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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.94 コククジラ私見
                           2005年5月28日発行
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■コククジラ私見

今年のゴールデンウィークに東京湾に珍客が訪れました。テレビニュースなど
で取り上げられていたのでご存じ方も多いが思いますが、珍客はコククジラと
いう髭クジラの一種でした。千葉の木更津あたりでは岸壁から見える位置まで
岸に近づいていたようです。岸壁から潮吹きやテールを見ることができたラッ
キーな方も少なくないでしょう。

コククジラは海底の貝や蟹などをすくい取って口の中の髭で漉し取り食べてい
るそうです。従って他のクジラと違い外海の比較的浅い場所で海岸近くを生活
の場としているそうです。東京湾のような内海(うちうみ)に姿を現すのはか
なり珍しいことでしょう。まさに「迷い込んだ」というのが正しい表現です。

それを物語るかのようにコククジラの目撃情報は東京湾の中程から奥の方へ、
そしてまた中程から下りへと続きます。たくさんの船やタンカーが航行するの
を避けあちこち彷徨ったことが伺えます。最終的には東京湾入り口近くの千葉
県富山町の定置網にかかって死んでしまいました。

最初のテレビ報道を見た時はコククジラにさほど興味は感じませんでした。い
つぞやのアザラシのように珍しい生物が迷い込んで報道合戦してる程度にしか
見ていませんでした。しかし死んでその死体がテレビ画面に映り「かわいそう」
とか「なんとか湾から出してあげられなかったのか」という報道を見聞きして、
俄然興味が湧いてきました。

死体の映像を見て最初の印象は「思ったより小さく痩せてる」でした。この時
はコククジラのエサが何かは知りませんでしたが、餌を食べていないことだけ
はわかりました。少なくとも東京湾の中ではエサは食べていなかったのでしょ
う。「小さい」のはどうやら「子供」のクジラだったためでした。すると湾内
を彷徨ったのは出口を探していたためだけじゃなく、親を捜してもいたのでしょ
うか。沿岸沿いに泳いでようやく出口付近にやってきて定置網にかかってしまっ
たわけです。

「どうして定置網なんかにかかったのか」というやや感情的な意見もあったよ
うですが、潮の流れにのって沿岸沿いに泳いでいれば定置網には自然に入り込
んでしまいます。定置網はそのように作ってあるし、そうでなければ魚は獲れ
ません。定置網が悪いわけではなく定置網のある湾に迷い込んでしまったコク
クジラが不運なのです。

また「まだ湾内を遊泳している時に船で網を引いて囲いそのまま湾外へ誘導し
てあげた方が良かった」という意味のコメントをされている方がいました。国
内ではこういう事例はないと思いますが、海外では成功事例があるのでしょう
か?。

普通の船引き網で引いたらきっと簡単に逃げられてしまいます。泳いで逃げる
ものを船と網で囲って引くのは案外難しいことなのです。問題のコククジラは
子供で弱っていた可能性があるので囲うことは成功するかもしれませんが、そ
の後網の袋の中に落ちて呼吸できずに死んでしまう可能性は否めません。もし
船引き網でコククジラを囲うのならコククジラの泳ぐスピードに負けない速さ
で引けるほど網目が大きく、袋の上部が開いて海面に出て呼吸ができる構造の
かなり特殊な引き網(つまりクジラを囲う専用の網)が必要だと思います。

このような特殊は引き網はたぶん国内にはないでしょう。仮に海外(のどこか
の自然保護団体とか)にあったとして発見からわずか数日でそのような特殊な
引き網を準備できたでしょうか?。結果はすでに明らかですね。

何よりの不運だと思うのはこの子コククジラが親とはぐれてしまったことです。
ひょっとしたら独り立ちしたばかりなのかもしれませんが(それにしては小さ
い)、親の保護の元で成長する哺乳類にとっては親から離れることは即死を意
味します。このコククジラが首尾良く東京湾を脱出できたとしても成長して大
人になる可能性はかなり低かったと考えざるをえません。

自分が他者のエサとなる可能性の低い生態系の頂点に位置する生き物でも、子
供の頃は食べられる側だったり親の保護の元でないと生き残れないのが、「母
なる大自然」の厳しい現実であります。


■今週のゴーヘー

今回より「今週のゴーヘー」はブログに移動いたします。写真も掲載できるの
で写真日記の日も時々あります。引き続きご愛読の程よろしくお願い致します。

http://blog.livedoor.jp/gohe/



■エピローグ

今回も発行時刻が遅れましたがどうにか発行予定日内には発行できて良かった
です。今週はちょっとごたごたしたので発行を一回延期しようかとも思いまし
たが、ずっと定期的に発行し続けてきたそのペースをできるだけ守りたいと考
えどうにか発行に漕ぎ着けました。今はホッとしています。

メルマガ原稿を書くのは直前が多いわけですが(それで発行が遅れたりしちゃ
います(^_^;))、内容や展開はあれこれ考えている二週間です。もっと文章の
推敲ができればもっと良い内容になるのでしょうが・・・(大汗)。


朝はまだ冷えたりしますが日中は汗ばむ程気温が上がり陽射しも強烈に感じま
す。風が涼しくて爽やかだったりして油断すると熱中症になりかねません。水
分補給と日陰での休憩に留意して、良い週末をお迎えください。


■次回予告

Vol.95 「逃げた魚は大きい」 2005年6月11日(土)発行予定

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