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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.89 アオサ
                           2005年3月19日発行
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■アオサ

昨年暮れが異常に暖かったせいで年明け後の冷え込みが一段と厳しく感じられ
るのですが、これでも例年より少し暖かいそうなのでカレイの動きも例年より
早いと予想し今年は早くスタートしたカレ網ですが、例年になくカレイがかか
らず出足から大きく躓いています。

昨年は旧暦の閏月があったせいで旧暦では暦が遅れています。自然の移ろいは
新暦より旧暦の方により近いので、自然の海で暮らすカレイにとってまだ真冬
なみの環境&活動状態なのかもしれません。

その冬の海では海苔を始めとした海草類が勢いよく育ちます。今年は前述のよ
うに気候が少し暖かいため海水温もやや高めで海苔養殖にはダメージがあった
ようですが、それでも海草類は暦を追うようにして育ってきています。船着き
場の岸壁や海中のロープ類にはワカメが大きく葉を広げていて、柔らかそうに
潮の流れに揺れているのを見ると、刈り取って食べてみたくなります。

こうして冬の海で育つ海草の中に「アオサ」があります。海草の中では少数派?
の「緑色」をしています。一般の海草類と同様に海底の石や岩に定着して成長
するタイプと、それとは違って海中に浮遊して成長するタイプがあります。定
着していたアオサが波や潮の影響でちぎれて浮遊するのか、初めから浮遊して
暮らすのかよくわかりませんが、たぶんアオサは両方の生活ができるのでしょ
う。その方が生存には有利ですからね。

それを裏付けるかのようにアオサは伊勢湾・三河湾の浅場のいたるところにあ
ります。岸に向かってちょっと風が強く吹けば海岸は波で打ち寄せられたアオ
サで緑色になってしまいます。

海底にアオサがあると、底まではっきりとは見えない時でも船上から見るとそ
の場所が黒っぽく見えます。所々黒い塊が見える程度なら良いですが、辺り一
面黒っぽく見えたらほぼ確実に網にアオサがついてくるので、そんな時は網を
やるのを諦めます。

こうした定着しているアオサに比べ流れているアオサは実にやっかいです。流
れるアオサは潮がよく通す(流れが速い)場所を流れていたり海底の澪やドン
ボチ(凹んだ場所)に溜まっているので、できるだけそういう場所を避けて網
をやるわけですが、魚がいる場所はそういう場所と背中合わせの場所なので、
往々にして網に大量のアオサを付けることとなります。

2月3月は特にアオサが多い時期なので毎年一度は網が揚がらない程大量のア
オサを付けてしまいます。後で揃える(掃除する)のが大変!。

「どこにでもたくさんあるアオサでショウバイできないか?」。網からアオサ
を取りながら考えたものです。ただし網についたアオサは全部取ってもたかだ
かバケツ2〜3バイ分しかありません。網について海から揚がってきた時には
水を含んで重いですが、水が切れた後は大した量ではありません。第一、網か
ら取るには手間がかかりすぎます。これではショウバイになりません。

そんなある日梶島近くで網をやっていた時、船になにやら緑色のモノを満載し
た漁船が東から走ってきました。すれ違いざまによく見たら緑色のものは全部
アオサでした。

「どうするんだいな」とゴーヘー父に聞くと「そや〜、売るんだらぁ」との返
事。もっともです。あんなに大量のアオサを自家消費するわけありませんし、
わざわざ油銭使って採ってくるからには「売る」のが目的に違いありません。
聞くだけヤボというものです。生のままか乾燥させてから売っているのかわか
りませんが、カレ網では単なるゴミでしかないアオサを採ってきて売っている
人がいるのには驚きました。アオサが売れるというのも新鮮な驚きでした。

というか、漁師もなかなかしたたかです。売れるものは何でも売るのですね。

考えてみればお好み焼きなどで使う「青のり」はアオサそのもので、アオサを
乾燥させて細かくしたものでしょう。売れるどころか古くから一定の需要があっ
たのです。ただ私たちの地元にはそれを買ってくれる人がいなかったから知ら
なかっただけです。去年採ったムール貝も需要があることは知っていてもそれ
までは販路が見つからなくて採りたくても採れずにいたのです。

そういう海産物はまだ他にもあるかもしれません。魚を獲るだけが漁師じゃな
いう当たり前のことを見直した次第です。


■今週のゴーヘー

○3月7日(月)  <ラッシュ>

またまた久しぶりの沖!。朝は氷点下で寒!。

今年は三河にはカレイがいそうにないので今日は西浦へ行った。8時過ぎに上
野間(かみのま)へ着いて網をやる。寒い。ふと南の空を見ると旅客機が低空
飛行でやってきた。そうか、セントレアに着陸するからあんな低空飛行なんだ、
と改めて飛行場が開港したことを実感する。

ジェットエンジンの音はまったく聞こえない。着陸時は静かなの?、と思った
けど、実は船のエンジンの音の方がうるさくて離れた旅客機の音が聞こえない
だけだった。大谷沖まで行ったら離陸時のエンジン音がよく聞こえたから、やっ
ぱりジェットエンジンの音はすごいんだと実感する。たぶんオカの人にはもっ
とよく聞こえるだろな。

旅客機は次から次へと着陸してくる。ガランガランを引いてる数分の間に2機
3機と続くこともある。滑走路に離陸する旅客機が待機してる時に着陸のため
低空飛行でやってくる飛行機もある。着陸機はセントレアまで後5・6キロく
らいだろう。離陸機がちょっと離陸に手間取ったらどうなるんだ?。なんだか
危なっかしいなぁ。

そうそう、忘れてた。獲れた魚はカレイ中2枚、小1枚。アイナメ1本のみ。
まだ旧暦の1月中だからカレイも動かないのかもしれない。


○3月8日(火)  <大漁?>

昨日よりちょっと早く出てオクゴオリへ行った。もうね〜、ここしか行くとこ
ろがない(苦笑)。

福江に着くとすでにタアカでア○エイ丸が網を揚げていた。うちは少し離れて
沖側で網をやる。中小のカレイが1枚ずつ。1クラで2枚もカレイがかかるな
んて今年一番の大漁だ(苦笑)。でも後は2クラに1枚かかれば良い方だった。

あ、一クラだけ大ガレイが2枚かかった時があった(こっちの方が大漁だ〜)。
10時頃西の風が急に強く吹いてきた時だ。左右の船の揺れでリモコン台が簡
単に倒れてしまい、網を揚げながら船の揺れに合わせて前後に「歩いて」いた
ほど。一歩踏み出しただけじゃ体を支えきらんかった。よく、まぁ、船から転
げ落ちなかったものだ。

風はピークを過ぎて少し収まる。昼前のクラで網に大量のアオサと海藻が付い
てしまい特にひどい1反だけはずした。最後のクラではクラゲやら海藻やらで
網が重くなってしまい打ち止め。カレイは全部で8枚だった。この春一番の大
漁だなぁ(苦笑)。


○3月15日(火)  <いよいよか?>

ゴーヘー父は11日に沖に出てるがゴーヘーはその日ゴーヘー母のお供でお墓
参りだったんで、1週間ぶりの沖だった。ぜんぜんカレイがいないからホント
は行きたくないんだけど(^_^;)。

一色前へ行くと見慣れない船が一杯・・・・おお、ヒ○エイ丸だ!。今年は小
女子漁の若い衆をやらんのか?。あ、そうか、自分の若い衆(息子)を小女子
漁にやって自分はカレ網で儲けようという魂胆だな。でも〜、カレイがいない
ですから〜、残念!(笑)。
案の定10時頃までやって諦めて海田へ向けて走っていった。タテコミでも揚
げるんだろう。

一方こちらは珍しくカレイが1・2枚ずつかかってきた。中ガレイのやや小振
りなものだけどかからないよりずっといい。10時を回ってからは大きめのモ
ガレイが1枚ずつかかって、それだけで5枚になった。全部で12・3枚。今
年初めて10枚を超えた!。いよいよ、カレイが動き出したか?


○3月16日(水)  <枠が揚がったが>

朝一色前へ行くとたくさんのテンマが出て海苔枠を揚げていた。いよいよ海苔
枠が撤去され枠の下に居るはずのカレイを掴まえられる、と意気込んで空いた
場所へ網をやった。

いきなり不発。

網を揚げている間にあたりの海苔枠はどんどん片づけられて空き場所がどんど
ん広がるので、ここがだめでも他の場所にいるかもしれないと期待を持ち続け
また空いた場所へ網をやる。

また不発。
あれ〜、どうしたんだろ?。1枚や2枚はいてもいいのに。

とにかく空いた場所へ移動し(もはや選ぶ必要もない程海苔枠が片づいてる)
網をやり続ける。どうにか1枚、2枚と掴まえたけど昨日程は掴まらない。な
んだかなぁ〜。

結局昼までやって大ガレイ2枚に中ガレイ4枚程度。今年はホントにどうし
ちゃったんだろう。


■エピローグ

例年の2月は7〜8日、3月は14〜5日程度沖(漁)に出るのですが、今年
は3月になってまだ5日しか出ていません。3分の2近く過ぎてこの程度の日
数ではカレイがいないことと相まって水揚げが上がらないわけです。漁師になっ
て5年で一番厳しい春となりました。ゴーヘー父もこれだけひどいのは記憶に
ないほどらしいです。今月水揚げがないということは来月の生活も苦しいこと
を意味します。参ったなぁ。

当面は来週解禁になるアサリかきで糊口をしのぎたいと思います。


■次回予告

Vol.90 「コアジサシ」 2005年4月2日(土)発行予定

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