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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.97 活きと鮮度
                           2005年7月9日発行
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■活きと鮮度

「鮮度が良い」は生鮮食料品全般に通じる重要なキーワードです。生産者から
仲買・小売り業者は「鮮度が良い」ことを求めて日々悪戦苦闘し、消費者は「
鮮度がよい」品を求めてスーパーの棚の前で吟味したり、休日には○○朝市ま
でドライブを兼ねて出向いたりしています。鮮度が良いことは何よりもまず優
先する事柄なのです。

鮮度の良さは慣れない人や素人目にも比較的わかりやすい指標であると思いま
す。野菜なら萎(しお)れていないことが鮮度の良さの目安ですし、触った時
の適度な固さ・弾力も重要な情報です(触りまくられて逆に傷んでいる野菜な
どを見かけることもありますが)。また最近は収穫してからの「時間」も重要
な情報になってきて「朝採り」なんて言葉も生まれています。

こうした野菜の鮮度に比べて魚介類の鮮度は見分けがつきにくいものではない
でしょうか。よく耳にするのは「目がきれいではっきりしたもの」ですが、スー
パーに並んだパック詰めされた魚を見てはっきりとそれがわかる人はあまり多
くないと思います。実際の鮮度はどちらも変わらなくてもパック詰めでなく発
泡スチロール箱に氷詰めされて、1匹○○円で売られているアジやサンマの方
が鮮度が良いような気持ちになるから不思議です。そして買って食べてみて味
が変であれば次回からそのスーパーで魚を買うことを止めるという判断になり
ます。結局魚介類の鮮度に関しては「売る人を信じる」という行動になるのか
もしれません。

素人目に判断の難しい魚介類の鮮度ですが、カレ網漁師から見たらむしろ当然
であります。というのもお店に並んでいる魚はどれも「死んだ魚」であり、死
んでからある程度時間が経過した魚なので上手に冷蔵保存していなければ鮮度
が落ちていて当たり前だからです。買う時に死んでからの時間と冷蔵保存の状
態が明確でないのですから鮮度に不安があるのもしかたがありません。まさに
「売る人を信じる」の一語に尽きてしまうわけです。

では、「生きている魚」なら大丈夫か?。実は話しはそう簡単でもありません。

まず魚を活かしておく設備の問題があります。漁船から市場・仲買業者・運送
業者・小売店にいたるまで魚を活かしておく設備を用意することは、特にアジ
やサンマなど大衆魚と呼ばれている魚を対象にした設備は事実上不可能です。
というのも、スーパーにアジやサンマが泳ぐ水槽があることを想像してみてく
ださい。まるで水族館のようですね。その水槽の中を泳いで逃げるアジやサン
マをタマですくってパック詰めするのは人手も時間もかかります。場所代も維
持費にも大きなお金がかかるでしょう。大衆魚の値段が大衆向けでなくなって
しまいます。

それゆえ消費地のお店で「生きている魚」にお目にかかるのは「高級魚」と呼
ばれる種類になってしまうのでしょう。

では「生きている高級魚なら大丈夫か?」。

残念ながらこれも確実ではありません。問題は「活き」です。「ただ生きてい
るだけ」ではダメなのです。

魚は漁獲されてから消費地のお店の水槽に入るまである程度の時間が経過しま
す。その間まったくエサを食べていません。人間だって一食抜けば体に力が入
らなくなります。自然界に棲む魚はなかなかエサが食べられない時もあるので
空腹には比較的耐性があるでしょうが、それでも何日もエサを食べなければ痩
せて体の色艶が悪くなってきます。エサを食べなくても影響がない日数は魚に
よって違うでしょうが、コチやカレイの場合丸二日以内ならさほど影響はない
でしょう。それを過ぎれば目立って痩せてきて更に日数が経てば体色が悪くな
り「活きが悪い」状態となります。

では、「獲りたてであれば良いか?」。

これも必ずしも充分ではありません。今度は体の色艶やキズ・スレが問題です。

体の色は各魚特有の色合いがあります。その魚の典型的な色合いでない場合そ
の個体はエサが充分でないか食べていたとしても良いエサでなかったか、病気
かもしくは病気になりかけか、棲んでいた場所が良くなかったか(これはあま
りない)、網への掛かり具合が悪くて酸素不足なったか、などなにがしかの問
題がある個体です。

キズやスレは見た目の悪さもマイナスですが、それによる体へのダメージが「
活きを悪くする」こととなります。よくテレビなどで釣った魚や生け簀の魚を
取り上げバタバタと跳ねて踊る様を見て「活きがよい」と評する場面がありま
すが、魚がバタバタと跳ね踊るのは活きにはマイナスです。跳ね踊れば体がど
こかにぶつかるわけでぶつかった箇所は魚も内出血状態になり肉質が傷むこと
となります。跳ね踊る前までは活きが良くてもその後活きが悪くなってしまい
かねません。キズやスレはそうした「暴れた証拠」なのです。

まとめると活きがよい魚は
 ・水槽の中でも外でもおとなしい
 ・体の色艶がよい
 ・水槽から出しても体の表面が光を反射して光って見える
このような状態の魚が活きがよい魚であると言えます。

カレ網では何よりも「活きが大切」です。「活きが悪い」魚は値段もそれなり
となってしまいます。カレ網では「活きがよい」状態の魚を獲って売ることに
各自が励んでいるのです。


■今週のゴーヘー

引き続きブログにてご覧ください。

http://blog.livedoor.jp/gohe/



■エピローグ

前回のエピローグでは空梅雨を嘆いたものでしたが、各地で行われた「雨乞い」
や「祈祷」が天に通じたのか、この2週間は関東から西でも本格的に雨が降り
各地のダムは軒並み水位を回復してきました。逆に今度は雨が降りすぎて土砂
災害の恐れさえ出てきています。ほんとに自然は人の思うようにはならず、雨
が降っても人の無力な様を思い知らされている次第です。はぁ〜。

漁の方は6月は相場の安かったにも関わらず下旬に大漁を連発して、6月とし
てはここ数年を20%程上回る水揚げを揚げることができました。7月に入っ
てからは魚の量はさほどではないですが、相場が上向いてきたために今のとこ
ろ例年並みの水揚げで推移しています。

天気予報では来週にも梅雨が明けそうなことを言っていました。すでにかなり
暑いですが梅雨明け後はもっと暑くなることでしょう。夏バテや夏風邪に気を
つけてお過ごしください。


■次回予告

Vol.98 「モガニ」 2005年7月23日(土)発行予定

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