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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.92 漁船の値段
                                     2005年5月1日発行
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■漁船の値段

漁船は車のような流れ作業で作られる工業製品ではなく、木造家屋のように職人が船体のすべてを作る手作り品です。昔は材料がすべて木でしたが現在はFRP(強化プラスチック)であり、あらかじめ用意しておいた船型にFRPを貼り付けて作ります。FRPの長所は形が自由になる点と木製に比べて非常に長持ちする点です。木製の頃は3〜5年で新造船を作っていたので漁師の多くは新造船貧乏状態だったようです。

木製と違って長持ちするFRPですが木製と違って船型が必要です。この船型は漁船の原寸大の型が必要となるのですが、そんな大きなものを普段から造船所に置いておけません。また船主である漁師の意向によって船の型が微妙に変わったりするので、新規に船を建造する際に一つ一つ作ることになります。こういう点が今でも漁船の値段を上げる要因の一つでしょう。

その値段ですが、予算として大まかに「1トンあたり○○万円」と考えます。(新築で家を建てる時予算を建坪1坪あたり○○万円と計算するのと同様)今なら新造船でおよそ「100万円」でしょうか。カレ網船の場合2.99トントンクラスなので、だいたい300万円程度となります。ただしこれは「船体」だけです。

これにエンジンと魚群探知機等電装品を加えることとなります。エンジンはトラック用エンジンを漁船用に改造したものだそうで、値段は200馬力で400万円超ですから船体に比べて工業製品・量産品・消耗品のわりに随分と高価なものです。エンジンにはプロペラシャフトとペラが付いている場合とない場合があるので値段と合わせて注意が必要です。電装品はGPS付き魚群探知機、無線機は必須です。これに舵とエンジンのリモコン装置を付ければ合わせて100万円はくだらないでしょう。

以上全部合わせて約800万円。個人の買い物としては非常に高価な部類です。漁師でショウバイに使うものだとしてもそれは変わりないです。船体がFRP製で長持ちするのが唯一の救いでしょうか。

カレ網以外の漁でもっと大きなショウバイをしている場合は船も大きなものが必要です。底引きだと5トン、10トンクラスの船で行うので船体だけで500〜1,000万円。電装品はレーダー、プロッターなど更に多く必要となるので費用も更に100万円単位で必要となります。もっとも月の水揚げも100万単位となるので償却はカレ網よりずっと楽かもしれませんが。

その水揚げですがカレ網の場合年間で約300万、多い人で約500万円でしょうか。エンジンは丁寧に使えば10年は持つので整備費用を上乗せして年間85万円程度の償却と考えると、300万以下の水揚げではかなり厳しい現実が待っています。これ以下の水揚げのカレ網漁師の場合事実上「新造船は無理」ということです。

実際、カレ網における最も新しい新造船はもう10年以上前になります。今後新造船を造ろうというカレ網漁師はおそらく出ないでしょう。





■今週のゴーヘー

○4月16日(土)  <再び高峯前>

朝ST丸と内海(うつみ)沖をやってから少しずつ下って高峯前まで行った。昨日散々やった場所だし昨日の午後地元の漁師がタテコミをやっていったようなので、さすがに今日はカレイもコチも少ない。

11時頃急にシマケが出来てきて北西の風がそよそよと吹き出した。それから30分もしないうちにオクゴオリへ行った人達が風が出てきたと無線で騒ぎだし帰るという人まで出る始末。こちらではたいしたこと無い風だけど三河側では強い風になってるようなので、昼前に切り上げて帰ってきた。


○4月17日(日)  <傾きすぎ>

戻ってくる時師崎前で帰港するシロメ船団に遭遇。遭遇はいつものことだが今日はうちの船の右後ろから来た船が目前を横切った。おかげでその船の引き波を乗り越えることになったのだが、その際船が一度左へ傾いてすぐに右へ揺り戻された。すると右舷の船縁を超えて海水がどっとトモの甲板に入ってきた。一瞬、そのまま右に転覆するかと思った。こちらの船のスピードがもうちょっと出ていたらそのまま転覆したかもしれない。危なかった。


○4月18日(月)  <強い東風>

オクゴオリで網をやっていた。天気も良く風も穏やかで絶好の漁日和なのだけど例によって魚がいない。それでもどこかにいないかと根気よく網をやっていた8時頃、ふわりとマゼが吹いてきた。そのマゼはいつの間にか東風に変わり8時半を過ぎた頃急に強く吹き出した。風が強すぎて船がどんどん流され、網が揚げづらい程。しかたなく9時半頃諦めて帰ってきた。


○4月19日(火)  <赤潮>

数日前から赤潮が発生している。今日もお昼に帰ってきたら浦口付近にいっぱいあった。まだ朝は冷えるんで時期尚早に思えたが、例年この時期にはすでに赤潮が発生してるんだよな。

それでも今年は1週間くらいは発生が遅いかもしれないが。


○4月23日(土)  <値下げ>

またあさりかきが始まった。今度の潮では造成地の入漁料が千円値下げになった。本来あさりが出るはずの造成地なので入漁料を徴収しているのに、あさりが出ないんで割が合わんと組合員から苦情があったんだろう。で、今日はさっそく6人が造成地にやってきた。

ゴーヘーは例によってみんなより少し離れてイワテでかいた。時間内でどうにかカゴが沈むくらいかくことができた。全部で14キロくらい。最後に大きなアサリがゴロゴロと出てくる場所に出くわしたんで明日が楽しみだ。


○4月24日(日)  <一人>

昨日来てた人達は今日はシロメ(漁)に出て行ったんで、今日の造成地は最初ゴーヘー一人だけだった。後から一人やってきたけどその人は手堀でやっていた。

昨日目星を付けていた場所でかき始めた。昨日よりずっとよいペースで大きなアサリがカゴに溜まっていくんで、かいていて楽しい。この場所だけでカゴが沈むくらいかけないかと期待したけどさすがにそれはちょっと無理だった。

ソコリ(干潮)になって潮も随分干り沖側へ移動した。まだ誰もかいていない場所でもアサリがでなくてあちこち彷徨う。どうにかカゴが沈み始めるほどかけたんでアサリをネットに移し替えた。その後は下り側へ移動してまだかいてない場所を探し歩いた。最後に一昨年かいた場所近辺ですこしアサリが出た。明日はこの下りでかいてみよう。


○4月25日(月)  <1,300円>

昨日の夕方から吹き始めた東風が夜半は強く吹き今朝もまだ残っていた。波が高いと海岸そばは海が濁るし危ないからアサリかきは止める予定だったが、陽が高くなるにつれ風も波も収まりいつも通り出られた。

今日はシロメが休みだったんで造成地も人数が増えた。ヤタ○兄弟もカレ網を止めてアサリかきに来ていた。昨日の場所は東風で海草が寄りついてとてもかけたもんじゃなく、しかたなく下りへ移動して浅場でかき始めた。案外数が出てしかも大きなアサリが多かった。むしろ昨日より調子良いくらい。これで石が少なければ尚良いのだけどね。

昨日より少し早くカゴが沈み始め一旦ネットに移し替えた。更に続けてると昨日よりもやや多くかけた。合計で17キロほど。選り分けたら大が12キロになってビックリ。確かに今日は大きかったからなぁ。

選り分けている時油屋の若い衆が船の油を入れに来てちょっとおしゃべり。村のモグリ(潜水業)のアサリが豊浜市場でキロ1,300円もしてるそうな。今年は島のアサリが少ないからといってあまりに値が張りすぎてるね。だってモグリのアサリだよ。水中ポンプで掘ったアサリなんて砂をなかなか吐かないから普段はキロ300円程度しかしないアサリだ。

むちゃくちゃだけど仲買の人数が多いからそういう値段も出るんだろね。村の札場では無理だ。


○4月26日(火)  <死ぬかと思った>

アサリをかいていたソコリ(干潮)過ぎ。急に北西の風が出てきた。ちょっと強いんでもう帰ろうと思ったけどみんなまだ帰る気配がなかったんで粘ることにした。5分後風は一層強くなりもはやガマンできず。すぐに片づけてテンマを沖へ向けて走らせたら風と波でどんどん下りへ流された。テンマを波に向かって立てつつ沖を目指すも波の高さが1mくらいになっていて流されるばかり。もっと早く帰ってくれば良かったとか、帰らずに待機していれば良かったとか思ったけど後の祭り。何度も転覆しそうになる。

流されていつの間にか鳶ヶ崎のシマに近づいてきておりもうだめかと思った。

ほんの一瞬岸と灯台を見比べたら案外沖に来ていたことに気づき、ダメ元で思い切ってテンマを下りへ向けた。大波がテンマの後ろから攻めてきて生きた心地がしなかったけど、運良く船外機はシマに当たらなかった。どうにか大波に乗って灯台のそばまで下りそこから右へ大きく回り込むようにして浦の中へ入った。「助かった」とホッとした。

波しぶきが当たるのかと思ったらいつの間にか雨が降り出しており、雨はすぐに土砂降りになった。びしょ濡れになりながらテンマを船着き場へ着けとりあえず市場の屋根の下へ非難して雨脚が弱まるのを待った。その頃みんなが帰ってくるのが見えた。

雨脚が弱まってから軽トラに乗りうちへ帰って着替え、また船に戻りアサリを選り分けた。夕方の札場では中サイズ9.5キロを売った。6,780円だったのでキロ単価は713円也。うむ、満足。


○4月27日(水)  <海草流れ着く>

今日は浅い場所をかこうと思って少し早めに造成地へ行った。すると昨日の風で海草が海岸に寄りついており浅場がまったくかけない。あちこち歩き回ってるうちに潮が少し干ってきて、やむなく数m沖へ移動したら海草がやや少なくなっていてどうにかかくことができた。

アサリの溜まるペースは昨日よりやや悪かった。カゴがまだ沈まないうちに一旦休憩して昼食。エネルギーを充填してから後半戦をやった。今度はよい場所に当たってペースが良かったけど、昨日よりスタートが30分早かったんで、まだ時間は十分あったにも関わらず疲れがひどくなってきて続けられなくなった。まぁ、どうにか15キロくらいかけただろうと引き上げてきた。

帰ってから重さを計ったら大が10キロ、中が5キロだった。札場では昨日の分の10キロを売る。7,890円也。


○4月28日(木)  <アサリ売れず>

今日は札場が休みだった。アサリをかき終わって選り分け水槽に活かした後に知った。どうりで水槽の中に魚が活かしてないはずだ。昨日のアサリは今日の札場で売るつもりだったけど今日は売れず、明日は風で沖休みの可能性が高い。明後日は土曜日でまた札場が休みだ。そうすると日曜日まで札場でアサリを売ることができない。4日間も活かしておくのはさすがにまずいよなぁ。

今日の分と合わせて今水槽に30キロのアサリが活かしてある。明日もかく予定だから合計40キロを超えてしまう。それを日曜日に一度に売ると安くなってしまうし目立つのもダメだ。今日が休みだとわかっていれば昨日全部売ったんだけどなぁ。参ったなぁ。


○4月29日(金)  <札場があった>

この潮最後のあさりかき。今日も誰よりも早く浜へ出てちょっと腹ごしらえをしてからかき始めた。しばらくしてMH丸、FH丸がやってきたがなぜかYT兄弟が来ない。午前中はカレ網に出てその後アサリかきへ出ると言っていたのに来ないのは、さすがに疲れたか網でも汚したか。

ところが後で聞いた話しによるとSK丸は布土でコチが大量だったそうで、全部で8万円くらいあったらしい。そんなに漁があればわざわざアサリかきなんて来ないわな。

相対で売ってきて仲買に「誰にも話さず黙っといて」と口止めをしてきたそうだ。彼は他人の漁の様子は欠かさず仲買に聞くくせに自分の漁の話しは口止めしてくる人だから、そんな人の口止めを「はい、そうですか」ときく人はいない。それで聞き及んだというわけだ。

アサリは25キロ分を売った。まだアサリ大が18キロ分も残っている。明日はまた札場が休みだから明後日日曜日に売ることにしよう。


○4月30日(土)  <カラばかり>

今朝はまず古布(こう)のツキ磯へ行って一クラ。小コチ1本のみ。続いてみんながいる布土(ふっと)へ行って一クラ。今度はカラ。すぐに諦めて元へ戻ってきて4クラやって2クラカラ、2クラで小コチ5本。尾張を諦め三河へ走って6クラやってモガレイ1枚きり。11時を過ぎてマゼが強くなってきたんでしぶしぶ帰ってきた。

軽トラに魚を積んで仲買へ行くとAW丸がいた。6,000円だったそうな。うちは5,200円。後から来たSK丸は結構魚があったから1万円くらいあったんじゃないかな。なんだか忌々しい。

忌々しいと言えばこの風では明日はお休み、明後日は雨?になりそうだから札場も連続で休みだろう。休みではアサリを売ることができない。う〜ん、今度の札場はいったいいつ開かれるんだろう?。アサリを水槽に活かしたままいつまで待てばいいんだろう?。

金曜日に全部売らなかったのは失敗だったなぁ。


■エピローグ

発行が1日遅れてしまって申し訳ありません。
去年のGWでも発行が1日遅れてしまいました。今年もまた1日遅れの発行となってしまいました。連休ということで気持ちが緩んでしまっているのかもしれません。もう少し気を引き締めて望みたいと思います。

ところで今日は予想通り風でお休み。夜9時現在雨東風となっています。明日は間違いなくお休みでしょう。火曜は漁に出ても札場はお休みだし、4・5日は祝日で札場休みになりそうです。次回の札場は6日かもしれないです。アサリをかいてから1週間も水槽に活かしてから売るのはどうかと思う。売り時を完全に失したようです。なんとか処分しないと。


■次回予告

Vol.93 「釣り客」 2005年5月14日(土)発行予定

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