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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.82 デンタン
                          2004年12月11日発行
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■デンタン

魚群探知機のことを「デンタン」と呼んでいます。「ギョタン(魚探)」と略
すならわかりますが、なぜ「デンタン」なのかよくわかりません。が、とにか
く魚群探知機のことをデンタンと呼びます。

デンタンは本来海中を回遊する「魚群」を探すために使います。しかしカレ網
で掴まえるカレイやコチは海底に棲んでいる魚なので魚群探知機にはまったく
映りません。それではなぜカレ網ではデンタンを使うのでしょうか。

それはデンタンの仕組みに秘密があります。デンタンは超音波を船底の発振器
から海底に向けて発射しその反射波を受信して画像として表示しています。回
遊する魚が船の下にいれば超音波を反射して画像として表示されます。その時
の画像の大きさや水深などから判断して魚種を判断するわけです。

超音波は魚以外でもいろいろなもので反射して戻ってきます。最後は(と言っ
ても瞬時ですが)海底で反射して戻ってくるわけですが、この時その場の水深
と海底の地形がはっきりとわかります。カレ網にとっては水深と海底の地形が
とても重要なので、デンタンでその二つが瞬時にしかも同時にわかるのは実に
画期的なことでした。

デンタンを使う以前、浅い場所では竹の棒、ちょっと深い場所では紐に錘をつ
けたものを使って海底の段差を探っていました。ヤマテを見ながら船を進めて
竹の棒や錘で何度も海底までの深さを測り、前回と比べて浅くなればその間に
段差があるとわかりました。すぐにそのヤマテを覚えておき次に段差に沿って
深さを確認しながら移動し、ある程度のところまできたらまたヤマテを覚えて
網をやる場所を決めました。段差は10〜20cm程度しかないので、測り方
がいい加減だとせっかくヤマテを覚えても網をやる場所がいい加減になってし
まい魚のかかりが悪くなりました。

このようにしていたところへ船を通過させるだけで深さと海底の地形が同時に
わかる機械が登場したわけです。当時でもかなり高価なものでしたが、デンタ
ンはカレ網漁師の間で一気に普及しました。ゴーヘー父が初めて使った際には
自分の覚えているヤマテとデンタンの表示が見事に一致して妙に納得したそう
です。

初期のデンタンには今のような液晶画面はなくブラウン管もありませんでした。
探知した結果はロール感熱紙に「記録」されてプリントアウトされていました。
感熱紙は消耗品ですが無駄にすることはできないので、デンタンによる記録は
ヤマテを見ながら確認のために行い、それが終わるとすぐにスイッチを切って
いました。今ではそのような心配はないので朝漁場へ着いてから終わるまでずっ
とデンタンのスイッチを入れたままですが、当時の名残として画面表示される
海底や海草や魚群のことは「記録」と呼んでいます。たいてい赤く表示される
ので「真っ赤な記録が出た」なんて言っています。

一気に普及したデンタンですが、デンタンがあってもヤマテだけはしっかり自
分で覚えなくてはなりませんでした。それが苦手な人は「人ヤマテ」に頼った
りサシアゲ(小型定置網)や防波柵のそばなど場所がわかりやすい所に行って、
あとはデンタンで海底の段差を探す方法を取ったわけです。

魚のいる段差を見つけるのと、その場所をヤマテで覚えるというカレ網漁師に
とってもっとも重要な、かつもっともカレ網漁師らしい技は、かくしてデンタ
ンにより駆逐されるつつあります。いまやGPS付きデンタンもあり場所さえデン
タンが覚えてくれます。もはやデンタンはカレ網漁師にとってなくてはならな
い重要な設備と言えます。


■今週のゴーヘー

○11月29日(月)  <札場終了>

朝から北っぽが吹いていて寒かった。こういう時はカレイの動きも悪いもんだ
がカラは一度しかなく、梶島でも蒲郡でも大ガレイが毎回2・3枚ずつかかっ
た。無線で誰も話さないのでみんなも魚がかかっているのかもしれないと心配
する。

13時半に港に戻ると水槽に誰も魚を活かしていなかった。今日札場があるか
どうか心配になりゴーヘー父がショ○トク丸に無線で尋ねたら、魚があっても
なくても今日を最後に(今期の)札場をやめるから水槽に活かしておいてくれ
との返事だった。大ガレイ20枚を含むカレイ約40枚をカンコから水槽に揚
げて活かしておいた。いよいよ今期のカレイもお終いだ。

うちへ戻る途中オ○エイ丸と行き会った。軽トラを止めてしばらくあれこれと
話す。ヤタ○兄弟が明日からナマコ引きに出ると言っているらしい。ナマコは
12月1日が解禁日だから一日早くやってもいいじゃないか、という言い分だ
そうだ。兄弟二人ともうちと同じくらいカレ網で水揚げがありしかもどちらも
すでに年金をもらっているのだから、わずか1日が待てないほど生活に困って
いるとも思えないが┐(´-`)┌。


○12月1日(水)  <ナマコ初日>

いよいよ2年ぶりのナマコ引き。日の出直後に出て行くとすでにテンマ3バイ
が引き回っていた。うちも早速一クラ目をやると一昨年とは打って変わってた
くさんのナマコが上がってきた。ざっと30個。その後も20〜30個がコン
スタントに引けた。先に引いてた彼らは3クラぐらい多くやってそうだからそ
れぞれ100個くらい多く引いてることになるなぁ。やはり初日は早く出てこ
なくちゃダメだ。

オ○エイ丸は始め引っかけで獲ってたけどナマコがいないといってケタ引きに
出てきた。でもうまく引けないみたいで1時間もしたら帰っていった。11時
頃コ○エイ丸がようやく出てきた。今年はナマコ引きをやらずに他へバイトに
行ったのかと思っていたら、船外機が故障してて修理していたらしい。出が遅
い分、彼は午後も引いていた。

午後注文してあった船外機が到着し片名の造船所でその取り付けをやってもらっ
た。4ストローク25馬力の船外機でかなり重くクレーン車で吊って交換した。
バッテリーが大きすぎてトモの箱に入らないので小さいヤツと後日交換。取り
付けが済んでゴーヘーは軽トラで、ゴーヘー父はテンマで片名から帰って来た
のだけど、いつもならスピードを出して走るはずが妙のゆっくりと走ってきた。
なにかあったのかと思ったら、船外機の舵を切ると船体にあたってしまって舵
が切れないそうだ。テンマ後部の船外機取り付け位置がコの字型になっている
ので、舵を切ると「コ」の両端にあたるわけだ。当たったせいで新品の船外機
の側面がすでに傷だらけ。夕方までかかって、あたる部分の船体を切ってゴム
を貼っておいた。とりあえず応急処置なので業者と相談してどうするかを決め
よう。


○12月2日(木)  <細い>

朝から強い北っぽが吹いていた。こりゃでられないなぁ、と言いつつ船着き場
へ行くとすでに皆出てナマコを引いていた。昨日たくさん引けたから風が強く
ても出たんだな。うちも慌ててテンマを出す。

浦口の灯台が迫ると北から高い波がやってきた。波高は軽く50cm程度はあ
る。テンマの舳先が上下に激しく揺すぶられる中、舵のあまり切れない船外機
でナマコを引いているので余計危なっかしい。昨日の大漁を聞きつけてバカ網
の連中まで出てきて、わずか50m四方程度の場所を昨日より多いテンマ6パ
イで引き回る。さすがに今日はナマコの入りが悪くて毎クラ10〜20程度。
少ない時は5つしかなかった。波が高い中無理してやっているだけの価値が無
く10時半に帰ってきた。

戻ってすぐにコノワタを取る準備をして11時過ぎには取り始めた。どのナマ
コも大きいのでさぞコノワタも太くて長いだろうと期待して始めたのだけど、
大きさに似合わずどのコノワタも細くて短く取っても取ってもコノワタが増え
ない。当初は1キロくらいのコノワタを想像してたけどこれでは500グラム
程度にしかならない。今年は暖かかったからコノワタの成長もまだ十分じゃな
いんだろうなぁ。


○12月3日(金)  <テンマ改造>

朝7時に造船所へテンマを持って行ったけど、さすがに早すぎてまだ誰もいな
い。結局1時間以上待ってテンマを船台へ揚げた。更に30分以上待ってクレー
ンのカギが届きようやく船外機を下ろした。コンクリートの地面に直接下ろし
たので最初に接地した船外機の一番下部が塗装が剥げて傷だらけになった。こ
こから錆びてくるんだよなぁ。相変わらず扱いが雑だ。まだ新車なんだからもっ
と丁寧に扱ってほしいもんだ。

テンマは今コの字型に凹んでいるトモを凹みを無くし一番後ろまで船外機の取
り付け台を下げることにした。自分で要らない部分を切って削りあとは造船の
人(社員)にやってもらう。全部終わるまで2〜3日かかりそうだ。地面に放
置された船外機だけが心配でゴーヘー父がコウバ(エンジン屋さん)の人に持っ
て帰ってもらうように頼んでいた。


○12月8日(水)  <もう終わり?>

ナマコの獲れる数が急減してきた。今日は5〜10コ程度。引いても引いても
カンコの底が見える。灯台付近を諦め早々とマガナへ移動したけど結果は変わ
らず。少ないところへもってテンマ5ハイで引いてるのだから、獲れる数が毎
クラ減っていく。結局11時半にやめてドウマンに2つ弱。昨日の分と合わせ
ても初日の1日分に足りない。昨日のナマコのコノワタ取りは今日の分と合わ
せて明日やることにした。


○12月9日(木)  <クルマエビ>

浦口でさっぱりナマコが獲れなくなったんで今日は少しイワテへ移動。マガナ
から海田の下りまでの間で往復してナマコを引く。浦口よりも全体に小さいナ
マコが入る。できるだけ大きいヤツを選ってあとは海に放す。

ナマコ以外にカレイとイザリウオ、ミミゴチ(メゴチ)、クルマエビがマンガ
に入った。カレイは30cmくらいある中ガレイのいいヤツだった。もう身が
柔らかくて煮魚にして箸で挟むと崩れてしまうほどだけど、晩のクイリョウ(
おかず)にはもってこいだ。イザリウオは4匹も入った。これは食べないがお
腹に空気が入って浮かんでしまったので終わりまでカンコに活かして養生させ
た(笑)。ミミゴチは3匹入ってナマコと一緒にカンコに活かしていたらすぐ
に死んでしまった。クルマエビは大型(55g)でネットで捜してもこれだけ
の大物はみあたらない(25gで1匹760円というのは見つけた)。買った
らいったいいくらするんだろう?と思いつつ、刺身にして食べた。ベリーグッ
ド!。


○12月10日(金)  <わずか5cm>

昨日と同じ場所で引いていたが一クラ5〜10コ程度しか獲れない。替わりに
1年生のムール貝が貝殻と一緒によく入った。昨日もそうしたように、今日も
それを集めて鳶ヶ崎に撒くことにした。昨日確認したら鳶ヶ崎の海底には小さ
なムール貝があちこちで群生を作っており順調に育っているようだが、自然に
任せるだけじゃなく少しでも他から移入して全体の復活をできるだけサポート
したい。

ナマコ引きは後半山田のテトラ前へ移動してやってみた。テトラのタアカ(岸)
側に入れた砂がテトラの沖側にも移動してきており、マンガで引いてもほとん
ど泥のような砂しか入ってこない。当然マンガは異常に重く5・6回もこれを
繰り返したらもはや疲労困憊。10時半に早々と帰ってきた。

コノワタ取りは明日二日分をまとめてやることにして、テンマの船外機の取り
付け部分を少し下げに造船所へ行った。今のままでは走るには好都合でもナマ
コを引くには船外機の位置が高すぎるため。わずか5cmほど高いだけだけど
案外影響があるようだ。


■エピローグ

去年はムール貝を採っていましたが今年は採ることができないので、例年通り
ナマコ引きをやっています。解禁になってまだ10日しか経っていませんが、
4〜6パイのテンマが引きまくっているので、早くも獲れる量が少なくなって
きました。例年になく暖かいせいもあってまだナマコの数そのものが少なく、
これから寒くなってくればまたぞろどこかから出てきて獲れる数も復活するか
もしれないと期待してます。

そうです、今年の冬は冬らしくない暖かさです。東京ではつい先日夏日を記録
したとか。10日も快晴・無風で春のような陽気でした。こんなに暖かくて、
この先ホントにナマコが出てくる程寒くなるのかと信じがたいほどです。まぁ、
12月中は割合暖かい日が多くて、本格的に寒くなるのは年が明けてからなの
でしょうね〜。

地球上では季節の進み具合に変調が出てますが、暦は紛れもなく12月の半ば
となっております。三大流星群の一つ「ふたご座流星群」が今年は12月13
日深夜にピークとなります。暖かいと言っても冬の深夜夜ですから、もしご覧
になる場合は暖かくしてご覧ください。


■次回予告

Vol.83 「カモメ」 2004年12月25日(土)発行予定

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Copyright (C) 2001-2004 Gohe.


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