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【Uターン漁師のゴーヘー通信】Vol.98 モガニ
                           2005年7月26日発行
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■モガニ

去年の三河湾は例年になくモガニが少なくて網破れが少なく助かりましたが、
今年は一転例年になくモガニが多く網が猛烈に食い破られて参っています。ど
んなガニも網を食い破ってしまいますが特にモガニがよく破るので、このガニ
が多いとカレ網漁師は毎日必死になって網をきようハメに陥ります。

ガニの出始め頃、無線で年寄りの漁師が「昨日一日網をきよっても今朝の一ク
ラで元の俸禄(ほうろく)だがや」(「元の俸禄」とは「元に戻ってしまう」
という意味)と嘆いていましたが、まんざら大袈裟でもありません。一日漁を
やってくると1反の網をきよい終わるのに1時間、網糸が細い網だと2時間く
らいかかります。これだけ時間かかると8反の網全部をきようことができない
ので、網を交換したりきよわずにそのままにしたりします。そのままだと翌日
もまたたくさん破れるので二日分の破れをきようには更に時間がかかります。

きよってもきよっても破れてしまう網。毎年ガニが出てくるとこの繰り返しで
す。「今週のゴーヘー」でも日記で書きましたが、まさに「賽の河原」状態で
す。懸命に石を積んでもそれを鬼に崩されてしまう、モガニはこの鬼のようで
す。

かように大変良く網を食い破ってくれるモガニですが、モガニとはイシガニの
ことで日本沿岸では普通に見られる甲羅の幅が大きくても10cm程度のカニ
です。甲羅は小さい時は濃いめの緑地にやや薄い黄土色のモザイク柄、大きく
なると全体が濃い茶褐色になり(この状態のモガニを油ガニと呼んでいます)、
爪や甲羅など殻全体がとても固くなります。本ガニ(ワタリガニ)やアオタ(
タイワンガザミ)よりも小型のカニでその身はやや磯の香が強いですが、わり
と身がありさっぱりとして食べやすいので昔はよく茹でて食べました。いまで
も時々持って帰ってきて茹でて食べたりします。「モガニ憎し」で釜ゆでにし
てやろう、というわけではありませんので念のため。

三河では6月頃から急にモガニが増えてくるのですが、これは産卵の時期と例
の「潮回し」が関係していると思われます。

朝船着き場へ行くと暗い水面のあちこちに街灯に照らされて波紋が見えます。
昼間も同様な波紋が見られ波紋を起こしている主を確認すると小さい(甲羅幅
4〜5cm)モガニです。モガニがあちこちの水面で懸命にひれ足?(爪から
数えて5番目の足)を動かして泳いでいます。三河湾の海上でも泳ぐモガニは
よく見かけます。こうやって潮の流れに乗りながら、産卵のためあるいは潮回
しの悪い潮から逃れるため、どこからか泳いでくるのでしょう。三河湾の瀬や
段の上はそうして集まるには良い場所であり、そこにはコチやカレイも同じよ
うにして集まって(流れて?)くるというわけです。

最後にモガニの思い出をひとつ。

小学校低学年の頃夏はよく「モガニ釣り」をして遊びました。岸壁から海をの
ぞき込むとモガニが海中の岸壁を伝い歩いていて何やらハサミで挟んで口に運
んでいるのが見えました。釣り糸の先に魚の頭や骨・アラなどを結んでモガニ
の傍へ垂らすとモガニがそれにかじりついてきます。頃合いを見計らって引き
上げると獲物を挟んだままのモガニが釣れるという寸法です。途中で挟むのを
止めて落ちていくモガニもいましたが、モガニが離れる前に素早く岸に上げる
のがコツでした。多い時には夕方の2・3時間で40匹くらい釣ることができ
ました。もちろん持って帰って全部茹でて晩のおかずです(笑)。

ある年、こうやってモガニを釣っている私たちを見ていた釣り人が長い柄のタ
モ網でモガニを掬うようになりました。タモで掬うのは釣るよりずっと効率が
良くてすぐにたくさんのモガニが獲れました。モガニを掬う人はあっという間
に増え、ほとんどが口コミで知った都会方面から来た人達でした(地元民はモ
ガニなんて目もくれなかったから)。

私たちは自分たちの獲物と楽しみが奪われてしまうのをただ眺めている他なく、
実に悔しく残念だったことを覚えています。翌年には岸壁からモガニは姿を消
してしまい、私たちのモガニ釣りは終わってしまいました。


■今週のゴーヘー

引き続きブログにてご覧ください。

http://blog.livedoor.jp/gohe/


■エピローグ

今回のメルマガは発行が3日も遅れてしまいました。2週に一度楽しみに待っ
て頂いている方々には誠に申し訳ありませんでした。

5月から9月にかけてはカレ網の最も忙しい時期に加え今年は連日の網きよい
に追われ充分な時間、特に心の余裕が持てなかったことが響いています。この
時期を乗り切ればまた余裕が出てきますが、100号を目前にしてネタ不足と
従前からのマンネリ化は避けようもない現実であります(´。`)。

まぐまぐで「漁師」や「漁業」でメルマガを検索すると、ゴーヘー通信より発
行部数が多い漁師が発行するメルマガがありません。「漁業」はマイナーな分
野であることを改めて思い知らされると同時に、そのマイナーな分野でも一番
であることが嬉しく、自分が漁師(漁師は何でも競争)であることを実感して
おります(笑)。

100号を機にゴーヘー通信を衣替えか休刊かいっそ廃刊か、いやいや継続か
はたまた丸4年目までがんばろうか、と最近ずっと考えています。そう考えて
ることが今回の遅れに一番影響を与えていることなのかもしれません。


■次回予告

Vol.99 「観天望気」 2005年8月6日(土)発行予定

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