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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.83 カモメ
                          2004年12月26日発行
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■カモメ

童謡「カモメの水兵さん」でお馴染みのカモメは白い帽子とシャツ、服を着て
いて、私のカモメに対するイメージは全身白で統一した清潔感溢れるものでし
た。ところが漁師となって日々たくさんのカモメを見るようになったら、「白」
のイメージとはかなり異なるカモメたちがたくさんいることに気づきました。

「白」のイメージに一番近いカモメは冬のユリカモメだと思います。頭の先か
ら尾羽の先まで白い羽毛に覆われていて、体の小ささと相まって実に愛らしい
姿ですが、その背中と羽の背側はかなり薄い青黒になっています。夏には黒い
ほっかむりを被ったように頭が黒い羽毛で覆われます。最初見た時は別な種類
のカモメかと思いました。

大型のカモメも背中側は一般に青黒です。色が濃かったり薄かったりしますが
どれも白一色はありません。演歌や冬景色がよく似合いそうなウミネコは濃い
青黒の背中で羽の先と尾羽の先が黒くなっています。背中以外の全身の白い部
分に薄い焦げ茶の羽毛が混入している種類もあります。頭の周辺だけ薄い焦げ
茶の羽毛が混ざっているヤツもいます。その名もズバリ「白カモメ」という種
類もありますが、これも全身真っ白というわけではないようです。

どうやらカモメの白イメージは童謡から植え付けられたもののようです。

考えてみれば自然界で体の色が白い動物は、極地や冬を除いて目立つので生存
には不利です。いつでも飛んで逃げられる鳥だから白くても大丈夫なのでしょ
うが、青い海の上では白はよく目立ちます。カモメの背中が青黒いのは海の上
に浮かぶことが多いゆえのカムフラージュなのでしょう。腹側が白いのは海中
から魚が見上げた場合に太陽光の乱反射に紛れるためかもしれません。

勝手な白イメージの連想からは合わない点がカモメにはまだあります。それは
特に大型のカモメに顕著な特徴なのですが、とにかく「目つきが悪い」のです。
ユリカモメはつぶらなかわいい目をしているのですが、ウミネコやセグロカモ
メ、オオセグロカモメなどよく見かけるカモメはどれも大変目つきが悪いです。

今テンマでナマコを引ひいているのですが時々テンマの舳先にエサを求めてカ
モメが降り立つことがあります。手を伸ばせば届きそうなくらい近くに降り立
つこともあるそのカモメの睨むような鋭い目つきを見ると、予想外に大きな体
と相まって近いその距離に恐怖感を感じてしまいます。警戒してびくびくして
いるのはカモメの方なのに、その目が気になってこちらがドキドキしてしまう
のです。種類はたぶんセグロかオオセグロだと思いますが、でかくて目つきが
悪いのです。

カモメは野鳥ですが、上記のようにテンマの舳先でエサを狙うことがあるよう
に、人の生活や活動のおこぼれをエサとして活用しています。通常は人や船が
近づけばこちらに背を向けていても常に片方の目でこちらを捉えて警戒を怠ら
ないくせに、人がエサを持っているとなれば恐れずに近寄ってきます。船で魚
をさばいてアラを置いておこうものなら真っ先にやってくるのはユリカモメ。
一羽が拾ったエサを他のヤツが奪おうと追いかけて飛び回ることもしばしば。
その目ざとさと図々しさはカラスもトンビも足元にも及びません。

白イメージからはだんだん離れてダークな感じのするカモメですが(笑)、そ
の羽ばたく姿はとても美しいです。特に風に向かって羽をやや折り曲げて羽ば
たく姿は一つの完成型のようにさえ思えます。アジサシの羽ばたきにリズム共々
似ていて、調べてみてたらアジサシもカモメ科の鳥でなるほどと納得しました。
大きな体に似合わず海に浮かんだ状態から羽を広げてほぼ垂直にふわりと飛び
立てるのも、羽ばたく能力が強いカモメならではなのでしょう。

エサを獲るのに都合がよい機能はあまり体に備えていない様子で、海に潜るこ
ともできずただ海面近くか海面に浮いているものをついばむことしかできない
カモメは、他の海鳥との生存競争には不利な模様。その不利をカバーするため
に強力な羽を身につけどこでもすぐに飛び立てるようにし、白く目立つ体にし
て仲間の誰かがエサを見つけたら鋭い目で遠くからでもすぐに見つけてその場
へはせ参じる。仲間の種類が多く仲間の区別もちょっと見には区別がつきづら
い程の微妙な違いで、なおかつみんなが混在して活動するのは身を守るためな
のでしょう。

カモメはみれば見る程いじらしいです。いくら目つきが悪くて図々しくてもね。


■今週のゴーヘー

○12月11日(土)  <なんですか、この暑さは>

7時、いつものようにナマコを引きに出る。北西の風が吹いていてるけどそん
なに寒くない。春の朝って感じだ。これだけ寒くないとナマコも期待できない。
むしろカレ網に出た方が良かったんじゃないか・・・でも、キロ500円のカ
レイを掴まえてきてもなぁ・・・大ガレイ10枚で5千円もらえるかどうか・
・・。

引いても引いてもナマコはあまり獲れず10時半に退散。港に戻ってナマコを
活かし昨日までの二日分のナマコのコノワタ取りの準備をしてたら汗をかいて
しまった。セーターとトレーナーを脱いで、まるで4月か10月上旬のような
いでたち。とても12月上旬過ぎとは思えない。


○12月12日(日)  <梅の伐採>

午前中はナマコ引き。コノワタ取りは明日にして、午後は畑の梅の木の伐採に
行った。毎年12月に余分な枝を切っているのだけど、去年切る量が足りなかっ
たようで今年の夏は葉が茂りすぎだった。そこで今回は思い切ってたくさん切
ることにした。夕方までかかって2本の木の枝をばさばさと切りまくる。特に
東側の木を念入りに切った。

が、ずいぶん切ったつもりだったけどまだ枝が多すぎる感じ。もう一度切りに
来るか、どうしよう。


○12月13日(月)  <カキ>

今日のナマコ引きは浦の中でやった。そしたらカキがたくさん採れ、ネットに
1つ分になった。ネット1つでだいたい20キロ程度だけど持った感じでは若
干軽め。あまり身が入っていないのかもしれない。ナマコの方はドウマン1つ
+α程度だったのでコノワタ取りは明日に繰り下げ。

カキは夕方カキフライにして食べてみた。小さいカキより大きいカキの方が身
が痩せていたけど、1年ぶりのカキはおいしかった。カキはまだ残っているの
でしばらく畜養して身を太らせよう。


○12月14日(火)  <スナメリ>

朝まだ北西の風が残っていて波が荒かった。そんな中マガナへナマコを引きに
出た時、テンマの30mくらい先の波間に何かの気配を感じた。よく見たらス
ナメリが沖に向かって泳いでいくところだった。よく肥えた大きな背中だった。
雄だろうか。背中は一度だけしか見せてくれなかった。きっとテンマに驚いた
んだろう。

ナマコは連日の暖かさのせいか、はたまた連日引いているせいか、一クラで2・
3コしか入らなくなってきた。一度全員で休漁した方が良いけど・・・・合意
は無理だろな。


○12月15日(水)  <またカキ>

浦の中で引いたのでまたカキがたくさん獲れた。今日はネットに1つと少々。
これだけ獲れると売りたくなるがここのカキは水ガキ(身が痩せていて水を含
んで膨らんでいる)なので買ってくれない。しばらく大船に吊して太らせよう。


○12月16日(木)  <大きなナマコ>

今日のナマコ引きは前半が不調だったけど後半は大きなナマコがいくつもあっ
た。大きさはボンレスハムくらいで今まで見たことがないようなヤツだった。
よくこれだけの大きさに成長したものだ。何年かかったんだろう。これだけ大
きいとコノワタも太くて長いだろうなぁ。

午後はコノワタ取りをしたんだけど、その中にも大きなナマコがあった。今日
取ったヤツよりは一回りくらい小さいけどコノワタは1mくらいの長さがあっ
てビックリした。今日取ったヤツもきっとこんな具合だろう、楽しみだ。


○12月17日(金)  <お休み>

昨夜から強風だった。今朝、ホームセンターの旗がちぎれて道路に舞っていて
ビックリ。

この強風の中ヨ○エイ丸とコ○エイ丸はナマコ引きに出ていたけど、うちはお
休みにした。波があるとナマコが入りづらいし、波穏やかな浦の中でも昨日やっ
ていた場所は風下になって波が立っていたから。ナマコ引きはお休みにしたけ
どコノワタ取りは9時頃から始めた。2時間程で終わる。


○12月18日(土)  <ムール貝>

今朝30分程遅かったら、一昨日うちが引いていた場所をすでに4ハイのテン
マが引きまくっていた。ヘイジ(タコ瓶)がやってあるので引く場所が狭くなっ
ているのに、うちを入れて5ハイのテンマがひしめき合った。じきに2ハイが
他へ移ったけどうちとヤタ○兄弟はその場に留まる。しょっちゅうヘイジに引っ
かかって引きづらい。ヤタ○兄弟は引っかかっても平気で引いているし、引い
てるうちに自然に外れるみたいだ。不思議だ。

場が狭いので一昨日より少し下りへ引いていたらムール貝がたくさん入ってき
た。ネット1つ分くらい貯まらないかと取っておいたら随分な量になった。午
後それを揃えたらネット1つ半になった。よしよし、油銭(燃料代)になった。


○12月19日(日)  <買い直し>

長靴の右足の水の浸入が昨日限界に達した。靴下は踵部分を中心にびしょびしょ
で、いくら例年より暖かいとは言え水の冷たい冬にはあまりに厳しい。いまま
でよくがまんしていたと我ながら思う。

で、昨日の午後新しい長靴を買ってきて今朝履いて出た。軽トラに乗ってクラッ
チを踏んだ瞬間靴底に不自然な曲がりを感じる。今度の長靴は2,280円もした
のに靴底が薄いらしい。昨日買う時にどうして気づかないかなぁ。靴底が薄い
と足がよく冷えるんだと心配したとおり、今日はずっと足が冷たくて一気に両
足ともしもやけ気味。高かった長靴なのにこれでは履いていられない(T^T)。

午後慌てて別な店に別な長靴を買いに行った。今度は980円だけど靴底はちゃ
んと厚めのを買ってきた。


○12月20日(月)  <暖かい>

昼少し前からコノワタ取りをやった。曇っていて冷えるかと思ったら途中から
晴れてきて暑いくらい。ちょうど春のような陽気。ナマコにはよくないかも。


○12月22日(水)  <小さいナマコ>

朝はぐっと寒かった。ようやく冬将軍が降りてきたようだ。

いつものように浦の中でナマコ引きをやった。ヘイジ(タコ瓶)のウケがなく
なっていたのでヘイジを片づけたのかと思いその場でナマコを引いたらヘイジ
に引っかかってしょっちゅう止まる。どうやら誰かが受け綱を切ってしまった
らしい。ナマコ引きながらヘイジのウケをガンガン引っ張っている人がいたか
らなぁ。

しかたなくひっかからないよう場所を変えて引くがナマコがあまり入らない。
浦の中を諦めてトンビ(鳶ヶ崎)の北へ移動。ここは海底にシマ(岩)がある
んでよく引っかかるんだけど今日は小さいナマコがよく入った。短い時間で何
度も引いて揚げたらどうにかカンコがいっぱいになってきた。コノワタ取りは
ナマコが小さくても大きくても手間はたいして変わらないからできれば大きい
ナマコがいいのだけど、今日は選り好みをしていられない。1時間くらい引い
たらさすがに入らなくなってきたんでまた浦の中へ戻る。丁寧に引いてたら大
きいナマコがそれなりに入った。

ナマコ引きが終わってから採り貯めてあったムール貝をいつもの所へ持って行っ
た。わずかネット2弱だったけど快く引き取ってくれて気持ちがよい。単価も
キロ200円もしてビックリ。


○12月23日(木)  <ジャガイモ>

午前中は強風の中ナマコをひいた。カッパを着ていかなかったんで波を被って
随分濡れた。ナマコの方はどうにかカゴに3バイ獲れた。

午後畑へジャガイモを獲りに行った。秋に植えたジャガイモで、植えた時期が
例年より遅かったけど例年より暖かいためまだ葉っぱは青々としていた。ジャ
ガイモの生育も十分で予想外に育っていた。全部で7.5キロ。


○12月24日(金)  <最高だけど>

今日の午後取ったコノワタの量は今期最高かもしれない。ビニール袋に入れて
ずしりと重い。

15時にいつものように仲買にコノワタを持って行くと、社長宅のおじいさん
が亡くなったとかでお店の魚屋の方はお休み。コノワタの引き取りもできない
そうで、せっかくの今期最高の量のコノワタも行き場を失った。思案した揚げ
句ムールを買ってもらっている所へ持って行って、無理を言って買ってもらえ
る人を捜してもらった。いくらになるかわからないけど、このまま腐らせちゃ
うよりずっといい。


■エピローグ

とうとう今年も残り1週間となりました。歳を取ると一年の過ぎるのが早くな
るといいますがまさにその通り。若い人達とは時間の流れが違う世界で生きて
いるような気さえします。

振り返ってみれば去年の12月はムール貝で忙しく、今年の12月はナマコ引
きで忙しくなりました。去年ナマコ引きをした人の数が少なかったせいか、今
年はこれまでナマコが多くコノワタの値段も高値で推移してきたため、少々の
風でも休まず先を争うようにナマコを引いています。たぶん全員でこの調子で
引きまくってナマコを根絶やしにしてしまうのでしょう。来年が思いやられま
す。

新年を迎えるにふさわしくない締めくくりで申し訳ないです。来年もぶちぶち
と愚痴をこぼしながらやっていきたいと思っております。見捨てずにお付き合
いくださるようお願いします。

それではちょっと早いですが、皆様、良いお年をお迎えください。


■次回予告

Vol.84 「風が来る」 2005年1月8日(土)発行予定

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Copyright (C) 2001-2004 Gohe.


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