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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.87 漁具の名前
                           2005年2月19日発行
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■漁具の名前

カレ網では網を海に入れる時に網のある場所の目印とするために、途中に4つ
のウケをつけています。「ウケ」は漢字だと「浮け」を当てるので釣りで使う
「浮き」と同じ意味です。Infoseek辞書によると下二段動詞「浮く」の連用形
だそうです。他の当て字としては「浮子」などがあるそうです。

古く古今和歌集には
「伊勢の海につりするあまの浮けなれや 心ひとつをさだめかねつる」
とあるそうで、「浮け」という言葉自体古くからある言葉のようです。

古今和歌集で思い出しましたが、高校時代古典の授業中に先生が「漁師の息子
はこのクラスにいるか」と聞いたことがありました。手を挙げたのは私一人で
、先生は私に「『あか』っていう言葉を今でも使わんか?」と聞きました。初
めは何のことだかさっぱりわかりませんでしたが先生の説明を聞いて「船の中
に溜まる水のことを『あか』と言うことを思い出しました(鈍い(^^ゞ)。古典
でも「あか」という言葉が使われていたそうで、昔の言葉を今でも使っている
例として先生が説明してくれました。

考えてみれば漁師自体非常に古くからある職業で、子々孫々に受け継がれてき
た仕事なので、古い言葉が今でも残っているのももっともなことです。試しに
Infoseek辞書で「あば」、「ばんぎ」などの言葉を調べてみるとちゃんと説明
が載っています。「あば」は網に直接つける浮けのことで、「ばんぎ」は船を
ドックに揚げる際に船の下に挟んでおく横木のことです。普通名詞としてこれ
らの言葉が辞書に載っていることに感心してしまいました。

一方で当然ですが辞書に載っていない言葉もたくさんあります。日頃よく使う
「あんばり」や「ぼんでん」、「かんこ」などがそうです。「あんばり」は「
あみばり(網針)」としてなら載っています。「あみすきばり(網結針)」と
も言うようで、「あみすきばり→あみばり→あんばり」と変化したのは明らか
ですね。


地域や時代によって多少言葉が変化するのはよくあることです。変化しつつも
古い言葉がよく残っているものだと思います。そして意外にも、残っているこ
れらの言葉は全国の漁師の間で共通するものがあります。辞書に載っている「
あば」がよその場所の漁師にも通じることは当然としても、載っていない「ぼ
んでん」とか「あんばり」などが通じたりします。

おそらく船や網・道具に関する言葉や名前は古くから漁師の交流によって広まっ
たのじゃないでしょうか。使役や交易などで漁師が移動し、その際それら漁具
をかの地から別な地へ持って行ったり別な地で作って見せたりして、「あば」
も「ぼんでん」もその名前が伝わっていったんじゃないかと考えています。実
際にモノを見せれば確実に伝わりますよね。

ところで、これら漁具の名前をその土地独自の言葉だと思っている漁師は案外
多いでしょう。私もゴーヘー通信を発行するまではそう思っておりました。時々
メールを頂いたりネットで調べたりするうちに、共通している言葉が意外に多
いことに気づいた次第です。

ネットの時代となった今後、漁具以外の名前や言葉もネットを通じて全国に広
がっていくかもしれません。


■今週のゴーヘー

○2月13日(日)  <始動>

例年になく早くカレ網始動。
と言っても今日の主目的は三河の一色沖でムールを引くことで、カレ網は二の
次。ナマコケタを大船に積んで出かけ試しに引いてみた。結果から言うと「惨
敗」。

テンマで引いてる時は風や潮の速さ、水深に応じてテンマのスピードをコント
ロールして引くのだけど、大船では一番遅い「スロー」で引いても「速すぎ」
た。潮に向かって引いても風に向かって引いてもナマコケタをすいすい引っ張っ
てしまい、ケタが海底から浮いているのが船上からでもわかった。曲がるとス
ピードが落ちるんで少し入るが、貝の「割れ」が多い。まだスピードが速すぎ
るみたい。2時間程引いてカゴに半分弱ではテンマでも油銭にさえならない。
大船では尚更。一つ一つの貝は重かったので身は十分に入っている模様。たく
さん採れたいいのになぁ。

9時半頃からカレ網に切り替えた。4クラやってカレイ4枚。ナマコケタを引
いてる時に一枚入ったので計5枚。2.5キロだった。最痩せの時期よりは少
しだけ身がついてきたがまだ値段は最安値状態。「状態」とぼかしてるのは仲
買が勘定をくれなかったから。仲買にとっても今年初めてでまだ値段がつけら
れない「状態」みたい(苦笑)。

網は例によってアオサと海苔がついて重くなってしまった。重さで腕がなまっ
てしまい揚げるのに余分に時間がかかった。はぁ〜。


○2月14日(月)  <4時間揃える>

午後、昨日汚してきた網を揃えた。

アオサなどに比べ海苔が網に付くとものすごく困る。まず水を含んだ状態だと
ものすごく重くなるから昨日だってあえぎながら網を揚げた。次に網糸に絡まっ
た海苔は滑りやすく丈夫で引っ張ってもすぐには切れないから、網糸に絡んだ
部分をつまんで丁寧にはずす。これを延々と網全体に対して繰り返す。4時間
近くかかってようやく1反揃え終わった。

根気がないとカレ網はできないとつくづく思うが、やってる人は漁師だからみ
んな短気だ(笑)。

この網に絡まった海苔は、乾くと固まってしまいちぎることも難しくなる。3
年前はそれでガニ網を捨てることになった。今使ってるカレ網はまだ新車(新
品)だから捨てるわけにはいかないので、これ以上乾きすぎないよう取り残し
た網には水を掛けてきた。


○2月15日(火)  <2枚>

朝8時前に一色前に到着。一クラやってから梶島へ走る。カレイ1枚すらかか
らないんじゃやってられないからね。

その梶島では3クラやってカレイ2枚。吉田港前や大シラバなどでもやったけ
ど成果なし。昼飯後一色沖でやって大量のパンにうんざりして帰ってきた。結
局今日はカレイ2枚のみ。やっぱまだカレ網には早すぎるんだわ。


■エピローグ

2枚の大ガレイはカンコに活かしていたことを忘れてて、17日(木)に2枚
ともカンコから揚げて捌きました。刺身にしても食べられそうな程でしたが、
無難に煮付けにして食べました。身が締まってきてだいぶうまくなってきまし
た。もう一月もしたら身も肥えて更においしくなるでしょう。

ところで17日にはセントレア(中部国際空港)がついに開港しました。テレ
ビニュースなどで皆さんもすでにご存じのことと思います。次回はこのセント
レアについて、一漁師として、どうしても触れないわけにはいかないでしょう。


■次回予告

Vol.88 「セントレア」 2005年3月5日(土)発行予定

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