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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.80 毎日が博打
                          2004年11月13日発行
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■毎日が博打

映画や小説などフィクションの中の漁師は酒好き、博打好きで描かれることが
多くて、毎晩酒盛りや花札をやっていると思っている方もいるかもしれません。
実際の漁師は毎日それほど暇ではないし、労働時間もサラリーマンより長めな
ので宴会や博打を頻繁にやるほど時間もありません。

その博打と言えば時代劇ならサイコロや花札、現代なら競輪、競馬、競艇など
の公営ギャンブルや名古屋発祥のパチンコなど案外身近にあります。庶民のさ
さやかな楽しみである反面収入に見合わないほどのお金をつぎ込んでしまう人
も少なからずいるようです。漁師の中にもきっとそういう人はいることでしょ
う。

しかし、よく考えてみると漁師の場合仕事そのものがギャンブル性が高いと言
えます。カレ網に限ってみれば毎日の水揚げ高は年間で20倍近く変化します。
天候が悪くて沖に出られない日は水揚げがないので除き、ちゃんと一日ショウ
バイ(漁)をしてきた日の水揚げ高を比較して、これだけの差が出てしまいま
す。一発あたれば大きいけどダメな日は一日の油銭(燃料代)にもならないわ
けで、その場合完全に持ち出し(赤字)になってしまいます。

更に一日のうちでみると、毎クラ(毎回)ちゃんと魚(カレイやコチ)がかか
るわけではありません。そもそもカレ網の場合網をやる場所に魚がいるかどう
か、網をやってみなくちゃわからないのです。例年この時期にはこの場所に魚
がいるんだけどなぁ、と思って網をやってみるのですが、これからやる場所が
例年通りだとは神様でも保証してくれません。常に「一か八か」なわけであり
その意味では毎日どころか毎クラ博打をしているようなもので、博打好きには
こたえられない仕事かもしれません(笑)。

さて、これだけ毎日博打付け(?)だと生活不安は大きいモノがあります。漁
師といえど人なので安定した生活を送りたいという希望を持っています。家族
も養わなくちゃいけません。安定した生活には安定した収入つまり水揚げが必
要ですが、博打な仕事とはおよそ相容れない希望なので矛盾は大きく、精神的
にはあまりよろしくないと言えるでしょう。

特に近年は漁獲高そのものが長期低落傾向なので、先行きに不安を感じること
が多いです。不安定な収入に先行き不安が加わってはどうしても悲観的になり
ます。

それでも漁師の中にあまり自殺などの話を聞かないのは、「きっとなんとかな
る」という漁師特有の楽観的な見通しがあるからかもしれません。常に悲観し
つつも心の底には楽観があって「なんとかなる」とか「そのうち大当たりがく
る」と思っているのです。



「大当たり」・・・あれ?パチンコや競馬にはまっている人みたい。
やっぱり漁師は博打好き!?


■今週のゴーヘー

○11月1日(月)  <4000円>

昨夜は猛烈な雷と雨で、雨は今日の午前中も残る予報だった。ところが朝起き
てみればすでに雨は止み風も凪いでおり、慌てて家を出た。船着き場にはまだ
みんなの船がついていて、丁度出港しようとしているところ。うちもみんなの
後をついて船を出し一緒に西浦へ走っていった。

野間での一クラ目はカラだった。そこから前島まで走り3クラやってカレイ2
枚、アイナメ1本。更に大野まで走っていきクロダイを狙って一クラやったが
カラだった。タコ釣りが落としていったカゴが網に引っかかってきてその中に
小タコが4つ入っていたけど、数には入れられない。イワテでのショウバイを
諦めて苅谷沖まで下りそこで一クラやってもまたカラ。

もう11時近く、さすがに嫌気がさしてきた。そのまま下って小野浦まで来た
らヤタ○兄弟が網をやっていてコ○エイ丸も丁度網をやるところだったんで、
彼らの沖で網をやってみた。すると小コチが1本かかったので、続けて下り側
に網をやった。今度は小コチ2本。ようやくコチの顔みたわけだがすでに12
時を回っており、コ○エイ丸は一足先に帰ってしまったようなのでうちも帰っ
てきた。

今日は出港が遅い上に走ってばかりだったんで8クラしか出来なかった。その
うち半分はカラだ。これでは今日の水揚げが4千円に届かなくても不思議じゃ
ないな。


○11月2日(火)  <テンマ引く>

朝船着き場へ行くとまだ二人しかいなかった。西の風がやや吹いているが出ら
れない程じゃない。みんな昨日の漁が良くなかったから、ちょっと風が吹けば
休みたくなるんだろう。少ししていつものメンバーが揃ったけど誰も船を出そ
うとしない。そのまま焚き火にあたりながら夜が明け時間が過ぎていく。8時
過ぎてようやく解散。

うちに戻って朝飯を食べた後船台にテンマを引いて船底の貝やフジツボを落と
した。ミドリイガイが大量についており大きいモノは5cm超もあった。その
後洗って乾かした後午後からカーペン塗り。これは30分程度で終了。2時間
程乾かした後15時半頃船台から下ろした。これで冬の支度の半分は終了だ。
今年の冬はテンマを使って何をやろうか。


○11月3日(水)  <下げ潮から風>

今朝船着き場へ行った時にはコ○エイ丸だけしか船を出していなかった。風が
吹いてくる予報なのでみんなまたぐずぐずしてた。うちが船を出すとみんな一
斉に船を出してきた。

うちとエイ○丸はオクゴオリを目指して走ったけど他は西浦を目指した。しか
し明神様を回ったら風が吹きつけてきたそうで、すぐに引き返し三河へ向かっ
たらしい。オクゴオリはちょっと風が吹くと波が荒くなるので風の吹き始めを
気にしてたけど、それより魚がかからない方が参った。3クラやって諦めて梶
島へ走った。

梶島へ行くと西側でオ○エイ丸とタ○エイ丸がやっていてびっくり。ただしカ
レイもコチもかかっている様子はなかった。うちは北側へ行って3クラやり大
ガレイ6枚、中ガレイ2枚、小コチ2本、ギマ数枚とフグを掴まえた。

丁度満ち上がり(満潮)で下げ潮が始まったら北西の風が吹きつけてきて三河
組が一足先に帰っていった。無線でそれを聞きうちも帰ってきた。


○11月5日(金)  <ダイナモ故障>

朝は北の風が強かった。それでも2ハイのカレ網が船を出していったので、6
時近くに他のみんなも船を出した。うちはオ○エイ丸の後を梶島へ向けて走っ
た。

もう少しで梶島へ着くという頃突然ブリッジの中でピーピーとブザーが鳴った。
バッテリー警告ランプが点灯していたが原因は不明。電気周りで何か故障かも
しれないが、エンジンに不調はなさそうなのでそのまま梶島へ行こうかと思っ
たが、ピーピーと鳴る音を聞いていると気がもめてしかたがないんで帰ってき
た。

一旦家に帰り電気屋さんに来てもらって調べてもらったらダイナモ(発電機)
が故障してたらしい。ダイナモは電装品だけどエンジン周りということで電気
屋さんのテリトリーではなく、エンジン屋さんに連絡しなくちゃいけないらし
い。なんともややこしい。その辺のややこしさについて30分ぐらい電気屋さ
んの講釈を聞いた後、エンジン屋さんに連絡してダイナモ交換に来てもらった。
時刻はすでに8時半過ぎ。機械場(エンジンルーム)は狭くて暗いから交換に
は結構手間取り終了したのは10時近く。故障したダイナモはそのまま修理に
出した。

さて、ようやく沖に出られるけど今から三河や梶島へ行ってもみんなのやり後
ばかりだからと、海田へガニ網をやりに行きついでに13時半頃までカレ網を
やってきた。6クラやって小中コチ4本、クロダイ7枚、青ガニ・紋付きガニ
を10数ハイ。ガニは大きいヤツが3つだけで後はみな小さかった。帰りにガ
ニ網を揚げたら本ガニが1つと紋付きが2つかかっていた。全部合わせればダ
イナモの修理代くらいにはなったかもしれない。


○11月7日(日)  <水揚げ低下>

朝6時半に野間で一クラやってカレイを2枚掴まえてから空港島の南西角へ行っ
た。到着して一クラ目で大ゴチがかかり幸先が良かった。それから昼まで9ク
ラやることができた。一度もカラが無く大ガレイがたくさん獲れたような気が
したが、帰ってきて水槽に上げたら大ガレイは7枚しかなかった。中ガレイ以
下が6枚、小コチが10本、タコ1、ギマ数枚、フグ1匹。深い場所で網を揚
げるのが大変だったわりには大した漁じゃなかった。

札場は値が安く一層がっかり。もう3週間もしたら今年のカレ網も終わりだも
んなぁ。


○11月8日(月)  <巻き&引っかけ>

三河の大瀬での二クラ目。ボンデンを取りおもり綱を手繰り上げたらおもりが
網に引っかかっていた。はずそうとしたらゴーヘー父が船をゴヘ(前進)させ
たので、網とおもりは引っ張られトモ(後ろ)の海中へ消えた。ペラに網を巻
いちゃいかんとおもり綱を緩めて海底に網が速く沈むようにしたのだけど、い
かんせん、ここは大瀬(おおず)で水深が3m未満。しかもソコリへ向けてだ
いぶ潮が干ってきており、ペラに巻き上げられた海水と一緒に網が舞い上がり
ペラに巻き付いてしまった。すぐにトモの覗き窓を開けるとペラとシャフトに
ぎっちりと網が巻いており切る以外にほどく方法なし。しかし海中の巻き付い
た網を切るのは易しいことではなく悪戦苦闘の1時間半となった。

網を取って揚げてから東側で一クラやってから梶島へ行く。梶島では7クラやっ
て3クラカラだったけど残る4クラで大ガレイを中心にカレイが13枚獲れた。
お昼に吉田港前に移動しそこで最後の一クラをやったらコチ2本、カレイ3枚
がかかった。もう帰っても良い頃だからよせばいいのに欲を出してもう一クラ
網をやった。不安的中。揚げ終いの網をガランガランで引っかけてしまい3分
の1周ほど引きずってしまった。網はビリビリ。このクラにはカレイが3枚か
かっていたけど気休めにもならない。散々な一日だった。


○11月9日(火)  <とうとう>

とうとう、風も吹かないのに休みになった。

火曜は札場がお休みだから沖に出ても仲買に相対で売ることになるので、漁も
少ないしいっそ休みにしようと朝話がまとまった。やれやれ。

で、今日は一日凪いでとってもよい天気だった。11月とは思えない天候。沖
に出ていたらと思う反面、行ってもやっぱり魚がかからなくてうんざりして戻っ
てくる可能性が高い気もする。やれやれ。


■エピローグ

サイトは11月6日、メルマガは11月18日で丸3年を迎えます。サイトは
ともかくしてメルマガを3年間も発行し続けてきたことに、自分ながら驚きを
禁じ得ません。

ごく平凡な日常や漁の様子とあれこれ思いついたことを書いているだけで進歩
がないメルマガですが、できればキリの良い100号くらいまで続けたいと思っ
ています。読者の皆さんにももう20号分お付き合いしていただけたら嬉しい
です。


■次回予告

Vol.81 「ヤマテ」 2004年11月27日(土)発行予定

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