱いて剥がされないようにがんばっていたと思われ。中には
石を抱いて上がってくるタコもあり。それにしても長瀬でこれだけタコがかか
るのは珍しい。これじゃカレ網じゃなくてタコ網だ(笑)。


○10月28日(木)  <3分の2>

また空港島の南西角へ行った。いきなりカラ。その後空港島の北側へ移動して
二クラやって小カレイ3枚。4クラ目はまたカラ。北西の風とカラにガマンで
きず橋をくぐって苅谷沖へ下る。そこでハゴ1枚。その次がカラで更に大谷前
に下り大ゴチ1本。すでに10時半近い。上野間・野間と下りながら三クラやっ
てすべてカラ。とうとう西浦に見切りをつけ12時直前に尾張を目指して走り
出した。

13時に河和(こうわ)の飴屋前に到着し一クラ、その後布土(ふっと)まで
上って一クラ、どちらもカラ。昼前から合わせて連続5クラもカラだった。結
局今日1日で12クラやって8クラもカラだった。3分の2もカラではまとも
な水揚げにならない。

うちはこんな状態だったけどちゃんと掴まえてきてる人もいる(無線ではカラ
ばっかと言ってたけどね)。空港島よりイワテでずっとガマンしてた方が良かっ
たな。


○10月29日(金)  <風のはずが>

昨夜10時半頃から急に東風が吹き始めた。こりゃ明日は行けそうにないと思
い明朝は畑に行くことに決定して寝た。一夜明けてみれば風は収まり晴れ渡っ
た良い天気。今更西浦へ行くのも遅すぎるんで予定通り畑に行ってイチゴの植
え替えをした。そこへゴーヘー父から電話が入って「これから行く」とのこと。
植え替え作業を途中で止めることはできないんで、ゴーヘー父だけで沖へ行く
ことになった。

遅れてゴーヘー母が畑に来て話すには「船のバッテリーがあがっていて、電気
屋へ電話したけど1時間ぐらいしないと戻ってこない」んだそうだ。バッテリー
が古くなってきたせいか不意にバッテリーがあがるようになった。やれやれ、
つまづいてばかりだ。

畑仕事を終えてうちに帰ったらゴーヘー父はいなかったんで、無事沖へ出られ
たようだ。14時頃船着き場へ行くと丁度沖から帰ってきたところで、魚を水
槽へ揚げた後一緒に網をきよった。

シンコ○丸の船が珍しく札場の脇に泊めてあってどうしたんだろうと見に行っ
たら、どうやらどこかで網に大量の木や竹の枝根をつけてきたらしく、網がく
しゃくしゃになっていた。本人は棒になった網を海苔網干場で伸ばしてみんな
に手伝ってもらって揃えていた。網をきよい終わってから様子見がてら手伝い
に行ったら枝根で網が絡まって容易には広がらず往生した。とても暗くなるま
でには終わりそうにないが、幸い明日は雨風で沖に出られないから網を揃える
時間は十分にあるだろね。


■エピローグ

23日に発生した新潟中越地震で亡くなった方々、被災した方々には心よりお
見舞い申し上げます。未だに大きな余震が発生するようで避難生活も長期に及
びそうです。更にはその避難生活を自動車の中で行っている方々の中に、「エ
コノミー症候群」と呼ばれる症状で亡くなる方が出ているようです。震災を生
き延びても尚死が身近にあっては避難生活のストレスも一層身に堪えそうです。

せめて余震が収まり自宅に戻ることができる日が一日でも早く訪れるよう願って
やみません。


■次回予告

Vol.80 「毎日が博打」 2004年11月13日(土)発行予定

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